東方弔意伝   作:そるとん

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紅魔館にとっては明け方が夜更けなんでしょうけどね。
タイトル困りました。


閑話 夜更けの紅魔館

 

 

 

 

……なんだ、この状況は。

何がどうなっている。

 

なぜ、こんな就寝時間の真っ只中に、

ましてや客人の部屋に、

 

紅魔館の住民が揃いも揃っているの……。

少し状況を整理することにしよう。

 

 

***

 

 

 

私、パチュリー・ノーレッジはシオンに魔法のなんたるかを教えた後、少しだけ思いに耽っていた。

それはもちろんシオンについて。

こあとの会話でより強くなった疑念をどうにか確実なものにしたかった。

けれど……

 

「もう寝ちゃったし……」

 

そうだ、シオンが部屋に戻ってもう数十分は経つ。疲れている様子だったし、さっき咲夜が『もう寝ている』と話していた。こあと。

なんで知っているのかは分からないけれど。

でも、そうね…寝ちゃってるものね……。

 

「チャンス……?」

 

ふと、今の状況が好都合であることに気づく。

が、

いやいやいや、と頭を振る。

 

理由があると言っても客人の部屋に深夜忍び込むだなんて行為はしたくないわね。というかそもそもそこまで私アクティブじゃないしハイリスク冒してまでやることではないし、たとえリスク冒したとしてリターンがしょぼいとかそれはそれでテンションが

 

 

 

なーんて、ブツブツ考えているうちにシオンの部屋の前にまで来てしまっていたわけで。

 

「ち、ちゃんと理由があるもの」

 

そう言い聞かせて、こっそりと扉を開けた

……のが数秒前。

 

今はというと…

 

「咲夜…何してるの……」

「いや、だってパチュリー様だって…」

「……こあは…」

「へ、部屋間違えちゃったかなぁ〜…あ、あはは…」

 

何故かシオンの寝ているベッドの下からもそもそ出てくる咲夜と気まずい雰囲気になって、

何故か窓からこそこそ侵入している小悪魔と気まずい愛想笑いを交わし、

私は今、そっとドアを閉め

 

「させるか…」

 

ボソッと聞こえた咲夜の声はどこか不吉で、

 

「ハッ…!?」

 

次に意識がはっきりした時はシオンの部屋の中で縛り付けられていた。

油断した……。

私は今起きた事を理解した。この変な違和感は奴の仕業だ。

 

 

「咲夜っ……ホント手際良いわね…」

「ただで返す訳には行きません」

「もうセリフが悪役のそれよ……」

 

咲夜の"能力"でバッチリ捕まった私は、シオンの部屋で、椅子に縛り付けられ、こあと咲夜に絡まれるという異様な空間に何だかもう少し疲れてしまった。

久しぶりに書庫から外に出向いてアグレッシブな事をしたからというより、心の体力が削られていく、そんな感じ。

 

「で?ここに縛り付けて何をするつもりよ。口止め?」

「ええ、その通りです。もっとも、パチュリー様も同罪ですけど」

「わっ、私はちゃんと理由があって……」

「理由…?あ、そうだ、理由を言ってくれたら解放しますよ」

 

あら、結構簡単な理由で解放してくれるのね。

そうと決まれば早速、この部屋に来た理由を説明……

 

待て、どう説明すれば良いんだ?

 

いや、迷う必要はない、『怪しかったから』と説明

いやいやいや!?この状況怪しいのは私の方だ!!

じゃあ、もっと具体的に……『彼から怪しい気を感じたから』。

うん、一番無難ね。これでいって……

はたして信じてもらえるのだろうか……。

 

考えてみろパチュリー。この状況を。

私はともかく、咲夜とこあに関しては下心丸見えである。咲夜に至ってはベッドの下からの登場だ。言い逃れはできない。

が、こちらも同じ事。適当な言い訳にしか聞こえない。

シオンは紅魔館の住民からも信頼を置かれていると言っても過言ではない。彼女らの様子からしてそうだ。私から見ても、逆に優しすぎるんじゃないかと心配になるくらいのお人好しだったりする。

そんな彼を今の私が『怪しいから寝てるところを…』なんて言ってみろ。

 

いやいや、完全に私の方が怪しいんだって……。

長々と考え込んでしまっていたものだから、こあもどこか怪訝な目を向けてきた。

 

「え、本当にパチュリー様…そういうご趣味で……」

「ちっ、違う!違うわよ!私は、その……」

 

そうだ、ここはひとつ、マイルドに、核心は隠して、どこか彼女達寄りの回答をするのが正解ね。

ふふっ、そうよ、そうよね。私はあの大量の本がある書庫の司書よ。紅魔館随一の頭脳よ。アドリブくらいどうって事ないわ。一番無難な答えなど分かっているわ。

そうして、私は、

『私は、その……』に続けて、もっとも最適な答えを導くのであった。

 

「か、彼の体を…まさぐりに……」

「「変態」」

 

前言撤回。

随一の頭脳もこの状況どうしようも出来なかったわ。

 

 

こうして、パチュリーはこの日から『むっつりスケベ』の称号を手にしたのであった。

 

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

 

答えがあれとはいえ、言ったことには変わりないので、解放してくれました。

 

 

 

結構キツめに縛られていたのかだいぶ跡が残ってるし、ジンジンと痛む。

こいつら、後で覚えときなさいよ。

復讐心を孕んだ視線を2人に送っていると、こあが呆れたように言った。

 

「にしても、パチュリー様にこんな趣味があるとは……」

「いや、違うから。あれは言葉の綾というか、語弊があるというか……」

 

うん、間違いは言っていない。なんなら語弊しかない。

まぁ、解放されたから良いけれど…

ん?

