東方弔意伝   作:そるとん

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お久しぶりです…!!
待たせてごめんなさい!!!


久しぶりの温もり

 

 

 

霧の湖へと向かう際、沈みかけてた太陽の高さはより低く、より光を薄くし、空は紺色を増していた。

俺の家から飛んで数分、目の前には紅く、決して趣味がいいとは言えない大きな屋敷があった。

 

「着いたわよ。久しぶりに来たかしら?」

 

そう言ったのは、今回の目的地『紅魔館』の完璧で瀟洒な従者

十六夜咲夜。

ふと思ったけど、名前無茶苦茶かっこいいな。

と、まぁそんな完璧メイドに和菓子の作り方を教えるために、今宵は紅魔館にまで馳せ参じた次第である。

 

「あぁ、本当に久々な感じするよ……門番はやっぱ外なんだな……」

 

今回、密かに抱いていた第二の目的、『門番の生存確認』は到着と共に達成。

それでもってバッチリ門の前で寝ていた紅魔館の門番、美鈴は咲夜のナイフがバッチリ刺さり、

たった今生存確認したばかりなのに絶命まで見届ける羽目になった。

なんか可哀想だから後で和菓子をあげよう。

なんなら一緒に食べよう。

そんな事を考えながら、紅い屋敷へと入った。

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーー

 

日が暮れたばかりということもあって、夜に活動するレミリア達はまだ起きておらず、玄関からキッチンまで誰一人会うことはなく、屋敷全体もどこか静けさがあった。

 

「前とは雰囲気が全然違うな……」

「まだお嬢様も妹様起きてないもの。起きたら騒がしくなるわよ」

「その前に完成できるといいな…」

 

黄昏時の紅魔館は心地よい静けさがあるのだが、どこか寂しさもあるのは確かだ。

ただ騒がしくなる前にやることやっておかないとろくに作業が進まないのは目に見えている。

咲夜の苦労も考えて迅速に済ませてしまいたい。

そんな思惑の中、俺と咲夜は和菓子作りを始めた。

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

 

「いや、俺いらなかったんじゃないの……?」

「そんなことないわよ」

 

俺の卑屈に咲夜は苦笑いして返す。

が、ただ本当に卑屈になるレベルで紅魔館のメイドは完全瀟洒であった。

おかげで騒がしくなる前に大方終える事はできた。

教える事も全然なかったけど。

 

「ともあれ、作り方が分かったし、無事完成したし。ありがとうね」

「もはや談笑しながらお菓子作りしてただけだけどな……まぁ、どういたしまして」

 

素直な感謝にすら素直に対応できてない……。

思わず苦笑いに返答してしまう。レミリアは本当に良いメイドを持ったもんで……。

机に置かれた団子やら饅頭やらの出来栄えをみてはそう感心していた。

 

「それじゃあ、無事完成もしたし、俺は帰るよ」

「えっ、帰っちゃうの?」

「まぁ…長居するのも迷わ」

「大丈夫よ!それにほら、外ももう暗くて危ないわよ」

「そ、それもそっか……」

 

善意のつもりで即帰宅しようかと思ったが咲夜がやけに威圧感とともに引き止めるものだから、つい気圧されてしまった……。

どうせなら食ってけということだろうか。

あ、それに久々にレミリア達とも話ししてみたい。

 

「じゃあ…お言葉に甘えて……」

「ベッドも準備しておいたわよ」

「えっ、いや早くね…!?というか泊めてくれんのか……」

 

一体どんな忍術を使えばベッドが一瞬で用意できるのか不思議でならない。

それとも、あれか、咲夜の能力か。そういえばそうだ、俺は咲夜の能力を知らなかった。

それは今夜にでも聞いてみよう。どうせ泊まるんだし。

 

「それじゃあ、私はそろそろお嬢様達を起こしてくるわね」

「そうか、じゃあ俺は客室にでも行ってるよ」

 

そう言って咲夜と俺はキッチンを後に……

 

「さくやぁ〜……私の服どこに……え?」

 

