僕と死と消えない呪い   作:白黒羽

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三十二話 犠牲

「それでは___」

 

教室に僕らの担任である福原先生の声が響き渡る。

たいして大きな声を発していないのにもかかわらず、彼の声は洞窟の中でこだまするようにハッキリと聞こえた。

その理由はいたって単純。周りが静かだからだ。

 

完璧なる静。

 

普段からは想像もつかないかもしれないが、今このクラス(Fクラス)は静かだった。

だれ一人喋っておらず、物音もない。

 

Fクラス全員が座布団に座っていてた。

物音ひとつたてずに、ただ・・・座っていた。

鉛筆を握り締め 彼ら全員はある一点を見つめていた。

 

彼らが見つめる先には福原先生が手に持っているテストだ。

そのテストはただのテストではなく、これから自分が行くクラスを決める特別なテスト。

 

振り分け試験だ。

 

一番後ろの端っこに座っている僕からでも彼ら、もといゴキブリィ~ズ(ゾンビ共)、が発する張り詰めた何かが感じられる。

 

緊張、やる気、気合といった様々なものが混ざりあって今このクラスは感じたこともない空気で圧迫されていた。福原先生もその空気に蹴落とされているのか、若干顔が引きつっており、額から汗が伝っていた。

 

正直に言おう。

 

 

 

 

 

ここから出たい!!

 

 

 

 

こんな空気の中にいたくない!

しかもそれを放出しているのがゴキブリときた!

これは一刻も早く脱出せねば僕が吐く!気持ち悪くて!

 

 

しかも、元からこの教室の空気は腐った物と者によって空気が感染されていたためやつらが放つ意味のわからない気との相乗効果でさらに気持ち悪さは倍ときたものだ。

 

 

 

 

軽く吐く!!

胃が周りの雰囲気のせいで重くなり、肌から感じるこの張り詰めた空気が僕のことを少しずつ痛めつけてた。

 

今僕は毒によって少しずつ体力と生命力が削られていると錯覚してしまうほどだった。

ていうか、もう毒でしょこれ!

 

 

毒の霧とたとえるのが一番しっくり来るようなものだった。

そんな毒の霧が充満している教室で振り分け試験を受けることになったのだが・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

集中できるかボケェ!!!

 

 

 

 

なんなのこれ!?拷問?

今からトイレにダッシュして吐きたいんだけど!いやマジで!?

 

 

 

でも・・・・・・・・集中する必要もないか・・・

 

 

結果は・・・・・・もう目に見えている。

 

 

 

 

いや

 

 

 

 

 

もうわかっているのだから。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

自然と僕の手に握られていた鉛筆に力が入る。

思い出されるのは今朝、僕の親友たちが言った言葉。

 

 

『ワシはおぬしらと一緒に居たいのじゃ』

『・・・お前はどこにいくつもりだ?』

『俺もお前らと・・・・じゃなった___』

 

 

『・・・・・翔子・・・俺は・・・』

『ワシらがEクラスに?』

『・・・・・お前もEクラスに行くんだな?』

 

 

 

 

 

 

『おぬしらと居たい』

 

 

 

 

『・・・・お前はどうする?』

 

 

 

 

『俺も・・・・・』

 

 

 

 

 

鉛筆に込められていた力がさらに強まる。

このまま真っ二つに折れてしまうくらいに僕は鉛筆を強く握り締めていた。

下唇を噛み、もう片方の手で頭を抑える。

 

 

何を僕は考えているんだ・・・・・

 

 

考えるのをやめたはずだ・・・・・

 

 

僕は・・・・・・・・親友たちを傷つけないために離れるつもりだったはずだ・・・・・

 

いや・・・・

 

 

親友たちだけではなく、ほかのクラスにいる人たちも・・・・・・誰も傷つけないと決めた!

誰も巻き込まないと決めた!

もう____

 

 

 

 

 

 

『同じ事が起こらないように』決めたはずだ・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

そうだ・・・・・・・・・・・・・・

悩む必要はない・・・・・・・・・

 

 

もう決めたはずだ。

『同じことが起こらないようにすると』

 

 

 

防ぐ方法なんて簡単だ・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

握っていた鉛筆から力が抜ける。

今まで強張っていた顔からも力が抜け、いつもの無表情に戻る。

 

完全の無。

表情などない。顔からすべての力が抜ける。

頬にも力はない

眉にも力はない

唇にも

目蓋にも

鼻にも

眉間にも

 

 

何も考えない・・・・・

やることはわかっている。

 

 

 

もう一度言う

 

 

防ぐ方法なんて簡単だ・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

僕が犠牲になればいいのだから

 

 

 

 

 

 

悩む必要などない。

前から決めていたことだ。

『ずっと』・・・・・『ずっと前から』。

 

