東方弔意伝   作:そるとん

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ちょっとしたオリキャラ登場です。


地底の鬼

 

 

 

人里で鬼を見つけて、ただいま尾行中。

何故このような状況なのか簡単に説明すると、

何やらここ最近では鬼が人里に住む血色の良い男性を攫っては、鬼が今活動の本拠地とする地下へと引き摺りこんでは勝負やら何やらをしている、みたいな噂が人里中を流れているらしい。比較的被害が出始めたのは本当に最近で、詳しいことは何も分かっていないらしい。大まかな話は甘味屋のおばちゃんから聞いたもので、おばちゃん自体も詳しくは知らないみたいだ。

ちなみに、この数日間で攫われた人は数人いるが、翌日には人里近くで倒れているーー具体的には眠っているーーらしい。

 

……これは非常に気になる。聞いてみれば鬼はかつては人間と共存していたというのだ。それが今や、鬼は地下に追いやられている。

鬼は好戦的な性格だとは宴会に参加していた数人の鬼と会って知っているが、何が目的で到底、鬼に敵うはずのない人間に勝負を挑んでいるのやら……。

人里の平穏を望むものとしては、見過ごすことは出来ない。

鬼にもそれなりに理由があるだろう。

しばらく尾行すると、かなりの山奥に来た。

鬼たちは歩みを止めたから多分ここだろう。にしても……ここから地下に?

鬼たちと少し離れた場所から目を凝らして見ると、何やら洞穴が見える。

……なるほど、あそこから。

 

案の定、鬼たちは洞穴の中へと入っていった。

 

あの先は、鬼の本拠地……。

正直、話し合いで解決出来る気がしないが、

覚悟を決めよう。

 

しばらくして、俺も洞穴へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「洞穴の中に大きい穴とな……」

 

どう地下に通じているか疑問であったが……。

うん、これは地下に通じてるわ。

ただ、底が見えない。果てしない闇のように思える。

これ、降りていいのか?

試しに、下に落ちていた小石を落としてみる。

 

 

…。

 

……。

 

 

…………イテッ……。

 

………。

 

 

……うん、大丈夫だろう。何かに当たる音したし。

まぁもっとも、誰かに当たった「声」だったが。

うん多分大丈夫だろう。

そう推測し、洞穴へと飛び、ふわふわと落ちていった。

 

 

 

 

 

……うぅーん、長い。

ひたすら暗いところを落ちていってるもんだから何だか気持ち悪くなってくる。

誰もいないのか?

え、じゃあ「イテッ」て誰の声……

 

「ちょ、ちょっと……!」

「ん?」

 

誰かいた。良かった〜、幽霊とかじゃなくて。

 

「う、上から石落としたのって……君?」

「え、あ、すみません。当たったの君だったのか」

「き、君だったのかじゃないよ!何でこんなに大きな穴なのに私に的中すんのさ!」

「運が良かったんだな」

「逆にねっ!」

 

緑色の髪をツインテールにした内気そうな子は一転して、プンプンと怒り始めた。いやだって誰かいるとは思わないじゃん。というか、この子どうやってここでずっと浮いてるんだ?

というか、ここで何やってるんだ?

暗くてよく見えなかったが、全体を見てみると凄い気になる見た目をしている。

 

「ちょ、ちょっと聞いてるの!?」

「桶……?」

「ん?……君、地上の人?」

 

物珍しそうに目の前の少女を見る俺から何かを察したらしい。

大方、俺の疑問を汲み取ったのか、少女は自己紹介をしてくれた。

 

「私は『キスメ』っていうの。釣瓶落としっていう妖怪なの」

「釣瓶落とし……?」

「そうなの!夜道なんて歩いていたら上から落ちてきて、頭に桶をぶつけちゃうんだから!」

 

じ、地味だな……。人を食っちゃうとかじゃないのか。地下だからって恐ろしい妖怪ばかりじゃないみたいだ。

 

「まぁ、今回はキスメが頭に石をぶつけたけどな」

「やかましいわっ!」

 

全体的に小さい彼女にツッコまれても微笑ましい感じにしかならないな。

地下も中々楽しいところではないか。

ただ、今回ばかりは目的は探検ではないんだ。

 

「すまない、キスメ。また今度来た時にゆっくり話そう」

「えっ、えぇ、ちょっと!」

 

手短にそう言って少しスピードを上げて、地下へと向かった。

 

「……なんか、私いい感じに逃げられてない……?」

 

逃げてない。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

キスメと別れてしばらくすると、前方からこちらに向かってくる人影が見えた。またしても少女のようだ。

ここ結構人がいるのな。

距離が近くなると少女の方から話しかけてきた。

 

「ん?誰?」

「あ、こんにちわー」

「え、あ、うん、こんにちわー」

 

さ、地下に急ご、

 

「いやだから誰?」

 

逃げられなかった。

 

