東方弔意伝   作:そるとん

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ーーーこれは、少年が「死」を通して、世界の美しさを知る物語。


博麗の巫女

「ちょっと、何言ってんのよあんた」

「……え?」

 

突然の出来事で、俺の頭はフリーズした。フリーズという言葉がぴったりなレベルのフリーズ。

そして、世界は動き出す。

 

「ど、どうし

「ひょあわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「うわぁ!ちょ、ちょっと!危ないわよ!」

 

右側、つまり鬱蒼とした木々の生えた山の方から少女の声がしたから振り返ると少女がいた。いや、当たり前なんだが。

人との対話に耐性どころか弱点にすらなっている俺からしたら、そりゃまぁ怖い。何年振りだろう。人に話しかけられたの。

で、まぁ、後ずさりをしたら崖だったみたいで落ちそうになった。

そりゃそうか、麓の様子が見えるんだもんな。崖だよな。

この子が危ないって言ってくれなきゃ落ちてた。

 

「もう、何なのよ。急に黙ったと思えば、奇声出して…」

「ぇ、あ、ご、ごめん……」

「で?何やってるのよ。ここで」

 

冷静になって見てみると、かなりの美少女だ。異性と話だなんて何回目だろう。

……そうか、女の子か。

嫌な事を思い出した。この子も、多分同じなんだろうな。

あからさまに対応が冷たくなる俺が嫌になってしまう。

 

「んぁ…気づいたらここにいた」

「は?どういう事よ?」

「どうだっていいだろ……それより、ここはどこだ?」

「あら?自分は何も話さないのに自分だけ何かを得るつもり?」

 

まぁ…それもそうか。ここはきっと別の世界だろう。

何を言っても問題ないか。

 

「……分かったよ。悪かった」

「うん、よろしい。それじゃあ、立ち話も何だしウチによっていきなさい」

 

満足そうに紅白の巫女装束の少女は笑った。それどころか家に誘った。

ーーー変なやつ。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

しばらく歩くと、少女の家、というか神社?に着いた。

ーーーちなみに驚く事があったのだが、少女が飛んだのだ。さも当たり前のように。「何よ、飛べないの?」なんて言われた。これに関してはゆくゆく聞こう。どうやらこの世界は普通ではないみたいだ。

 

「ちょっと待っててね。準備するから」

「あぁ、分かった」

 

長い階段を上り、神社の正面に出たらすぐに少女は神社の奥の縁側から中に入っていった。

なんてお人好しなのかね、あの子は。苦笑まじりにそう思った。

 

あの子はこの神社に1人なんだろうか。人気が無さすぎるし、何せここに来るまでに筋肉痛になるところだった。それほど山中。何でこんな所に。

まぁ、こんな所だし、1人なんだろうな。友達とかはいるんだろうけどそう思うと中々にいたたまれなくなってきた。お賽銭箱あるな……。

 

チャリーン

 

何故かポケットに入っていた500円を賽銭箱に投げる。

二礼二拍手一礼。

 

「あの少女に幸ありますように」

 

お人好し少女に500円ぽっちだが寄付しよう。

せめてものお礼だ。

顔を上げると俺の横に立っていた例の少女がキラキラした目で見てきた。

 

「え、どうし「いまあなたお賽銭してくれた!?何円!?何円!?」え、あ、500円……」

「ご、ご…?」

 

しまった…少なかったかな。

 

「あ、悪い。今はそれしか無く「500円もくれたの!?嬉しいわ!変なやつだと思ってたけど訂正よ!善人よあなた!ほんとにありがとう!!」お、おぉう……」

 

どんだけ信仰薄いんだこの神社……。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

「私の名前は『博麗 霊夢』よ!この神社の巫女をやってるわ!」

「博麗さんね…あ、お茶おいしい」

「霊夢でいいわよ!良い人には良いお茶を出すものよ!」

「そ、そうか…悪いな」

「いいのよ!!」

 

さっきからテンションが高いのである。

どうやら極貧みたいだ。500円だけなのだが「これで一週間はいけるわね!」とか言ってた。可哀想だから何とかしてあげたい。

それに、変わった少女らしい。

いや、俺が関わってきたやつらの方がおかしかったのか。

とりあえず、俺なんかが、もっと早く知り合いたかったと思ってしまうほど人の良い子だ。俺より年下みたいだけど、この神社で一人暮らし。俺なんかよりずっとしっかりしてる。

とにかく、俺も俺の情報を言わなければね。

 

「俺は……『シオン』だ」

「…うん?どこまでが名字なの?」

「あー、シオンが名前だ。名字は……無いな」

「無いの?変なの」

「は、はは……」

 