 

 

 

ごめんね皆。

これも・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

君たちのためだから。

 

 

 

 

先ほど前から気持ち悪いと思っていた空気も感じない。

何も感じない。何も考えない。

 

考える必要などない。

やることは決まっている。

 

 

僕は鉛筆を持ち上げて、配れた答案用紙に吉井明久と学年と主席番号と日付を書く。

 

 

 

 

これだけだ

 

 

 

 

後は何も書かない。

白紙のままでいい。

 

持っていた鉛筆をおろす。

ゆっくりとちゃぶ台の上に置いて、僕は役目を終えたように肩の力を抜いた。

 

 

 

 

後は・・・・・待つだけだ。

 

 

これでいい。

 

これでいいんだ。

 

 

 

 

これであっている。

 

 

 

 

 

なのに・・・・・・・

 

 

なのにどうしてだろう。

 

 

 

 

ちゃぶ台に両肘をつきながら両手で頭を抱える。

うなるように頭を押さえて僕は黙り込む。

 

 

 

どうして・・・・・・・・・

 

 

なぜかはわからない。

原因もわからない。

 

 

どうしてこんなにも・・・・・・・・・・・・

 

 

 

苦しいんだ・・・・・

 

 

間違ったことはしていない。

僕は皆を守るために、傷つけないためにやっている。

 

 

なのにどうしてだろう。

親友たちの言った言葉を思い出すたびに・・・・・・・・・・

 

 

 

胸が苦しいのは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぞの胸の痛みのことを考えていてもなにもわからないままなので僕はこれ以上その事で考えるのをやめた。

時間はたっぷりある。

 

名前を書いただけなので残りの時間をどうしようか考えていた。

一応鉛筆は握ることにしておいた。

 

途中で気づいたことだが、振り分け試験のテスト問題は時間内で無制限だったので何もしていないとおかしい。

 

なので教師に怪しまれないために僕は鉛筆を握り何かを書いているふりをしている。

それと康太と雄二も近くにいるので僕が何も書いていないのに気づけば僕がここに残ることがばれてしまう。

それはなんとしてでも避けたい。

 

もちろん、絶対にFクラス以外に入るとは限らないけど。彼らなら不可能ではないだろう。

彼らなら・・・・・・・ここから抜け出せるだろう。

 

 

 

この・・・・・・・・・・・血と殺戮に満ちた教室から・・・・・・・

何回も僕を殺し続けた・・・・・・殺人者の集まるこの『地獄の教室から』

 

 

 

 

「っと・・・危ない危ない・・・・・・・」

 

 

ぽけぇ~っと虚空を見上げていた僕は教師が隣に来たのに気づいて急いで視線を答案用紙に戻す。

 

僕たちがテストを受けている間。

教師が見張りとしているわけだが僕たちの教室には見張りが3人いる。

本当は一人だけで十分なのだが、僕らはFクラス。

何をしでかすか分からない。カンニングしようとするやつ等だって居るかもしれない。

 

僕らの周りには福原先生だけではなく西村先生と高橋先生もいる。

彼らは全員見張りだ。

 

 

っといっても。見張りなら西村先生だけで十分だと僕は思う。

不死身なゴキブリでも西村先生だけには弱い。

 

近くに居ると分かっているだけで彼らはおかしなことはしないだろう・・・・・・っとはいえないか。

でもまっ、確率が減るのは事実だね。

 

西村先生が居ても悪さはするけどたまにやる程度だ、しかもほとんど防がれるからね。これが福原先生とかだったらほぼ100%悪さをするだろう。

 

 

 

ふぃっと横目で康太と雄二を見る、そして次に目の間にいる秀吉の背中をみる。

 

 

 

 

最後にもう一度言わせてほしい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・・ごめんね。・・・・・・・・皆」

 

 

ものすごく小さい声で、自分でも聞こえるかは分からないくらいの小声で僕は・・・・・・・・・・目をつぶりながら言った。

 

 

 

 

 




3039文字。いつも通りですね。
特別多いわけでもないか。

どうもみなさん!!あともう少しで完治する白黒羽です!!

ちょっと鼻水と軽く頭が痛い程度ですのでもうすぐ治ります!


さて、気づいている人は・・・・いないと思いますが。
前回の 第三十一話の『距離』ですが。

あれって実は
教室までの『距離』と明久が雄二たちと取っている『距離』をかけています。(どうでもいいか)

校門から教室までの『距離』

明久と雄二たちの心の『距離』

明久と雄二たちの『距離』(離れる的な意味で)

この三つを表しています。

普段タイトルは思いつきで書いてるんですが前回初めて真剣に考えました 笑(どうでもいいか)


さて、長くなりましたね。では 次回をお楽しみに。
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