時刻は日光が降り注ぐ昼下がり。人里はお昼を食べる人で賑わっていた。魔法の森の目と鼻の先にあるこの人里には、総勢約200人の住人が暮らしている。
しかし、現在は『外』からの迷い込んだ者がそのまま移り住むことが多くなり、その数は300人を越えようとしていた。
そのため人里も大規模な拡張をせざるを得なくなり、『妖怪の賢者』の助けもあって里の周りには大きな柵や堀、里の中と外とを隔てる門はまさに城門のそれと同程度のものにまでに発展していた。
それでもやはり長く根付いた人々の暮らしは変わるわけもなく、人里には『いつも』どうりの日常が流れていた。
「おっちゃん!みたらし団子二本くれ!」
「はいよぉ。ちょいと待ってな」
白黒の服を着て、長いトンガリ帽子をかぶった少女が元気よく注文する。その独特の服装や手に持った箒は、西洋の魔女を彷彿とさせる。注文が終わった少女は日がよく当たる長椅子へと腰をかける。しばらくするとガタイの良い体に似合わない、エプロン姿の男が少女に歩み寄った。
「はいよぉ魔理沙、みたらし二本。あとこれは常連さんへのサービスだ」
「おぉ!ありがとう、おっちゃん」
魔理沙と呼ばれる少女は団子屋の主人が持ってきたサービスの飴玉を、その白黒スカートのポケットにしまう。そしてみたらし団子を食べようとして、
【グギャャャァァァア】
「うお!っとっとっ」
里に獣の断末魔の様な鳴き声が響きわたる。魔理沙はいきなりの声に驚き団子を落としそうになるが、な妖怪か無事にキャッチした。
「今の声は魔獣かぁ?」
先程団子を持ってきた男がまたか、と呆れたような口調で漏らす。
「いや、今のはただの獣じゃない?…んむ…けっこう追い詰められてるみたいだけど…むぐ…ふぅ、やっぱりおっちゃんの団子はうまいね!」
「あんがとよ。でも食うかしゃべるかどっちかにしろ。折角のべっぴんさんが台無しだぞ?」
今度は諦めたような口調で魔理沙を注意するがその声が届くことはなかった。
「火事だ!!森が燃えてるぞ!」
里との住人の一人が叫ぶ。森の方向を見ると確かに火が上がっていた。それも時間が立つに連れて大きくなっていく。
「おいおい、こりゃちょいとマズくないか。てかお前の家って森の中だったよな?魔理…沙…」
隣で団子を食べていた少女はいつの間にか箒にまたがり、森の方へと飛んで行ってしまった。直後、
【キイイイイイイイイイイイイイン】
甲高い音と共に紫の閃光が里を照らす。
「勘定は…………………」
「うぉぉお!間に合えぇぇえ!!」
霧雨魔理沙は燃え盛る森の中を猛スピードで駆け抜けていた。森の上空を飛べば炎をものともせずに飛行できるが、今の魔理沙にはそのロスタイムでさえ惜しかった。
しばらくして炎の森を抜けると、煙突のある西洋風の家が見えてきた。
「見えた!よし、ここまで火は回ってきてないか」
近くまで来ると、家の上には『霧雨魔法店』と大きく書かれていた。そう、ここは魔理沙の自宅兼魔法店である。しかし請け負う仕事の幅の広さから魔法店というよりもなんでも屋と言った方が適切だろう。
「ふぅ、まずは一安心っと」
速度を落とし、家の前まで来た瞬間。
【キイイイイイイイイイイイイイン】
魔理沙の後ろから紫色の閃光が走る。
「きゃあ!」
先程までの口調からは予想できない乙女らしい叫び声が森に響く。
「うぅ、びっくりしたぜ。一体何だってんだ?」
玄関の前まで来て後ろを振り返る。炎は先程の紫色の閃光が光ってからは激しくなる様子はない。
「ちょっくら見に行ってくるか」
今度は森の上空へと飛び、速度をギリギリに落として飛行する。
上から見た森は焼け野原と化し、生き物の姿は確認できなかった。
「こいつは予想以上だな。……ん?」
何かを見つけた魔理沙は燃え盛る森の中へと降りていく。
「これは…溶けてやがる」
見つけた木の幹には綺麗な円状に穴が空いていた。更に円の周りはドロドロに溶けており、そのような木が直線上に何本も並んでいた。
「んー、なんだか『異変』の予感がするぜ。よし、そうと決まれば!!」
魔理沙は急上昇し、今度は最大まで速度を上げある場所へと向かった。
その様子をヒトの姿をした化物がジッと見ていた。
長らく未投稿にしてすみません。
この話は前編、後編構成となっています。後編はそこまで長い期間あける気は無いのでもう少しお待ちください。最後までご覧下さりありがとうございました。