東方弔意伝   作:そるとん

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ご無沙汰な方が出ます


ある日の出会い

 

 

 

 

 

 

 

台風の一件から早数週間。

季節はめっきり冬になった。雪は降らずとも気温はぐんと下がり、こうして朝にお店の準備をしていると刺さるような寒気が身に染みる。

この間には、特に何も起こる事はなく、言ってしまえば客足も減った。つまるとこ咲夜や霊夢、もっと言えば魔理沙やアリス、永遠亭の奴らとも顔を合わしていない。

元気かなぁ……。

と、まぁ、こんな感覚で。客足を増やす為にあったかい甘味とかどうだろうとか考える日々である。

 

そういえば。

最初にも言った通り今はもう冬だ。

ふとある事を思い出す。

 

幻想郷にクリスマスというものはあるのだろうか。

俺自体その存在を祖母から聞いただけで、あまり良くは知らないのだが、

何でも神様の生誕祭だとか。

元々ヨーロッパの風習で、ケーキやら木に飾り付けやら、海外の方だと何かと忙しいイベントである。そんな文化まで取り入れるのだから日本の異文化性が伺える。

だとするならば。

紅魔館やアリスは知ってるんだろうか。この風習。

あ、いや、紅魔館は吸血鬼及び悪魔が住んでるな。逆に変な魔法陣でも作って祟ってそうだ。

そうなれば、アリスかなぁ。

運良く会うことがあれば聞いてみることにしよう。

にしても。

 

 

悪魔ね……。

 

 

紅魔館が頭に浮かぶついでに、そんな単語も思い浮かぶ。

季節が変わるように、俺にも結構な変化が及んだ。元々俺は体が強くないのだ。今回の一件で歯止めが効かなくなったのか血が良く出る。

こう言うとホラー感が増してしまうが、言うなれば鼻血みたいに些細な怪我だ。シャワーの時に出ると大変だからやめて欲しい。また例の如く、目の充血、白髪になった俺だが、その治りも遅くなっている。能力の酷使もあるが、流石に遅い。先に変化が起きる右目の充血はまだ残っているし、髪の根元はまだ綺麗に白い。

ただ、マイナスな面に対して、変なところがプラスされていたりする。

 

例えば……

 

 

 

 

刹那。

不意に背後に違和を感じる。

第六感の強化版のような感覚がする。

反射と同じ感覚だ。頭から送られた電気信号は0.1秒と経たず筋肉に送られる。

ここまでの思考、約0.0何秒とかいうスピードである。

瞬間。

俺の体は動く。

 

 

「あっぶねっ!!」

「へぶしぃぇ!!!」

 

 

これである。この第六感が強化された感じ。危機察知能力というか……。

これは変化のうちの一つで、他を挙げれば運動能力がやけに上がったり、何かと感覚が研ぎ澄まされたような感じがする。

と、まぁ、今の俺の現状はこんな感じなのだが……。

 

背後に迫った気配を躱した訳だが、俺の隣を猛スピードで顔面から滑っていった青髪の少女を気にかけるべきだろうか。

……いい加減大人しくならないものだろうか…。

 

 

「どうしたんだ、チルノ」

「あんた中々やるわね!」

「毎日言ってんなぁ、お前」

 

 

青髪の少女は徐に上半身を起こすとそう叫んだ。

逆説的に毎日こいつはウチに来ている事になる。

何?習慣なの?律儀なのか?こいつ?

青髪の少女『チルノ』は最近出会った女の子だ。

だが、侮ってはいけない。彼女はただの少女ではなく"妖精"らしい。

幻想郷において初めて感じた『ファンタジー感』である。

ただ、見た目や精神年齢が少女及び幼女なだけで、長寿である。

だったらもう少し成長して欲しいものだが……。

なんでも氷の妖精であるチルノは冬には特に活発的になるらしい。

その上、妖精はチルノだけではない。

 

 

「す、すいませ〜ん!!」

「あぁ、毎度毎度大変だね、大妖精」

「は、はいぃ……」

 

 

猛スピードで突っ込んできたチルノとは対照的に、ヘロヘロと疲れた様子で飛んできたのは『大妖精』という、これまた妖精の少女。

チルノの保護者的存在だと俺は認識している。

それに性格も対照的で大人しめの良い子である。

こういう子を見ると労いたくなってしまうから困る。

 

 

「何か食べてく?」

「え!いや、悪いです…!」

「そうよ!寄越しなさい!!」

「お前は元々何か貰いに来たんだろうが!!

「ち、違うよ!チルノちゃん!」

 

 

こいつ…!一度団子を食わせたからって味を占めやがって……。団子じゃなくて貰うことの味だがな。

うん?

