東方弔意伝   作:そるとん

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言い訳させて下さい……。書いていたのですよ……。しかしですね、一度操作ミスで小説丸ごと消えまして…。投稿遅れました。大変申し訳ございませんでしたっ…!!

季節は夏ですが、幻想郷はまだ冬です。








春雪異変 七色の激突

 

 

 

 

 

妖夢と交戦を初めて既に数十分経っただろうか。

少しばかり3人に焦燥が見え始める。

 

 

「くそっ…!!弾幕はどうって事ないが、中々攻撃が当たんねぇ!」

「なんだか戦いづらいわね」

 

 

妖夢を中心に大量の弾幕が球体に広がっていく。そうは言っても躱すのが困難な程ではない。

霊夢と咲夜は軽く躱して見せるし、魔理沙に至っては猛スピードで動く箒に跨って尚、全て躱しきっている。だが、3人は人間。時間は無論、体力も無限ではない。

若干の焦りに加え、疲れも見え始めてきている。

 

また妖夢も妖夢で3人の弾幕を見事に躱して見せる。少ない動きで、まさに紙一重である。

霊夢のホーミング機能付きのお札を使ってみても、その素早い斬撃で防がれる。

とはいえ魔理沙たちの数は優位にある。加えて博麗の巫女に、火力が破茶滅茶な魔女に、完全で瀟洒なメイドである。

妖夢もそこそこに重たいダメージを負っていた。

 

互いに苦しさが垣間見え初めたくらいに、

先に動いたのは妖夢だった。

 

絶えず放たれていた弾幕は、一度動きを止め、華麗に弾幕を躱していた妖夢もピタリと動きを止める。

 

 

「来るわね…」

 

 

独りポツリと呟いたのは霊夢だった。

言葉の通り来るのだ。スペルカード、簡単に言えば必殺技のようなもの。

3人も妖夢につられるように動きを止めた。

妖夢が動いたのはそのすぐ後だった。

腰に携えられた二本ある刀のうちの一本。

楼観剣と言ったか、その刀の鞘を左手で握り、柄を右手でしっかり握る。

その格好はまさに"抜刀術"のそれであった。

 

と、同時に。

先刻感じたような違和感にまた襲われる。

妖夢を除く、3人が、その違和感に自然と息を飲む。

この違和感を明確に表すとすれば"緊張感"だ。

咲夜のように、本当に時を止めているわけでもないのに、抜刀までの時間が酷く長く感じ、

妙な息苦しさを覚えさせられる。

 

 

意識がハッキリとした時には、既に妖夢は抜刀していて、

妖夢自身も、視界の隅から隅へと移動していた。

すると、一度刀身に着いた血をーー実際には着いていないがーー振り払う動作をして、妖夢は言い放った。

 

 

「餓王剣『餓鬼十王の報い』」

 

 

刀を大きく横薙ぎに、一振りしたのだ。

灯篭に煌めく白銀の刀身は、大きく空を横に切り裂いたのだ。

その切り裂いた空中の端から、まるで剣筋を辿るかのように夥しい数の弾幕が放射状に広がっていった。

 

閃く剣筋。言葉の通りである。

 

 

「なんじゃこりゃ!?」

「妙な緊張感もあって、タイミングずらされるわね」

「抜刀の瞬間が一番やっかいね」

「えぇ……」

 

 

躱しながらそんなコンタクトを取ってみせる。

同様するのも無理もない。寧ろ淡々と躱す霊夢と咲夜が、魔理沙としては衝撃を覚えざるを得なかった。

とはいえど、2人も反撃出来ているわけではない。一瞬タイミングをズラされた事で反撃のタイミングを失った。もう少し待って、反撃の瞬間を伺って……

 

と考えるのも束の間。

 

弾幕と桜で視界の隅に霞む妖夢が動くのが、確かに見えた。

 

 

「マズイわねッ…!」

 

 

気づいた時には少し遅かった。

また妙な緊張感に襲われる。先刻の一撃で放出された弾幕はまだ多く残っている。

にも関わらず、追撃をしてくる。

また一瞬、時が止まる感覚に陥った。世界が活動をやめたかのようだった。

 