「え?あぁ、すまない。俺はシオンっていう人間だ」

「地上の人?何かようなの?」

「あぁ、ちょっとな。ところで君は?」

「私は『黒谷ヤマメ』!土蜘蛛っていう妖怪さ!」

 

へぇ、蜘蛛か。金色の髪を後ろで束ねて、ふわふわとした衣装を着るその少女はとても蜘蛛に見えないが……。

あ、もしかしてキスメをあそこで吊るしてるのこの子じゃ……。

 

「それにしても珍しいね。地下に地上の、ましてや人間なんて。気をつけてね?」

「そんなにヤバいのか?」

「ヤバいっていうか……まぁ人間が立ち寄るような所じゃないよ」

「そうか……分かった。気をつけるよ」

「うん!それじゃあまたね!」

「あぁ、また今度話そう」

 

キスメとはまた違った和みを持ったヤマメは、さしづめ地下のアイドルのようだ。

やっぱり地下って面白いのでは?すでに2人に出会ったが、その2人が既に面白い。

地下に着いたら着いたでこれまた面白い事に……

 

「あ、ねぇ!シオン!」

 

上からヤマメの声がした。

 

「地下に着いたらね、多分気に障るような子がいるかもしれないけど!わざとじゃないから気にしないであげてね!」

「……?あ、あぁ、分かった」

 

面白そう。

ほんのちょっとだけ目的を忘れかけていた。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

ヤマメと別れてから地下まではすぐだった。

地下が近づくにつれてポツポツと淡い灯りが見えてきた。

少しだけ長いような気もしたが、ようやく地下に降り立った。

 

「おぉ……」

 

例えるなら夜の歓楽街。地下なので日光が当たらない代わりに家屋や何かのお店ならの灯りがどこか艶めかしく、幻想的な都を映し出していた。

地下だというから暗いイメージがあったが、繁栄しているではないか。

こういう雰囲気、何か好きなんだよなぁ……。

……ん?誰かいる。

地下の全体図に見惚れていたため、手前の橋で釣りをしている人に気づかなかった。

まぁ、探索でも観光でもないからスッと通ろう。

橋の下に流れる川に釣り糸を垂らしている少女の後ろを通っていく。

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

無理でした。

 

「はい?」

「はい?じゃないわよ。なに、何食わぬ顔で通って行こうとしているのよ。妬ましいったらありゃしないわ」

「ね、妬ましいのか……」

 

何だか面白いぞ、この人。ヤマメの言っていた奴はこの人の事だな。一瞬で分かった。

ともあれ、ここを通してもらえないとは……困った。

 

「まぁ、そうだな。挨拶くらいはしておくべきだったな。俺はシオン。地上からやって来た人間だ」

「あら、地上の人間が地底に何か用なの?」

「あぁ、鬼と何やら起きてるみたいでな」

「勇気があるのね。妬ましいわ……」

 

ほ、褒められたのか?

とにかく、通してもらえないだろうか。というか、この人は一体?

 

「私は『水橋パルスィ』よ。橋姫をやっているわ」

「橋姫……!?」

 

知ってるぞ。昔、本で読んだ事ある。

他の女に夫を取られた女性は、あまりの憎悪から川に身を投じ、生きながら鬼となって恨みを晴らしたと伝えられている……妖怪?鬼?

ともあれ、そんな伝承があるレベルの存在だ。

だとするならば、パルスィはこの橋の門番的存在なのだろうか。

自分以外の人を通すわけにはいかない、と。

なら……力尽くで通るしか……

 

「まぁ、止める理由も無いんだけどね」

「あぇ……そうなのか」

 

少し拍子抜けした。

 

「今や橋姫なんて伝承よ?意地張ってここを通さないなんて事しないわ」

「そ、そうなのか。それでも大変だな、ここにいなきゃいけないなんて」

「ホント、妬ましいわ」

 

もうもはや妬ましいの意味が分からなくなってきてる。

とりあえず、彼女は嫉妬が生み出した存在だから、とりあえず妬ましいのだろう。そうしておこう。

ここに来て、出会った人は3人目だが……地底。悪くない。

 

「ほら、挨拶も済ませたし、とっとと行きなさい」

「ありがとう。また今度ゆっくり話そうか」

「……え、は、はぁ!?私と!?」

「あぁ」

「へ、変なの!本当にもう、妬ましいわ!なんか妬ましいわ、あなた!何でこんな私なんかと……!」

「強いて言うなら面白そうだから、だ!」

「っ……!!も、もう!早く行きなさい!!ほんっとにもう……!妬ましいわぁ……!!」

 

嫉妬姫は好意に弱いの事を確認したところで橋を後にした。

後ろから「あ゛ぁ゛〜!もう釣れないじゃないのっ!」と変わらず荒れているパルスィを背後に、地底へと足を踏み入れた。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

さて、お目当てのやつはいるかな……。

地底は中々に賑わっていて、繁盛しているらしい。もっとも、そのほとんどは鬼だがな。ただ、その鬼もどこか友好的というか、好戦的というか、地上の人間を珍しがっているのかよく話しかけてくれる。

