Fate/GrandOrder Quatre Inconnus de Magiciens 作:オレン・オラージュ
どんどん投稿スペースが遅くなっていくー、と長い長い夏休みの終わりを告げられたオレンです。ずっと寝てられなーい朝早く起きるのがつらーい。試験がつらーい。
FGOはいよいよ来週からアニメが始まるとのこと。7章はみなさんのトラウマがぎっしり詰まっているのですが、一番の楽しみは現在ボックスイベのショップに出て来ているあの方ですね……すごく楽しみです。
今回は別行動をしているはずの立香視点からです。
では、どうぞ!
「……先輩………」
マシュが不安そうになって俯かせる俺に呼びかける。
突然ガーレンたちとの通信が遮断されてしまった。ファヴニールはガーレンたちのいる町へ向かったのだろう。
そうだとしたら、このまま放っておくのは………。
「急ごうマシュ!馬を走らせてくれ!!」
「え、先輩!?」
「待つんだ立香君!!」
俺が馬に乗ろうとすると、シュミットに腕を掴まれて止められた。俺は振り返ってシュミットの顔を見る。
「けどガーレンやキャリスが、皆危ないんだ!」
「今君が行ったところで何ができる!?下手したら僕たちも巻き添えになってしまうかもしれないんだよ!!」
「それならこのまま放っておけと!?」
シュミットがこちらを睨んで来たため、僕も思わず睨み返した。マシュがオロオロと慌てている中、誰かが俺とシュミットの頭を軽く小突いてきた。……軽くとはいえ、かなり痛かったけど。
頭を小突いて来た人物を見ると、呆れた顔をしているキャスターがいた。
「一旦落ち着け坊主達」
「けどキャスター………!」
「頭に血が上りすぎだ、少しはあいつみたいに羽を伸ばそうぜ?」
キャスターがそうふあぁ、とあくびをするアンデルセンを指しながらそう言った。いや、あれは緊張感がなさすぎの部類だよ!!?と内心で突っ込むのを忘れない。
シャルルがウズウズとしながら、馬に乗ろうと足を引っ掛けたり降ろしたりしている。
そしてしびれを切らしたのかシュミットに声をかけて来た。
「なあマスター!俺たちもいこう!!民が危ない!!」
「避難はすでに執り行われているはずです。ゲオルギウスがいるのなら、この事態を想定していなかったわけがありません。一般市民の方は問題はないでしょう。問題なのはファヴニールを誰が足止めするか、についてです」
「えっと………ガーレン達全員じゃ難しいってことだよな」
確かめるようにいうと、シュミットはこくりと頷いた。
「キャリス君のアーチャーもガーレンのセイバーにも、竜殺しの逸話があるとは思えません。現状、ファヴニールに対抗できるのはジークフリートだけだ。ですがそのジークフリート自体呪いをかけられてうまく動けない状況。そうなると一体誰が足止めをするか、が問題です。……ガーレンの性格上、まさかファヴニールに突っ込んだりしませんよね………」
シュミットが遠い目になりかけながらいうのを見て、マシュが首を傾げて言う。
「あの、ガーレン先輩はそこまで無茶をする方ではないような気がしますが」
「ああ、言ってなかったね。彼女、あれでも騎士の家系の生まれなんだ。フランスだったかイギリスだったか、由緒正しき騎士と、魔術師の間に生まれている。だから魔術師の中でも異端と呼ばれているんだ」
「異端………?」
俺はまだ魔術師のことはよくわからないけど、異端なんだろうか?ガーレンは俺よりもすごい人だけど、異端とは思えない。
シュミットがハッと口を閉ざし、深くため息をついて馬に乗る。
「ジークフリートが見つかった以上、間に合うにせよ間に合わないにせよ合流はするべきでしょう」
「間に合わせてみせる!!ほらアンデルセンいくぞ!」
「おい!勝手に持ち上げるな!!というか下ろせ!!」
シャルルマーニュもシュミットが行くことが嬉しいのか口の端を上げながら、アンデルセンを担いで馬に飛び乗って走っていった。アンデルセンの悲鳴が聞こえた気がしたが、気にしない。
「俺たちも後を追おう」とマシュに声をかけた。マシュが頷いて馬に乗り、俺も続いて乗ろうとすると、今まで黙っていたアマデウスがため息をついて呟く声が聞こえた。
「いやしかし、遠いね。マリアがやられるまでに間に合わないね。多分」
そう呟く声が、俺には聞こえてしまった。
え、とアマデウスを見やると、清姫が恐ろしい形相で扇子をアマデウスに向けていた。
「理由次第では燃やします。マリーのことが好きではなかったのですか」
「……彼女に対する情熱はない。僕にとって大切な分岐だったけどね」
極めて冷静にいうアマデウスに清姫が冷たい目で睨みつけるのがすごく印象的だった。マシュが「先輩?」と呼びかけてくれるまで固まって動けなかった。
アマデウスが「ほらマスター、急ぐんだろう?」と声をかけるまで、俺はその場から動くことはできなかった。