そうして、また動き始めるのは、妖夢が追撃を終えてからである。

 

 

「うわぁおおお!?!?」

「くっ…!やり辛いわね!」

 

 

魔理沙はさっきから叫びっぱなしだし、霊夢にも微かな苛立ちが見えてきた。

再び時が動き出した感覚に戻る時には、弾幕は目の前にあり、更に奥で同じ量の弾幕が追加されているわけだから、時間をかければかける程苦しくなってくる。

躱すのにも、集中し続けるのにも。

 

そんな中、この状況を打開したのは魔理沙だった。

 

 

「まどろっこしいな!!」

「ちょ、魔理沙!?」

 

 

魔理沙の跨る箒が一段と速くなる。

一番最初に焦りを感じ始めていた彼女において、何も出来ず仕舞いは到底我慢出来る状況ではないのだ。

青い弾幕を物凄いスピードで躱して、澄ました顔をしている妖夢に向かっていく。

ようやく妖夢が見える位置までくると、魔理沙が弾幕を展開するのは早かった。

 

妖夢の澄まし顔が、微かに歪んだ瞬間だった。

それと、魔理沙がミニ八卦炉を取り出すのはほぼ同時だった。

察した霊夢が叫ぶのは少し遅かった。

 

 

「アンタもう打つの!?」

「こんなとこで時間食ってる場合じゃないぜ!」

 

 

薄々気づいていたのだ。

恐らく妖夢はこの3人に負ける気こそないにしろ、早々に片付ける気もない事を。

詰まる所、時間稼ぎ。

この異変を完遂に至らせる為の時間稼ぎ。

通りで、躱すばっかりで弾幕も薄いはずだ。

それもこの瞬間で崩される。

魔理沙はニヒルな笑みを浮かべて勝ち誇った調子で言い放つ。

 

 

「喰らいなぁ!!

 

 

 

ゼロ距離マスタースパーク!!!!」

 

 

 

文字通り。

ゼロ距離は流石に大袈裟だが、2人の距離は大層至近距離であった。

そんな距離から射出されたレーザーは…

 

 

「ッ……!!」

 

 

魂魄妖夢に息を吐かせる暇も与えず、白く飲み込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして先刻のような騒ぎは嘘のように止み、しかし石畳の大きな通路はレーザーで抉れ、砂埃はまだ宙で煙っている。

 

「案外呆気なかったな」

「あれはエゲツないわよ……」

「死んだわね」

 

 

3人は地面に降り立ってそんな会話をする。

一応弾幕ごっこである故、そんなおいそれと死者を出す訳にはいかないのである。

先を急いでも良かったが、威力が威力なだけにせめてもの安否確認を行おうとは思っていた。

 

 

 

 

 

故に、3人とも警戒はしていなかった訳で。

知っていたのは魔理沙の火力の高さだけで、

魂魄妖夢の芯の強さは知らなかった。

 

 

不意に、煙の向こうから淡く素早い弾幕が数発放たれた。

幸いだったのは、まだ3人と距離が離れていた事。

 

 

「危ないッ!!」

「ふっ……!」

 

 

霊夢の声を合図に、3人身軽に躱してみせる。

それも紙一重ではあったが。現に一番近くにいた魔理沙のスカートの端が少し裂かれていた。

故に斬撃。こんな弾幕を飛ばせるものは1人しかいない。

 

揺らめく爆炎と砂埃が晴れたその先にいたのは、身なりの乱れこそ見えども、その表情は先刻と変わらぬ澄まし顔。

その佇まいに、苦しそうな気配は微塵もない。

 

 

「危ないところでした」

「アレを喰らって生きているとはね……」

 

 

霊夢でさえ感嘆の声を挙げる。

 

 

「流石に気を引き締めなきゃいけないかしら」

 

 

咲夜ですら一層表情を険しくさせる。

 

 

「…………」

 

 

 

ただ1人。

納得のいっていない負けず嫌いが、

ただ1人。

僅かに苛立ちの表情を浮かべた彼女は静かに他2人に告げた。

 

