アカメが斬る〜IFルート クロノスがKILL〜   作:ヌラヌラ

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第6話〜思いがけぬinvitation〜

 マサムネの口から休憩という言葉が発せられてから数十分程度の時間が流れる。

 するとアカメとレオーネが目当ての肉と酒を持って来たところで、アカメは料理をすると言ってタツミを連れて厨房の方へと向かい、レオーネは酒瓶を開けようとしたところでナジェンダに睨まれて渋々瓶を手から離していた。

 

「よう、ずっと立ったままなのも疲れるだろ。コレ使ってくれ」

 

 ブラートが背後に接近していた事にマサムネは気がついていたが、視線を落とした先に椅子がある事までは予想できていなかった。

 

「良いのか?私は君達にとってアジトに忍び込んだ侵入者なんだが」

 

「気にするなよ、ボスからの指示だ。それに話してみて戦ってみて分かったが、アンタはそう悪い奴じゃなさそうだ!

ボスも敵意は無いって判断しているしな」

 

 ナジェンダの方に目を向けると少しだけ立派に思える革の椅子に腰を預けていて、料理のために場を離れた二人を除いた人数分の椅子が部屋に用意されていた。どうやら話が少し長くなると見ているようだ。

 

「では遠慮なく。

しかし、私の持参した物をそのまま料理に使うとは些か不用心ではないか?」

 

 マサムネはブラートの用意した椅子に腰をかけると、やや呆れた声で口に出した。

 ブラートが自分の椅子に座ったのとほぼ同時にレオーネが口を開く。

 

「ハッ、甘く見ないで貰いたいねぇ。アカメと私に掛かれば食材や酒の毒が仕込まれてるかどうかなんて見抜くのは朝飯前さ」

 

 文字通り強調するように胸を張って答えるレオーネ。

 確かに彼女の言う通り、暗殺部隊出身のアカメの口に入れる物に毒の有無を見分ける知識と経験。帝具を使って強化されたレオーネの嗅覚の前ではナイトレイドの毒殺は困難を極めるだろう。

 尤もマサムネがそんな事を知っているわけもなく、するつもりもない事ではあるが。

 

「さて、休憩はもういいだろう。

先程は最後の質問と言ったが私はお前に興味が湧いた、時間を空けて情報を整理したところでまたいくつか聞いてもいいか?」

 

 豪華な椅子に座り、タバコに火をつけてナジェンダはマサムネへと問う。タバコの煙が嫌悪感を生むのか他のメンバーは顔をしかめてナジェンダを見るが、知ってか知らずか彼女は火を消すつもりはない。

 

「答えられる範囲であれば幾らでも受け答えに応じよう。幸いにも私はこの後予定は無い」

 

「それなら、先程仮面ライダーになるためにはガシャットなる物があればそれとは違うベルトでも可能と言っていたな。すると、お前の他にも仮面ライダーは存在するのか?」

 

「その答えは、イエスであり恐らくノーだ。

まず私の見た戦いの記憶では仮面ライダーと言う存在は複数居た。神を名乗る男が作り出したこのベルト以外の変身方法で仮面ライダーになった者たちも居る。

だがこの世界で仮面ライダーは私以外、存在を確認していない。

……少なくとも、私のように戦いの記憶の中の者たちと同じ名前を持つ者が仮面ライダーになる事はあり得ないだろう」

 

「そう言い切る自信は?」

 

 遮る様にブラートが疑問をマサムネへと投げかけた。

 

「私の故郷に居たからだ、私の見た戦いの記憶の中の戦士と同じ名前を持つ者達が五人な。

彼等がどうなったのか……それは先程話した村と同じ運命を辿る事となった。

同じ名前の人間が死んだと言われたならそれまでなのだろう、だが私には分かる。彼等も私と同じ仮面ライダーになれる存在だったのだと……」

 

