東方弔意伝   作:そるとん

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久しぶりの平穏

 

 

 

いくらか強くなった日差しを浴びながら、山から吹く涼しい風を感じていた。

前にも言ったが日当たり良好、風通し抜群な自宅もとい、甘味屋『久榮』にて、俺は平和な1日を送っていた。

 

「何もないって平和だなぁ……」

 

人里の子供達の声を聞いて、今までの事を振り返っていた。

ここに来てまだひと月も経っていないのだが、濃い日々が続いていた。

変な力ついたり、変な奴が現れたり、俺が変になったり。

まぁ、そんな濃い日々も最近落ち着いてきている。

目を瞑りながら、春の陽気を感じていた。

そうしていると、ふいに聞き覚えのある声がした。

 

「あら、本当にやってるのね。甘味屋」

「お〜、霊夢。なんだ、団子か?」

「…1つだけ貰えるかしら」

「あいよー」

 

ふわふわ飛んでと家の隣に降り立ったのは、博麗の巫女こと、霊夢だった。

お久しぶりな気がする。実際そうかな。

霊夢は外の椅子に座り、俺は家の中から団子を持ち出した。

思えば1番最初に俺を助けてくれた恩人だったなぁ…1番良い団子とお前に饅頭をやろう。

 

「はい」

「ありがとう」

「んで、なんだ、新聞か?」

「まぁ…そうね。中々顔出さないと思ったら甘味屋開業なんて、気になるでしょ」

「たしかに、ご無沙汰してたな」

 

ご無沙汰なのは俺の好奇心故なんだ。許してくれ。

たまには会いに行こうとは思っていたが行く先々で気になるものがあるもんだから。

だが、久々に会えたのだ。ゆっくりして行って欲しいものである。

というのも、願望で。

 

「もう食い終わったのか……」

「お腹空いてたんだもの」

「…ご飯は?」

「今日はやる気出なかっただけよ」

 

こいつ、次俺が神社に行く時は死んでそうで怖い。

餓死してないか非常に心配よ。ぼくしんぱい。

一応、食器を片付けようと立ち上がる。

と、霊夢はふいに話しかけてきた。

 

「あ、シオン」

「おぅ、どうした、なんか改まってんな」

「あんた、地底の鬼と関わったってね」

「…………何のことやら」

「紫から聞いたわ」

「すいませんでした」

 

しくった。完全にバレてないものだと思ってた。

思えば地底も幻想郷だ。管理者たるもの、知ってて当然であった。

霊夢の言わんとしている事も分かる。皆まで言うな。

つまりは『私の仕事を奪うな。ただの甘味屋風情が』だな。

そこまで汲み取った俺は言われる前に謝っておいた。

 

「ほんと、やめてよね。」

「はい、滅相もございません…」

「次からは私も頼りなさいよ」

「はい、もう仕事は取りま…え?」

 

頼りなさい…?

仕事を取らなじゃなくて?

 

「あんたの事だから何かあったら絶対首突っ込むでしょ」

「えっ、そんなことは……」

「紅魔館の一件といい、ね」

「……そうだな」

「私これでも本業巫女よ?頼ってちょうだい」

「それも、そうだな」

 

思えば今まで1人だった。鬼退治も紅魔館も。

そこまで考えてふと思った。

人の頼り方知らないな、俺。

幻想郷に来る前も1人だった事を思い出した。

そう思うと、今はすごい恵まれているのだと気づく。

 

「ありがとな」

「それはこっちのセリフよ。住民を守ってくれたんでしょ?ありがとね」

「あー、どういたしまし、て?」

 

褒められることに慣れてないものだからぎこちない返事になる。

けれども、どこか暖かい気持ちになる。

それは春の陽気のせいなのか、はたまた感情の問題なのか。

どっちにしろ、気分は良かった。

少しだけ、幻想郷に馴染めた気がした。

 

しばしば、2人で春風をゆったりと感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

あの後霊夢は用事があったみたいですぐに何処かへと飛んで行った。

高い位置にある太陽とさっきの出来事も加えて更に暖かくなった陽気の中で、俺は少しウトウトしていた。

もう、客も来ないでしょ……大々的に開店をニュースにしている訳ではないし……

少し、寝……

 

「あら?シオン?」

「んぁ………おっ、咲夜?」

「えぇ、咲夜よ。それより何店の前でウトウトしてるのよ」

「春だからな…」

「意味わからないわ……」

 

またもや、家の近くに降り立った少女は巫女ではなく今度はメイドだった。

吸血鬼のメイド、咲夜。

この方も中々にご無沙汰である。

 

「何であなたがここに?」

「あぁ…お前んとこは新聞取ってないのな…」

「新聞?取っているわよ…あぁ、でも今日は見てないわね」

「ならそこに全部書いてあるぞ」

「見ておくわね」

 

と、ここまで会話を終えたのだが咲夜は一向に座ろうとしない。

 

「座んないのか?」

「えぇ、今日はお菓子を少しだけ買いに来たのよ」

「そうか、何がいい?」

「あら、シオンがやってくれるの?」

「まぁ、そう言うことになるな。全部新聞だ」

 

口で説明しても早いのだが、どうせなら射命丸の新聞もたまには煽ててやろうと思う。

ささっと立ち上がり家の中へとお菓子を取りに行く。

吸血鬼姉妹の事だ。洋風なお菓子だろうか。一応品揃えあるぞ。

そう思っていると、咲夜が口を開いた。

 

「今日はね、和菓子が欲しいの」

「和菓子?クッキーとかじゃなくて?」

「お嬢様が急に和菓子を食べてみたいって言ったから…」

「ほぉ…だからわざわざ買いに来たのか……」

 

思えば、洋菓子なら咲夜が作る。十分の腕前があるし、なんならお店を開けるレベルだ。

この店の菓子がとてつもなく上手いというのもあるし、度々買いに来てたというのもあるが……

そうか、そうか、和菓子か。

 

「そうなの…今まで使った事ないから…」

「まぁ、それもそうか…待ってろ、今すぐ……」

 

ふと、思い出した。

なぜか思い出した、不憫門番こと美鈴を。

何かしら関連した事から思い出したとは思うのだが、多分紅魔館の事を思い出したら、美鈴も出てきた。

そして、その美鈴との約束もぼんやりと思い出した。

 

ーー『いつか…労ってやろ……』

 

……ちょうどいいな。

 

「咲夜」

「なに?」

「紅魔館に行ってもいいか?」

「……へ?」

 

えっ、そんな反応くる…?

まぁ、聞けよ。

 

「いや、な?一度作り方教えればわざわざ通う事もないだろ?」

「まぁ…たしかにそうね……」

「じゃあ準備するから先に行っててくれ」

「いや、一緒に行くわよ…やけに行動力高いのね……」

「あぁ……何となく楽しみだからな!」

 

本音は美鈴の生存確認である。

理不尽に殺されてないか心配である。

まぁ、久しぶりだから楽しみってのは嘘ではないけどな。

ともあれ、咲夜に無理をさせないためにも、出来る限りで教えようと思う。

それと行動力が高いのは元々でな。

家の鍵を全て閉めてーーまぁ危険な事はないのだがーー店の扉の看板を閉店中にする。

 

「さ、行くか」

「えぇ、ごめんなさいね」

「おう、気にすんな」

 

いざ、久しぶりの紅魔館へ!!

 

どうか生きていてくれ…!

美鈴……!!

 

 






久しぶりに紅魔館との絡みになるっ…!!
霊夢さんの出番もうちょっと、待ってね…ごめんね…
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