東方荒神伝   作:白峰

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 今回はこれから起こることの前座みたいな話です。ほぼ東方メンバーしか出てきません。


第四話 湖の異変

 日はもう西に沈みかけている夕方、空は紅く燃え上がり、何処から獣の鳴き声も聞こえてくる。それまで賑やかだった人里も戸締まりを始める人が出てきた。

 

 一日も終わりを迎えようとしているとき、霊夢は博霊神社の縁側に座り、一人考え事をしていた。手には黄金色の物体が握られている。

 

 (この黄金って本物なのかしら?何だか思ったよりも軽いし、だいたい本物だったとしたら余計に謎だわ。なんでこんなものが…)

 

 そこまで考えていると、霊夢のもとに空から来客者が現れる。

 

 「おーい、霊夢ー!」

 

 白黒の服装にとんがり帽子を被り、箒にまたがってくる彼女は霊夢にとっては友人の一人である霧雨魔理沙だ。

 

 彼女は森の方角から一直線にこちらに向って飛んで来ている。

 

 「ハッ…!」

 

 霊夢は本能的に黄金を自分の懐にしまい、平然を装って冷めきったお茶の入っている湯飲みを口に運ぶ。

 

 魔理沙は少しずつ減速し、石畳の上に着地すると箒を手に持って霊夢の方へと走って来た。

 

 「なぁ霊夢、また異変が起こったんだ!今度は霧の湖だ!」

  

 「異変って…あなたこの前は魔法の森で火事がどうのこうのって言ってたじゃない」 

 

 魔理沙は魔法の森の火事のあと、霊夢に奇妙な跡があった事を話していた。霊夢は黄金のことはひとまず意識外に追いやることにした。

 

 「こっちは今現在起こってるんだ。ほら、早く行こうぜ!」

 

 「ちょっと、私はまだ何も「いいから早く!」…わかったわよ。わかったからあまり急かさないで」

 

 霊夢は魔理沙の押しに負け、仕方なくついていくことにした。魔理沙は箒にまたがり魔法で、霊夢は能力を駆使してそれぞれ飛び上がり湖へ向った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧の湖が近くなると妖精や妖怪がやたらと多くなっているのを二人は感じた。しかしいつもなら襲ってくる妖怪や邪魔をして来る妖精はいなく、いつにもなく大人しかった。

 

 「何か…変ね。嫌な予感がするわ」

 

 「あぁ、妙に大人しいな。もう辺りは真っ暗だし、ここらの妖怪なら見境なしに襲って来ると思ってたんだが」

 

 「なんでがっかりしてるのよ………」

 

 「いやぁ、最近マスパをぶっ放してないなぁって思って。何なら霊夢、今度相手してくれよ」

 

 「嫌よ。何でそんな面倒くさいことしなくちゃならないの」

 

 「え〜〜。霊夢のケチ」

 

 「うっさい。ちゃんと前見て飛びなさい。危ないわよ」

 

 「ほいほ〜いっと」

 

 二人はそんなとりとめのない会話をしながら進んでいく。霧の湖までは残り数キロメートルほどのところまで来ていた。

 

 「そろそろつくかなぁ?」

 

 「えぇ、邪魔するものがなくていつもより早く着けそ…ねぇ魔理沙…異変っていうのはアレ?」

 

 霊夢達の目の前には静まり返った夜の湖が広がっているはずだった。しかし、その湖には異質な白い塊が浮かんでいた。ひょうたんの形をしたその物体は40メートル程あるように見えた。

 

 湖には白い物体がぽつんとあったのではなく、周りにはたくさんの妖怪や妖精がいた。その中には彼女たちのよく知る人物、もとい人外もいるようだった。

 

 霊夢たちは急降下し、湖の畔へと降りていく。そこには青い髪に特徴的な帽子を被り、フリルのついた可憐な服を着ている幼女の姿があった。

 

 もしその背中に生えたコウモリのような漆黒の翼がなければ何処ぞの貴族の子供としか考えられないだろう。

 

 彼女の名はレミリア·スカーレット。今までに500年の時を生きた吸血鬼である。また霧の湖の近くにある『紅魔館』という真っ赤な西洋風の館の主でもある。

 

 彼女の右側には銀色の髪をしたメイド服の女性が、また左側には全身紫の服にやはり特徴的な帽子をかぶっている女性がいた。

 

 霊夢たちはその三人の後ろに降り立った。ほぼ同時に霊夢が話しかける。

 

 「まさか貴方達も来ていたなんてね」

 

 「なに、面白そうなモノが近くにあったから見に来てみたのよ。ふふっ」

 

 するとレミリアは嘲るような笑いとともに霊夢たちに振り返る。同時に左右の二人も霊夢たちと向き合う。

 

 次に口を開いたのは魔理沙だった。

 

 「まさかお前が出てくるとは思わなかったぜ。パチュリー」 

 

 それに答えたのは気怠そうな目をした全身紫色の服の女性だった。 

 