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「お待ちくださいガーレン様!!」
後ろからリリィの声が聞こえましたが、それを気にする余裕は私にはありませんでした。住民たちが避難している横をすり抜け、別の門へ走ります。マリー王妃が向かったであろう場所まで一気に。
街を出るとすでに何かと戦う音が聞こえてきました。そこにいたのは、傷だらけのマリー王妃と、
「あれは、サーヴァント……!!?」
黒いコートをまとった白髪の男でした。どこかで人を殺してきたんだろうか、身体や顔、手は血で濡れていました。
息を飲んで立ち止まると、マリーが水晶の盾を召喚して攻撃を防ぎながらこちらを振り返りました。
「! ガーレン!?どうしてここに!?」
「援護しますわ!!『ガント』!」
北欧の魔術『ガント』を放ち、黒いコートのサーヴァントを無理矢理にでも下がらせます。
彼は私の存在に気づき、怒りを目に宿らせながら憎しみをこちらに向けました。
「僕と、僕とマリーの邪魔をするなぁ!!!」
「っ!!?」
マリー王妃の横をすり抜けこちらに攻撃を仕掛けてきましたけど、私は間一髪でそれを避けます。横に転がりながらポシェットから短剣を抜きます。
さらに追い討ちをかけようと剣を振りかざす彼とそれを防ごうとする私の間に別の誰かが割って入ってきました。
「!?」
「やぁぁっ!!」
勇ましい声とともに剣を振ってサーヴァントの剣を弾いたのです。
そこにいたのは息を荒くさせて剣を構える、リリィでした。
「もうマスター!!勝手に行かないでくださいってば!心配したんですからね!!」
「え、ええ……ってあなた前!」
再び襲いかかってくる攻撃を、リリィは何度も弾いている。男のサーヴァントの方が背は高いはずなのに、打ち合っている姿を見て『サーヴァントの筋力って基準どうなっているのかしら』と思ってしまいます。
(*ちなみに筋力はリリィがC、サーヴァントの方がDの模様。魔術でならサーヴァントのステータスも一応読めますのよ?)
キィン、キィンと打ち合いを続けているのを見ながらどこで援護をしようか考えているとマリー王妃が駆け寄って来ました。頬を膨らませながらこっちを睨んできているのを見る限り、相当怒っているようです。
「なぜ来たの!ここへ残るのは得策ではないことぐらい、あなたはわかっていたはずよ」
「魔術師でありマスターでもある前に、私は騎士ですわ!!民も王妃も守ってこその騎士です。ここで引き下がってあなたを見捨てることなど、できませんわ」
「……………」
はっきりそう言うと、マリー王妃がくしゃりと悲しそうな顔をしてしまいました。驚いて私が「どうしたのですか?」と聞くと、マリー王妃は「どうして、」と言葉を続けます。
「どうして、そのようなことをするの?一歩間違えればあなたは命を落とす。けれど、あなたはここで死んではならない人間、それは自分でもわかっているはずよ」
そう諭すように言われ、ハッと口をつぐみます。
確かに軽率な考えだったのかもしれない。魔術師的に考えれば、サーヴァントを一体失ったところで想定内と所長や周りの人たちは言うでしょう。
けれど、私ではなくとも。
私は王妃の手を取って口を開きます。
「王妃、私は騎士の家系です。確かに私は人類が残した希望の1つ、けれどそれは他の3人にもできることだと考えています」
「そんなっ……」
「確かに特異点が直せば、この戦いで亡くなった人々も戻ってくるかもしれません。けれど、だからって味方であるサーヴァントを見捨てることなんて、私にはできないわ」
そう微笑んで言うと、マリー王妃は「……そう」と顔をうつむかせてしまいました。
どうしました?と声をかけようとすると、「一体誰だ……」と、おぞましい声が聞こえて来てマリー王妃の前に出ます。
「誰だ、マリーにそんな顔をさせる奴は。誰だ、誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ」
血まみれになった剣をかざしながらふらりと体を揺らせる男のサーヴァント。ぎろりとこちらを睨み、濃厚な殺気が肌をピリピリと指します。
これは、まずいっ………。
直感的にそう判断する。その嫌な予感は、的中してしまったのです。
「マリーを悲しませるものは、許しはしない!!宝具展開!」
サーヴァントが魔力を放出させると、彼の後ろに大きく、禍々しい門が現れました。
するとグィ、っとマリー王妃が私の手を掴み、いつの間にか出現していたのだろうガラスで作られた馬の上に一緒に乗りました。馬はそのまま空を駆け出し、空を飛びます。
瞬間、門とともにギロチンが現れ、そこから黒い手がこちらへ伸びて来たのです。
「『
