東方弔意伝   作:そるとん

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気ってなんだよ

 

「もしかして、俺ってば才能無い?」

「あぁ、多分」

 

幻想郷では当たり前である「飛ぶ」という行動さえ出来ずに、数十分仁王立ちで力んでる俺は側から見たら変人である。

常識の通じない幻想郷とは言えど、力んだまま何も起こらないってのはここでも変人である。

そんな時、俺は1つの結論に至った。

才能が無ぇ。

 

つい数十分前、人里へと繰り出そうとした俺を藍が引き止めた。

何事かと思えば「飛べないのは問題があるなぁ」と言った。

そこから藍先生による幻想郷での生き方レクチャーが始まったのだが……

 

「…俺何してんだろ…」

「全くだな」

 

藍先生ですら呆れるほどの才能の無さ。気を感じてやら意識を集中するやら教わったが、いまいちピンと来ない。力んでも別に何かを感じる訳では無いけど、とりあえず意識を集中してる感を出しては、気とかいう得体の知れぬものを感じ取ろうとしている。

ここまで自覚できてんならやり方変えればいいじゃねぇか、と。

たしかに。でも、これ以外の方法が分からない。何せ、気とかいうものが分からないし。

 

「う〜ん、君からもいまいち力を感じ取れるとは言えないし…にしてもいくら外来人とはいえ飛ぶくらいは……」

「あ、あの…なんかすんません……」

 

呆れつつあれやこれや試行錯誤してくれる藍大先生にちょっとした罪悪感が芽生えた。

 

「まぁ、とりあえず、一旦休憩にしよう。力を抜くといい」

「あ、はい。……ふぃ〜…」

 

八雲家の敷地内で修行させてもらっている訳だから、早めに終わらせよう

迷惑をかけたくはない。それでも、少し疲れてしまった。砂利の庭に背中から倒れ込んだ。

ふと、目を閉じる。眠くなってしまったかな……。

にしても、そうか…ここでも役に立たないなぁ、俺。

"普通の人"ならできる事が出来ない俺は普通ではないみたいだ。

ーーハッ、それもそうか。役立たずは今に始まった事じゃあねぇな。

…………ちっ、クソ。嫌な事思い出した。

頭の中にはアル中の顔やら、やたらとうるさい怒鳴り声やらが一気に押し寄せた。

体が、重たい空気に包まれたような気分になった。

けれど、体は宙を舞うような浮遊感に襲われた。

 

「ーーっ!?おい!シオン!」

「んぇ?……えっ!?」

 

浮遊感じゃなくて、本当に浮遊してた。

俺の周りには黒い「気」が漂っていた。

ーーん?藍さんどうしたんだ?小難しい顔して。

それよりも、飛べたことの感動が優っていた。

 

◇◇◇◇

 

ーーなるほどね。霊夢が気になったのも分かる気がする。

先程まで感じられなかった、「気」をシオンから感じた。

お世辞にも、清涼で綺麗とは言えないが……。

 

きっと霊夢はここに来たばかりのシオンからこの気を感じたんだと思う。その後ある程度の話を聞いて、納得した後に疑った詫びとして泊めてあげた。そんなところだろうか。

でも、まぁ、しょうがないだろう。

こいつの、シオンの「気」は、とても良いものとは言えない。

それにこれほどのものを心の奥底にしまい込んでしまっていた、彼の閉塞的な性格。

相当、闇が深いな……。

 

そう、藍は瞬時に思考した。

しかし、まぁ、それを聞くのは後にしようか。

今は、幻想郷で生きられるだけの力をつけさせる。と、いっても基本だけだが。

だから、しばらくは様子見だな……。

 

◇◇◇◇

 

 

「それじゃあ、ありがとうございました…!」

「あぁ、また頼ってくれ」

 

幻想郷について大方レクチャーしてくれた藍大先生に全力の感謝をして、改めて人里へ向かった。無論、飛んで。

ーー空を飛ぶってこんなに心地良いのか。ほんと、幻想だな…。

脱力する方が気が集まる事を知った俺は、何ともやる気のない飛行をしていた。

 

 

 

あ、今更ながらもう日が沈むなぁ……。

しょうがない。一旦帰ろ。博麗神社まで。そう!飛んで。

いやぁ、楽。移動が楽。周りから気が黒くなって出ていくのはしょうがないみたいだ。藍曰く、そういう性質なんだって。多分適当だけど。

 

「ま!飛べることの代償と思えば、あんま気になんねぇか…!」

 

飛べるようになった姿を自慢すべく、ワクワクしながら神社へと急いだ。




相当、闇が深い主人公……!!

次回また!しばらくは異変は起こらないですね。
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