 天を仰ぐ様に顔を動かすマサムネ、その仮面の下ではどこか悲しい表情を浮かべているのだがそれをナイトレイドの面々が知る事は無い。

 

「じゃあ次は俺が聞きたい事がある。表立って子供達に勉強教えていて裏では俺たちみたいに薄汚い人殺しを行っている……アンタの目的は一体なんだ?」

 

 問い掛けるラバックの表情は複雑であった。ナイトレイドメンバーの中で唯一マサムネと面識があり、人格者とも言える顔を知っていてそれが本当の姿だと思っていたのだから、暗殺業に身を置くラバックと言えどもほんの少しだけ動揺をしているように見えはするがショックが大きいようだ。

 

「私の目的……?

君には本を始めて借りた時に話した筈だ。

勉学を学びたいが貧困という理不尽な理由でそれが叶わない子供達の力になりたいと。輝く道を夢見る希望の手助けとなる事が今の私がすべき事だとな」

 

「ふざけんなっ!それのどこが殺しをしている理由になってるんだよ!

……俺達はみんな覚悟を決めてこの稼業やってるんだ!それを大した覚悟も無く人を殺してて子供達の前ではカッコいい先生でいたいだと?笑わせんな!

教え子達にアンタが今までやってきた事を教えてやろうか!!」

 

 ナイトレイドの中で誰よりも愉快な存在であるラバックだが、反面誰よりも冷静に物事を見ている。そんな彼が激情に任せて立ち上がりマサムネに近付いて首に手を掛ける。

 普段のラバックらしくない行動に皆が動揺するも一先ず落ち着かせようと止めに入ろうとした所で、立ち上がらされたマサムネは身長差のため下から伸びている手を掴んで少々乱暴に首から離した。

 

「そんな事を言ってみろ……私は君を……いや、君達を全員絶版にする」

 

 静かに、だがはっきりと、怒気を含んだその声に皆は硬直する。

 普通であれば絶版という言葉が何を意味するのか分からないだろう。だがクロノスの姿で言い放たれたマサムネのその言葉からそれは死である事が本能で理解出来た。

 元来マサムネ本人には手練れの暗殺者達を戦慄させる力など持っている筈がない。だが彼等に畏怖を覚えさせたのはクロノスの威圧感が成すものなのか。

 

「嫌われるものだ、おしゃべり過ぎるということは……今の私にはそれこそが最も優先すべき事だ。この言葉に嘘偽りは無い。教え子達が私がクロノスである事を知る必要もな。

そして私が人を殺す時。それは未来の希望を曇らせる程の大罪を犯した存在の排除、または理不尽極まりない理由で虐げられた力なき者に代わり報復を果たす時だけだ。

性根が腐り堕ちたあの一家も、鬼のオーガも君達が殺さなければ私が殺していた。

覚悟ならある。今まで私が関わった者すべてを覚え、手を掛けた者の命や助けられなかった者達の思いを背負う事。それが私が心に定めた覚悟だ」

 

 そう言ってマサムネは椅子に腰を落とした。静かに見せた怒りも収めで何もなかったように振舞って。

 

「……子供達に勉強を教えてる顔も汚い殺し人の顔もアンタの姿だってか。そんで子供達の未来が曇らないように悪人達を殺してるか」

 

「なにそれ、偽善も良いところじゃない」

 

 思うところがあるのだろう、ラバックは再び視線を床へと落として自分の席に戻るがマインは悪態混じりの言葉を漏らした。

 

「確かに偽善だろうな。

だが仮面ライダーとは人間の自由を守るために戦う者だ……そしてこの国には自由を奪う存在が多すぎる。

別に綺麗事を並べているだけだと非難されても構わんさ」

 

「どんなお題目を付けようと殺しは殺し、どんどん汚いドブ沼に浸かって行くだけだ。アンタもしかしてその行為に正義なんてものを含ませているんじゃないだろうな?」

 

