「あばばばばば……!!」
なんて、漫画でしか聞いたことないようなビビり方でその光景を壁の端っこから見ていた。
状況を説明するとだね、迷いの竹林の入り口にはこの竹林を迷う事なく永遠亭まで送り届ける案内人のような人がいるらしい。そして何があったのかは知らないがその永遠亭への案内人と永遠亭の主人「蓬莱山 輝夜」は何やら仲が最悪に悪いらしい。最悪に悪いというマイナスにマイナスを足していく感じ。決してプラスにならない。
みたいな説明を鈴仙からコソコソと聞いた。
それはその通りで……
「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「うっさいわね!!返り討ちにしてやるわぁ!!!」
目の前には激しく動く爆炎と品性のかけらも何処へやらなかぐや姫がお互いに睨み合って……うん、殺し合っていた。
比較的平和だと思っていた幻想郷においてまさかの殺し合いであった。それも理由が仲が悪いからとかいう、これまたとんでもない。
仲が悪い故にある程度険悪な態度をとることは分かるが、もはや待ってましたと言わんばかりに死ねと声を荒げて本当に殺しにかかっているその様は到底幻想とは思えない。
でも、何故か、心の底から険悪なムードは感じられないのである。
とはいえ、だ……
「ねぇ、鈴仙…どうしよう……」
「しばらくしたら収まりますよ」
「マジかよ。これ絶対死人が出るじゃん」
そう、絶対怪我を負うに違いな、
「そうだ!死ぬじゃん!」
「え、え?どうしたんですか、急に……」
「あの、炎の人死なない!?」
そう、何かが起こると分かっていながらこの喧嘩を止めようとした理由は輝夜と仲の悪いその案内人の存在だ。
輝夜は不老不死である事がさっきの会話で分かっている。
つまるとこ、あの燃え盛る炎の中心にいる人は絶対死なない人に喧嘩をふっかけては殺し合い紛いのようなことをしている。
このままでは本当に死ぬぞ!?と思い戦場と化した竹林に向かったのだが、その爆炎は未だに衰えていることはない。
激しい喧嘩が始まって十数分は経っているはずだ。
とんでもない妖力があるのだろうか……。
なんて考察していたら鈴仙が口を開いた。
「あぁ、妹紅さんも不老不死なんですよ」
「あぁ、不老不死なのか……」
「はい!」
「へぇ……え、不老不死!?」
「リアクションが遅れてますね……」
俺の思わず出た反応に鈴仙は苦笑交じりに言った。
いやだって、当たり前の事のように聞いたけど、え、何?
あの案内人も不老不死らしい。名前はどうやら妹紅っていうか前にも聞いたな。忘れかけていた。
じゃねぇ!!え、何!?不老不死ってそんなに多いの!?幻想郷!?
うん、あぁ、そうか。
ここ幻想郷かぁ……。
大抵がこれで済むことに若干恐怖を感じ始めている。
「て事は妹紅さんも蓬莱の薬を?」
「そうみたいですね」
「じゃあ、何かしら月と関係があるのか……」
「何でもかぐや姫と関係のある貴族の生まれとかいう噂があったりします……」
「かぐや姫と関係のある貴族……あ、まさか!」
ハッと思いつく。
かぐや姫に難題を課せられた5人の貴公子。貴族。
かぐや姫に迫った5人の貴公子。
その事がふっと頭を過る。
かぐや姫と関係のある貴族は有名なところで言えばその5人の貴公子。この貴公子はいずれも難題を成功出来る事なく、恥をかくだけで済む人もいれば、悲惨な死を遂げた人もいる。もし、これが関係していれば妹紅が輝夜を恨む理由は明白になったも同然。
あとは名字が分かれば……
「なぁ、鈴仙。妹紅さんの名字ってなんだ?」
「えと、藤原です。藤原妹紅」
「ふっ、藤原ァ?」
いかにも貴族って感じの名字だが……。
どういうことだ?
