ギルガメッシュ   作:トラロック

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亡国の吸血姫編
脱水魔法


 

 リ・エスティーゼ王国より遥か南東に存在していた国インベリアは一人の魔法詠唱者(マジック・キャスター)により復興作業が進められていた。

 一度は完膚なきまで滅ぼされた亡国の跡地を多くの助力により人の住める地へと変えていく。

 いきなり国とは言わず、争いに疲れた流浪の民の為になるような――そんな些細な願いから。

 民と呼べるものはまだごく少数だが、いずれは大都市に発展するかもしれないし、このまま時代に埋もれて消えていくかもしれない。

 そんな国ともいえない地を統べるのは暫定女王『キーノ・ファスリス・インベルン』である。

 数年を要して跡地全体を清め終わり、各地から様々な薬草を持ち寄って荘園を築く。

 元々研究者でもある彼女はこの地でしか作れないような資源の開発にしばらく注力していた。

 

(……世界が混迷に見舞われ、多くの国々が沈んでしまった。だが、ここはその時代から逃れて再浮上の時期に入った)

 

 女王にしてはあまり整っていない金髪。血のように赤い瞳の少女然としたキーノは手作りの玉座にて物思いに耽る。

 かつて栄華を誇った国は強大な竜王(ドラゴンロード)によってあっさりと滅んだ。だから、というわけではないが今更また国を再興しても失ったものは戻らないし、何の慰めにもならない――

 かといって復讐したい気持ちなどは遠の昔に失せていた。

 

(……世界がまた変わろうとしている。私達は見捨てられた)

 

 胸の内にあるのは儚げな郷愁ばかり。

 それでも最期の時まで生き続けなければならない。それが生き残った者の使命である、と誰かが言っていた。

 それは本当にそうだろうか、と少し前から疑問に思い始めた。

 

「……負け犬同盟……。世界を変革もできない私たちには未来なんて無いのかもな」

 

 (ようや)く煩わしい世俗から解放されたというのに気分はずっと沈んだまま。

 虚しさは明日に向かう意欲を簡単に削いでしまう。

 呼吸を必要としない種族なのにため息ばかり漏れ出てしまいそうになる。

 

        

 

 目的のない生活は不健康だ。しかし、健康的な朗報があるわけでもない。

 外に出たキーノは農作業に従事する同志達に挨拶して回った。最低限の防りだけは確保しなければここに居る意味がなくなってしまう。その時まではしっかりと働かなければならない。この亡国の(ちょう)として。

 遥か南東に位置する旧インベリア王国――今は新インベリアでもある――は砂漠が近い事もあり、気温が高めだ。それゆえに育てられる作物も豊富には揃えられなかった。

 そこで多くの錬金術師(アルケミスト)達の知恵を借り、地下施設を作ったり、日照を遮る建物を建造したりした。

 温度を上げ下げする魔法も利用して。

 それらの指揮を執るのがこの辺りに生活圏を持ち、キーノにとって長い付き合いのある魔法詠唱者(マジック・キャスター)『サトル・スルシャーナ』だ。

 キーノが偽装身分である『イビルアイ』として活動している間、彼はここで数多の魔法を用いてインベリアの復興に邁進していた。この地で暴れていた邪悪な竜王(ドラゴンロード)を退けたのも彼ではあるが――

 

「……いつにもまして疲れた顔をしているな」

「……王国が滅びを迎えた時のことを思い出して……。私にとってはあっという間の出来事だった」

 

 ただし、この愚痴は何年も前から言っていることだ。それをまた言うのは脳みそが働かないアンデッドの影響かもしれない。

 国が滅ぶのは別に珍しくもない。なのに言葉に出してしまうのは長く居た為かもしれない、と。

 

「……そっか。国の興亡は世の常だと思っていたが……。君の心には絶えず刺さるか」

「ここもいずれ時代に飲み込まれる。そう思うと……やるせない気持ちになる」

「……世界統一を企む(やから)でも出たか?」

 

 からかうように言うサトル。

 そんな程度の低い話しではない。そう言いたい気持ちがキーノにはあったが――言う自信も元気もなかった。

 サトルは世界最強の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。だからこそ、戦ってほしくない。彼は国――いや、この世界にとって無くてはならない存在だからだ。

 勝ち負けは関係ない。

 万が一という事があっては自分達の存在意義が永遠に失われてしまう。それがとても怖かった。

 

        

 

 無気力になる時、サトルに様々なことを話した。

 リ・エスティーゼ王国のこと。魔導国のこと。ナザリック地下大墳墓という場所に住む強大なモンスター達のことを。

 最後は仲間だが――どれだけの人員を失ったのか、キーノにとっての大切なものが何なのか分からないため、うまく伝えられたかどうか。

 

「いくら俺が強くても一人で勝つほどじゃあない。そのナザリック? ……の者達はきっと……連携してくるだろうね」

「個人の強さが突出していれば個人戦になるのではないのか?」

「……強さが拮抗していれば個人戦は避けるべきものだよ。同等規模が他にも居たら終わりだから」

 

 まして、相手の戦力が不明なうちは情報収集に終始すべきだ、とサトルは落ち着いた様子で言った。

 戦略的にも個人戦は出来る限りしない方がいい。特に背後に守るものがある場合は。

 

(それに彼ら(ナザリック)を排除するメリットが俺には無い。キーノには悪いが……。君だけはどんな手を使ってでも逃がす気でいるけれど……。彼らとの邂逅は……俺にとって……)

 

 聞いた限りでは会わなくても問題はなさそうだ。だが、厄介な存在が居る事を知られればいずれは会うことになる。それが自分の運命のように思えた。

 出来れば勝負事は無しで進められたらいいが、とサトルは頭を痛める。――だが、それは意味のない形容だ。

 サトルは人間種ではないし、まして通常のモンスターでもない。

 普段は人間に偽装して生活している成人男性だが正体は紛うことなきアンデッドモンスターだ。キーノとは二〇〇年を超える付き合いがある。

 

(魔導王が居るってことは並行世界の俺って事じゃん。それなら会うのは危険だ。仲良くなる要素ゼロだし。自慢するわけじゃないけど、俺は自分大好き人間じゃねーからな。間違いなく敵確定。……どうしよう。せっかくインベリア復興に乗り出したキーノが遠くに行っちゃいそうで……。何とか他の仲間と連絡取りてーな。絶対、自分との対話は破滅しか無い)

 

 風の噂でもリ・エスティーゼ王国やその周りで起きる様々な騒動についてはサトルも聞き及んでいた。

 行動パターンが手に取るようにわかり、大半が自作自演であることも()()()理解できてしまった。

 数年ほど思考放棄してみたが、それでも逃げられない運命を感じ、こっそりと情報収集に勤しんだ。――結果は想像通りだった。

 

(キーノががっかりするようなモンスターは俺の手持ちにたくさん居るからな。今まで見せなかったけれど、実際に見ちゃったらしいし……。可哀相に。結構強化したんだけどな。それでも足りなかったか……。だけどあまり強くし過ぎると隠密行動がとりにくくなるし……)

 

 サトルはキーノの身を案じて色々と手を尽くした。それがほんの数年でご破算になったらしい。それはとても性急な問題である。

 そんなことをするのはあれこれ手を回す自分であれば不思議はないが、敵としてみると厄介極まりない。

 しかもかなり進軍してきているとなると手の打ちようがなくなるというもの。

 引っ込み思案な自分とは思えない。誰かが余計なことをしているに違いない。その誰かといえば――大方の予想では仲間だが、そうでない場合はNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)となる。

 そもそも彼ら(NPC)もう一人のサトル(モモンガ)を動かせるのか。

 答えとしては動かせる。彼らは仲間が作り上げた存在だ。何らかの事情で頼みごとをすれば責任感を発揮して活動する。それが(サトル)だ、と。

 

(単なる人形ではなく自我を持っている。であれば当然、彼らのフレーバーテキストが効果を発揮して俺を突き動かすように誘導する。自明の理とはこのことだ)

 

 NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)の自我についてはこの世界の歴史の中にもあるので予想は早期についていた。