あぁ、全く、変なやつだろ。

名字を名乗らないのはちょっとした反骨精神。それにあんなクソ親と同じ名字を名乗るのが非常に遺憾だからだ。

 

「それより、ここはどこなんだ?」

「あぁ…ここは『幻想郷』よ」

「幻想…郷……」

 

ピッタリだな。綺麗な景色に澄んだ空気。星もさぞ綺麗なんだろうな。

 

「妖怪などが住んでたりするの!」

「んぇええ……」

 

何だかもうどうでもいい。ここは元いた世界とは隔絶されているのだろうか。それだけでも気楽だ。少しビックリしたが妖怪も話し相手になってくれるのだろうかと思うと何だっていい。

 

「幻想郷の周りには私の前の代の巫女が張った『博麗大結界』ってものがあってね、ようは外の世界とは隔絶されてるの」

「へぇ、ん?巫女って受け継ぎ式なの?」

「そうよ?その反応と服装からするに、あなたは外の人ね」

「え、あぁ、まぁな……」

 

飛ぶとか言ってたからこの子も妖怪かと思ったけれど……

妖怪は確か総じて長命なんだっけ。もしかしたら前の巫女が300年続いたとかかもしれないが、この子は多分人間だ。勘がそう言ってる。

それに「外の世界」は多分俺が元いた世界という認識でいいだろう。

話が早くて助かる。

 

「幻想郷には、忘れられた者たちが来るの。妖怪しかり、人しかり」

「忘れられた……」

 

ーーーなんだ、来るべくして来たようなものなのか。

 

「さ、私が話せるのはこれくらい。次はシオンについて教えてね」

「……あぁ、分かった」

 

あぁ、吐きそうだ。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

ーーーあたしだって大変なの!!ちゃんと働いてよ!このアル中!

 

ーーーあぁ!?誰が毎日家事やってんだ!バカ女!!

 

ーーー当たり前でしょ!!家にいるのあんただけなんだから!!!

 

俺もいるんだけどね。

もっといえば、毎日家事をしてるのは俺だよ。学校にもまともに行かずにーーいや、望んで行ってないからどうでもいいかーー泥酔したクソ親父を横目に家事をこなしてるのは俺なんだよ。

毎日毎日、耳が痛い。いっそ鼓膜を破ってしまおうか。そっちの方が楽だな。

 

酒に溺れた親父に掴みかかっては高い声で喚き散らす母親に、生きてる価値すらないような父親は手を出して。

こんな日々にうんざりした姉はとうの昔に出て行った。

 

ーーーばあちゃんが死んでから酷くなったな。

唯一俺の頑張りを認めてくれる、唯一話し相手になってくれる、唯一俺の存在を認識してくれていたばあちゃん。

学校に行ってもイジメられて帰ってきた俺を慰めてくれたのもばあちゃんだけだった。あんな奴ら所詮ゴミだ。俺が妬ましくて仕方がないだけだ。

知っていても、これはあんまりではないだろうか。

 

(うぁ…ダメだ。このポンコツ。泣くな、泣くなよこの野郎)

 

行き場の無い感情が、目から溢れるのを、爪が食い込むほどに自分の首を絞めつけて我慢する。

そんなことしてるもんだから首には爪痕と傷跡だらけだ。

でも、今回は抑えられそうにない。

 

「……グゥッ…クソッ、クソッ…!!」

 

もううんざりだ。

ばあちゃんに話を聞いてもらおう。

会いに行こう。

 

 

 

 

 

俺は、台所から包丁を取り出すと、屋上に向かったーーー

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

「ーーーんで、そのあと屋上で自殺して、目が覚めたらここにいた」

「…そう、なのね」

 

 

「えと、その……」

「あぁ、謝りなんてしなくていい。どうってことない」

「そ、そう?ありがとね」

 

何かと律儀なんだなこの子は。今となってはどうでもいいし、何だかスッキリした気分だ。それでも心はきっとまだ、どこか暗い。

 

「さ!この話は終わりにしよう!俺ぁ湿っぽい空気が嫌いなんだ」

「…うん、そうね!」

「んじゃ、俺はそろそろお暇し「あなた、泊まっていきなさいよ!」てぇええ?……え?」

 

霊夢のお人好しは、いつか俺を殺しそうだ。




至らぬ点とおかしな点が多くあるかもしれませんが、見てくれると大変嬉しいです!!

感想及び評価をいただけると大変嬉しいです!!

キャラがおかしかったり、口調が変な時があるかもしれませんが、無いように気をつけます!
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