 

 

「違うのか?」

「違います…」

「え、じゃあ饅頭?」

「た、食べに来たんじゃないんです!」

「えっ!そうなの!?」

「なんでチルノちゃんが驚くの……」

 

 

ほらみろ、チルノは集る気満々じゃないか。というか此処に来る理由なんてそんなもんかと…。

違うと言われて結構驚いている。

だとするのならば。

 

 

「今日は何の要件で?」

「これから人形劇を観に行こうと思ってたんです。けどチルノちゃんがシオンさんを見つけたや否や……」

「テロリストかこいつ……」

 

 

しかも無差別。洒落にならんわこれ。

いや、もしかしたら被害俺だけかもしれんな。じゃあ無差別じゃねぇや、良かった〜。

それに加えて気になる単語も出てきた。

 

 

「にしても、『人形劇』なぁ…聞いた事ないぞ」

「最近始まったので…」

「うん?じゃあここ最近になってお店に来てんのは……」

「人形劇に行く途中で…」

「ついでだったかぁ……」

「あっ、いえっ、あのっ」

「??美味しいわよ?」

 

 

こういう時はチルノの論点の外れた何気ない一言に救われたりするんだよなぁ……。

ただまぁ、こんな幼い子にフォローされたり困らせてしまうのも忍びない。

とりあえずは…

 

 

「大丈夫だ。安心しろ。気にしてないから」

「え、でも遠い目をして…」

「大丈夫だから」

「そ、そうですか」

 

 

気丈に振る舞っておこう!うん!大丈夫!

若干大妖精が申し訳ないような顔してるけど!

よし!じゃあ、これに加えて…!

 

 

「俺も人形劇観に行こう」

「えっ、シオンさんも!?」

「あぁ、お陰様でこっちの売り上げも良くなるかもしれんからな」

「利用する気満々……」

 

 

大妖精はあからさまに引いた。仕方のない事だ。人間は汚いもの。うん、しょうがない。

こんな大人になりたくないって子供の頃は言ってたんだけどなぁ……。

どのみち幼い子に見せる姿では無かったわ。

 

 

「冗談だよ。俺も気になったんだ」

「人形劇が?」

「あぁ」

「もう大人なのに??」

「それは違うぞチルノ。大人でも気になるもんは気になるし、てか俺は大人じゃねーよ」

 

 

万年好奇心旺盛の小学生です。(精神年齢)

ともあれ、俺は少し店を空ける事にした。

開店と書かれた看板をそっと畳んでから、俺らはすぐ近くの人里の広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分歩いていけば広場なるところにはすぐに着く。

公園のような遊具も多くある広場は、天気良い日は子供達の声で賑わっている。今日も例外ではなく、多くの子供達で賑わっている。

一つ違うとすれば子供達が一箇所に集まっているというところだ。

 

 

「着いたー!」

「まだ始まってないみたいだね」

 

 

チルノと大妖精は同じ一箇所へと走っていった。

流石に俺も前で子供達と目をキラキラさせながら見るなんて事は年齢的にもマズイので、少し離れたところで見ることにした。

 

 

「お、そろそろ始まるかな」

 

 

そこそこに立派な舞台で、本格的な人形劇みたいだ。ともあれば、どうしてもワクワク感は隠せず、幕が上がるや否や子供達と紛れて「おぉ…!」だなんて声を漏らした。

操っている人は姿を見せず、声だけの出演だ。

 

物語のあらすじを綺麗で透き通った女性の声が読み上げる。

物語の構成も面白そうで、どうしても俺の子供っぽさも現れてしまうものだった。

 

 

 

どっかで……。

 

 

 

聞き覚えある声なんだよなぁ。

気のせいか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー。

 

 

 

 

 

 

結果だけ言えば素晴らしい人形劇だった。

完成度は見事なもので、子供達もそれを十二分に感じていた。

俺もこっそり拍手をした。

 

一通り過ぎれば子供達は子供達同士で遊び始めた。

……友達ってああやって作るんだ…。

齢若干16にして初めて気づいた事実である。

あれ…おかしいな…目から分泌液が……。

 

 

霞む目の隅っこで先程までの人形劇の舞台が片付けられるのが入った。

にしても、凄いな。ボランティアなのかイベントの一つなのかは分からないが、無償で、それも一人でやっているのだから尊敬する。

一眼その姿を見ておこう。

 

屈んで、俯いた顔は立ち上がると同時にハッキリ見える。

と、これまた同時に離れたところで見ていた俺とバッチリ目が合う。

 

そう。顔がハッキリと見えた。

 

 

 

人形劇をしていた人は、人形みたいに綺麗な人だった。

 

 

「アリス…!?」

「……ぁぇ」

 

 

 

あえて人形と違う点を挙げるとすれば。

 

今、こうして顔を真っ赤にして照れて、

恥ずかしそうにしているところだろうか。

 

 

 

 

 

 

 







ぁぇ、しかセリフなかったね…
次回はいっぱい喋るからね……
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