 どういう原理かは知らないが、この世界に居るNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)はすべからく自我を持つ。()()()()()で暴走することも知られている。

 他のギルドと思われる打ち捨てられたギルドホームに居たNPCがまさに会話不能のモンスターだった。

 思考を司る繋がりを断つと暴走する。それゆえにホーム(拠点)を見つけても無暗に攻撃してはいけない。

 

        

 

 サトルはキーノが居ない間も方々に協力者を募っていた。その一つが東方の地にある『ジパング』という国だ。既にそう名付けられていたので名称を聞いたときは驚いた。

 人間種はあまりおらず異形種が多かった。この世界は過去に多くの人間が居たが今は数を減らしている。南方に子孫が住んでいるのも分かってはいるが既に生活様式はだいぶ変わっていた。

 インベリアに居るのは各地から集めた協力者だが、多くは未だに東方に居る。ここに居るのは非戦闘員と変わらない。

 サトルは長い時間の中で定めた目的の一つにキーノの為に生きる、というものとインベリアを復興させる、の二つを早期に決めた。

 後は(つつ)ましやかに生活するが三つ目かな、という程度。

 

(世界を汚す竜王(ドラゴンロード)の再来も俺達には問題だからな)

 

 個人主義である彼らを打倒する事は不可能ではないが難しい。連携を取られない限り敗北しない自信はあるけれど。

 それでも最低限の仲間が居ないと自由に活動できないのはもどかしいと言わざるを得ない。

 自分達の楽園もそろそろ潮時が迫ってきているのかもしれない。そういう想定を毎年きちんと考えている。常に策を用意しておくのも戦略にとっては大切なことだ。心が未だに折れていないのであれば前に進むことこそプレイヤーの矜持である。

 

「サトルー。今日はどんな魔法を教えてくれるの?」

 

 若き魔法詠唱者(マジック・キャスター)候補の子供達が集まってきた。人種は様々で定期的にサトルから魔法講座を受けていた。

 高い位階魔法をいきなり使うことは出来ないが現地の魔法知識と引き換えに教授していた。

 最初は興味本位で習っていた子供も才能が無い者は次々と挫折し、最後まで残っているのはキーノを除けば数人程度。それでも毎年、新たな生徒が教えを請いにやってくる。

 生活に必要な魔法程度であれば習得は早く、より専門的なところになると脱落者が増える。

 

「今日は何を教えてほしい?」

 

 数十年前から少しずつ広めていった事なので自前で教科書を制作。だいたい一〇〇個ほどのレパートリーを巡回する形となっている。

 第三位階程度までならば充分な数を教えられる。

 常識的なことながら魔法を使うには最低限一レベル分の魔法職を身につける必要がある。それは魔術師(ウィザード)でなくとも錬金術師(アルケミスト)吟遊詩人(バード)でも良い。

 

「みんなー。サトルに無理を言ってはダメだぞー」

 

 遠くからキーノが声をかけてきた。それに子供たちは元気よく返事をした。

 インベリアではこれが日常風景だ。

 各自の家では夕食の支度の為に料理の下ごしらえをしたり、農作業に従事する。

 他の国々からやってくる商人達も居る。最近は竜王国からの旅人が多い。それによって様々な話題が手に入る。

 

        

 

 キーノ以外の前では目深にフードを被る、いかにも魔法使い風の姿になるが偽装した人間の顔を見せる事もある。

 これは単に雰囲気作りだ、と周りに説明している。

 もちろん、キーノはサトルの正体を知っている。サトルもキーノの秘密を知っているので共に相手の秘密を暴露することはない。ただ、サトル側は何らかの事情があればキーノは秘密をバラしてしまう可能性を危惧していた。

 疑り深い性格は種族的な問題らしく、今も疑念は払拭されない。それについて悩むこともたまにある程度だ。

 

「魔法を使う時に必要になるのは音声、動作。それと一部は代償が必要になる。その魔法に見合う価値ある資金や物質だ。時には己の生命力も」

 

 何十、何百とも知れない回数を費やして説明してきた。既に定型文(テンプレート)としてソラ(暗唱)で言えるほど。

 既に習っている者にとっては退屈だが初めて受ける者は目を輝かせる。

 大事なことは何度でも聞くように、と強く言い聞かせているので文句はそれほど来ない。

 

「初級魔法は才能によって左右されるところがある。誰でも平等に、とはいかない。多くの職業があり、魔法も膨大だ。その全てを習得する事は俺でも無理だと言う。それを分かって頑張ってほしい」

「は~い」

 

 資金に余裕があれば北部にあるバハルス帝国にてより専門的に習う方がいい。しかし、そうなると帝国にすぐ囲われてしまう。あそこで魔法を習うには帝国民にならなければならない決まりがあるからだ。

 インベリアで生活するより安全であるならば移動した方がいいに決まっている。だから、それについては止めない事にしている。

 弱小国家や領地は常に強者に搾取される運命だ。それに抗うには力をつけていくしかない。竜王国のように。

 

「先生。バハルス帝国に先生みたいな人が居て魔法を教えてるんだって」

「……先生みたいなって……。あそこは学院があるから教えているのは当たり前じゃないか」

「そうなんだけど……。見た目が植物なのに魔法にすっごい詳しいって噂になってたよ」

(……それって……『ぷにっと萌え』か? 海洋生物なら『タブラ・スマラグディナ』だ。……まさか俺以外にも……)

 

 子供達は旅商人から色々と噂を聞いてきたらしい。とても興味はあるが今は勉強を優先したかった。

 並行世界の自分が居るなら仲間が居てもおかしくない。しかもリ・エスティーゼ王国の崩壊を止めなかったのであれば敵のままだ。

 サトルにとってこの世界はどうでもいいものではない。キーノが悲しむ。敵対理由はそれだけで充分だ。

 とはいえ、真っ向から反抗するほどの戦力も策も無い。ただただ陰から彼らが何をし、世界をどうするのか調べ、そして、身の振り方を考える。

 キーノが無事である限り――

 

(戦略として周りを切り崩し、本丸を落とす。であればインベリアを攻める場合は竜王国を落とさなければならない。ここは彼らの庇護が働いている)

 

 時間的猶予から見ても即座の陥落は無いと予想する。しかし、一国を落とすとなるとますます仲間として合流するのが難しくなる。

 こちらのサトルは平和主義者であり、かつての仲間が作ったNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)もナザリック地下大墳墓も無い。だが――

 彼のインベントリにはギルド武器がある。記念として持ち出してしまったものだ。

 もし、別のナザリックに影響を及ぼせるのであれば狙われる確率は高まる。少なくとも自分ならそう考える。

 ここは持っていない事にしておかなければ――

 高レベルの盗賊(シーフ)でもけしかけてこない限りは奪われる心配は無いし、精神支配系は通じない。

 

「帝国に居る先生が優しいなら俺は要らないな」

「そ、そんなことないです。サトル先生に居なくなってもらっては……」

「帝国まで行くの大変だから」

 

 確かにバハルス帝国までの距離を考えれば気軽に向かう、なんてことは言えない。

 しかし、彼らが望めば引き留める事はしない。敵が居ると分かっていても。

 

(……いつまでここで平和に暮らせるかな。侵攻速度次第ではアーグランド評議国に庇護を求める事もありか。……それとも彼らの手が及んでいない国々と……。いや、それだと余計に頑張るだろうな、ナザリック勢は……)

 

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の性質は世界制覇。異世界にて自らの強大さに気付き、強者がそれほど居ない事を確認すれば王国のようにあっさりと潰して回る。

 聖王国も既に彼らの手に落ちたと聞いている。

 

(……ヤルダバオトはウルベルトさんだな。手が速いと思っていたけど異世界でも元気な人だ)

 

 調査隊がいずれインベリアに来るかもしれない。その対策を取ったとしてもすぐに逃げられるわけではない。

 今は距離的な問題で助かっている。後、数年程度が限界と試算する。

 

        

 