しようと思っていたらドアがふいに開いた。

その向こう側にはとてもお嬢様という言葉が似合わない、寝癖がつき髪はボサボサ、挙句下着姿で、彼女は立っていた。

紅魔館の主人で咲夜がお嬢様と呼ぶ人物、

レミリア・スカーレットであった。

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

 

「お嬢様、いつまでカップに口をつけているのですか」

「…………」

「もう紅茶入ってませんよ」

「………ひょあっ!?」

「あ、帰ってきた」

 

まさか咲夜がタメ口でレミリアに突っ込むとは……。

そのレミリアはというと放心状態でひたすら紅茶を飲んでいた。

紅茶が無くなっても何故かカップを口につけていた。

まぁ、それもそうか……。

 

「あの…ピンクの下着とか見てないから……」

「見てるじゃない!!!」

「あ、やべっ」

 

秒でフォロー失敗した。

なんなら見てましたって言ったようなもんだった。

もう、どうしようもない。触らぬお嬢様に祟りなし。

 

「大丈夫ですよ、お嬢様。可愛らしい下着で…」

「いやぁぁぁーーー!!」

「お嬢様ーー!?」

 

もはや、お嬢様のカケラも無くなってきてるな。

レミリアは悲鳴をあげたかと思えば、今や隅っこで「うー…」と言いながら頭を抱え、縮こまっている。

いや、「うー☆」か。

……冗談はさておいて。

 

「まぁ…出会い方はともあれ、久しぶりだな、レミリア」

「……えぇ、ホント。もう少しロマンチックに会いたかったわ」

「そ、そうだな」

 

少し涙ぐんだ目でこっちを睨みつけて、そう言った。

ロマンチックね……今更お嬢様感出さなくても…。

いや、久しぶりに会えたのだ。理不尽こそあれど俺に精神的ダメージはない。

時間が経てばすぐ忘れる。だってレミリアだもん。

どこか失礼な事考えていると、半ば忘れかけていた和菓子を咲夜が持ってきた。

 

「お嬢様、これで元気でも出してください」

「…あら、和菓子!買ってきたのね!」

「いいえ、作りましたわ」

「作った事ないから作れないんじゃないの?」

「シオンに手伝って貰いました」

「しっ、シオンに…!?」

 

なっ、なんだその反応は……。

そんなに根に持っているのか。そんなに驚く事ないじゃないか……。

レミリアは椅子に座り直したはいいが「へ、へぇ〜」とかいいながら一向に食べない。

や、やっぱ嫌なのか…?

 

「食わんの?」

「……シオンが作ったのってどれかしら」

「え?…あ、あぁ、まぁ、俺が作ったのは右端の団子くらい……」

 

ここまで露骨に避けられると流石に傷付く……。

まぁ、下着見られたショックは相当大きいのだろう……。

そっと傷付いた心を閉じ込めるように、目も閉じて、情けなくぽそぽそ言った。

 

「あの…そんなに嫌なら、無理して食べなくても……」

「へ?もうはべひゃっははよ」

「え、もう食べちゃったの!?」

「よく聞き取れたわね……」

 

もごもごともう食べちゃったという、お嬢様にしては端ない返答に驚き、目を開く。

聞き取れたことに咲夜も呆れ混じりに感心してた。

と、目の前にはハムスターのように口をもごもごさせたレミリアがいた。

レミリアの前に置かれた皿を見てみれば綺麗に右側の団子だけ無くなっていた。

つまり、俺の作った団子だけ。

 

「お、お前……」

「んっ、んんっ!…なによ」

 

少し苦笑いして俺はそう言った。

レミリアは喉を詰まらせながら団子を飲み込み、少し恥ずかしそうな顔でこちらを見た。

もう、ここまでされると流石に気づく。

レミリアの気持ち。

そして、レミリアの気持ちを汲み取って、率直に問うた。

 

「お前…そんなに……」

「………う…うん…」

「下着見られたの嫌だったの?」

「違うわい!!」

 

違ったっぽい。

 

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

 

