東方弔意伝   作:そるとん

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魔法の森の魔法使い

 

 

「それじゃ、お世話になったな」

「本当に行っちゃうの!?まだここにいていいのよ!?なんなら執事としてずっといてもいいのよ!?」

「と、言われてもなぁ……。じゃあ、行く宛が無かったらここに戻ってくるよ」

「……本当に?言質とったわよ?またいらっしゃいね?」

「あぁ、分かった」

 

傷を負ってから2週間。ほとんど傷も治った俺はまた幻想郷探検に戻る事にした。で、その事を話したらレミリアが「えぇっ!?」なんて反応をした。ようやく玄関を出れたかと思うとまたしてもレミリアに引き止められている。そんなかんじ。

その隣で日傘を差す咲夜もやや苦笑気味。

 

「お嬢様……別に永遠の別れじゃありませんし、また会えますよ」

「ほ、ほんとにぃ……?」

「あぁ、どうせやることないしまた来るよ。その時はよろしくな」

「うぅー……分かったわよ…またいらっしゃいね」

「あぁ、またな。レミリア」

 

少しだけしょんぼりしたレミリアを優しく見やり別れを済ます。

 

「あら?私にはないの?」

「……あぁ、そうだったな……またな、咲夜。また紅茶飲ませてくれ」

「えぇ、とびきり美味しいもの用意してるわね」

 

咲夜は微笑み、そう言った。

うん、たしかに、紅魔館はいいところだった。何とも仲の良い……家族のような、そんな暖かさがあった。もちろん、パチュリーと美鈴にも別れを済ませた。2人とも「いつでもいらっしゃいね」と言ったような反応をしてくれた。何と嬉しい事か……。

フランは寝ていた。起こすのも忍びないからこの前人里の甘味屋で買ったクッキーに「姉ちゃんと仲良くな」と置き手紙を残しておいた。

そういや、フラン以外にはあげてないな……また今度あげに……。

そうだな。うん、ここならまた来てみたい。また来ようか。

 

「それじゃあ、レミリア。お世話になりました。また来るよ」

「えぇ……!またね!シオン!」

 

 

笑顔でレミリアに手を振り返して、紅魔館を後にした。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

さぁ、今日はどこへ行こうかー。

いや、今日は行ってみたいところが決まっている。度々パチュリーから話を聞いていた、

ーー「魔法の森」。

木の陰で日光は遮られ、何ともジメジメしたあまりオススメできない場所。

だと、パチュリーは言っていたが、何でも色々あるらしい。

変な植物とか、変な木とか、変なキノコとか。

それは俺の好奇心をくすぐるのに十分だった。

それに、魔法の森とかいう名前。行かない理由がないぜ。

と、いう訳で、俺は紅魔館のあった場所にある逆側の森へと向かった。

 

 

 

 

 

「あ、博麗神社だ。お、あれはあのおじさんがいる八百屋だ」

 

 

飛びながら横や下を見るとお馴染みの光景が広がっている。

鳥ってこんな気分なのだろうか。何とも心地がいい。

ここに来たのは冬で、もうその季節は終わりを迎えそうになっている。ここ最近では寒さが和らぎ、心地よい春風に吹かれ、花の香りがして、温かい日光を浴びて空を飛ぶ。所々には白い綺麗な梅の花が見える。

素晴らしいな、幻想郷。何とも綺麗だ。

そうか……春ってこんなに綺麗なのか……。

初めて触れる感覚に、俺は感動していた。

なんてボーッとしていたら、いつのまにか春とは一風違った、別のオーラを放つ森の前に着いた。

 

「おぉ、ここか」

 

これが話に聞く「魔法の森」……。

うぅん…確かに良さげな雰囲気ではないな。だが、この感じ……!

 

「探索し甲斐があるっ……!」

 

俺はワクワクとした気持ちで魔法の森へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

「これ食えんのかな……?」

 

いや、無理だな。見るからに危なそうだ。

たしか派手な見た目の奴は何か危ないんだったか。紅魔館の本で見た。

本当にあるんだな。こんな派手なキノコ。人里の八百屋とかじゃ見た事ない。やはり毒があるんだろうか。危ない危ない。ちゃんと普通のキノコを探してみよう。普通のキノコを。

それにしても……

 

「同じようなもんしかねぇじゃん……」

 

さっきから色は違えどみんな派手だ。

つまりそれ全部毒キノコじゃねぇか。やっぱり、この森で育ってしまうと毒素でも栄養にして成長してしまうのだろうか。

うーん、悲劇だな。このキノコは可哀想な歴史を持っているな。

そのままにしといてやろう。

素敵な見た目なのに恐ろしい毒をもつ彼をそっと見逃した。

 

……そういや、動物とかっていないのか?この森。

幻想郷には熊とか狼とかは見ないが、この森だから流石に……。

いや、でも木の実とかそれこそキノコとかそのままだったし、やはりいないのか?

なんだ杞憂か。

 

なんて安心した矢先、見てしまった。

 

「……!?」

 

そう、次の探索へとかかった俺の目に映ったのは、

無惨に切り取られた、キノコ。

 

そう、キノコ。

 

ーーキノコ。

 

「酷い……誰がこんな事を……!!」

 

無惨に切り取られたキノコの隣には、そのキノコと同じ種類であろうものの、子供キノコだった。

くっ……!こんな幼い時から両親を亡くして……彼はどう生きていけばいいと……!!

やはりいるのか!熊が!猪が!!穏やかな幻想郷だなんて思ってはいけない!