 大きな王国ではないインベリアにナザリックが攻めに来るメリットというものは無いに等しい。あるとしても領土の拡充くらいだ。

 ナザリックは脅威の存在ではあるが彼らばかりが敵ではない。その為に各地に点在するプレイヤーの遺跡(ギルド跡地)調査を(おこな)っている。こちらの方が今はアドバンテージとしては先行していると見ている。これをもう少し早める必要性を感じた。

 

(ナザリックの連中が来たのはここ最近……。王国側の調査は先に済ませたから彼らには気づかれていない筈だ。……南方の『エリュエンティウ』に手を出すほどの冒険心があればいいが、俺なら警戒して数年は手を出さない。……ということでそろそろ手を出す時期に入る事もありえるけれど)

 

 実際に数年間サトルはかの都市に手を出さなかったので間違いないと予想している。

 ナザリック、というか魔導国の行動範囲はそれほど広いわけではない。それは単に移動できないナザリック地下大墳墓の影響だと思われる。

 ギルド長なら迂闊に手を広げないし、仲間たちに遠出も命令しない。

 慎重派だからな、俺は、と。

 

(……しかし、インベリアはもう移動できない。キーノは戦闘意欲を減退させている。他の連中をたきつける事も悪手……。思いのほか戦力が足りないな……。スレイン法国の連中は精々が壁役……。いや、移動できないなら……もう少し離れた場所にすればいいのか? 距離が空けば空くほど攻め込むのをためらうのが俺……。リ・エスティーゼ近辺にもはや用は無いしな)

 

 インベリアを捨てて新たな国の創設を視野に入れる。現在地に固執するのはキーノだけ。彼は彼女の為に残っているだけで、こだわりは殆ど無い。丁度いい土地があっただけ、という認識だ。

 それに――

 

(俺とキーノ達以外にとってはどうでもいいことだ。彼らがどこかの国に接収されようが虐殺されようが……。勿体ないけど)

 

 サトルにとって大事なことはキーノだけ。――いや、今は彼女の仲間も付けなければ――

 とにかく、守るべきものが少ない内は全力を尽くす。それ以外は申し訳ないが切り捨てる。それがサトルの決意であり決断である。

 行動は早い方がいい。そう判断したサトルは次の拠点の選定と防衛手段の構築の為に頭を働かせた。

 インベリアの情報は古いので魔導国にとっては大した重要度とは捉えていない筈だ。

 かつて栄華を誇った王国は強大な竜王(ドラゴンロード)によって壊滅した。今のインベリアは跡地に作られた小規模な国ともいえない小都市のようなものだ。

 

(いっそ海上に逃げるか? 適当な無人島でもあればいいが……。一〇〇年くらい安穏として暮らせれば俺なら侵攻を諦める。何らかの攻撃を加えていない限り、だが)

 

 その為には貴重な資源などがない土地でなければ――

 最低限の暮らしができれば文句はない。このインベリアの土地は手塩にかけて育ててきたけれど、それをすぐに捨てるのはサトルにとっても一大決心が必要なほど。なにせ、元々貧乏性だったから。こだわりが無いとしても勿体ない精神が働いてしまう。

 だが、やはりキーノ達の安全を考えれば長く居るべきではない。ここに暮らす子供たちに明け渡した方が賢明だ。

 

(キーノが狙われる、という想定だとそうなる。そうでないなら逃げる必要はないが……。俺が疑われる。……悪いが魔導国とは会いたくない)

 

 深夜、昼間に考えていたことをキーノに伝える。

 共に逃げるか、どこかの孤島にサトルだけ逃げるか、という話しを。

 インベリアで隠居できると思っていたキーノにとっては寝耳に水の話しだったようで、大層驚かれた。だが、魔導国の強さを知る彼女はすぐに理解を示した。

 

「……サトルには恩がある。かつて滅ぼされた私の故郷を蘇らせてくれたこと。だから、わがままは言わない」

「君が末永く生きていたいと思ってくれるのであれば俺は全力を尽くす。蒼の薔薇の増強にも手を貸そう。しかし、今の戦力で魔導国と戦うことは出来ない。無謀だ」

「うん」

「戦闘以外の駆け引きであれば……、ここに残ってもいいと思う。身の安全を考えれば俺は表に出るわけにはいかないけれど……」

「交渉ごとは何とかする」

 

 いくら強いサトルでも多勢に無勢であることは理解している。だからキーノも無理に戦おうとは言わない。

 王国を滅ぼしたからとて他の国も蹂躙し始めた、という噂は聞かない。属国になった帝国は今も存命しているし、ローブル聖王国も魔導国の支援を受けている。急に攻め滅ぼされることは無い筈だ。

 その点から見て、王国から逃亡した元アダマンタイト級冒険者を追う理由は見当たらない、筈だ。

 全員皆殺しにしなければ気が済まない、という陰湿な国家元首でもない限り。

 

(……それに一度は完膚なきまで滅ぼしたはずのリ・エスティーゼ王国はなぜか再建されている。殺しつくしたはずの者達も次々と復活したとか……。まったく訳が分からない)

 

 かの王国から離れたキーノは噂でしか情報を得ていないので詳細は不明だが、魔導国は何らかの方法で火消を(おこな)っている。

 どういう心境の変化なのか。不可解すぎて様子を見に行くのが怖い。

 これらはここ五年余りに起きた。田舎であるインベリアは最近になって王国が滅んだ、という情報が届いたので復活の報告が住民達に改めて届くのは二年くらい先かもしれない。

 それくらい各国の情勢が伝わるのは遅いものだ。

 五年経った今もインベリア周辺に変化がないのは侵攻が止まっているからだ。というより本当にここまで侵攻する気があるのか、キーノ達には分からないけれど。とにかく、侵攻の予兆が今のところ無い。それが現状であった。

 

        

 

 サトルの情報はインベリアの中だけのものだ。他の国で諜報活動する時は偽名を使っている。それによってピンポイントで攻め込んでくる確率を減らしている。それでも来る時は来ると予想しながら生活を続いていた。

 時間がある時は対策に。それ以外は子供達の教師として。

 

(インベリアは王国となっているが実態は田舎の農村と変わらない。そんな国をどういう理由で蹂躙するのかは分からないが、大義名分を与える気はない。そうなれば俺とて迂闊に手は出さない。……あるとすれば偽装して調査だ)

 

 それだけでも充分な対抗策として機能する。

 そんなことを考えつつ集まった子供たちに魔法を教えていく。ついでに魔法詠唱者(マジック・キャスター)には必須の特殊技術(スキル)の解説も。

 第三位階までなら諸外国から目を付けられる心配は無い。バハルス帝国がもっと高い位階魔法を教えているかもしれない、という噂を近場の小都市や農村にばらまいているので。

 サトルの実力を知るのはキーノだけ。王国崩壊前に連れてきた蒼の薔薇にはまだ教えていない。

 

「魔導国に対抗するためならもっと大規模な訓練をするよ。……そんな目立つ行動をすればすぐに察知されるし、帝国ほどの規模が無いと無理じゃないかな」

 

 子供達の質問にサトルは正直に答えていった。

 自分たちに魔法を教えてくれる理由は何なのか、などを。

 興味がある子に教えているだけ。それはあながち間違いではない。将来、もっと多彩な魔法を覚えるかもしれない。そのきっかけづくりをしているだけ。

 才能を早めに開花させたり鍛えておけば近い将来、サトル一人が頑張らなくても済むかもしれない、という淡い期待があったからだ。

 最低限、人間を食らう亜人くらいは倒してもらわなければ人間種に未来は無い。

 剣術に関しては竜王国の冒険者が善意で教えにやってくる。見返りは薬草類だ。あと、モンスターの貴重な素材。

 長く人の手が入らなかったインベリア周辺は夥しいモンスターの巣窟だった。それらを適度に間引き、資金源としている。ついでに住民たちの増強にも繋がった。

 倒す敵に困らず、竜王国の他にスレイン法国からも度々、助っ人が来てくれる。

 ここが人間の国だと認知した為だとか。亜人種は無視されている。

 

「他国がどう出ようと俺達はここで生活していかなければならない。急な場所移動を求められても困る」

「はーい」

「では、繰り返しになりますが……。魔法を覚えるのに一番有効な手は覚えたいという気持ちを強く持つ事です。いきなり高い位階魔法は無理ですよ。思い込みであろうと馬鹿には出来ません」

