Fate/GrandOrder Quatre Inconnus de Magiciens 作:オレン・オラージュ
そうそう、UA10,000ありがとうございます!!まさかこんなにも読んでいただける人がいたとは、感無量です。10,000突破した瞬間ガッツポーズでしたからね。今度の目標は50,000!頑張っていきますよ!!
今回はジャンヌ・ダルクと話した夜の話になります。では、どうぞ!
俺たちは聖女ジャンヌ・ダルクに今までのことを話した。未来で人類が滅ぼされたこととか、俺たちがカルデアという組織の人間であること。自分たちは別の時代からやってきて、未来を取り戻すために戦っているのだということも、全て。
ジャンヌは真剣な眼差しで俺たちの話を聞いて、協力してくれると言ってくれた。今後のことはひとまず、はぐれてしまったシュミットと合流することだったが、日が暮れてしまったため日が明けてから合流しよう、ということになった。
そうして月が真上に登ったあたりの頃。
昼頃のワイバーンとの戦闘を思い出して、俺の目が冴えてしまっていた。男女別々でテントに入っているのだが____まあ男子のマスター俺一人だけだから実質一緒に寝ているのはラモラックだけだけど____、まったく眠れず俺は横たわったまま天井を見ていた。
他のサーヴァントはテントに入っていたり、キャスニキとエミヤは見張りをしてもらっている。
ワイバーンとの戦闘………子供を助けて無事だったからよかったものの、キャリスたちのいう通り、確かに危なかったな。
ゲームとかだとよく勇者が剣を持ってドラゴンに立ち向かう、という構図はあるものの、俺にはキャリスやガーレンみたいな魔術は使えない。ジャンヌがいなかったらどうなっていたことか。
正直に言って、怖かったのは事実だ。今でも体が震えるほど、怖かった。だけど、あそこで庇えたのは良かったって思ってる。もしも、俺がいなかったら、あの子供は………。
考えて、俺は冬木の時で目の前で殺されたシャドウライダーを思い出して激しく身震いした。
(…………ダメだ、考えないようにしないと)
今後も、そういうことはたくさん起きる。ワイバーンだけじゃなくて、ドラゴンだって出てくる。そして、この特異点の黒幕とも、いつしか戦うことになるんだ。
………そうなったら、俺は誰かを、本当に守ってあげられるだろうか……。
不安がよぎったけど、今は俺のできることをやろう。そう思って、俺はもう一度目を閉じた。
今度は悪い夢など見ないことを、願いながら。
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ふと、寝つけられなくて目を開けると、横で寝ていたジャンヌさんがいないことに気がつきました。
気になってテントの幕を上げると、ジャンヌさんが一人焚き火のそばで当たっている様子が見えました。その顔は、何かを考えてるように俯いていました。
気になって、私は声をかけました。
「……ジャンヌさん?起きているのですか?」
「あ、ガーレンさん。すみません、起こしましたか?」
「いえ、寝つけられなかっただけですの。ジャンヌさんこそ寝ませんの?」
「……いえ、今の私には睡眠も大事ですから、早めに寝ます」
そういうジャンヌさんの顔はなぜか影かかっていてました。何か気になることでもあるのでしょうか。
心配になってその顔を見ていると、ジャンヌさんが首を傾げてこちらを見返して来ました。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ!」
……きっと、英霊にも英霊なりの、悩みというものがあるのでしょう。すぐにそう私は直感しましたわ。
竜の魔女のこともですが、きっとあそこの街にいた老婆のことをジャンヌさんは気にかけているのだと思いました。
街から立ち去る時、ジャンヌさんに呼びかける一人の老婆がいたからです。
『ジャネット!ジャネットなんでしょう?もう一度、もう一度あなたの顔を……』
そう言って引き留めようとする老婆の声を振り払うかのように、ジャンヌさんは足早に立ち去ってったのです。
ジャネット、というのはジャンヌさんの幼名だったはず。きっとそう呼ぶのは、おそらくジャンヌさんの身内だけ……なのでしょう。今もまだ生きている、処刑された後のジャンヌさんの………。
「………必ず」
「え?」
「必ず、フランスを救いましょう。ジャンヌさん!」
「………はい!」
必ず、ジャンヌさんが、聖女ジャンヌ・ダルクが生きたこのフランスを救おう。シュミットが生まれた国を消されるわけにはいきませんし、聖女が成した偉業をなかったことには、したくありませんもの!