うん、聞き込みしやすくて助かる。

早速、威勢の良い男の鬼が話しかけてきた。

 

「おう!にいちゃん!こんな所に何の用だ!?俺たちと一勝負しに来たのかい?」

「それも楽しそうだが、すまない。少し違うんだ」

「んだよぉ〜……」

「あぁ……そんな気を落とすな。少し聞きたいことがあるんだ」

「聞きたいこと?」

「あぁ、ここ最近、地上の人間を攫ってるっていう鬼について何か知らないか?」

 

舐められないように、なるべくいつもの態度で話す。

幸い、鬼は器が大きいみたいで、特に俺の態度が気に障らなかったらしい。

それに鬼と言っても見た目は人間と変わらない。血色の良い肌色にツンツンとした黒髪。二本の角は鬼であることを表しているが見た目は好青年だ。中々にイケメンである。妬ましいわ。ぱるぱる。

それでもって、あまり広くない地底であるが故に、情報はすぐに手に入った。

 

「あぁ!知ってるぜ!地底の若い5人の鬼が人間相手に力比べをしているみたいでな!ここ最近じゃそれで賭けなんかしてる奴らもいる!全く……穏やかじゃねぇよな」

 

鬼のお前がそれをいうか。ともあれ、中々に有益な情報を得られた。

それを踏まえた上で疑問が浮かぶ。

 

「何で人間相手なんだ?鬼同士でやればいいじゃないか」

「昔ぁ、人間達と良くやりあってたんだがよ、種族の違いとかもあって力の差があったんだよ」

「あぁ、それで人間達は負け続けたと?」

「あぁ、するとな、力じゃ敵わねぇって思い始めた人間は、狡い手を使うようになってきたんだ」

「狡い手……?」

「あぁ、俺たちには力があるが、奴らにゃ知能があった。うまい具合に嵌められ続けた俺らは人間との関係が崩壊し、逃げた結果地下に追いやられた」

「そうか……んで、ここ最近になってその風習がまた復活しつつあるのか」

「あぁ、面白がってな。今日もやるみたいだぞ」

 

鬼は正々堂々勝負したい性質があるらしいな。鬼の好戦的な性格と、人間の他の種族より発達した知能がもたらした悲劇がこれか。まだ、悲劇程にはなっていないが、いずれなるだろう。

 

「鬼子母神もあまりよく思ってなくてな……」

「鬼子母神?」

「鬼達の長だ」

「ふむ……長がね……」

 

大方分かった。本来好戦的な鬼からしたらこの現状はつまらなかったのだろうな。だから屈強な人間を連れてきては勝負をしているみたいだ。

正々堂々と勝負をしたいんだ。

だが、人間が勝てるはずないだろうに。

実際、鬼の長がよく思ってないということは鬼にとっても、今や良い事ではないということだ。

 

「何でそんな風習が出来たんだ?」

「昔な、鬼に勝った人間がいたんだよ」

「マジで?」

「おう。何でも鬼に拳で勝っちまったっつー奴でな。それを知った鬼達は人間とやり合うのも楽しそうだ、と考え始めたんだ」

「全ての元凶人間じゃねぇか……」

「俺も良く戦ったもんよ!だから兄ちゃんともやりてぇなぁ!」

「あぁ……要件が終わったら存分にやってみたいな」

「要件?」

 

俺の、どこかにある好戦的な俺がちょっとだけ騒ぎ始めていた。

だが、今はこの鬼とやってる場合じゃない。その若者の5人による誘拐を止めさせねばならない。

 

「その鬼を止めに行くんだよ」

「マジか!?お前も好戦的じゃねぇか!」

「ちっげーよ。その誘拐がちょっとだけ人里で問題になりかけてんだよ。大ごとになる前に止めさせておきたくてな」

「気をつけろよ?若いだけあってそこそこ強ぇし、盛ってるぜ?」

「なるべく穏便に済ませたいんだがな……」

「そりゃ無理な話だぜ。何かあったら言えよな」

「頼もしいな……助かる」

 

本当に、ここの人は心優しいみたいだ。このアットホーム感はとても良い。

これが終わったら地底を全力でPRしてやろう。

 

「じゃ、俺はそろそろ行くよ」

「おぉぉ、ちょっと待て!せめて名前だけ言ってけ!」

「あぁ、俺はシオンだ。無茶苦茶弱い人間だ」

「俺は『悪鬼(あっき)』だ!って……お前本当に大丈夫かよ?」

「あぁ、大丈夫だ。何かあったら頼むよ、悪鬼」

「おう!」

 

なんて眩しい笑顔だ。妬ましい。ぱるぱる。

そんな好青年な鬼と挨拶を交わし、その若者を探しに……

 

「お、始まったみてぇだな」

「へぇ……」

 

行く必要もないみたいだ。

ジャストタイミングですぐ目の前で何やら騒がしい事が始まろうとしていた。

 

 

 






シオンと悪鬼、仲良くなりそう。
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