 

 黒板に竜王国の言葉で文字を書く。このあたりの言語は竜王国とバハルス帝国の言語が主流だ。

 覚えるのは大変だったが会話は特に支障がなかった。

 キーノと二人で一〇年くらいかけて覚えた。

 

「魔法を覚える時、脳内におぼろげながら浮かぶものがあるはず……。それを選択し、行使します」

 

 これは実際にキーノが体験したものだ。

 サトルには全く理解できなかった現地の魔法習得方法は実にあやふやであった。

 一定の経験値を貯めれば自然と脳内にいくつかの魔法候補が浮かぶ。それを現地の人間たちは何らかの法則や数式に当てはめようと努力してきた。

 その数式が経験値ではないかとサトルは予想している。

 遥か昔から文化があるのに正しく広められていないのは誰も理解できなかったから。どうして行使出来るのか、その理由が今も不明であるため。

 何故か、魔法が使える。そんな感覚で今に至る。

 

「選択できないこともあります。それらは運の要素もあります。誰でも平等に、とはいかないのが世の中の厳しさと言えるでしょう」

 

 効率よく増強できれば誰でも強くなることは確実だ。絶対に無理だ、とは言い切れない。

 子供達は()()覚える余裕がある。

 インベリアで余裕がないのはサトルだけかもしれない。

 

「最初に手当たり次第に覚えてしまうと後々覚えられなくなりますから、出来るだけ慎重に選んでください。出来れば自分にとって必要だ、と思ったものだけ。時には勘便りも有効ですよ」

 

 子供達は元気よく返事した。それだけ見れば実に平和そうな光景である。

 サトルとしても穏やかな気持ちになれる。

 覚えられる上限があるのはサトルだけで現地の子供は全て覚えられる、かもしれない。確かめたことがないから。というより、魔法はあまりに膨大で扱いまで気が回らなくなるのではないか、と。

 

        

 

 一般に広まっている『生活魔法』と呼ばれる第零位階の魔法は現地の人間がそう呼んでいるだけで実質第一位階と変わらない。

 もし、それを含めると位階魔法が十一段階になってしまう。その上で位階を超えた超位魔法も含めると――サトルの知識の中の常識が崩れていく。今でこそ受け入れられているが受け止めるのに数年を要した。

 位階魔法と言うだけあり、MP(マジックポイント)はしっかりと消費する。

 彼らの認識によるMPというのはサトルの数値とほぼ同じ概念が適用されている。それがどうして存在するのか、疑問なのだが考えるだけ無駄だと認識するのも時間がかかった。

 

(人、またはクリーチャーがどうしてMPを持っているのか。その謎は今もって分からない。昔から魔力として認知されていたらしいけど、俺も思考を柔らかくしないとダメだしな)

 

 あまり流されてはいけないのだが、思考を硬質化するのはよくない。

 キーノの為にサトルは人並み以上に努力した。今から思えば彼女の存在があるからこそ人生に弾みがつけられた。

 ゲーム一筋だった頃とは雲泥の差である。

 かつての仲間たちだけが自分のすべてだった。しかし、今は違う。

 

(話し合いには応じるけれど、インベリアはともかくキーノだけは守る。……というと俺、そんなに成長してないな……)

 

 気恥ずかしい気持ちになるも精神は強制的に抑制される。

 過度な感情の起伏は今でこそ受け入れられ、前を向くことができるようになった。

 前向きな人間ではないがそうしなければならない日々を送っていたのは確かだ。そして、それを失うわけにはいかない。

 

(……だけど対魔導国対策は難しいよー。助っ人欲しいよー)

 

 本音の部分では誰かに助けてほしい。それは間違いない。

 まず戦闘は無茶である。勝てる見込みは無い。あったとしても一人か二人だ。

 それならば少ない犠牲で済む方法を模索し直さなければならない。

 誰も犠牲にしない方法など考えるだけ時間の無駄だし、そう理解している。世の中は常に何かしら犠牲にしているのだから今更な話しだ。

 

「……先生? どうしたの?」

「……あ、ああ。済まないな。先生は色々と考えることが多いから」

 

 キーノ以外の人間は正直、どうでもいい。それは種族的な感じ方からくるもののようだが、それでもここまで発展させてきた。その中に居る彼らを安易に見捨てることは出来ない。――打算的な意味で。

 助ける事は難しい。であれば自分以外の誰にやってもらえばいい。ここには蒼の薔薇や竜王国の冒険者も来てくれる。協力者を十全に利用すればいい。

 一つ納得して黒板に魔法名と効果内容を書き記す。

 

「世の中に知られている魔法の名前や効果内容が詳しければ詳しいほど覚える時に役立ちます」

 

 最初に魔法を広めた存在は何らかのアイテムを使ったのかもしれない。それにいくつか心当たりがあるが、この世界全土に適用させるほど、というのは正直に言えば思いつかない。

 ゲームの中でならばありうることも異世界を変革させるほど、というのは常識的に考えても荒唐無稽でありサトルでもそう思う。

 竜王(ドラゴンロード)達が扱う『始原の魔法(ワイルドマジック)』も凄まじいものだが。

 

「その効果内容を自分で変更したい場合は……、出来るものですか?」

「既存の魔法を変更するのは難しいです。世の中に新しい魔法を作り出す、という意味になりますからね。けれど、それを成した、という噂は聞いていますが……。それが本当にオリジナルなのか、偶々(たまたま)既存の別の魔法と一致してしまっただけなのか……。議論の余地がありますね」

 

 一部の魔法はデザイン(創作)できる、と言われている。けれども、それでも条件があった筈だ。

 魔法と言うのはそう簡単に新しく生み出せるものではない。

 サトルが習得している七〇〇もの魔力系も大概だが――

 

「それらを成すには充分な能力を得なければなりません。それと作った魔法が世界に認められなければ使用は不可能です。我々が扱う魔法は既存の魔法……。世界に認められ、誰にでも扱える。俺の魔法もそうです。俺にしか使えないオリジナル魔法は一つもない」

 

 高い位階魔法が多いけれど自分でデザインした魔法というわけではない。ゲーム会社が作り上げた仕様に基づいている。それと現地のオリジナル魔法も一部は扱える。ただし、習得したわけではない。魔法のスクロール(巻物)として行使出来るというだけだ。

 一般の人間たちが使う位階魔法は竜王(ドラゴンロード)達からすれば穢れた力に相当するらしい。現に彼ら(竜王)は位階魔法を扱えない。

 かの竜王(破滅)は自らをアンデッド化して位階魔法を習得した。その代償として始原の魔法(ワイルドマジック)が使用できなくなった。

 これにも条件があり、代償を用いることで無理矢理に始原の魔法(ワイルドマジック)を使用できるようにした。

 サトルからみれば凄まじい事である。

 

「みんなは今のところ好き放題覚えられないから地道な勉強をした方がいい。もし、才能が開花すれば新しい道が開ける、かもしれない。俺にも想像がつかないような……。残念ながらそこまで面倒を見ることは出来ないからな」

「はーい」

(いや、本当にそこまで無理だから。無茶言わないでね、ちびっ子達)

 

 期待値が高すぎると逃げ出したくなるのは今も変わらない。

 それでも何らかの役に立つなら、とサトルは彼らに魔法を教える。自分の知識がどこまで通じているのか、実際のところは今でも分からないけれど。

 適当にごまかしているわけではないし、嘘を並べているわけでもない。

 教える時は本気を出している。――見た目には分かりにくいけれど。

 

「『水創造(クリエイト・ウォーター)』はその名の通り水を出します。もし、これが消えないままだといずれ世界は水没してしまう。ですが、一定時間が経つと消えるので水没の危機は現実に起こることはありません」

 

 魔法は基本的に魔力(MP)を代償にして現実に干渉する、という小難しい理論がある。

 どうして出来るのかは今もって分からないし、サトルは理解することを半ば諦めている。

 とにかく、万能に近い能力の魔法とてそれぞれ制約があることが分かっている。

 