「ど、どうしました?難しい顔して……」
「ん?あぁ、考え事……」
隅っこで大きな庭で行われている怒号飛び交う壮絶な喧嘩を見ながら考えていた。
どういうことだろうか。
5人の貴公子の仲に、
「藤原」なんて名字のやついなくないか?
そもそもかぐや姫自体が言わば創作物語。そんな昔話が幻想郷で形となって存在しているのは不思議ではないが……いずれも関連性はある。
かぐや姫なら「輝夜」。鈴仙は名前全てが月に関連しているようなものだ。
その中で輝夜と険悪だとかいう存在が全くの無関係なわけがないだろう。
名前からして日本人っぽいし、貴族の生まれももしかしたら本当だ。
貴族で藤原……。
「うぅ〜ん……」
「シオンさんも考察で悩むことあるんですね」
「ちょっとばかし難題だな」
藤原、道長…道真…違うか。
まず、作中に藤原なんて人物は登場してない、
と、ここまで考えてふと閃く。
「あ」
「え?ど、どうしました?」
「蓬莱…玉の枝……」
「ん?んん??」
俺の気持ち悪い独り言に首を傾げる鈴仙を尻目に1人連想ゲームのような事が思い浮かぶ。
「竹取物語」から連想していった末に、辿り着いたもの。
その人物のモデル。ちなみに、それは輝夜の名字も関係している。
かぐや姫の難題の1つ、最も有名な「蓬莱玉の枝」というものがある。まぁ、すっげー珍しい植物なんだって。適当だけど。それを持ってこいという試練。
その難題を課せられたのは貴公子「車持皇子《くらもちのみこ》」。
まぁ、結果としては偽物の玉の枝を作って、それを見破られて自業自得の恥をかいた貴族だが、
一体何が関係しているのか。別に輝夜の名字からただ連想しただけではない。
俺が思いついたのは、車持皇子の"モデルになった実在した貴族"。
その名は、「藤原不比等」。時代は飛鳥時代くらいだったが不老不死の妹紅ならそれも考えれる。
まぁ、何となく分かった。
長々と考察して分かったのは輝夜との仲の悪さの原因か……。
うん、すっきり。
「おや、考え事終わりましたか?」
「あぁ、おかげさまで」
「こっちも終わりそうですよ!」
そんなこんなで喧嘩に意識を移してみれば、本当に終わりそう。
何もかも……。
喧嘩も人生も。
まぁ、不老不死と分かればどうって事はない。
雰囲気的に最後の必殺技を出しそうである。
が、不老不死なら大丈夫だね!自己暗示である。
ついていた膝をスッと伸ばし立ち上がる。
「あれ?行くんですか?」
「何か被害がデカそうじゃん。逃げようぜ」
「そ、それもそうですね」
俺らと向かい合うような位置にいる妹紅は、不死鳥フェニックスのようだった。炎の翼を広げ、燃え盛る炎は消えることを知らない。
そして、彼女も白髪だった。日本人とは思えないというか、人間とは思えない見た目だが、炎の翼をはためかせる姿は大変格好良かった。白い髪の毛が映えるなぁ……
ともあれ、何か危なそうな雰囲気なんで逃げよう。
鈴仙を連れて永琳さんのいるところへ向かおうとした時に、妹紅の張りのある声が聞こえた。
「不滅!!『フェニックスの尾』!!」
突如視界を埋め尽くさんばかりの炎で出来た弾幕が輝夜を狙った。
うひゃあ…予想的中…こんなん避けれんのかよ……。
よくよく見てみればそれだけでは飽き足らず、輝夜を的確に狙う大きな紅い弾幕も見える。
あれ全部見切るのか…弾幕ごっこは到底出来そうにないな……。
降り注ぐような弾幕は止まず、輝夜を落とすまで止まらない勢いであった。
輝夜を狙う一際大きい弾幕も心なしかスピードが上がっている気がする。
……不味いな。
「鈴仙、すぐ逃げよう」
「えっ!?はっ、はい!」
危険な予感がして鈴仙の手を引いて少し走った。
今いる長い縁側はとても危険だ。何せ庭が近すぎる。それもそうか、縁側だもんな。
とりあえず、被害がこっちに来る前に逃げ……
「あっ!!」
「え、えっ!?嘘だろ!?」
案の定だった。
真っ赤な大きな弾幕は止まることを知らず、こちらに一直線に向かっているではありませんか!