「例外はあるが仮面ライダーは正義の味方でなければならない。そして彼等は強い信念を持って戦っていた。

だが正義なんてものは人それぞれの形をしているだろう。例えば勝者が正義だと言う者もいれば罪人を屠る事が正義と言う者、弱者を守る事が正義だと言う者。

正義か否かを判断するのはあくまで他人、それが私の持論だ。そしてこの世界の仮面ライダーが私のみである以上その勤めを果たさねばならない。

表向きは賊を捕らえる正義の味方でいて、裏では手を真っ黒に汚しているが強い信念にしたがって行動しているつもりだ。その結果君達に偽善や卑怯者だと揶揄されてもわたしは構わない」

 

 皮肉混じりに不敵に笑いながら問うレオーネに対して、マサムネはクロノスの仮面の下で真っ直ぐにレオーネを見据えて答える。今の自分の行動に迷いは無く、後悔もしていないと言うかのような態度で。

 

「どんな信念があろうが、果たすべき勤めがあろうがアンタも俺達も人を殺してるんだ。いずれ報いは受けるぜ?」

 

「だろうな、だがそれは未来の話だ。人は死因が何であれいつかは必ず死ぬならば私は今出来る事を行うだけだ」

 

 マサムネの返事を聞いてブラートはそうか、と一言言って腕を組み納得したようで目を閉じた。

 暗殺稼業というものは常に危険と隣り合わせの極限状態を強いられる世界。故に人が嘘をついているのかどうかを見抜く力は自ずと長けてしまうものだ。少なくともマサムネが嘘をついていないと、この部屋の数人はそう思った。

 

「アンタが言った事がホントかどうかなんて結局は分からないわね」

 

 マサムネに対して懐疑の目を逸らさないマインは冷たく言い放つ。

 

「その反応は当然だろう。私達は先程始めて対面し、私に至っては言葉を紡いでも保身の為に変身を解こうともしていないのだからな。それで信用してくれと言うのは虫がいい話だ」

 

「でもとりあえずは良いわ、今後のアンタの態度でアタシは判断するから。

アタシが聞きたい事はあと一つ、なんで仮面ライダーとかいう強力な力持ってるのに権力とかそういったものを得たいって思わないの?」

 

 マインの言葉にマサムネは初めて言葉を詰まらせる。

 

「……正直に言おう。初めて帝都に来た時はクロノスの力を己が欲のままに使いこの国を支配してやろうと思っていた」

 

 少し長い沈黙を空けてマサムネの口から出た答えに一同は沈黙を続ける。

 腕を組んで視線を誰にも合わせずにやや上の方を向いてマサムネは続ける。

 

「だが結果は知っての通りだ。私がそんな立場にいる事は無く、この国は皇帝が幼くてその結果信頼されている大臣が権力を牛耳り悪政を敷いている現状が長いこと続いている暗黒の世だ。

確かにクロノスの力を持ってすれば大臣……いや、皇帝にすら成り代わりこの国を統べることも可能だろう。しかし、そんなものに興味を感じなくなってしまってな」

 

「なぜ実行もしないで急に気が変わったんですか?」

 

「……すまないがその質問には答える気はない。誰にだって触れられたくない事はあるはずだ」

 

 シェーレの何気ない質問にマサムネはこの場で初めて返答をしなかった。

 自身の力の根源を語るため両親との死別すら話した男が初めて口を紡いだのだ。その事の深さを察して誰もそれ以上の追求はする気にはならなかった。

 

「話したくないのなら我々もそれ以上聞く事はない。元々そういう話だからな。

さてマサムネ、お前は先程この国が暗黒の世だと言ったが、この国にすむ民のことを憂いた事は無いのか?例えば大臣をはじめとした悪徳高官を粛正して国を良くする事を考える事はあったか?」

 

 ナジェンダはタバコの吸い殻を鉄の義手で握り潰すと、話の流れを変えるためにマサムネに国の行く末を案じたかを問う。

 マサムネは口を開くが、どこか先程よりも言葉が冷めたようである。

 

