東方弔意伝   作:そるとん

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病み上がりのどんちゃん騒ぎ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月は満ち、夜風に桜の花弁が優美に舞う。

蝋燭の灯りを宿した灯籠の周りで人と鬼とが、多種多様が入り混じる宴会はさながら眠ることのない百鬼夜行であった。

最も、歩いてはいないが。歩いたとしても千鳥足だろうか。

 

 

そんな騒ぎからちょっと離れた場所で少し異質な雰囲気が漏れ出ていた。

祭りごとに目ざとい鬼達はすぐにその空気を察すた。

 

 

「お、なんか面白い事になってんじゃん?」

 

「どうしたの勇儀?……なにあれ、紫と…あぁ、例の…」

 

「お、萃香、やっぱこっそり来てたんだな!!」

 

「うん、毎回参加してるよー!それはともかくとして……!」

 

「見てみるか…あいつは中々やるぞ…!」

 

 

そんな2人の会話から徐々に噂が広がっていく。

 

灯籠の灯りは届かない。

月明かりだけが2人を照らす。そんな離れ。

弾幕ごっことは名ばかりの殺し合いは、

 

 

 

 

踏切の音から始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意にスキマを開いたかと思えば鳴り響く踏切の音と、

幻想郷では馴染みのない、警笛の音。

その音すら置いてきぼりに、猛スピードで鉄の塊が飛んできた。

 

 

「電車…ッ!?」

 

 

八雲紫とやりあうのは初めて故に、手段が分からない。境界を操る能力は非常に厄介な上に、今のように殺傷能力が極めて高い攻撃も使える。

加えて、弾幕戦においても他の追随を許さないと聞いたことがある。

正直、相手にしたくはなかった人ナンバーワンだ。

 

だが、どうだろう。

不意打ちに驚いたのか、はたまた俺も好戦的になってしまったのか、

 

俺の心は痛いくらいに跳ねていた。

 

 

 

それとは比較的に、頭は冷静に動いた。

電車を躱すとすぐに弾幕を展開する。能力も小細工もなしで、まずは様子見しよう。

 

 

「フッ…!!」

 

「わぁっ、早いわね貴方の弾幕!」

 

「まだ少ないですけど…」

 

 

しかも躱されたしな。まぁ、当たるはずないか。

すぐさま追撃…

 

 

「……ッ!?」

 

 

突然俺の四方八方にスキマが生じた。

かと思えば、先に放った弾幕の倍ほどあるだろうか、数多の標識やら鉄骨が飛んできた。

無論、本物である。

 

 

「マジか…!」

 

 

すぐさま遠くへ弾幕を一つ飛ばす。

各方向から当たったら即死の弾幕が迫る中、自分の弾幕から目を離さずにいた。

速さは足りている……あとはタイミング…!

 

 

「今ッ!」

 

 

そう言い放つと同時に覆す能力を使用する。何度も使ってきた手だが抜け出すときには中々使える。

途中で弾幕を消されたり、目を逸らせない分死角から攻撃を食らったら終わるが、それ補うべく気配が判るようにしたし、弾幕スピードも速くした。

それにだいぶ体もついてこれるようになってきている。違いない。

 

 

だいぶ強くなっていると自負できる。

 

 

「やっぱり、一筋縄ではいかなそうね!楽しそうだわ!」

 

「発言がサイコパスのそれですね」

 

「まぁ、でも…!貴方も本気にならないと死ぬわよ」

 

「……みたいですね」

 

 

どうにもこうにも、余裕はなさそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!?シオンと紫が!?」

 

 

遅れて状況を聞いた霊夢が素っ頓狂な声をあげる。その気持ちも分かる。私だってお嬢様から聞いた時は流石に驚いた。理由を聞いたが「どうせじゃれあいみたいな感じでしょ。弾幕"ごっこ"って言うくらいだし」とのこと。そういえばここは幻想郷だという事で割り切ったが……

 

 

「…紫中々本気じゃない?」

 

 

霊夢の声にハッとする。

確かに、動きがとても"ごっこ"と言える次元ではなくなってきている。

 

 

「白熱しすぎじゃない…?大丈夫なの?」

 

「さぁね…でもまぁ、少なくとも…」

 

 

そこまで言って、霊夢は不敵に笑ってみせた。

 

 