「自然の湧き水とは違うので飲料水として延々と使い続けるのは健康的とは言えません。あくまで一時しのぎと考えた方がいいでしょう。洗い物や身体を拭く水として使うのが適切ですね」

 

 時間経過で消えるならば飲料した後は一気に消滅し、脱水症状になるのではないかと議論に上ったことがある。

 白骨化しているサトルには無縁だが肉体のある生物からすれば死活問題だ。

 まず飲めなくはない。冷たくておいしいと評判でもある。しかし、魔法で作り出したものだ。

 小水(おしっこ)として体外に出るまで持続できれば実際のところ、それほど大きな問題は起きないし、起きたことがない。考えすぎではないか、というのが一般的な見解だ。

 確かに細かいところを気にすれば全ての魔法が怪しく見える。

 この魔法の限界というか現界時間は一日。どれほどの洪水を生み出しても一日経てば消えてなくなる。

 それだけあれば充分に体外にも排出されている。

 早めに消したい場合は術者の都合でどうとでもなるが攻撃として受けた場合は『水破壊(ディストラクション・ウォーター)』を使う。

 ピンポイントで使う魔法の存在はサトルからすれば時々理解に苦しむ。どうしてこんな魔法があるんだろう、と。

 

(……いや、確か水属性の精霊種(エレメンタル)などに効果があるんだっけ? そんなモンスター、近くに居たかな? 大半の魔法はモンスター対策のために用意されている。それが基本でもある)

 

 豊富すぎるのも考え物だが――面白くもある。

 完全に魔法のみに頼るのは良くないけれど、組み合わせ次第では色々と面白い事にも使える。特にこの世界では。

 例えば温水プール。温泉と言ってもいいものだが、それが作れたりするし。

 森祭司(ドルイド)と協力すれば立派な田畑を用意できるし、年中豊作にも――やろうと思えばできる。温度調整も思いのまま。MPに余裕がないと難しい事ばかりだけど。

 

        

 

 サトルは(フィールド)の効果を変更する魔法が使える。溶岩地帯や豪雪地帯にしたり――

 規模を縮小したものだと沼地や氷の池。それこそ死体の山も可能だ。

 戦闘に特化しているとはいえ、日常空間に何の役にも立たないわけではない。

 

(水を撒いて水温を高くして温泉を作ったり、ちょっとした居住空間を用意したり。俺の魔法は意外と応用が利く。攻撃だけにしか使えない場合、長く生活する事に耐えられたのかな……。間断なくモンスターと戦うようなファンタジー世界でなくて良かった、と今は言えそうだ)

 

 もちろん、恒久的な平和は訪れない。いずれ日常が崩れる時が来る。そして――魔導国という厄介な敵が出現した。

 最低限キーノだけでも守りたい。それは紛れもない本心であり、今も持ち続けている目的のようなもの。それが無ければ等の昔に引きこもっている。

 

温泉(ホット・スプリング)

 

 広い草原に突如として温水の場が形成される。しかし、適度な穴を掘っていないのでいずれは地面に吸い込まれるか、時間経過で消えてしまう。

 この魔法は森祭司(ドルイド)の『間欠泉(ガイザー)』と似た魔法だ。

 名称については名付けた者による仕様だとしても統一感が無さすぎる。

 法則性が崩れているところから複数人が携わり、それぞれの連携が取れていないように思われる。

 多くの魔法を習得しているサトルの手持ちにはそういうものがたくさんあった。

 

(この世界で実行される俺の魔法は彼らにも行使できるものがある。俺だけの仕様というわけではないから教えられるんだけど……。異世界ファンタジーは不思議がいっぱいだ)

 

 良くも悪くも魔法文化がある。それを大事にしなければ勿体ない。

 貧乏性は数百年経っても治らない。しかし、今はそれも悪いとは思わなくなった。

 なにより卑屈にならなくて済んでいる。誰かの為に努力する。それはかつてギルドメンバーが居た時代のような――

 

(そのメンバーが今は敵だ。俺の平和を脅かす輩は敵以外の何物でもない)

 

 一人で全員を打倒することは不可能だ。なによりナザリック地下大墳墓があるのと無いのとでは戦力差から言っても無謀だ。

 延々と逃げ続けるのも悪手であり不健康だ。いずれは相対し、話し合いの場を設けなければならない。

 その時、自分には何ができるのか。

 圧倒的な戦力不足。一方的な蹂躙を許してしまう。最初から負けが確定しているのは面白くない。

 サトルはプレイヤーとしても負けず嫌いなところがある。

 自分一人で盛り上がっていても仕方がないが協力者に連絡を取るのも実は難しい。魔導国の進軍は想像以上に早かった。それも、わずか数年の出来事だ。

 唐突にこの世界に現れ、五年と経たずリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国を掌握し、ローブル聖王国の半分を陥落させた。それも人間主体の国ばかり。

 同じプレイヤーであれば至極当然の帰結だが、それでも性急すぎる。サトルでさえ一国と同盟関係を築くのに一〇年以上を費やした。

 

(ほぼ単独行動が原因だけど……。向こうは仲間が豊富にいる。それはもう確定だ)

 

 一人対一〇〇人では結果が見えているも同然。

 そんな中でサトルはキーノを守らなければならない。彼女は唯一といってもいいくらい心のよりどころとなっているので。これを失う時は人間性の消失に繋がるのではないか、と予想している。

 愛すべき弟子であり、貴重な友人枠に入る女性だ。

 

(……キーノと出会って二〇〇年か……。彼女という指針を失ったら俺はどうなるんだろうか。不死のプレイヤーだし、気を緩めたら一〇〇〇年くらいはあっという間に経つかも、というのが現実味を帯びてきた)

 

 緩やかな文明の中での生活はそれほど悪いものではなかった。

 ただ、少しのんびりし過ぎたきらいはある。それを悪いことだとは言わないけれど、対策を練る必要性は感じている。

 勝てない相手が大勢いる。その中で出来る事は限られている。

 まず何をすべきか。この新生インベリア王国で。――国王はまだ居ないし、名前は暫定だ。

 

        

 

 広大な土地を手に入れると防りのための準備期間が膨大になる。ここから軍備増強を図るとなると年単位だ。それは不死の軍団であっても即興とはいかない。まして次の敵が決まっているわけではない。

 そこからサトルはインベリアへの進軍にかかる時間的余裕を算出する。彼らに動かせるのはそれほど多くない筈だ、と予想して。

 害の無さそうな協力者を用意し、彼らの力が及ばない国々に手紙を送付する。転移魔法が使えるなら自分で行けばいいと言われそうだが途中で阻まれることを危惧して取りやめた。

 一番近い竜王国に間者(スパイ)要請を(こいねが)う。次はカルサナス都市国家連合とアーグランド評議国だ。こちらはキーノに手紙を依頼した。サトルの名前より浸透しているので。

 かつて『十三英雄』と呼ばれた者達が居た時代のコネを最大限利用する。

 

(NPCが居ないだけで随分と手間だ。かといってシモベでは目立つ。……スレイン法国にもご足労願うか)

 

 スレイン法国は()()()は人間至上主義の宗教国家だ。この国とは長い間、裏で色々と取引している。

 魔法や増強に関しての手ほどき程度だが――

 『六色聖典』と呼ばれる秘密部隊の一つ『漆黒聖典』の何人かはインベリアに来てもらっていた。最近、そのうちの一人が死んだらしいけれど、サトルにとっては気にするほどの事ではなかった。しかし、それがそもそも間違いだと数か月後に知ることになる。

 アンデッドの偽装身分(アバター)の為か、人間性が希薄になっているために人間世界の問題にあまり興味が持てなかった。誰かに指摘されて(ようや)く気にする程度。

 それではいけないんだろうけれど、気持ちが全く揺れない。――揺れるのはキーノに関連する事だけに今はなっていた。

 

(……第九席次っていうと疾風走破の娘か……。武技(ぶぎ)の他に魔法も少し使えるっていう認識だけど……。……俺、思い出すの遅すぎるよな。キーノ以外の人間は皆似たような印象ばかりで覚えていられないし……)