地面にぶつかってから消える弾幕を見て、ヤバイかもとは思ったが。
マジでそうなるもんなの?
とりあえず跳ね返せるかっ……!?
「うぐっ……!」
「し、シオンさん!逃げてください!!今のシオンさんの体力はかなり少ないんです!」
「や、休んだはずだが……」
「実を言うと、怪我が相当深手なんです!」
「マジか……」
鬼子母神サマよぉ……やってくれたな……。
何がこれで大丈夫だ。大丈夫じゃねぇじゃん。もうお前らの手当てと根性論は信じないからな……!!
そして、走りながら追い討ちをかけるように鈴仙が言った。
「それに妹紅さんの炎は強力です!衝撃波では消えないかと……」
「水がありゃあいいのにな……」
つくづくそう思った。
クソッ……このままじゃ鈴仙もタダじゃ済まなそうだな。
弾幕から走って逃げれるのも体力的にそろそろ無理そうだ。
どうにか……
どうにか、特大の炎を消す程の力があれば……。
何か……何かないのかっ……!!
ーー心の冷たさなら誰にも負けないだろ?お前。
あぁ!?今出てくんの!?お前御構い無しじゃん!
今の気持ち悪い声は、数日前からお世話になってしまっている心の中にいる昔の俺。簡単に言うとこんな感じなのだが、その昔の俺は何かとあれやこれや嗾けてきては人の心を貪ってくる。
そして、数日前に覚悟を決めたからもう来ないだろうと思っていたら、まさかこんなシーンでも出るとは。出番欲しいのか。
ーーそんなんじゃないよ。お前の「冷たさ」があればあんな炎どうってことはない。
あまり、お前は頼りたくはねぇんだよ!
何か危ない方向へ持ってかれそうでな!
ーー鈴仙を守るためだと思えよ。
守るため……?
「はっ……!」
「そ、そろそろキツイですね……」
「鈴仙の能力か……」
「あのまま行ったら師匠にも被害が出ますからね」
波長を合わせる能力で廊下の長さを長くしているみたいだ。ホント、応用力凄いわ。
だが、感心している暇のないな。心なしか鈴仙も疲れてきているみたいだ。
覚悟を…決めるしか……。
と、思ったら、背中をトンと押された。
そのまま、俺ら前につんのめった。
「え?鈴仙!?」
「……こういうの、慣れっこですから……」
「いや、まてまてまてまて!!?!?」
鈴仙は、意を決したかのように、はたまた何かを悟ったかのように、すっごい遠くを見つめた顔をしていた。
いや、慣れちゃあかんやろ!!
何の抵抗もする素振りを見せず、鈴仙は弾幕を真正面から迎えようとしている。
「クッ……ソがぁ!!」
残り僅かな妖力を、はたまた憎悪を貯めた。
ラストチャンスって事で……!!
無論、あいつも出てくるのだが。
ーーふぅん、
やっぱり頼るのか。
チッ、とイラつきを表した舌打ちをして、力を込めるように吠えた。
「うっ、るせぇえ!!!!!!」
「え……?」
ーー刹那、鈴仙の術が解けたかと思えば、
黒く、くすんだ刺々しい氷が、縁側の奥まで広がっていた。
そして、お約束。
ここで、俺の意識は途切れた。
もこたんって響きかわいいよね。
なんか会話よりシオンの考え事の方が多かったな……
次回はなるべく会話ふやすね。