「アイツはただで死ぬようなやつじゃないわ」

 

「……えぇ」

 

 

信用していないわけじゃない。素直になろう、これは心配である。しかし、そんな心配は他所に次第に戦況は激しくなっていく。色とりどりかつ大規模な八雲紫の弾幕が一気に花開いたかと思えば、何食わぬ顔で黒く素早い弾幕を飛ばすシオン。

 

 

「ちゃっかり、無傷ね……」

 

「しかも病み上がり」

 

 

これには思わず皮肉的な笑みも出てしまう。

……本当。

 

 

『変わったわね』

 

 

記憶を取り戻した彼を見て、2人は口を揃えてそんな事を呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い加減にッ…しませんか!!」

 

「いやよ!!今最高に楽しいの!!」

 

「ははっ、サイコパスかお前」

 

「文字通り命懸けて戦う奴がよく言うわね!」

 

 

そんなやり取りを交わしながら、弾幕は躱す。不思議な程に脳は冴え、それに身体がついていく。筋肉がついたわけでも、覆す能力で変身した訳でもないのに。目の前で煌々と光る鮮やかな弾幕がハッキリと見える。

あまりに高密度。かつ高威力な彼女の弾幕は間違いなく脅威であるが、脅威であればある程冴えていく。

白熱してゆくに連れて濃くなっていく死の感覚が、より感覚を尖らせていく。

俗に言う興奮状態であろうか。だとするならば好都合。

 

もう十数分経っている。早く終わらせなければこの感覚も持たないだろう。

能力の発動がてら反撃を試みようか。

 

 

「ッ……反転!!」

 

「えっ……ちょっ!?」

 

「え、うそ……」

 

 

試しに覆す方を使ってみた。不思議と使おうとしたら使い分けられた。それまでは良かった。問題は『加減』であった。

恐らく俺の周囲数十メートルにまで拡がっていた紫の弾幕"全て"の進行方向が逆転した。

 

つまり、一箇所から放たれた弾幕が、その一箇所へと集まって動いている。その一箇所とは言わずもがな……

 

 

「何よコレぇっ!!!!」

 

 

八雲紫は只管にギャーギャー騒いでいた。

しまった、やり過ぎたか…?頃合いを見計らって全部まとめて個性で消せば……

まぁ……そうだな……

 

 

「食らえぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」

 

「ちょっと貴方そんなんだったっけ!?」

 

 

その甲高い紫の叫び声を最後に、弾幕が激しく衝突し合っては、眩い光と壮絶な爆裂音を出すのみであった。

 

………ほんのひと時の静寂。下の宴会の声ですら微かにしか聞こえない。そんな夜の静かな時間。

は、ほんの束の間であった。

 

 

「ふ、ふふふ……やるじゃない……!」

 

「えっ、生きて、え、うわ、こわっ」

 

「誰のせいよ!!全く…記憶を戻したから力はどれほどか試そうとしてみればこれよ…」

 

 

激しい爆煙の中から姿を現したのは血気満々殺気ムンムンのゆかりんであった。

こんなん、瞬殺か消耗戦になるだけじゃない…と紫はぶつぶつ言い続ける。しかし、まだまだ余裕そうな口ぶりと、その体には先で受けた傷らしきものは一つも見当たらない。少し煤けたくらいだ。

……一応、確認も含めて声をかける。

 

 

「じゃあ、その力量とやら分かったところでお開きにしますか?俺もさっきのが最大です」

 

「あら、何言ってんのまだお互い生きてるじゃない。死ぬまでやるわよ」

 

「ですよね……」

 

「というかまだ貴方の方使ってないじゃない。いつだかの様に悪魔みたいになってもないし、クジラ?みたいな技も使ってないし!」

 

 

おぉー…筒抜け……。

貴方の方…能力か。拒絶もバレてる。

くそぅ……。

 

 

「本気で殺し合うわよ!!」

 

「勘弁して……」

 

 

俺が辛うじて絞り出した要望は虚しくも届かず、恐らく先の戦闘より遥かに激化しそうな勢いである。勢いそのままにして、

 

 

 

 

 

 

第二ラウンド(激化)が、始まるのであった。






すみません遅くなりました…!!活動報告でも言っていますが、これから暫くは不定期投稿(遅筆)になります!
ご了承くださいませ。
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