ここは常に危険と隣り合わせの幻想郷。いつ襲われてもおかしくはない。

だから、せめてもの慈悲だ。

悲しみの目を子供キノコに向ける。

 

「…………こいつ食えんのかな」

「食えないぜ?」

 

だよなぁー……見るからに危ないもん。紅白の水玉模様で今にも動き出しそうな見た目だもん。多分食べたら身長大きくなりそうな。え、なにそれ欲しい。

でも、魔理沙もこう言ってる訳だしここは退散、

 

「え、魔理沙……!?」

「おう!どうしたんだシオンこんな所で。あ!ついにお前も魔法に興味が出たか!!」

 

俺の隣には大きいカゴを背負った普通の魔法使いこと、霧雨魔理沙が立っていた。

 

「興味っていうか、好奇心による探検だな。お前も何してるんだ?ここ……で……」

 

普通に答えて、魔理沙がデカイ網カゴを背負ってここにいる理由も聞こうと思ったが、ふとそのカゴを見て戦慄する。

入っているではないか。散々毒持ってるなと危惧してきたあのキノコ達が。

可哀想な歴史を辿る可哀想なキノコ達をそっとしておいたのに、こいつは跡形もなく……!!

 

「食べるのか?」

「いやだから食べれねぇって!食欲旺盛か!」

 

魔理沙にツッコミを入れられた。うん、なかなかセンスいいな、こいつ。

うん、だとしたら何故収集なんかしているんだ?

 

「私はこれを研究の材料にしてるんだぜ」

「研究?何のだ」

「もちろん!魔法のな!」

 

 

何?魔法?

 

くっ……!鎮まれ、俺の好奇心!!

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

「じゃあどうぞ。少し散らかってるけどな」

「お邪魔します」

 

結果、好奇心には勝てない。

たとえ、少しってレベルではないほど散らかっていても。お邪魔してしまう。

だって、魔法の研究だぜ?そんなの興味を示さない方がおかしいって。

にしても、魔法の研究か……。俺が無知なだけかもしれないが、具体的にはどういう事なのだろうか……。

 

「なぁ、魔法の研究って一体何なんだ?」

「あー、まぁ、今からやるのは実験だな。見ての通り変なキノコを、すりつぶしたり、乾燥したり、色々してやると面白い反応が起きたりするんだ!それで何か色々作ってる!」

 

なるほどな……何となーく分かった。地味といえば地味だがただのキノコが面白い反応をするとなると何とも興味深い。

んで、それを応用して色々道具を制作してると。

そういや、家の前に「霧雨魔法店」なんていう看板があったが、やっぱりそういう道具を売っているのだろうか?何でも屋感もあったが。何でも屋……何すんだろ。異変解決とか?そこでふと、思い出す。紅霧異変の図書館の惨状。

 

「ん?じゃあお前の弾幕とかも、キノコ?」

「んな訳ないぜ……あれは私の能力だ。『魔法を使う程度の能力』。主に火と光の魔法を使えるぜ!」

「なるほどな……何て眩しい魔法使いだ……」

 

まぁ、何となくイメージが湧く。というか、ピッタリだな。

やはり魔法は使う人の本質が出るのだろうか?

そう考えると、さしづめ俺が使える魔法は……。

あまり明るくなさそうだな。自分で考えて笑ってしまうよ。

 

「あぁ、つまりその光と火の魔法でパチュリーの活動スペースぶっ壊したんだな」

「派手でなければ魔法じゃない。弾幕はパワーだぜ!!」

「なるほど……脳筋ね」

「違わい!!」

 

弾幕は美しさを相手に魅せるものでもあると聞いたが、図書館のあの惨状からするに多分美しさなんてなかったんだろうなぁ。

文字通り、「火力」だったんだろうなぁ……。

まぁ、派手な魔法は嫌いではない。男子はそういう生き物。

 

「んじゃ!私は準備に取り掛かるから適当にくつろいどいてくれ」

「あぁ」

 

にしても散らかってるなー……話してたから気づかなかったけど。

ふと散らかったテーブルの上の本が目に入る。

え、これ……

 

「パチュリーが探してたやつじゃないか……」

「ん?あぁ!早速紅魔館には通ってるぜ!あんだけ本があるんだ、借りるくらいはいいだろう?」

「……ちゃんと返せよ?」

「あぁ!安心しろ!死んだら返す!」

 

うん、ダメだこいつ。パチュリー可哀想に。変な奴に目をつけられたな。

テーブルの上に積み重なったーー多分、盗んだーー本を一つ一つ閉じて重ねて置く。ページがめくれてでもしてみろ。パチュリー激おこだからな。また図書館壊れるからな。気をつけろ。

 

「ん?何だこれ」

 

せっせと本を片付けると一番下から何やら勢いの良い字で色々書き込まれたノートが出てきた。

 

「……実験ノート?」

 

パラパラとページをめくっていくと、色々と図やら文字やらが書き込まれていて、何やら難しい式なども書かれていた。

これ、もしかして魔理沙が……?

だとするならば凄いなぁ。部屋に似てごちゃごちゃっとはしているがちゃんと実験結果を真面目にノートに書いてとってあるとは、

努力家なんだな、あいつ。

 

と、感心しているとふいにノートを取り上げられた。

 

「あ……」

「これは……見ちゃダメだ……」

 

少し俯いて、照れ臭そうに言う。

うん?何だ?いつも通りの元気がないな。

 

「何でだ?凄いじゃないか?」

「ともかく!あまりこういうのは見られたくは……」

「……あー、分かった。気をつける。すまんな」

「お、おう!分かればいいんだ!」

 

そう言い残し、また準備に戻って行った。

 

 

ーー魔理沙は努力家で、勉強家で、捻くれ者。

 

俺の探索日記に、そう書き加えといた。

 

 

 






盗っ人魔理沙ちゃん出番あるかな……
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