「考えた事ならある。この国に住んでいる階級が平民以下の人間なら誰もが考えた事はあるだろうな」

 

「ならば話が早い。マサムネ、私達と共に甘い蜜を啜り続ける外道どもを排除してこの国を変えるつもりは無いか?」

 

 ナジェンダからの勧誘にマサムネは少し考えるように顎に指を当てて、少しの間を空けると右足を上にして足を組んだ。

 

「それは、単純に殺し屋集団の一員……いや、正確には革命軍の暗殺部隊の一員になれと言う事か?」

 

 マサムネの返答に彼を除く室内全員の目付きが暗殺者のそれとなり立ち上がると各々が装備、又は近くに置いていた武器を手に取りマサムネを囲む。

 ナイトレイドが帝国に反旗を翻している最大勢力である革命軍の暗殺部隊である事実は当人や大元の革命軍の中でもある程度階級が上の人間しか知られていない事である。

 それを侵入者であるマサムネの口から語られ再び不審の目が彼に向けられる。

 

「君達も学習というものをした方が良い。私に対して武力行使は無駄だと分かっているだろう。

落ち着きたまえ、何度も言っているが私は危害を加えるつもりはない。君達が手荒な真似をしてくるのであれば話は別だがな。

少し話を逸らすが村にいた頃は簡単な読み書きしか出来なかった私が一体どこで子供達に算術や読み書き、歴史と言った事を教える知識を身につけたと思う?

答えはこの国で最も書物が存在する場所、宮殿の書物庫だ」

 

「今更アンタが宮殿に忍び込める程の力があっても別に驚かないわよ、それがどうかしたの!?」

 

 大きな銃を握る手に力を込めてマインは強くマサムネへと問う。その様子にマサムネはやれやれと言った様子で両手を上に向けて広げる。

 

「察しが悪いな。確かに私の発言で冷静さが欠けるのは無理もないと思うが気をつけた方が良い。

私が知識を得た場所と君達が革命軍だという情報を得た場所が同じだと言うことだ。ちなみに、革命軍の今後の進軍の経路や部隊の規模、君達以外の暗殺部隊の潜伏場所や本拠地を除く幾つかの拠点の情報といったものもあったな」

 

「元軍人の俺がナイトレイドの一員なんだ。革命軍と繋がってるって考える人間がいてもおかしくは無いと思っていたが……」

 

「まさか、そこまで情報が漏れてしまっているとは……」

 

 唖然とするブラートとナジェンダをよそにマサムネは続ける。

 

「確かに元は革命軍は義勇によって立ち上がり組織された集団なのだろうが、人が多くなれば歪みは生じてしまう。

帝国の高官は私腹を肥やす事に躍起になる者ばかりだが少なからずこの国を憂う者もいるように、心の底から革命を成そうとする人間が大多数の中に少数の帝国から贈り物をもらっている裏切り者がいるようだ」

 

「……国を思う心があって宮殿に忍び込める力も持ってる。それならアンタはこの国で悪虐の限りを尽くす高官達を何で野放しにしてた?」

 

「君なら薄々気付いているだろうラバック君。

結論を言えば私一人が躍起になっても意味がない、下手をすると更に悪い状況を生み出しかねないからだ。

仮にこの国の実質的な権力を握っている大臣を殺したとしよう、次点の権力者がきっと彼と同じ事をするだろうな。

それを続けていればいつかは人の心を持つ内政官が権力を得るだろうが、ある者は大臣に濡れ衣を着せられて粛正され、ある者は革命が成った後の世の為と革命軍に引き抜かれた今、良識派と呼ばれる政治家がこの国に何人残っている?