そう改めて、私は心に誓いました。
ふと、近くの木陰に気配を感じて後ろを振り向くと、クスクスとモーガンが微笑んでこちらを見ていたことに気がつきました。
「……モーガン…………」
危害を加えるつもりはないのでしょうけど、こっちに親指を立てて盗み聞きするのはあまり良くないと思うのですが。
……いえ、それ以前に彼女いつからいたのでしょう………?リリィと一緒に寝ていたはずですよね?と、モーガンへの疑問が尽きないのでした。
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そのまま朝を迎え、俺はテントの中で着替えをしていたときだった。ドクターが夜のうちに所長からシュミットの今の様子を聞いたらしい。
『どうやらシュミットたちは『ラ・シャリテ』と呼ばれる街にいるそうだ』
「ラ・シャリテ?」
『百年戦争中に戦場となった街だよ。その時聖女ジャンヌも従軍していたそうだね』
「ここからどれくらいなんだ?」
『数km先だよ。歩けば間に合っ………』
ドクターの声が途中で途切れ、急いで何かタイピングをする音が聞こえた。「どうしたんだ?」と聞いてみると、すぐにドクターの声が聞こえて来た。しかし、その様子はどこか慌ただしい。
『数km先で巨大な生命反応を確認した!!場所は……なっ、ラ・シャリテ!?そんな、あそこにはシュミット君が』
俺はそれを聞いてすぐにテントを飛び出した。ガーレンとキャリスも聞こえていたようで、キャリスは特に焦っている様子だった。
「り、立香さん!」
「ガーレン!キャリス!」
「……ラモラック卿!宝具を使って急いでいただけませんか!?この中で一番早いのはあなたです!」
「それはいいけど、マスターは」
「マスターなら私が守ろう。君はその間にラ・シャリテへ行って他のマスターとの合流を急いでくれ」
「わかった!!」
キャリスが声をかける間も無く、ラモラックはいつの間にか召喚した馬に乗って走っていった。
ガーレンはそれを見届け、俺たちに声をかける。
「私たちもグズグズしてはいられません!急ぎましょう!!」
「けど、ここからじゃかなりの距離がありますよ!?」
確かにキャリスの言う通りだ。俺たちの足で向こうまでたどり着くかわからない、それまでに間に合うか……と思った瞬間、
「マスター、失礼します!」
「へ?……うわぁぁぁぁぁっ!!?」
突然マシュに横抱きに抱き上げられ、そのまま凄まじいスピードで走り出してしまった!
サーヴァントの脚力すごい!こんなに早いものなんだ!!?
舌を噛まないように口を閉じつつ、あたりを見回すとどうやらキャリスはエミヤに、ガーレンはキャスニキに担ぎ上げられているようだ。サーヴァントってやっぱり人間離れしているんだな、とつくづく思ってしまう。
森を突き抜け、平原へ出ると遠くに街があるのが見えたけど、その上空を見て俺は息を飲む。
街の真上を覆うように、黒い何かが空に浮いていた。その中心にはそれらよりもひときわ大きい、ドラゴンが見えた。
「なんて数ですの!?しかも、あの大きさは………!?」
「巨大な、ドラゴン……!!?あれが………!!?」
遠くからでも見えるドラゴンの口元に黒い何かが溜まっていった。それを見てガーレンが息を飲む。と、同時にドクターからも制止の声がかかる。
「いけない、ブレスですわ!!」
『口腔部に魔力反応……!!?ダメだ、間に合わない!!』
「やめ……やめなさい!やめて!!!」
ジャンヌが悲鳴をあげた瞬間、ドラゴンから巨大な魔力の奔流が放たれ………
る、かと思われたその時だった。
街から突如虹色に輝く閃光が空を覆うワイバーンの群れとドラゴンに向かって放たれ、巨大な爆発を起こした。
直撃して少しでも効いたのか、ドラゴンが唸り声をあげて動きを止めた。
「な、なんだ!?」
『これは……まさか、シュミット君のサーヴァントの宝具!!?』
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それは、数分前の出来事。
「マスター!!近くにまでドラゴンの群れが来てる!!」
「!」
どうやら北にいた難民達がこちらへ避難して来ていることを敵は認識しているようだ。今のところ兵士たちの避難誘導で早めに避難は始めているものの、このままでは街を追撃されている可能性があるだろう。
『シュミット、あなたもすぐにこの街から離れなさい!!』
「はあ!?この街の人たちはどうなるんだ!?」
『必要な情報は既に手に入れているわ修復すればなかったことになるんだから、この時代の人間が死んでも何の問題はないの。今重要なのはあなた達マスターが生きていることなのよ!』
所長の声が通信機から聞こえて来て、正直耳障りだ。
確かにこの時代の人間が死んでも特異点を修正すればなかったことになるだろう。歴史が修正されればそれまでの歪みが正されるのだからそれは間違いではない。