 

 脳みそのないアンデッドだから物覚えが悪いのかな、と思うことはよくある。

 少なくとも人間と(ドラゴン)の区別はつく。

 しかし、急に様々なことを考えて苦悩していると強制的に精神が安定化する。事態が逼迫している時はとてもありがたい特性だが――それで事態が解決する筈もなく。

 打てる手を打ち、キーノやインベリアが平和に過ごせる方法を模索していくしかない。

 気分転換として人々に魔法を教える事が増えた。残念ながら魔法詠唱者(マジック・キャスター)だから武技は教えられない。戦士系の技術は漆黒聖典側に来てもらうしかない。

 第九席次の彼女は性格は悪いが暗殺術に長けていた。必要性に駆られれば蘇生も考えない事もない。それを手土産にするのも、とサトルは物思いにふける。

 

        

 

 対策を講じている内に思うことがある。

 弱小領地にすぎないインベリアは魔導国から見て侵略に値するのかを。

 サトルならば無いと答えるし、コンプリート以外に興味がないともいえる。それ以外はサトル自身だ。キーノを狙っても何も出ない。であれば残りの選択は限られてくる。

 

(噂の範疇で言えば俺の存在はまだ知られていない筈だ。距離的な問題があるとしても……)

 

 現在位置からかなり離れた場所に改めてインベリアを移す事は得策とは言えないし、キーノにとっても難色を示す問題だ。

 かといって延々と逃亡し続けるのも精神的に疲弊してしまう。

 ようやく腰を落ち着けられるキーノと築いた楽園を短期間で潰されてはたまらない。

 統一国家に対抗するには連合を組み、国際条約を策定する。それに加盟するのか、それとも無視して世界侵略を選ぶのか。

 その選択肢を突き付けるのが現時点では有効的な方策と言える。だが、政治的な問題に対し、サトルはあまりにも無知であった。

 なんとなく分かる程度だ。

 仲間が居ないハンデはあまりにも大きい。

 自分に出来ない時は出来る者にやらせるべきだ。そう判断を下し、魔法の効果実験を(おこな)う。

 定期的に感覚を掴んでおかないといざという時、何もできないまま混乱に陥ってしまう。これはもはやサトルのライフワークともいえる。

 夜半になってもサトルには関係ない。不死性クリーチャーに人間的な制限は殆どない。そんな彼の下にキーノがやってきた。

 夜は彼女にとって一番活動的になる時間帯だ。昼間は主に昼寝と人々との触れ合いに費やしている。

 

「……温泉というものを作っていたの?」

「暇つぶしにな。魔法を行使する者が少ないと手間ばかりかかる。……こういうものも複数の協力を得れば立派な施設として作れるんだがな」

 

 敷地担当。温泉政策担当。排水担当。施設建造担当など。後は来客の呼び込みなど。

 実質サトル一人で全てを決定している。そうすると精神的に疲れてくる。それが長い期間溜まると悪いことばかり考えるようになる。

 それと温泉を作るのは風呂が大好きだからだ。身体が白骨死体であっても気分はちゃんと味わえる。

 

(自然由来の温泉の方が効能とか付いてて身体の為になるんだけど、魔法は何の恩恵も与えてくれない。しかも時間経過で消える)

 

 源泉を探す手間が省けるところだけ長所と言える。

 復興を始めたインベリアには何もなかった。そこで温泉施設として観光資源を得る方法を提案した。

 モンスターや盗難対策で実際に始めるまでに随分と時間がかかったけれど――

 

「魔導国のことを考えて、この国を捨てるか移動させるか悩んでいた」

「……そうか。サトルでも難しい相手か」

(俺一人では難しいどころではない)

 

 しばらくキーノと二人で黄昏(たそがれ)た。互いに会話は無く、朝方まで時間を潰しそうな勢いになった。

 方策も今は手元にない。出来る事は待つことと逃げる事くらい。

 手紙の返事が届くまで早くて一か月はかかる。何事も性急には進められない。

 

        

 

 ダメもとで国の移動を進言してみるもキーノとしては二つ返事とはいかないと答えた。

 この土地こそが祖国である彼女にとって気軽に出来る事ではなかった。サトルとしてもはなから期待はしていなかった。

 もし、うんと言ってくれたら即日行動を開始する。対策は早い方がいい。

 

「戦闘での勝利はさすがに無理と言わざるを得ない。……切り崩すにも膨大な時間と手間暇が必要だ」

「……うん」

「一度は滅んだ筈のリ・エスティーゼ王国も復興したという事だし、魔導国の狙いを探るのはどのみち決定事項だ」

 

 民草の安全確保は難しいがキーノ一人か友人数人規模の範囲ならば守れると伝えた。

 国を失うのは惜しいけれど皆殺しに遭うよりはましだ。

 だが――逃げ続ける生活は送りたくないのが本音である。

 対抗手段があるわけでもない。けれども負けっぱなしは面白くない。サトルは負けず嫌いで我儘だ。

 第二の故郷の選定をしておくことにキーノは流石に反対しなかった。その時が来れば諦めるとも――

 

(何にしても手が足りないのが現状だ)

(……サトルは私の為に色々と考えてくれる。それを無視して我儘を言うべきではないな。ティア、ティナ。ガガーラン達の協力も必要だ。今の私には守るべきものがとても多い)

 

 キーノは仮面をかぶりイビルアイとして新生インベリアを見据える。

 廃墟から人の住めるところまできた。この美しく生まれ変わった国に今再びの栄光を蘇らせたい。

 王国という枠組みに拘りはなく、人々が平和に暮らせれば小都市程度で充分だ。

 

(……候補はやはり東方か……。向こうの土地はツアー達竜王(ドラゴンロード)の息がかかっている。人間を連れて行くのは正直、抵抗がある。……いざという時は押し通らせてもらうぞ、ツアー)

 

 かつての友人であった白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)のことを思いながら、インベリアの将来をしばらくサトルと話し合った。

 それから数週間後、魔導国からかなり離れた小都市に避難という名目で子供達を移す事が検討された。そこは元々獣人系の亜人達が居たが多くの冒険者によって人間の生息域を広げ、最近になって腰を落ち着けるほどの平穏を手に入れた場所でもある。

 そういう小都市が各地に点在しており、中には亜人種と共生する所もあった。

 バハルス帝国より東側には亜人種による六大国家群が存在している。サトルは度々、攻め入ったり政治を混乱させたりして勢力を減らすことに邁進していた。そうすることで人間種の地域拡大、または安全性の確保を構築していった。

 魔導国以外であればサトルは実に頼もしい。

 

        

 

 インベリアから更に東方面の都市の一つにリ・エスティーゼ王国から逃れた住人やキーノの仲間達が暮らしている。

 王国以外にも各地から同志を募って連れてきた者達だ。

 総人口からすれば微々たる人数だが、蹂躙や虐殺から逃れる為に国を捨てることになった者達は大人しく過ごしていた。それこそ共通の敵である魔導国を恐れるがあまり――

 

「魔導国の侵攻は停滞している。ここ数年の間に変化が起きたらしい」

 

 キーノの一報は多くの人間種にとって疑心暗鬼を呼び起こさせるものだった。それが真実であるという証拠がどこにもない。もちろん、キーノはそれを承知で伝えた。

 安全になったので帰ってもいい、というわけにはいかない。

 

「あの国に刺激を与えなければ……、五〇年くらいは平和だと思う。世代交代が進めば事態もいくらかは変わるのではないか」

「……その時は我々冒険者の多くが引退しているでしょうね」

 

 数年以内の虐殺劇が起きないだけ幸せと思わなければ、とキーノは言った。

 仲間以外はどうでもいいのだが、多少なりとも気にかかるので説明役を買って出た。

 今まではサトル一人に任せていた。少しでも恩返しができれば、と。

 

(サトルは充分に働いた。今度は私達が頑張る番だ)

 