「おいしかったわ!ご馳走さま!」

「あぁ、お粗末様でした」

 

出会った時の機嫌は何処へやら、レミリアはすっかり元気になった。いや、さっきも元気といえば元気か。

ともあれ、久々に元気な姿を見れて満足である。……お父さんみたいなこと言ってんな。

多少おっさん臭くなった自分にショックしていると、咲夜が話しかけてきた。

 

「じゃあ私は食器を片付けてきますね」

「ん、あぁ、俺も手伝うよ」

「良いわよ。一応私メイドだもの」

「そ、そうか」

「それに貴方はまた今から忙しくなるんだから」

「え、また執事とかやらされんの…?」

「それも悪くないけど……」

 

いやいや、悪くないわけないわ。

いや、また理由もなしに紅魔館に住み込みなんて迷惑かかるし、何しろ一度始めたら終わりが見えない。まぁ、楽しいといえば楽しかったけどね。

それより、忙しくなるとは一体……。

質問する前に咲夜は「悪くないけど」に続けて言った。

 

「そろそろ妹様も起きるのよ」

「おぉ、そっか。いいじゃん、賑やかで」

「久しぶりに貴方に会うともなれば、妹様テンション上がるわよ」

「べ、別に良くないか?……あぁ、でも、まぁ疲れそうだな」

 

少しだけ察することは出来る。

ただでさえ活発(異常)なフランの事だ。嬉しいことに俺に懐いてくれている。「一緒に遊ぼー!」とかいう流れであまりの活発さに殺されそう。「弾幕ごっこー!」とかの流れでもやしっ子の俺を殺しそう。

まぁ、そんな心配はいらないんだけどね。素直にフランと遊べることは嬉しいし楽しい。

ほんのりと笑みを浮かべる俺を見て、咲夜は言った。

 

「ほんと、妹様専属執事にしてやろうかしら……」

「なにゆえ、そんな発想に…!?」

「特に理由なんて無いわよ。ただ私の休む時間が増えるだけよ」

「休む為かよ……」

 

まぁ、たしかに疲れるだろうな。

これだけ大きな屋敷で、家事のほとんどをこなしているのは咲夜だけ。妖精のメイドもちらほらいるが、それでもそのメイド達を束ねているのも咲夜だ。メイド長とだけあって。

さっき和菓子を食べながら談笑している際にも、咲夜はレミリアの一歩斜め後ろでずっと立っていた。逞しいとはいえ、大変な役職であることに変わりはないな。

労うのは、美鈴だけじゃなさそうだ。

話を終え、スタスタと扉へ歩く咲夜を呼び止めた。

 

「咲夜」

「ん?なにかしら」

「冷蔵庫に、俺が作った饅頭とクッキーが残ってる。食べていいぞ」

「え、そうなの?」

「あぁ、余った材料で作れるものを作っておいた。まぁ、何というか、労いの品だ」

「………」

 

……あれ、黙っちゃった。

労いのつもりだったんだがな…余計なお世話だったか…?

 

「あっ、いや、いらないなら別に」

「いえ、食べるわ。食べる。なんならもう食べた」

「いや、どういうこっちゃ」

「ともかく、有り難く頂くわ」

「そ、そうか」

 

それならいいのだが、何だかレミリアのテンションに似通ってるな。今の咲夜のテンション。

やはり、主従関係ともあれば似るところもあるのかな。

咲夜の返答にどこかホッとした俺は、再び口を開く。

 

「じゃあ、まぁぜひ食べてくれ」

「えぇ」

 

そうして、咲夜との会話を終える。

静かなこの時間が終わり、また騒がしくなるのかと思うと、苦笑いもしてしまうが悪くないなとも思う。

心の何処かで、今から始まる騒がしい時間を待っていた。

……のだが、最後に聞こえたメイドの声でその気持ちは少し揺らぐ。

 

「ありがとう」

「……お、おぉ」

 