 

「お前らは先に行け」

「は…何言ってんのよあんた」

「冷静さを欠くのは良くないわ」

「そうも言ってられねぇんだよ…」

 

 

弾幕は火力だと常に声高らかに宣言していた彼女にとって、至近距離で打った自慢の技を凌がれた事がいかに屈辱だったか、

魔理沙がどれほど努力家だったかを思い返せば、

この出来事がどれほど悔しかったか、

簡単に想像出来るだろう。

堂々と実力差を見せつけられたのだ。

黙っていられるわけがない。

 

 

「アイツがまだ煙っている間に先を急げ」

「そうは言ってもねぇ、アンタ、」

「いいえ、霊夢。急いだ方がいい」

「咲夜まで……」

 

 

さっきまで冷静さを…だとか言っていた咲夜まで魔理沙に賛同するものだから、霊夢は怪訝に思った。口にしないだけで幼少からの知人が霊夢は心配なのだ。それは咲夜も重々承知の上で、その細い綺麗な指で上空を指差した。

 

 

「これ、どこか一箇所に集まってるわ」

「うぉっ…ホントだ。こいつが春とやらか?」

「人魂みたいね……」

「冥界だし魂っちゃ魂なんじゃない?それより、」

 

 

聡い霊夢と咲夜だ。

これからの展開くらい想像出来る。

 

 

「こんな所で足止め食らってたら不味くないかしら?」

「………それもそうね」

「お前らなら安心だな」

「本当にもう……」

 

 

 

諦めたような表情で、霊夢は溜息交じりにそう言った。

そうして2人は魔理沙を残して先を急ぐ。

その前に、

 

 

「これ終わったら宴会の準備手伝いなさいよ」

「!!……おう」

 

 

彼女なりの精一杯の心配を初めて口にしていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ァァァァァァァァアアアッ!!!!!」

 

 

咆哮と共に拳を繰り出す。

とても人間の手とは言えない、赤黒く、大きな手から繰り出される打撃は衝撃波を伴っていた。

弾幕ごっこという決着方法がある幻想郷に於いて、こうして物理攻撃で暴れ回る奴なんて早々いない。

それもまぁ、仕方がない。弾幕より手っ取り早いのだから。

 

 

とはいえ、だ。

もう数十分も暴れていれば疲れがみえる。多少融通の効くようになった能力を徐ろに解く。

人間の姿になって、初めてその疲弊感が身体を襲う。

 

 

「ハァァ……多いな…」

 

 

上空を悠然と泳ぐ人魂の下で、シオンは肩で息をしていた。手は無意識に震え、変身時の面影が残っているのか所々赤黒く変色している。

以前に比べればだいぶ保つようになったが、やはりその代償は凄まじい。

自分自身の存在を覆しているのだから、下手すれば戻らなくなる。

だからといって、休んでもいられず。

少しでも春が集まるのを止めなければならない。

 

 

気力を振り絞って、もう一度吠えた。

 

 

「ォアアアアアァァァァァァッ!!!!」

 

 

少しなりとも進行を止められているだろうか。

あの3人も頑張ってくれているみたいだ。さっきのレーザーは間違いなく魔理沙のものだ。

ならば、ここで、少しでも異変の邪魔をする。

大丈夫…大丈夫だ……。

 

 

胸騒ぎは、未だ止まずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔符!!スターダストリヴェリエ!!」

 

 

 

魔理沙は7つの魔法陣を空中に展開すると、それは魔理沙を中心に回り始める。円は徐々に広がっていき、絶えず放たれる星型の弾幕が妖夢を囲う。

七色の星の弾幕は、虹のように鮮やかであった。

満遍なく展開された弾幕は魔理沙に向かって集まっていく。

 

 

「……!?」

「くくっ、ボーッとしてると背中から被弾するぜ!」

 

 

後ろから弾幕が迫ってくるが、終着点を過ぎた弾幕は規則的に広がっていく。

中々に躱しづらい弾幕だ。

しかし妖夢は持ち前のスピードで難なく躱してみせる。

時に、被弾しそうになってもその両手に持った剣で切り裂く。

交戦が再開されてからというもの、ずっと魔理沙のペースである。それでも魔理沙はまだ畳み掛ける。

 