馬はその手から逃げるように空を飛びますが、黒い手もこちらを追って来ます。あれに捕まるのはいけない、と瞬間的に判断しました。
「リリィ!全力で避けてください!!」
「は、はい!きゃああっ!!」
リリィが全力で逃げているのを見つつ、私は後ろから追いかけてくる黒い手を追い払おうと指を構えます。ただ、スピードが速すぎて狙いが定まりません。
「………ねえ、ガーレン。私は、本当に嬉しいのよ」
「え?」
不意に、マリー王妃がそう呟きました。
「私も死ぬのは、とても怖い。二度目のはずなのに怖いの。でも、今はあの時とは違います。私はまだ必要とされている」
マリー王妃の言葉に私はおとなしく話を聞きます。
マリー・アントワネット。14歳の時に後の国王ルイ16世と政略結婚、王妃となった彼女を待っていたのはベルサイユでの華やかな生活と陰謀渦巻く孤独な戦い。それでも王族として民にもよく尽くし、子にも恵まれた彼女の生活は幸せだったはずだ。
しかし、革命の熱狂に浮かされたその民衆によって、彼女は処刑されることになった。
それこそ亡くなった経緯で言えばジャンヌ・ダルクとそう変わらず、それこそあの黒いジャンヌと同じように誰かを憎んでもおかしくはないはずです。
なのに、彼女は穏やかに笑うのです。
「私は今度こそ間違えず、大切な人と大切な国を、あなたを守るために、正しいことを正しく行うことができる。それが、たまらなく嬉しいのです」
彼女は私の方へ少し振り返って、笑いました。
確かにその姿は『民を思う本当の王族』でした。
「だから、今は」
マリー王妃は手を胸にかざし、魔力を放出します。私は何をするのか気づいて同じように手を重ねて静かにパスをつなげます。王妃は頷き、手にはめている指輪はさらに輝くを増します。
「この輝くを束ねて。さんざめく花のように、陽のように」
一気に魔力が吸い取られる感覚がして、歯を食いしばって耐えます。馬は一気に旋回し、門へと突っ込んでいきます。
「『
それは、栄光のフランス王権を象徴とした宝具。
ガラスで構成された馬は光となって襲ってくる黒い手をかいくぐり、そして出現したガラスの結晶が取り囲んだサーヴァントの脇腹を貫いたのです。
「僕、は……もっとうまく首を刎ねて、もっともっと最高の瞬間を、与えられた、のなら………君に、許してもらえると……」
サーヴァントは何事かを呟きながら倒れ伏しました。彼の魔力が消えたのか宝具の門やギロチンまでも消えて行った。
マリーはため息をついて馬を下りながら呟きます。
「もう、本当に哀れで可愛い人なんだから。はじめからあなたは、私に許される必要なんてなかったのに」
マリー王妃の呆れたような、けれどようやく終えることのできた、そんな安堵の息を漏らしました。
あのサーヴァントはマリー王妃の生前の知り合い、そして彼の『首を刎ねる』という言葉……彼は、処刑人『シャルル・アンリ・サンソン』なのかしら。
ここまでわかりやすい真名表示はないですわね。
「令呪を以て命ずる。”アサシンよ、城へ戻れ”」
瞬間、冷徹な言葉が辺りに響き、アサシンのサーヴァント『サンソン』はその姿を消した。
その声にすぐにリリィが駆け寄ってきて私の前に立ちました。
マリーも疲れ切った表情で、その声の主人を見ます。
「令呪……サーヴァントへの絶対命令行使権はそんな風にも使えますのね。それにしては遅い到着でしたのね、『竜の魔女』さん」
その目線の先にいたのは、ジャンヌによく似た女性……『竜の魔女』もう一人のジャンヌが立っていたのです。
今回はかなりぶつ切りになってしまいました……。最近はモチベがなかなかあがらず困ります。なんとかモチベをあげようとイベントは頑張って周回しています(遅くなった原因がこれだろうとか思った人、正解です((
まだ中学生の頃、ある漫画でシャルルを女性の名前で見かけたのでシャルルは女性名という印象がとても強いです。今ではシャルルと聞くと男性名にも女性名にも聞こえるので言葉って不思議です。アシュリーが女性名だとか、正直今でも間違えそうになります・・・。
ではいつもの補足。
アマデウスの耳はかなりの距離を聞くことができるそうなので、下手したらマリーが身代わりになっていることぐらい知ってるんじゃないかなぁと思って書いています。立香は恋心云々とかあらかじめそういう話を聞いていたので、マリーに対して愛情がないアマデウスに驚いています。
そしてガーレン、彼女は多分衛宮士郎とは別の意味で破綻しています。具体的にどう、とかはまだ語れませんが今のところ彼女が一番主人公らしいですわ……と内心で考えたり考えなかったり。
かなりのスローペースですが、いよいよ第1章も佳境に入りつつあります。
今年中に終わることを期待したりしなかったり、けれどゆったりまったり投稿していくのでよろしくお願いします。
では、また次回!