01
生まれはごく平凡な一般市民だった。
少し魔法の才能があったが、それはいたって平凡な物だった。
しかしぼくの親が特殊な環境で仕事をしていたから、ぼくは本当の両親から離れる事になった。
それからぼくの人生が変わり始めた。
ぼくが十師族に仕える魔法師の家に養子に入り数年が経った頃、ぼくは拉致された。
誰が、とか。
なんで、とか。
そんな事はわからなかったけど、でもぼくは死ぬんだと思った。
小さかったあの時のぼくは、人間の闇や狂気を知らなくて。
ただ敵に捕まれば死んでしまうと教えられてきたから。
でもぼくが知らないだけで、世界には狂気と死が満ち溢れているって。
その事を身をもって体験して”ぼく”は、僕になった。
身体中いじくりまわされ、切り刻まれ。
脳を改造され、精神を狂わされ。
実験という名の、狂気が終わった時にはもう元どおりの体じゃなかった。
あちこち傷跡を縫った後だらけの体に。
14歳位から成長しない身長に、色素が抜けた白髪。
もう誰が見ても”僕”だとわからない。
でもそれじゃあ終わらなかった。
僕は成功体だと言われ色々な戦場に連れてかれた。
寒いとこ暑いとこ、砂漠のとこ、ジャングルのとこ。
言われるがままに殺して、殺して、殺した。
一対一で、一体多で、暗闇の中、色仕掛けで。
そんなことをやらされ続けて、体から血の匂いがしない時がなくなった時。
始めて僕は自身の狂気に触れた。
夢を見た。
自身が死ぬ夢を、六回見た。
天人になり腐りながら死ぬ夢を。
人間になり苦楽の中で悩む夢を。
修羅になり争いの中で苦しむ夢を。
鬼畜になり獣に食われ喪失する夢を。
餓鬼になり飢えと渇きに悶える夢を。
そして今、地獄に来て苦しみ続ける自身の未来の夢を。
だから僕は狂った。
狂って狂って、狂気に身を預け狂気に身を食わせた。
その時の事はあまり覚えてない。
ただ、ただ殺した事だけ。
僕を壊した研究者も。
戦争に行かせた戦士も。
僕みたいなモノを作った奴らをみんな殺した。
それからはただ食う為に殺した。
いろんな人間や魔法師が私を追ったけど、僕はみんな殺した。
『心は無いのか』『化け物』『悪魔』色々言われたけど、僕は自分でこうなったわけじゃない。
みんなが僕をこうした、こう壊した。
だからあのおじさんが、綺麗なお姉さんを連れて来た時も言ってやった。
「僕はただ殺すだけだよ、だってそうしろって言ったのはあなた達なんだから」って。
そうしたら女の人はおじさんをどっかにやって、僕にこう言った。
「あなたの痛みも苦しみも、すべてわかるわ。きっと私以上の地獄を見てきて生きてきたんだと思う、でもあなたには救いがある。それを私ならあなたにあげられる」って。
救いとかよく分から無いけど、お姉さんの目は鏡で見る僕の目と同じだってわかった。
黒くて黒くて、汚いドブの色をした狂気の目。
汚い汚い人間の狂気を身を持って知っている目。
だから僕はお姉さんに着いてく事にした。
ほしいモノはもう無いし、これから見つかるとは思え無いけど。
それでもこのまま殺し続けるより、僕と同じ人といた方が良さそう。
楽しいとか、怒るとか、悲しむとか、楽しいとか、そういうのはわから無いけど。
きっとずっと、僕はお姉さんに着いて行った方が殺し続けれると思うから。
**
seed 四葉真夜
私が老師に言われて会った少年、その姿はまるで動く屍のようだった。
やせ細った体に、体のあちこちにある縫った痕。
そしてこちらを見る目。
その目は私のモノと同じで。
いや、きっと私より苦しく辛い地獄を見た目。
そうしてやっと、老師が私にこの少年を合わせた意味がわかった。
自分の部隊を何十と捨て駒にさせてまで合わせた理由。
だから老師の思惑通り、彼を連れて帰る事にした。
きっと彼は私の願いを叶える手伝いをしてくれる。
そしれそれは、彼の願いを叶える事と同じだから。