東方荒神伝   作:白峰

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 ここからようやく物語が大きく動き出します。


第六話 怪獣

 私は今、とある場所を目指している。と言うのも昨日までは、目的はあれどもあてはなく、この森の中を彷徨っている、と言ったぐあいだったのだ。しかし、私の『好物』がこの先にあるようなので、今その目的地にゆっくり向かっている。

 

 その気になれば三分足らずで到着できるが、余り目立った事はできない。それは、この山の麓付近で定期的に飛び回っている羽根の生えた人型種族のせいだ。恐らく巡回だろう。

 

 だがそれだけではない。その程度であればこの私のカモフラージュを持ってすれば、完璧に周りの風景に溶け込める。誰も私には気づけない……ハズなのだ。

 

 「うーん…確かに何かいたんだけどなぁ…」

 

 私の目の前で辺りを見渡す、この白い獣人には本気を出させてもらった。まさか体温まで遮断したのに感づいてくるやつがいるとは。

 

 それにしてもこいつも奴等と同じ種族なのだろうか。羽根は付いているが…っと。

 

 「おい、犬走班長。そこで何をしている」  

 

 「はい、侵入者らしきものを見たのですが……見間違いだったようです」

 

 「では持ち場に戻れ、お前の班員が慌てていたぞ。班長を知りませんかってな」

 

 「あ!も、申し訳ありません!すぐに持ち場に戻ります!」

  

 …………よし、二匹とも行ったか。これでようやく歩を進めることが出来る。後少しで到着だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは地獄。大きな宮殿の中の大理石出できた通路を一人の女性が歩いている。等間隔に連立している柱は、高さ5メートル程もある様だった。

 

 彼女の名は、小野塚小町。この地獄で三途の川の船頭をしている死神の一人である。

 

 『距離を操る程度の能力』によって遠く離れたところからでも瞬間移動のごとく移動することができる。

 

 便利な能力であるため上司から出勤を命じられることもしばしばある。しかし当人はその能力を利用して仕事をサボりまくっている。

 

 数分通路を進むと、左右に青い背びれを持った龍と火炎の玉を吐く亀が描かれた大きな扉が見えてくる。

 

 小町は扉の前で身だしなみを整えて扉を開ける。目の前には、いわゆる校長机に座った一人の少女がいた。

 

 小町は少女の元まで続いている赤いカーペットに沿って歩き、段差の手前のところで片膝をついた。

  

 「およびでしょうか。四季様」

 

 「ええ、貴方には旧地獄に向かってもらいます。その間の船頭の仕事は、他の者に一任しておきました」

 

 彼女は地獄の閻魔大王こと、四季映姫・ヤマザナドゥ。ヤマザナドゥは『楽園の閻魔』という意味の役職名である。

 

 『白黒はっきりつける程度の能力』を保持しており、彼女の前では嘘はおろか、弁明すらも許されない。また小町の上司でもある。

 

 「旧地獄…どうしてまたそんな所に?」

 

 「地獄から魂が抜け出したと、連絡がありました。その行き先が旧地獄なのです。詳細はここに」 

 

 映姫から小町へクリップボードが渡される。ボードには数十枚もの紙が挟まっている。 

 

 「はい……ってええ!?これ、数百単位じゃないですか!?」

 

 「数千単位です。たまにはやり甲斐のある仕事をしたいでしょう。また仕事をサボって遊びに行っていたようですし…」 

 

 映姫の眼光が鋭くなる。

 

 「喜んでやらせていただきます!ではっ」

 

 小町は勢いよく敬礼して踵を返し、そそくさと扉を開けて出ていった。

 

 「あっ、まだ話は終わって…もう…大丈夫でしょうか。結構訳有な魂なんですが…」  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勢いよく扉を出た小町は壁を背に一息ついていた。

 

 「ふぅ…サボりすぎたかな?」

 

 少し内心で後悔しつつ一枚目の書類に目を通す。一枚の紙には約百人ほどの名前と没年などが書いてあった。続いて二枚目、三枚目…

 

 「………あれ?…これって…」

 

 一枚目からすでに七枚目に差し掛かった。しかし、どの紙の亡者にも一貫した共通点があった。

 

 1940年代の、それも戦死者。そう、太平洋戦争で亡くなった人達だったのだ。

 