多分、初めて見たであろう、彼女の笑顔。

もちろん、今までも笑うところはいっぱい見てきた。

だが、今回は文字通り『満面の笑み』。

クールな咲夜が初めて見せたであろう少女らしさに、

もう少しだけ、落ち着いた時間を過ごしていたいと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、そんな思考は、ほんの数秒で掻き消されるわけなんだけど。

 

元気いっぱいの、フランの声で。

 

 

 

 

ドタバタドタバタと激しい音がしたかと思えば、

バァーーン!!!と客間の木製の扉が開かれ、

「シオンッ!!!!!」と少女の声がしたかと思えば、

お腹に何かに衝突されたかのような衝撃が走り、

二本の足で立っていた俺は簡単に吹き飛ばされ、

現在、全身の激痛と共に床に倒れ伏せている。

 

ここまで約4秒程度。

怒涛の数秒を要し、

俺、シオンは今日をもって死亡し…

 

「シオン生きてるっ!?」

「……死んでる」

「生きてるね!よかった!!」

 

いや、死んでてもおかしくないって。

これほどまでの衝撃を食らって生きてる俺は多分おかしいだろうけど。

にしても、おかしいだろ。だって衝撃が大型トラックに轢かれた時のそれだぞ。

いや大型トラックに轢かれた事はないけど、多分そんぐらい。

しかもぶつかってきたのは少女だ。

好奇心旺盛、活発的でいかにも元気な少女。

フランドール・スカーレットだ。

 

「久しぶり!!元気!?」

「おぉ…久しぶりだな。元気はついさっきなくなったよ」

「えぇ!?まだ遊んでないよ!!」

「殺されかけたけどな」

 

ついさっき殺されかけて、また遊ぶことになって殺されかけて……。

鬼と戦うより厄介じゃないのか?

いや、そうでもないか。

楽しいことに変わりないし。

他人事のように語ってるけど、俺自身も無駄に好奇心旺盛のガキンチョに変わりない。いざ子供と同じ目線に立ってみると、面白い体験が出来るのも事実だ。

まだ少し痛む体を無理やり起こして、笑顔を作ってみせる。

 

「よし!元気になった。久しぶりに遊ぶぞ、フラン!」

「ほんとにぃー!!やったー!!」

「おう!じゃあ何しようか!」

「弾幕ごっこぉー!」

「あっ……」

 

 

まだ少し、いや、かなり痛む体に鞭打って、無理やり笑顔を作ってみせる。

 

「よ、よっしゃぁー……」

「じゃあいくよー!!」

 

ここまでのやりとりで、多分5分くらい。

適当だけど、そんくらい。

数分を要して、

俺、シオンは今日をもって、やっぱり死ぬのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

《十六夜 咲夜》

 

時間にして、2,3週間程だろうか。

シオンに会っていなかったのは。いつものように天狗から新聞を貰うと、大きい見出しが一番最初に目に入る。

『シオン、甘味屋開業』だなんて。

 

無茶苦茶行ってみたいじゃない。いや、その前にこの2,3週間一体何がどうなったそうなったのか気になるところだけれど。

天狗のデマかもしれないという可能性すら忘れて、行ってみたいと思ったのは自分でも柄でもないなとは思った。

まぁ、都合良くお嬢様が「和菓子が食べてみたい」と言ったものだから行く理由はあった。

にしても、何故かワクワクしていたのは、らしくないなとは感じていた。

 

「(まぁ、久しぶりに会えたのは嬉しい…けど……)」

 

ふと、自分の感情に疑問を抱く。

嬉しい?今までそんな事あっただろうか。

思えば、さっきから心の何処か浮き足立ったような感じがする。

 

「何かしら……変な感じね…」

 

出どころの分からない感情に皿洗いをしながら思わず独り言を呟く。

 

「ま、いっか……」

 

結局、分からないものは分からない。

考えたところで、分からない気がする。

ただ、

その中でも、

分かりきってる事といえばーー

 

テーブルに置かれたクッキーを見て、ぽつりと呟く。

 

「あとで、アイツと一緒に食べようかしら。紅茶でも飲みながら」

 

ーーアイツに、シオンに、

早く会いに行きたいという気持ちだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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