 まず集落として安定した生活ができるように。魔法については引き続きサトルが教えることになっている。彼は自分の知識を広めることに前向きであった。

 新参者の前に現れるサトルはいつもの怪しい魔法詠唱者(マジック・キャスター)風の姿だが、古くから付き合いのある者にとっては見慣れた光景となっている。

 戦士としても戦える彼だが目立つ事を恐れている今は魔法のみに絞っていた。

 

「増強には長い鍛錬と強いモンスターをたくさん倒すのが早道だ。もし、平和な世界であれば第五位階など一生届かない事もあり得る」

 

 集まった子供達に演説するようにサトルは言った。

 彼の理屈は一見すると無茶なのだが筋は通っている。実際、イビルアイとして活動するようになったキーノはよく理解していた。

 弱いままでは何も得られないことを。

 

(この辺りは王国よりも少し強い部類のモンスターがたくさん出てくるし、敵対する亜人族との争いも絶えない。サトルは決して平和主義者ではない。かといって覇権主義者でもない)

 

 彼は犠牲を是とする探究者だ。だからこそ夥しい魔法を習得している。

 冒険者はすべからく何もせずに強くなったりはしない。

 それに――サトルは魔導王に似てはいるが違う存在だ。古くから付き合いがあるキーノは彼が長年孤独と戦っている事を知っている。

 (ようや)く仲間や集落と呼べる場所に住民を引き込んだ時、彼は大いに喜んでいた。いかなる打算があるのかは分からないけれど、悪い気はしなかった。

 

(犠牲を出さなかったことは一度もない、とは言わない。彼とて万能ではない)

 

 いざという時は見捨てる事もやむなし。多くの敗北からキーノも学んできた。

 誰もが幸せになるには――それ相応の代償が必要であることを。

 仲間の為にキーノはリ・エスティーゼ王国を犠牲にした。その選択が正しいとは言わないが間違ったとも思わない。

 彼女が見ている先には様々な感情を表す住民たちが居た。昔はサトルと二人だけだった景色が随分と変わったものだ、と。

 

        

 

 位階の高さはどうしようもない。サトルはまず様々な魔法を見せ、効果を教えていく。それによって理解度を高める。この方法論は一見すると無茶に思われるが思い込みが現実に少なからず影響を与える。あながち無駄というわけではないのは実際に確認したからだ。

 この世界は意外と『プラシーボ効果』が有効に働く。

 それと、全く新しい魔法を生み出すよりも既存の魔法を理解していった方が覚えが速い事もある。

 実際に有名どころ(火球など)の魔法などは早くに覚えられたりする。もっと他に覚えたい、という探究心がある者にはサトルが知る魔法をどんどん見せる。その代わりに彼の知らない魔法の情報を教えてもらう。――元よりダメ元なので情報が無くても怒らない。

 

(……座学で簡単に覚えられるわけはないけれど……、やはり覚えた後に自慢するのはこの世界特有の病気なのかな。あまり増長すると諍いが起きる。その辺りは貴族社会と通じるものがある)

 

 出来ない奴はクズだ、と。

 そう思うのは勝手だが多くを巻き込んでほしくないので平等に教える事に変わりはない。争うのは向上心だけにしてもらいたい、とサトルは思った。

 今までサトルが教えてきた中で優秀だったのはキーノを始めとして幾人か存在する。

 世界のどこかで誰かに魔法を教えているかもしれない。そう思うほど時は過ぎ去った。

 のんびりと世界を探訪出来ると思ったのは最初だけ。キーノと出会い、それなりに波乱万丈な人生になってしまった。――今もだが。

 数百年も居るのに気が休まる期間が意外と短い事に呆れすら覚える。いや、退屈しない人生とみるべきだ。

 思索を続けるサトルの下に後ろ手に縛られた元貴族『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』が運び込まれた。

 長い名前も今は意味を持たないのではないか、と言われているがあえて名乗らせている。

 かの王国が復活したので各大都市や領地も共に――という考えから。

 こちらのラキュースは()()である。引き連れてきたガガーラン達が何度も確認を(おこな)った。

 魔導国にも実はラキュースが居る。それも複数人。その絡繰(からく)りをサトルは理解しているがキーノ達はまだ少し疑っていた。

 

「ご気分はいかがですか?」

 

 サトルの問いかけにラキュースは渋面を作ったがすぐにため息を漏らす。

 抵抗するだけ無駄だと分かってはいるが周りへのパフォーマンスとして抵抗者を演じた。この地域はまだ少し権力者に疑いの目を向けている。

 多くが搾取される側の平民だ。特に知らない貴族は敵でしかない。それ――

 ラキュースは貴族出身であるため、意外と贅沢な暮らしを所望する。それが多くの住人たちに不評で度々サトルは彼女を拘束することになってしまった。

 人々の不破を軽減させるには貴族を拘束するのが一番手っ取り早い。さすがに死刑にすることは禁じた。

 

「……元とはいえ貴族の私は平民の暮らしがあまり理解できない。……頭では分かっているのに……」

「この辺りの住民の多くは横暴な貴族や領主から逃げ出した者ばかりですから。それより、元気がおありなら近場でモンスターを倒してきてください」

 

 猛獣系モンスターの多い地域ではあるがまともに戦える冒険者は少ない。

 冒険者としてのラキュースは王国の知名度もあるので人気は高いのだが、それは冒険者の中だけだ。一般市民レベルではまだまだ敵意の方が(まさ)っている。

 

「分かったわ」

「我らのリーダーは戦っている時が一番輝いているぜ」

 

 ラキュースの拘束を解いたガガーランが白い歯を光らせながら言った。

 大柄な体形に見合った全身鎧(フルプレート)を着こんでいるが王国時代よりも強固なものになっている。元『蒼の薔薇』の装備のほとんどはサトルによって一新された。

 だからといて魔導国に対抗できるレベルになったわけではない。この地域の治安維持で手一杯だ。

 

(彼女にも新しい魔法を教えなければ……。信仰系、身体強化系……。接近戦を主体にするから後者がいいんだけど……)

 

 それにはまず経験値を貯めてきてもらわなければならない。その辺りの知識をラキュースも持ち得ているようだが、それは叔父であるアズスの存在が関わっているとか。

 とにかく、サトル一人だけで知識を振舞う事態は避けられた。もし、自分一人だけであれば敵に狙われるのは自明の理だ。

 自分と同等か似たような知識を持つ者が他に存在するというだけでも安心材料となる。

 

        

 

 王国時代の装備は封印され、奴隷――または囚人を想起させる武具を身にまとうラキュース。しかし、それらは従来品を凌駕する性能である。見た目はあくまで偽装の意味合いしかない。

 星々の煌めきが宿ったような夜色の大剣である――ラキュースの代名詞ともいえる――『魔剣キリネイラム』は今は無い。代わりとしてサトルが用意したのはキリネイラムより小ぶりで漆黒のブロードソード。

 ミスリルより上等な黒い金属である『ガルヴォルン』製である。

 巻き毛だった髪型も今は後ろで一つに束ねるだけの簡単なもの変えた。

 

(毎回これを身に着けると自分が奴隷になった気分になってしまうわね)

 

 全体的に薄汚れた灰色だ。金色は髪の毛くらい。

 貴族らしさは成りを潜めている。そうしなければ住民に投石を受けてしまうので仕方がない。

 一度は当たり所が悪く右目を潰された。その時の恐怖は今も身体に染みついている。

 イビルアイことキーノも八つ当たりは止めろ、と住民たちを叱責したが思いのほか貴族や領主に対する風当たりが強くて解決には至っていいな。

 

「住民との和解には時間がかかる。今少し不便を強いる事を許してほしい」

 

 インベリアの代表者の一人であるサトルが深々と謝罪してきた。

 殆ど恒例行事となっているやりとりだが、少なくともサトルはラキュースに対して何の恨みも抱いていない。

 キーノの友人でもあるし、彼女が全責任を負う形で王国から連れてきたこと。それを無下にできるはずがない。

 

「お気になさらずに。既に子供達とは仲良くさせていただいております」

 

 大人と違い、何も知らない子供は御しやすい。そう言われてもおかしくないがラキュースなりに味方を増やす努力を続けてきた。これにはキーノも協力している。

 元は貴族的な振る舞いが招いた行き違いだ。それを解消するには時間が必要だ。

 あと二年もすればラキュースは囚人仕様から解放されるとサトルとキーノは試算している。それまでは何人かの衝突は想定内だ。

 

(……それはそれとして……。旧王都だか魔導国に居るラキュースはどうなっているんだ?)