大方出来上がるのは武官のみが残った国、そして好機と攻め込む革命軍(君達)、今度は自分が権力を握ろうと賊や武官が入り乱れる群雄割拠の戦乱の世になるというのが私の推測だ。

そして推測通りに進んでしまったら泣きを見るのは力の無い民達、未来の希望も潰えてしまうだろう」

 

 自分の考えの最悪な流れを少々大げさに語ると、ナイトレイドのメンバーは全員黙り込んでしまった。誰一人としてそんな事はあり得ない、と言えないこの国の窮状がその沈黙には現れている。

 

「ある意味、この国の悪徳高官は尊敬するよ。ここまで国力を削り続けても最低限の国の形を残しているのだからな」

 

「そんな人達を尊敬……ボス、この人を仲間にするのはやめませんか?」

 

「フフっ、確かにそうだ。そんなやつは勧誘しない方がいいや」

 

 マサムネの皮肉を込めた言葉を直接的な意味で解釈をしたシェーレの発言に緊張の糸が切れたのか、思わず噴き出すとレオーネも茶化すように賛同する。その空気が伝染したのか、他の面々も苦笑を浮かべたりと反応は様々だが幾らか緊張が解れた。

 空気を緩ませ過ぎる訳には行かないと判断したナジェンダは一つ咳払いをしてマサムネを見据える。

 

ナイトレイド(私達)が革命軍である事を知っているのなら話は早い。私達は今は帝都に蔓延るクズを殺しているが、革命軍が決起した際は混乱に乗じて大臣を始めとした国を疲弊させた元凶達を皆殺しにするのが真の任務だ。

革命軍には有能な内政官となれる人材も数多く所属していて、革命が成った後の事は心配いらない。

単独で宮殿に侵入する胆力と仮面ライダーの能力、あらためてお前が欲しくなった。どうだ、私達の仲間になるつもりはないか?」

 

 夢物語を語る子供の様に、玩具を欲しがる子供の様に熱を上げてナジェンダはマサムネへと勧誘の言葉を投げかける。

 

「仮に嫌だと言ったら私はどうなる?

この場で、とは言わなくても暗殺の対象にされるのか?」

 

「……本来なら、このアジトの場所を知った者は口封じの為に殺すか革命軍の工房へと行ってもらう事になるが、お前相手ではそれは出来ないだろう。

だが、この国を憂う心を持つお前だ。先の質問、聞いただけで特に意味は無いんだろう?」

 

 元帝国の将軍として様々な人間を見てきたナジェンダは人を見る力も長けている。そのためマサムネの本心を幾らか確信していた。

 事実、マサムネも革命というこの国が無くなる形ではあるが教え子達の暮らしが良くなり、彼等達が選べる未来の選択肢が増えるのであればこの話に乗っても良いと考えていた。

 ただ一点の不安を除けば。

 

「一つ、聞きたいことがある。

武力にて革命を起こすという事は当然この国が戦火に包まれるという事だ。その時、この国に暮らす善良な国民達が巻き込まれないためのプランはあるのか?

もし、そんな物が存在せずに仕方がない犠牲として最初から救うつもりが無いのであればこの話を受ける事は出来ない。革命は何としてでも止めさせてもらう」

 

 マサムネの発言に対してナジェンダは静かに笑い、彼の唯一の不安要素に答える。

 

「案ずるな。お前も言った通り、革命軍も義勇の元、国と民のために立ち上がった者が集った組織。その為の策も用意しているさ。

……それでも、確かに犠牲は出てしまうだろう。元々最小の犠牲で帝国を倒すのが革命軍の目標……だが、それを仕方の無いものとして割り切るつもりはない。救える命は必ず救う!」

 

 力の無い者の犠牲。

 マサムネは異世界の戦いの記憶を思い出す。

 バグスターウィルスが世に生まれ、数多くの人間が感染して苦しみ、そして命を落とした。

 感染した人間を救う為に仮面ライダーが戦うもその全てをその場では救えなかったこともあった。

 後にゲーム病で命を落とした者は生き返れる可能性が見出されたようだが、その後どうなったのかはマサムネには分からない。

 だが、救えなかった事があっても彼等は患者という弱い者の為に戦った。医者として、仮面ライダーとして。ならば自分はこの世界で唯一の仮面ライダー、得たのが彼等に倒された側の仮面ライダーの力であったとしても彼等と同じように力無き者の為に戦う義務があるのだろう。