 「別に私は籠もりたくて図書館に居るわけではないわ。本があるから居るだけよ」 

 

 名前はパチュリー·ノーレッジと言い紅魔館に住んでいる魔法使いである。本の虫と言われるほどの本好きでほとんど図書館から出てこない。喘息持ち。

 

 「今日はレミィが言っていた通り、面白いものが出たから見に来たのよ」

 

 「しかしパチュリー様、そろそろ薬のお時間では?一度紅魔館に戻ってはいかがでしょうか?」 

 

 話に割って入ってきたのは銀髪のメイドだった。彼女は十六夜咲夜。パチュリーやレミリア達の住む紅魔館でメイド長としてレミリアに使えている。特に主であるレミリアにはかなりの忠誠心

を持っている。

 

 「そうね。もう十分だわ」

 

 「え〜〜。もう良いのか?せっかく外に出たんだし私達と異変の解決しようぜ」

 

 「うるさい。戻ってあの物体について調べようと思っていたのよ。そんな事より一昨日また私の図書館から本を盗んだでしょ。いい加減早く返して「死んだら返すぜ」……今この場で殺してあげても良いのだけれど」

 

 「お〜怖い怖い。」 

 

 パチュリーの後ろからは可視化された怒りのドス黒いオーラが確認できた。しかしパチュリーを冷静に戻したのはレミリアの声だった。

 

 「私はもう少しここにいたいわ。咲夜、私はいいからパチェを送ってあげて」

 

 「承知いたしました。…ではパチュリー様、紅魔館までお送りいたします」

 

 「…ええ、お願い」

 

 パチュリーと咲夜の二人は森の夜道を歩いていく。また、パチュリーは魔理沙をすれ違いざまに睨みつけた。

 

 「それとそろそろ薬も切れそうだから永遠亭の医者に伝えておいてくれる?」

 

 「承知しました。その様にいたします」

 

 

 紅魔館への道中、二人の会話が途切れることは無かった。

 

 「で、あんた今度は何を企んでるの?」 

 

 二人が去ったあと、霊夢はレミリアにたずねる。

 

 「別に何も。本当に見に来ただけよ。…ただ」

 

 そこまで言うとレミリアは一旦間を開けて湖にある白い巨大な繭に目を向ける。 

 

 「アレの…あの白いモノの運命が見えないの」

 

 「……え?」

 

 魔理沙と霊夢の二人の声が重なる。その顔には驚愕の表情が浮かんでいた。

 

 「私の力…『運命を操る程度の能力』はその名の通り運命を弄くることができるわ。それはあなた達人間からそこらに落ちている木の葉の運命まで操れるの。葉っぱの運命なんて弄ったこと無いけどね」 

 

 この幻想郷には『程度の能力』と言うものが存在し、この世界のいわゆる有力者などは皆それぞれの能力を保有している。

 

 例えば霊夢は『空を飛ぶ程度の能力』、魔理沙は『魔法を使う程度の能力』など多岐にわたる。

  

 「その私の力でもあの物体の運命を見ることができないの。…いえ、見えないと言うよりは隠されていると言ったほうがいいわね。なにか大きな力によって守られている感じがするわ。…こんな事は初めてだわ。…本当に…」

 

 「レミリア…。」

 

 レミリアの喪失感の漂う雰囲気に魔理沙が思わず呟く。いつもの不遜とした態度とは正反対の姿は彼女には想像できなかった。 

 

 「…私はこの物体の正体に興味があるの。だから今回だけよ、今回だけ協力してあげるわ。感謝なさい」

 

 と思ったらいつものレミリアに戻った。

 

 「えぇ……」

 

 この有様に唖然としたのかまたしても二人共同じ反応をした。

 

 「分かったらさっさと私のために情報を集めてきてちょうだい。よろしく」

 

 レミリアは近くにあった切り株に腰を下ろし手の甲を返して『早くいけ』とジェスチャーする。

 

 「…取りあえず周りにはたくさんの目撃者(妖精)がいるし、聞いて回るか?」

 

 「そうね。何もわからない状態でアレに接触するのはあまり得策ではないわ。それになんかアレ気持ち悪いし」

 

 湖周辺には白い物体を取り巻くようにたくさんの妖精、妖怪が集まっていた。元々妖精や妖怪の集まりやすい所であったがその数は百を超えており、過去最大級の数がこの霧の湖に集結しつつある。それは妖精、妖怪に限ったことではなく、野生動物や蟲に至るまでまさに森中の生き物が集まっているのでは無いかというほどであった。

 

 二人は切り株でふんぞり返っている吸血鬼を無視して物体の聞き込みを開始した。

 

 

 

 

 




 何分忙しくて中々投稿できずすみません。できるだけ早く投稿しようと努力します。それでも遅くなってしまうかも知れませんのでそこらへんは勘弁してください(笑)。読んで下さりありがとうございました。
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