東方弔意伝   作:そるとん

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 あの後、「そいじゃあまたどっかでな!!!異変で会うと思うけど!」と溌剌とした口調で魔理沙は俺に別れを告げた。彼女のあの発言を何度も頭の中で反芻した。

 なぜわざわざ彼女はあのような事を言ったのか。些か疑問ではあるが、彼女の正義感を考えてみれば妥当なのだろうか。

 いやしかし。

 魔理沙に限らず、俺が異変から帰るとどこか浮かばれない表情をする者もいる。一体なにが不満なのか。ポッと出の出生も解らぬやつなどやはり恐怖でしかないのだろうか。

 事実として、やはり俺の存在を良く思ってない人もいる。悪魔などと言う謳い文句を載せた新聞が出回ってから白い目で見られることも少なくはない。その事もあって(まぁ一番は自分がコミュニケーションが苦手という理由ではあるが)あまり知り合いに話しかけないようにしている。

 だが、やはり彼女らにも危害が及んでしまうのだろうか。距離をとった方が良いかもしれない。

 

 と、思いながらも、今回の異変解決のため、知人を訪ねにこんな森にまで足を運ぶことになっているのだが。

 

 ひとまず、来てしまったからには会おうと思う。いつぞやキノコを使って森に大量の煤を残してった森だ。大丈夫だろうか。この森の主とかに今更報復とかされないだろうか。

 一抹の冗談めかした不安に心揺さぶられていると、暗くどんよりした森の中に揺れる華やかなフリルを目撃した。アリスだ。まさか本当にいるとは。外に出た方が良いという旨も加えて伝えることにしよう。

 

 

「こんにちは、アリス」

「ヒョッ!…あ、あぁ貴方ね!こんにちは!!」

 

 

 突然背後から忍び寄るのは良くない。主に彼女の心臓に。

 珍妙な驚き声を発した後は、花が咲いたように彼女は笑った。普段からそう笑えばいいのに。彼女はどうにも緊張してしまうらしい。人里では「寡黙なクールビューティ」とやらでそれはそれで人気らしいが。

 しかしまぁ、俺としては笑った方が可愛いとは思う。

 さて、本題。

 

 

「驚かせてごめんね。今の異変について話を聞きたくて」

「異変?あ、あぁ〜、宴会のことかしら?珍しく私にも誘いが来たけれど思い当たる節もないし不気味だから断ったわよ」

「アリスのところにも来たんだな?出不精なのに」

「よ、余計なお世話よ!!だからこそ変だと思ったの!」

 

 

 確かにな。アリスはいつも魔理沙に誘われて宴会に来ている。だが今回話を聞いてみると人里で買い物をしているときに話しかけられたらしい。先も言った通りアリスは美人という事もあり、加えて「寡黙」と称されている。クールビューティな女の子に尻込みして話しかけられない人がほとんどだ。

 なのにこれは…?

 かなり広範囲に渡ってこの異変が流布しているように思える。それもそうか。あまり地上に現れない鬼達もこぞって宴会に参加している。

 以前、霊夢に鬼の話をしてみたことがあったのだが「昔はこんなに這い出ては来なかった」との事だ。何か原因があるようにも思えるが、俺が突き止められるようなことではなさそうだ。いかんせん、幻想郷に来て一年と少しくらいであるからだ。知ろうにも幻想郷を知らなすぎる。

 1人ブツブツ考えているとアリスが口を開いた。どこか浮かない表情だった。

 ついさっきも、このような子を見た。

 

 

「……また解決に向かうの?」

「え……ま、まぁ…宴会は悪い事じゃないけれど、人と鬼ではいつ何があるか分からない。現に恐怖を感じている人もいるわけで」

 

 

 もっとも、俺も恐れられていたりするが。

 それでも良い。何かがあってからではあまりにも阿呆らしい。救えるうちに救えるのであれば、行動に移すべきだ。

 だが依然としてアリスの眉はハの字である。

 

 

「貴方は、その…どうしてそこまで動けるの?あ、って言うのも、人のためにというか…その…」

 

 

 どこかアリスは辿々しい口振りでそう聞いた。

 どうして。

 

 

「知らないけど、守らなくちゃいけない気がするんだ。こんな俺でも向かえ入れてくれた幻想郷を。それに…」

 

 

 それに。

 人間は弱いから。

 そこまで言いかけて口をつぐんだ。もう手遅れなんだろうけれど、自分が人間ではない事を認めるような気がして。

 人がどんな生き物であるか、諦観してしまうような気がして。

 決して見捨ててなどいない。裏切りも、呪いも、心がある限りどうしても避けては通れない。だからこそ、純真な心情があるという事を、信じてみたい。

 そのことを改めて口に出してしまっては、まるで人里に生きる彼らへの信頼が薄くなってしまったことを認めてしまうようだった。俺はそれを甘んじて受け入れようとは思えなかった。

 

 だから嘘をついた。

 

 

「それに、これぐらいでしか役に立てないから」

 

 

 多分俺は下手くそな笑みを浮かべたと思う。

 安心させようという気持ちで埋まっていた。先にも、このような表情を浮かべた女の子を知っているからだ。

 心配には及ばない、と。

 それだけ伝えられればよかった。

 アリスは俯き、表情は伺えなかったが、声はどこか震えていた。

 

 

「……じゃあ、せめてものお願い」

「え、う、うん」

「無理はしないで」

「え、どういう…」

「お願いだから」

 

 

 アリスの気迫に押された。

 少し近づいたかと思えば、俺の手を力強く両手で握った。「お願いだから」とどこか悲痛に聞こえたが、伏せられた目を少しこちらに向けて、じっと見つめたその表情が、俺に声を発する事を許さなかった。

 心のしがらみが、増えたように感じた。

 

 

 

 

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