 答えを決めかねていたマサムネは決意を固める。

 

「二つ、条件がある。

一つは私は自分の都合を最優先させてもらう。仮に軍が帝都を攻めて来た時に、私の目の届く範囲に逃げ遅れた民が居たら、大臣の暗殺を請け負っていてもその者の救助を優先させてもらう。

勿論、その様な状況でない限りはどんな暗殺も成功させてみせよう」

 

「……構わない。そんな状況を生み出さないように尽力する。帝国を倒す為にお前の力が欲しいからな。

もう一つの条件は?」

 

「私の勝手な私欲を満たす為のものになってしまうが……学校を作って欲しい。今の富裕層の子供しか通えないものでなく、貧富の差など関係無く勉強したいと思っている子供が無償で通える学校をだ。

この条件を飲んでくれるのであれば、私は君達に協力しよう」

 

 私欲を満たすと言っておきながら、学校を作れとの要求だったため皆が目を丸くした後、ナジェンダは口角を上げて答える。

 

「それは、私達革命軍の政策の一つだ。利害は一致したようで安心したよ」

 

「どんなご高説を垂れてもアンタのして来た事、これからもする事は所詮は殺し。業が消える訳でも無いし、万が一アンタの正体も子供達に知られるかもよ?」

 

 水を差すかのように冷たく言うマイン。その言葉を受けてマサムネはバグルドライバーⅡに刺さっているガシャットに手をかける。

 

「業が消えるなんて思ってもいない。そしてその時は……彼等に私のその後を審判してもらう事にするさ。私の存在が拒絶されるのであれば、その裁きを受けるつもりだ」

 

 マサムネはガシャットを掴み、バグルドライバーⅡから引き抜く。

 

『ガッシューン』

 

 無機質な機械音が流れると同時にクロノスの鎧が粒子となって天に昇り消えていく。そしてクロノスの鎧が完全に消え去ると、そこにはスーツ姿のマサムネが立っている。

 ラバックにとっては見慣れたその姿が何一つ変わる事が無く。

 

「鎧は外さないんじゃなかったのか?」

 

 ブラートの問いにマサムネは彼の目を真っ直ぐに見据えて答えた。

 

「人の信頼を得るには誠意を見せなければならない。君のボスが私の……いや、仮面ライダーの力が欲しいと言い、対価として私の提示した条件を飲んだ。ならば私もこの場で正体を見せるのが筋だろう。尤も、この顔はラバック君に知られているがな」

 

「ボスの言葉が嘘で私達に襲われてベルトを奪われるとか考えなかったんですか?」

 

 そう言ってシェーレは指を顎に当てて首を傾げた。

 

「その時は……全力で抵抗させてもらうだけだ。そしてそのプランを選択しなかった事は正解だろう、お互いにデメリットしか発生しない」

 

 マサムネは自身が身に付けているバグルドライバーⅡを指差して不敵に笑う。

 

「このベルトは本来、人間用に開発された物ではない。バグスターウィルスの上位種であるバグスター用に開発されたベルトだ。バグスターウィルスの完全な抗体を身に付けていない人間が使用すれば必ず死ぬ。仮にガシャットを使うだけでもこの世界では治療不可能なゲーム病に感染してしまう」

 

「見くびられたものだな、私がそんな事をすると思うのか?」

 

「分かるわけが無いだろう、今日初めて会話を交わしたのだからな。だが、貴方の印象は悪くなかった」

 

「改めてようこそナイトレイドへ、歓迎するぞマサムネ」

 

