シオン。
つい昨日ここへ迷い込んで来た謎の少年。ふらふら空を飛んでいたら珍しいものを見たかのように辺りをキョロキョロしては、麓の景色に感動していたりしていた。突如として現れた彼は謎だらけだ。けれど、私自身気になるのは、彼の謎より、最初の方で感じた瘴気。それもかなり強力な。瘴気は彼が目を覚ますとすぐに消えてしまったけれど……。この状況、博麗の巫女として見過ごせるものではないわね。
そう霊夢は思い、彼を一晩泊めてあげることにした。
その際に分かった彼の過去は悲惨なものだった。俺に関しては今話したことで全て。と、シオンは笑って言ったがそんなはずはない。
もっと、何かあるはずだ……。
いずれにしても、彼から感じた瘴気は要注意だ。いつ、何が起こるか分からない。
シオンは、あまり良い意味ではないが、霊夢が初めて興味を感じた人だ。
あまり、良い意味ではないが。
「はぁ……」
箒で神社を掃除している霊夢は、シオンに対する考えや不安からため息を零した。もうかれこれ、何時間掃き掃除してるのやら。思考が完全にどっか行ってしまっている。
(彼の話を聞く限り、害は無さそうだけど、油断は出来ないわね)
とりあえず、今は様子見ね。気をつけなきゃ。
自分から関わったとはいえ、面倒な事になりそうと思った霊夢はまたため息を零す。
「はぁ……」
「霊夢ーー!」
ふいに上空から声が聞こえる。耳に入った声は昨日聞いたばかりの声。
本当に帰ってくるとは……ん?上空?
「見ろ!飛べた!!なんか知らんが俺飛べた!」
少し腐った目をキラキラさせて空ではしゃいでる姿を見ると……
「杞憂かしら……」
苦笑まじりにそう言った。
◇◇◇◇
俺は、一度博麗神社に戻った。今日あった事を一応報告しておこうかと思ってね。
俺は霊夢に簡潔に話した。藍先生だったり、残念美人「紫さん」だったり、出来事と言ってもそんな色々あった訳ではないから簡単に説明できた。
「ふ〜ん、紫にもう会えたのね」
「あぁ、霊夢の事心配してた」
「ふん、あいつは過保護過ぎよ」
全くだよ。
ま、それはそうとして、ここに一度戻ったのは聞きたいことがあるからだ。
「ところでさ、あの紅い屋敷について霊夢は何か知ってる?」
「紅魔館のこと?関わらないからあまり知らないわよ。悪趣味な吸血鬼が住んでるって事ぐらいしか知らないわ」
「そうか……え?吸血鬼?」
つっけんどんに話す霊夢の口からはたしかにそう聞こえた。
多分こっちが本物の霊夢なんだろうなぁ。昨日は博麗の巫女としての対応だったんだろうなぁ…ちょっと寂しい。
じゃなくてだ、吸血鬼??
「紅魔館自体、つい最近幻想郷入りしたばっかりなのよ。ここの景観にそぐわない見た目で迷惑してるわ!」
「まぁ、たしかに洋風は合わないよなぁ」
ただ、寄ってみたい。元々は好奇心の塊なのだよ。俺は。ただちょっと今の今まで世間に触れる機会が無かっただけで。今のこの状況は貴重なのだ。
……行こう。うん。ちょうど日が沈むし。
「あんた、まさか行こうなんて思ってないでしょうね?」
「え、何で?ダメなの?」
「今のあんたが行ったら死ぬわよ。何してくるか分からないんだもの」
なるほどね。たしかに妖怪などの種族は何かしら人間を襲うらしいな。ましてや色々才能のないーー先生お墨付きーーの俺は格好の的だろうな。
でも、自分の好奇心に勝てる男子はいない。
ここは意地でも紅魔館に行……
「それでも行くってんならここで殺すわ」
「ごめんなさい」
また今度にしよう……。
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
結局、またしても神社に泊まった。いいかげん自立しようかしらん。
にしても……
「今日は曇りかぁ……」
居間にしいた布団に寝転んだままそう言った。薄く開けられた目に眩しい日光は入らず、紅い雲が空を覆っている。
曇りって気分あんま上がらないから好きじゃ、
おい、ちょっと待て。
「……雲ってこんな紅かったっけ?」
いや、常識の通じない幻想郷ならありえるかもしれないが、昨日ちびちびと空に浮かんでいた雲はたしか、純白だった。陽の光を反射し、幻想郷をキラキラと照らしていた。
だが、今回はどうだろうか。
完全に日光を遮り、そればかりではなく向こう側の山すら紅く霞むほどの濃い雲。否、霧かもしれない。
向こう側まで見えないとなると紅い雲は標高は低い。けれど湿気がある訳じゃないから霧とも言えない。
頭を捻ってもこの現象について何一つ分からない。ギリギリ分かることとしたら、気分が重い。気持ちよく空が飛べない。せっかく飛べるようになったのに。
……ま!幻想郷だし!こういう事もあるだろう!ほっとこう。寝よ。
「んな訳ないでしょ。起きろ」
「……おざます…」
うん、違うみたい。今回ばかりは幻想郷の非常識による現象じゃないみたい。
じゃあ、一体何なのか。
「これは一体何なんだ?」
「『異変』ね。大方首謀者は悪趣味吸血鬼かしらね。こんな霧を発生させるなんてあそこぐらいしかないわ」
異変、ね。藍からおおまかには説明されたが、いまいち分からずにいた。
何でも一種の怪事件であったりするらしい。幻想郷規模の広範囲に渡る事件のうち発生時点で原因不明とされたもの、それが異変。
今なら何となく分かる。たしかにこれは変だな。
幻想郷ではたまに起こるらしい。それを解決するための「博麗の巫女」。
だんだん掴めてきたぞ。この幻想郷がいかに存在出来ているか。
「で、これからどうすんだ?」
「解決するのよ。首謀者をぶっ飛ばしにね」
妖怪と人間が共存出来るために存在する博麗の巫女は、
案外、物騒なやつだった。
次回から紅霧異変編です。
原作をやったことがないので展開があまり分からないゆえに、オリジナル展開になるかと思います。
それじゃあ、また次回!