 「はあ…なんか、より大変になったなぁ〜サボろうかなぁ〜」

 

 心ここにあらずといった様子で小町は旧地獄へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は午後三時。慧音は昨日に引き続き、人里の集いをすることになったので、少し早めに寺小屋を出た。 

 

 昨日と同じように門番に軽く挨拶し、集いの部屋に入る。神宮司、醍醐は既に来ていた。今日は阿求がいない様だ。慧音は二人に挨拶し、手前に座る。

 

 「お待たせしました」

 

 襖から一人の少女がいくつかの巻物を持って部屋に入ってきた。

 

 「それでは昨日に引き続き、人里の集いを始めたいと思います…とその前に」

 

 他の三人の視線が阿求に集まる。

 

 「今回の事件においての重要参考人を招待しております」

 

 「…何だ?それは、初耳だぞ。誰だ?」

 

 神宮司が問う。

 

 「まぁそう急がずに、どうぞ入ってきてください」

 

 慧音の後ろの襖が勢いよく開く。

 

 「お前たちは…」

 

 「よう、慧音と阿求。おっ、おっさん達も居るんだ」

 

 襖からは魔理沙と大事そうに何かの籠を抱えた霊夢がいた。二人は慧音の隣に座る。霊夢は籠を抱えたままだ。

 醍醐が阿求に問いかける。

 

 「この二人が異変の秘密を知っていると?」

 

 その問いには霊夢が答えた。

 

 「まぁ、私達も知っているけど…聞くなら直接がいいでしょ」

 

 霊夢は籠を床に丁寧に起き、ゆっくりと開けた。

 

 「なんと…!」

 

 「この方たちは…妖精…ですか?」

 

 

 籠の中にいたのは15センチ程の小さな少女が二人、仲良く座っていた。

 

慧音が二人を覗き込む。

 

 「羽の無い妖精を見たのは初めてだが…」

 

 そこに割って入るように魔理沙が話す。

 

 「おおっと、なんか勘違いをしているみたいだけど、この二人は妖精でも妖怪でも、ましてや魔物でもないぜ」

 

 「では一体…」

 

 霊夢、魔理沙、阿求以外の視線が小さな二人に向けられる。二人は寸分も違わない動きで同時に立ち上がり、説明した。

 

 「私達はインファント島に住んでいました。コスモスと言います。……地球の先住民、と言ったところでしょうか」

 

 

 二人の声はこの場の六人の耳には入らず、直接脳内に響いた。慧音たちは驚きながらも、彼女たちの言葉を黙って聞いた。

 

 「皆さんが議論している湖の物体ですが、あれは私達の守護神、モスラです」

 

 最珠羅(モスラ)。この場の、六人の頭の中にはスクリーンとなってモスラの姿が見えた。繭の中でうずくまっている巨大な、それでいてどこか可憐な蛾の姿が。

 

 これはコスモスの持っている能力の一つで、他のものと感覚や記憶を同調することが出来るおかげだ。

 

 「これが…モスラ…」

 

 ここにいる誰もがそのスケールの壮大さに感嘆した。

 

 「そして、私達はあなた達に警告をしに来ました」

 

 「警告…?一体何の…」

 

 神宮司が小美人たちに問う。

 

 「怪獣の出現です」

 

 「怪獣…それは一体」

 

 醍醐が言いかけるが、阿求がそれを制する。

 

 「そのことについては私から話させて頂きます」

 

 そう言うと阿求は、自分の右側に積んでおいた巻物のうち一つを取った。

 

 巻物には『護国聖獣伝記』と書かれてある。薄茶に変色しており、かなりの年月が経っていることが推測される。

 

 「これは幻想郷ができるよりも以前の頃よりある伝記です。内容を見ればわかります」

 

 「お!ここからは私達も知らない情報だな」

 

 「静かにしてなさい」

 

 伝記にはこう書かれていた。

 

 「日本には古来より、婆羅護吽(バラゴン)、最珠羅(モスラ)、魂怒羅(ギドラ)と言う三体の怪獣、つまり巨大な生物がいて、古代の日本王朝により封印された後、神として崇められたそうです。この際、この怪獣たちには大和の守り神たちとしてクニを守るという命を授け、その心を地蔵に隠したとか」

 

 「…それでは、あなた方のモスラと言うのは…」

 