けど、ここで見過ごせば魔術師以前に人間としてどうなんだろう、とは思わなくもない。
そう考えていると、シャルルマーニュが俺の肩を掴んで言った。
「マスター!!この街の人だけでも避難させよう!」
「セイバー」
「これ以上フランスを、奴らの好きにさせていい訳がないだろ!!ここで人々を助けなきゃかっこ悪いってもんだろ!!」
「君の基準はかっこよさだけなのかな?」
「当たり前だろ!?俺が守って来たフランスがこんなことになっているんだ!それを見過ごすなんて黙っていられねえよ!!」
「まあ、それは別にいいが俺をまきこむな。原稿が書けん」
うん、君はこっちに来てから変わらないねアンデルセン………。口を開けば原稿だとかネタ探しだからね。
とはいえ、セイバーは本気でこの街を救おうとしている。
………だが、ドラゴンに対抗するのであればそれなりの用意と武力が必要だ。特にあの群れを蹴散らすほどの力が。
「………セイバー、君の宝具には対軍宝具は存在するかい?」
「? あ、ああ。ある。あれだけの群れを足止めするくらいなら、なんとか」
「キャスター、君はセイバーの力を増強できるようなスキル、あるいは宝具は使えないかい?」
「肉体労働をさせるのか貴様は!!こんな状況でできるものか!」
「どちらにせよこのままじゃ僕らも巻き込まれるのは目に見えている。なら、ガーレン達が駆けつけ、避難誘導を終えるまで時間を稼ぐ」
『ば、バカ言ってるんじゃないわよ!!今すぐやめなさいシュミット!』
所長の制止する声が聞こえたけどそれを無視して、僕は二人の顔を見る。セイバーは口角をあげて頷き、キャスターはフンッ、と拗ねながら本を書いているが、その様子は真剣そのものだった。
僕も二人の顔を見て頷き、街の一番高い建物まで走り出した。
外壁の天辺までセイバーに連れていってもらい、向かって来るワイバーンの群れを見据える。だが、違うのはワイバーンの群れの中に一際でかいドラゴンがいることだ。
遠くから見てもわかる威圧感に、僕は冷や汗を描く。けれどここで失敗するわけにはいかない。
「キャスター、セイバーに力を」
「いいだろう、少しばかり誇張して書いてやる」
そう言ってキャスターの魔力がセイバーに渡っていくのを見て、僕は右手の手袋を外し、令呪をあらわにする。
令呪に魔力を込めている間、セイバーが剣をつきたて魔力を解放させる。
「キャスター、セイバー、準備はいいかい?」
「ああ、!!」
「もう締め切りか、仕方ない。短編だが、ここにフランスの皇帝の物語をかき上げよう」
二人が頷くのを見て僕は令呪2角を利用して呟く。
「『令呪を持って命令する、セイバー、キャスター、宝具解放』!!」
瞬間僕の体の力が抜け、思わず地面に跪くが同時にセイバーとキャスターの身から肌でも感じるほどの魔力があふれ出した。
キャスターはそのまま本の一ページに何かを書いてページを破き、宝具を発動させる。
「ではお前の人生をかき上げよう。タイトルは……そう、『
キャスターの宝具の力がセイバーを包んでいく。
セイバーはその剣を携え、剣を横に振るう。瞬間、彼の背中から翼のようなものが浮かび上がり、同時に彼の持つ光の剣の周りに様々な形の剣が浮かび上がる。
「一夜一時の幻といえども、ここに我は楔を穿つ!」
そう叫んだ瞬間、七色の光が剣を覆っていき、それは巨大な剣と化す。
「伝説よよみがえれ!我が剣に彼らの力を!!」
力を宿した十二の剣とセイバー自身の光の剣が並び立ち、ドラゴンを見据える。
そう、それは武勲詩『ローランの歌』にも登場し、無双の御佩刀と讃えられ、日に三十回色が変わると書かれた名剣。
…………その名は、
「『王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣《ジュワユーズ・オルドル》』!!!」
宝具の真名解放とともに、十二の剣の群れが閃光となってワイバーンの群れへ放たれ、そのまま敵を蹂躙していった。
うん、宝具解放はまだ先だと私は思ったんだけど、ジャンヌのお母さん救うためだもん、仕方ないネ!と言い訳をしてみます。漫画ではジャンヌのお母さんが最後までジャンヌのことを気にかけているんだなぁと思って読んでたので、街ごと消滅されたのは悲しかったです。
数kmって書きましたけど、実際ライダーの敏捷Aランクでたどり着くまでどのくらい時間がかかるんだろうって思いました。かなりのスピードでしょうけど、それでも一瞬ってわけじゃないですし、staynightのランサーもかなり早かったとはいえエミヤもついていけてたし……?と首を傾げています。まだまだ勉強が必要ですね。
さて、次回はかなり詰めようかと考えます。これでは来年に持ち越してしまいそうで怖いので。
では、次回もお楽しみにー!