 

「そういえば」

 

私がそう言うと、2人は揃ってこちらを向いた。

私は言葉を続けた。

 

「2人は何でここにいたのかしら?」

「!!!!」

 

そういえばそうだった。

この2人の理由を聞いちゃいなかった。

これはあまりにも…

 

「不公平じゃないかしら?」

「「ぐっ……!!」」

 

理由聞かれただけでそんな表情するかしら。

どんだけ邪な事考えてるのよ、こいつら。

ただ、思いの外素直ではないみたいだ。

 

「わ、私は、部屋を間違えたというか…?」

「なんで疑問符がつく言い方してるのよ。というか、窓から入ってこなくてもいいじゃない」

「私は掃除していましたので」

「にしては掃除道具持ってないけど」

 

2人揃ってまたしても「ぐっ…!!」と悔しそうな表情を浮かべる。こあは観念したのか、

 

「いや、まぁ、そんな邪な事考えてないんですけどね…へへ……」

 

と、何故か照れながら、諦めた。

ただ、咲夜の方は負けたくないのかプライドなのか、まだ言い訳を続けた。

 

「いや、ほら、時止めましたし、その時に」

「そうだとしても、よ」

「はい」

 

咲夜ってこんなにポンコツだったかしら、と疑うレベルでバレバレの嘘である。

だって……

 

「さっきあなた『パチュリー様も同罪ですけど』って言ってたじゃない」

「っ…!!」

「いや『っ…!!』じゃないから」

 

あれ?本当にこんなポンコツ感溢れる子だったかしら?

と、疑問を浮かべていると、咲夜は唐突にガクッと膝から崩れた。

どうやら、観念したらしい。

 

「わたっ、私だって……!!」

「うん、私だって?」

「シオンとお喋りしたかった……!!」

 

理由まで何だかポンコツ感満載だった。

何よ、お喋りしたかったって……あ。

 

「だから今日書庫に来る回数異様に多かったのね…」

「シオンとこあが楽しそうだったからっ…!!」

 

嫉妬じゃない……。

にしてもそんな理由でこんな時間に忍び込むなんて……

あ、時間。

 

「もう遅いわね」

「そうですね、私はもう戻ります……」

 

私がそういうと、こあはススス…と静かに、何故か窓から部屋を出た。

 

「咲夜は?」

「私ももう寝ます。流石に遅いので」

「あら、切り替え早いのね」

「メイド長なので」

 

そのメイド長がさっきまで取り乱していたことは……

まぁ、内緒にしておこう。

なんだか賑やかな夜だった。シオンが来てからだろうか、こんなに賑やかな日々は。

自分も巻き込まれるとは思っていなかったけれど。

まぁ、賑やかなのも悪くないわね。

そう思うと、パチュリーの頬は微かに上がった。

 

「じゃあね、咲夜。また明日」

「はい、おやすみなさい」

 

そう、最後に話して、

私はそっと、扉を閉めた。

 

 

 

 

 

……

 

 

…………

 

 

 

あいつ、シオンの部屋で寝る気満々じゃなかった?

もう一度、そーっとシオンの部屋の扉を開け、隙間から中を覗く。

 

「……!!」

 

少しの範囲だが、ばっちり見えた。

なにちゃっかり、部屋のソファーで寝てるのかしら。

いつの間に寝巻きだし。

なんならベッド入りそうな勢いだけれど。

……ソファーで留まったのね。

 

この光景を見て、ようやく理解した。

咲夜から感じるポンコツ感。

 

 

原因シオンだな。

 

 

 

そう結論づけると、パチュリーは扉をそっと閉め、ツカツカと書庫へと向かった。

 

ダメだ。

あいつはダメだ。

 

あいつは、

 

シオンは、

 

紅魔館にとって"色々と"危ない。

 

何がって、もうなんか色々と危ない。

気がどうとか関係なしに危ない。

このままにしておくと咲夜から徐々にポンコツ化していきそうだ。

 

今夜の咲夜のポンコツぶりを見て確信した。

 

放っておくと紅魔館が終わる……!!

私が……

私が見張っていなければ……!

 

 

パチュリーは1人、すっかり静かになった紅魔館の廊下で、そう決意した。

 

 

 






パチュリーさんちょっと深夜テンションだったりします
次回には戻ってます
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