 

「おいおいどうしたぁ!!さっきのレーザーでひよっちまったかぁ!?」

「………フンッ」

「危なぁっ!!」

 

 

魔理沙の煽りに妖夢は分かりやすく苛ついていた。実際、今の様に斬りかかることもしばしば。ところが、澄まし顔でいても剣筋が時々荒くなるし、急に攻撃的になったりする。その苛つき様は目に見えるほどだった。

案の定、妖夢はスペルカードを発動した。

 

 

「人神剣!俗諦常住!!」

「なっ…!?」

 

 

妖夢は高らかに宣言したかと思うと、不意に魔理沙の目の前から消えた。

魔理沙が妖夢の姿を確認する、その前に。

 

 

うんざりするほどの『緊張感』。

視界と、今度は呼吸ですらタイミングがズレる様だった。

ほんの一瞬。長く感じるその一瞬が終えると、すぐ様魔理沙はその姿を探した。

 

 

 

「うわっ、やべぇ……」

「やられっぱなしは嫌いなので」

 

 

魔理沙の背後で、それだけ言った。

その瞬間。恐らく、また妖夢は斬撃を繰り出したのだろう。剣筋が閃き、それは弾幕になっていく。

魔理沙の背後から、剣筋の軌跡は迫ってくる。

 

 

「ボーッとしてたら背中から被弾しますよ?」

「クソォッ!!」

 

 

妖夢はそういうと魔理沙の正面に立った。

今度は自分のターンだと言わんばかりに妖夢は畳み掛ける。

 

 

「そんな緩い弾幕だけだと思わないでください」

「マジか……!」

 

 

妖夢から目を離すわけにもいかず、紙一重で背後から迫る弾幕を躱す。

 

 

妖夢は納刀された剣に右手をかけると…

 

一瞬。

 

視界が捉えたのは斬り上げられた後の剣。

その凄まじい剣筋を表すかの様に、真っ赤な弾幕が爆風の様に広がる。

これを至近距離でやるから性格が悪い。

 

 

「クッソ…マジで性格悪いぜ…!!」

「勝負ですらかね!というか自慢の技なんです性格悪いとか言わんでください!!」

 

 

というか、貴方もゼロ距離で打ったでしょ!!

と先程までのクールキャラは何処へやら、堰を切ったように文句が出る。煽られた事に分かりやすく怒っているもんだから、魔理沙もまだ冷静に対応出来る。

魔理沙もそのスピードといつもの調子を取り戻し、躱しながら反撃をする。

そのスピード感は他の付け入る隙を生じさせないものだった。

 

 

その中でも、魔理沙はノリに乗ってくるとその攻撃とスピードが増していく。

 

 

「躱すのも弾幕ごっこの醍醐味だよなぁ!」

「何を言って……!」

 

 

妖夢は剣を斬りあげる動作をふと止めて、魔理沙を見据えた。

色鮮やかな弾幕が入り混じる混沌の中、とんでもないスピードで弾幕を躱す箒に跨った魔理沙の顔は、

ひどく楽しそうだった。

 

 

魔理沙は、ほんの少しの間隔を縫う様に飛ぶと、一際高く舞い上がる。

そうしてまた、高らかに叫ぶのだった。

いつもの様な、子供っぽい笑顔と共に。

 

 

「魔符!!ミルキーウェイ!!!」

 

 

暗い冥界に、七色の星が降るのであった。

 

 

スペルカードを壊された妖夢は、しばらくその光景に見惚れていた。

悔しいほどに、綺麗だった。

だからこその、闘争心。

すぐにアツくなる所が未熟だと嫌ってほど自分で理解している。

 

しかし。

だがしかし。

 

 

魔理沙の楽しさに感化されたと思えば、

仕方のない事なのだろう。

漸く、妖夢はその顔に、挑戦的な、

楽しそうな笑顔を見せたのであった。

 

 

「上等よ!!!

 

 

天神剣!!!『三魂七魄』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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