 醍醐は不安げな顔をコスモスの二人に向ける。 

 

 「はい、モスラは怪獣です。しかし、モスラと私達は絆で結ばれております。それに人間には非常に友好的ですので、私達から皆さんに危害を加えることはあり得ません。バラゴンについても自分のテリトリーを荒らされなければ何もしません。ギドラについては…余り信用できませんが…一応は大和の支配下ですから、環境を破壊するような事は無いと思います」

 

 すると一同からは安心からかため息が漏れる。一応の危機は回避したようだった。

 

 「すると、この三体の怪獣は今もこの幻想郷のどこかで眠っているのだろう?」

 

 神宮司が確認のために少し大きめの声を出す。しかし

 

 「いえ、実は事態はそう簡単でもないのです」

 

 コスモスの二人が異を唱える。

 

 「実は本来ならば、この土地に怪獣は存在しないはずなのです」

 

 「と言うと?」

 

 霊夢が問う。

 

 「皆さんは可能性の世界、パラレルワールドと言うものを知っていますか?」

 

 「…?」

 

 ほとんどの者は知らないようだったが、魔理沙と阿求は知っているらしく、「はい」「おう」と返事をしていた。

 

 「この世界の他にある分岐した世界のことだろ。平行世界とかなんとか」

 

 「なんであんたそんな事知ってるのよ」

  

 「まぁ魔法使いだからな。それにもともとそう言ったオカルトチックな話は好きなんだ」

  

 霊夢と魔理沙が話している中、まだわかっていないのか醍醐と神宮司が難しい顔をしている。慧音は魔理沙の会話から出てくる言葉を、頭の中で漢字にして、理解したようだった

 

 「その通りです。例えば今私達がこうして話していますが、逆に話していない場合も可能性としてあるわけです。その可能性でできている世界をパラレルワールドといいます」

 

 今度は二人も理解したようでうなずいている。コスモスの二人はそのまま話を続けた。

 

 「では本題ですが、私達はその分岐した世界の内の一つから来ました」

 

 「え!?」

 

 そこにいた全員が同じ反応をした。

 

 即座に阿求が問う。

 

 「そんな事が可能なんですか?」

 

 「いえ、通常は不可能です。しかし、何者かがこちらの世界とあなた方の世界との境界をあやふやにし、隙間を作ってしまったのです。その隙間から私達は来ました」

 

 「では何故?どうしてあなた達は私達の世界に来たのですか?…!まさか…」

 

 醍醐は質問しようとしたが何かに気づいたようだった。

 

 「私達の世界には元々怪獣はいなかったが、そちらの世界からやって来た。それを伝えにあなた方もこの世界に来られた。そいういことですね」

 

 醍醐の言葉は核心をついたのか、コスモスの二人はうなずいている。

 

 「はい、大方合っています。しかし、こちらに流れ込んだのは怪獣という概念です。もしかすると、私達の知らない怪獣がこの世界で誕生する危険があります」

 

 「…てことはいつ怪獣が現れても不思議じゃない状況になっちまったてことか?この世界が」

 

 「そういう事になります」

  

 神宮司の問に答えるコスモスの二人。その直後に一同からは長いため息が出た。

 

 「…はぁ〜〜〜〜」

 

 「心中お察しします」

 

 「いえ、違うのよ」

 

 霊夢が苦笑しながら申し訳なさそうに言う。

 

 「私達は皆、その境界を歪めた犯人の検討がついているの。しかも知り合いのね」

 

 「そうでしたか」

 

 そう言うと霊夢は天をあおいで呟いた。

  

 「あのバカは、何やってんのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 アニゴジ第二章見てきました。今回はビルザルド、エクシフ、新たに出てきたフツアの民、そして人類のそれぞれの価値観や大切なものの違いが目立つ作品でした。それに何と言ってもゴジラ·アースと主人公たちの戦闘シーンは圧巻の一言でしたね。特に飛び交う火の粉がゴジラの持つ神々しさを引き立たせている様に思いました。まだ劇場に足を運んでいない方は是非見に行ってください。レンタルにはもったいない作品ですよ。
 次話もできる限り早く投稿できるように頑張ります。引き続きリクエスト、アドバイスもどんどんお願いします。最後までご覧下さり、ありがとうございました。
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