 ナジェンダは生身の腕である左手をマサムネに差し出す。マサムネはその手を取り、ここにナイトレイドと仮面ライダーの協力関係が結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 アジトの建物から少し離れた崖に数個の石が積み上げられ花が添えられている物が二つ月明かりに照らされていた。

 その前でマサムネは膝を曲げて座り両手を合わせて目を閉じている。

 

「ありがとな、アイツらのために」

 

 マサムネの後ろにタツミは立ち、友の墓前で黙祷を捧げてくれる彼に感謝を述べた。友人に今際の言葉を自分にかけさせてくれる体力を与えてくれ、また死後も祈りもしてくれるマサムネにタツミはどこか嬉しさを覚えて、悲しみは未だに癒えることは無いが少しだけ顔が綻ぶ。

 

「私が生きている限り、私より先に死んでしまった者の事を覚えていると決めているからな。それが供養になると聞いてからはな。

……すまなかった。二人を助ける事が出来なくて」

 

「……イエヤス、最期は笑ってたよ。たぶん、アンタみたいな人に会えて良かったって思ってると思う」

 

 マサムネはそうか、と零すと祈りを終えたのか立ち上がりタツミの方へと向き直る。

 

「ありがとう。あの尋常ではない量の洗い物の途中で抜けて来てもらえて申し訳ないな」

 

 マサムネはナジェンダと握手を交わした後、仲間になるのだからと食事もご馳走になった。

 だがメンバーの全員が彼を受け入れた訳では無かった。

 ナジェンダはその力に惚れ込み、ブラートとタツミは好感を持ったが、ラバックは終始複雑な顔をしていてアカメとシェーレは中立といった所、反りが合わないのかマインとレオーネは不服なようである。仲間になっておきながら家事等のアジト内での仕事はせずに住みもしない、常に自分を優先するといった特例も反感を買う理由には十分なものだろう。

 

「良いって良いって、それよりこれからよろしくなマサムネさん!」

 

「こちらこそ、よろしく頼むよタツミ君」

 

 タツミが親指を立ててマサムネに向けると、マサムネは頷いてそれに応えた。

 

「おーいタツミー!あんまりサボってるとアカメちゃんが怒るぞー!」

 

 手を振りながらラバックが二人の方へと近づいて来る。だが、まだ複雑な心境なのかやや曇り顔で懐疑的な目をマサムネには向けていた。

 

「ああ、悪いサンキューラバ!じゃあなマサムネさん!」

 

 そう言ってタツミは建物の方へと小走りで向かって行った。

 その後二人は暫く無言であったが、やがてラバックが口を開く。

 

「……ずいぶんタツミには慕われたもんだな。たぶん、初めて俺もアンタに会って大量の本を借りて行かれて理由を聞いた時、同じ顔をしてたと思う」

 

「……納得はしてくれないだろうが、あの時の言葉に嘘はカケラも存在していない」

 

「……だろうな、ボスに出した二つ目の条件聞いた時にやっぱりアンタは教師なんだなって俺は思った。

ボスが受け入れた以上アンタも俺らの一員なんだ。心の整理もちゃんと付ける、その時はまたアンタを先生って付けて読んでやる」

 

 そう言い終えるとラバックは踵を返して手を挙げて建物の中へと戻って行った。

 言葉には出さなかったが、マサムネもその時が来ることを願っている。

 

「明日も子供達が待っている事だ、帰るとするか」

 

 そう零してガシャットを取り出すと、一陣の優しい風がマサムネの背中を押すように吹く。今朝、あの女性の墓の前で感じたのと同じ風だった。

 マサムネは考えていないが、その風はまるで今度はイエヤスが背を押してくれているかのようだった。

 ただ詫びを入れに来ただけのつもりだったのだが自身がナイトレイドに加入する事になるとまでは考えていなかった。だが、協力する事で子供達の未来がもっと明るくできるのならと少年少女達の未来に希望が見えて心地が良い気分になった中で帰るためにガシャットを起動した。

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