 

 聞いた話しが事実なら複数人のラキュースが居る筈だ。

 それらは自我を持たず、保存容器に入れられているという。どういう方法を取ったかは想像でしかないが魔導王の仕業ではないことは確かだ。であれば何者の仕業なのか――

 思い浮かぶのは数人程度。しかし、目的が分からない。

 サトルは打算がないことはやりたくない。だから、分からないことが意外と多い。

 

(ゲームでは何の意味も……、無い事は無いけれど……。それとも何らかの意味を見出すことに成功したのか?)

 

 風俗に関して厳しい規則があった『ユグドラシル』というゲームの知識では魔導国の取った方法が理解できない。だが、規則が無効となっていれば色々と分かる事実というものがある。

 だが、サトルは戦闘に関しての知識を増やしてきたため応用に関しては自信が無い。それらは専門の人員が担当していたので。

 

(タブラさん。ぷにっとさん。死獣天さんあたりか……。女性関係ならペロロンチーノさんも含まれるけど……。あの人も俺と同じで戦闘民族だ。保存容器とは無縁の筈だ)

 

 考えられることはこちらに居る本物のラキュースが死んだ後だ。そうすれば立ちどころに彼女は魔導国に奪われてしまう。そういう魔法が存在し、仕様も知っている。

 こちらの手勢が失われる度に敵の手に自動的に落ちてしまうというわけだ。これを解決することは基本的に出来ない。魔法効果を無効化する方法であっても。

 魔導国に乗り込んで容器を奪うか破壊するしかない。だが、そんなことは無謀でしかない。

 逆にラキュースが死なない限り――寿命以外で――は何の意味もない。現状に変化が訪れる事もない。

 複数という点で想定以上の位階魔法も考えられる。通常は一人に対して一つしか作れない魔法だからだ。しかも作る毎に結構な金額が動くので好き放題に使っていいものではない。特にこの世界では――

 実際に同じことをサトルもやろうと思えば出来る。しかし、それによって多大な貯金が消費されてしまう。かの魔法は決して安いものではない。

 

(……それに一度は皆殺しにまで殺戮した人間たちを改めて復活させているとも聞く。その費用はどこから捻出した? 魔法で金は生み出せない。現地の貨幣も無尽蔵にあるわけではないだろうに)

 

 その方法が今もサトルには解き明かせない問題だった。

 資金調達はサトル――インベリア――にとっても大事なものだ。タダで使える魔法ばかりではない。その辺りの教育も少しずつ取り入れている。

 

        

 

 敵は想定より強大である。かつての仲間達が今は敵だ。こちらは自分一人。分が悪いにも程がある。

 とにかく、ラキュースには安易に死なないように気を配るとして――周りへの警戒態勢を少しずつ強化し、平和を謳歌する。

 各国から良い返事が来るまではどの道、動けない。

 難しいことを考えた後は思い切り休むことにしているサトルはある日、キーノと共に平原に向かった。

 東側は温暖な気候に恵まれ緑豊かな土地だが未開拓地が多かった。

 近代文明の中で育ったサトルとしてはあまり手を出したくなかった。しかし、魔法の練習場としては最適なので、それ(魔法)用の土地を選定し、度々足を運んでいる。

 飛翔系のモンスターも現れるし、敵には事欠かない。

 彼は数か月分貯めに貯めたゴミをインベントリから出し、小山を築く。

 

安全宿泊所(セキュア・シェルター)

 

 魔力系第四位階の創造系魔法を唱える。

 積み上げたゴミの山が蠢き、形を変えていく。

 今使った魔法は現場にある資材を用いて簡単な建物を作る。それは石でも木材でも現場の土でも構わない。

 それなりに立派な建物になり、完成するとお世話係の執事やメイドも自動的に付いてくる。

 建物の持続時間は術者レベルに依存する。

 

(一般ゴミでも建物にしてしまえば……。いや、生ゴミで作ると臭いだけか……)

蜘蛛巣避難所(ウェブ・シェルター)

 

 彼が思考している横でキーノが新たな魔法を唱えた。

 魔力系第二位階であるこの魔法は蜘蛛の巣で身を隠せる程度の場所を創る。

 耐久力は低く、火に弱いが防水と絶縁の効果がある。

 サトルから魔法を教わり、キーノも色々と豊富な魔法を使うことができた。それでもやはり未だに師である彼には遠く及ばない。

 

「……貧乏長屋だな」

「ごめん、ちょっと汚かったね」

「構わないさ。味があって……」

 

 古き異世界らしい様子にサトルは満足した。

 不自然に奇麗なものより好ましいと本心から思った。だからといって住みたいかと言われると抵抗を覚えてしまう。

 元はゴミと蜘蛛の巣で出来ている為だ。

 

落とし穴創造(クリエイト・ピット)泉創造(クリエイト・ファウント)水加熱(ヒート・ウォーター)

 

 サトルは立て続けに魔法を唱えた。すると近場に大きな穴が開き、水が満たされ、その水が温められる。

 『泉創造(クリエイト・ファウント)』は水創造(クリエイト・ウォーター)の上位魔法だと思われるが、飲料水として利用できるかは不明。おそらく飲めなくはない、という程度の認識。

 ピンポイントで一つの魔法を行使する場合、それ用の魔法を探す必要がある。無い場合は手持ちを有効活用する。

 この場合は『温泉(ホット・スプリング)』の再現だ。雰囲気を出すために周りの温度を調整する『温度変化(テンパラチャー・チェンジ)』を使った。

 どれも低い位階魔法だ。戦闘用として使うには難があるが生活魔法として見れば有効的である。

 当たり前だが習得魔法を全て記憶することは実はとても大変だ。サトルは全て覚えていることを自慢気に仲間に言ったところ大変驚かれた。――魔法以外の記憶力は心許ないけれど。

 

        

 

 折角作った簡易的な温泉にサトルは新たな魔法を放つ。それは乾燥系の魔法だ。

 類似した名前が系統樹を形成できるほどに存在するので暫定的な呼び方をしているに過ぎない。中には複数の属性を持つので使用者が勝手に決めればいい事だ。要は覚えやすければ――

 

脱水(デハイドレーション)

 

 この魔法は第四位階。『乾燥(ディシケーション)』という下位の魔法もある。更に広範囲に作用する『集団乾燥(マス・ディシケーション)』もある。

 水属性のモンスターに有効だが、それ以外にも使える。ただ、単なる水処理に使うには勿体ない魔法だ。

 魔法名の意味から逆に癒す効果がある『水和(ハイドレーション)』という魔法もある。

 一部の魔法は信仰系だったりその他系である場合がある。サトルは基本的に魔力系しか使えない。だが、その規則を破れるマジックアイテムが存在し、条件は厳しいが一日に何度か魔力系以外の魔法を扱うことができる。

 この世界に来る前のサトルは様々なアイテムの恩恵を利用し、対人戦や対ギルド戦を乗り越えてきた。

 

(……信仰系と森祭司(ドルイド)系の魔法もあるから一人で全部出来ない。系統の偏りが無ければもっと多くの生徒に教えられるのに。せめて野盗(ローグ)暗殺者(アサシン)特殊技術(スキル)があれば、と思わないでもない……)

 

 無い物ねだりは不毛だが考えてしまうのはもはや癖となっている。

 多方面に優れたプレイヤーの創造というのは難しい。でなければ競争が破綻してしまう。

 水分が無くなり穴だけ開いた地面をしばらくサトルは眺めた。

 

(……そうだな。魔導国という強大な敵が現れた。彼らをいつまでも弱者に留めておくのは……面白くない)

 

 突出した実力者を作れば目立ってしまうし狙われる要因となる。だからこそ低い位階魔法で妥協していた。――それはもう御(しま)いにするべきだ。そんな考えが浮かんだ。

 これから各国を巻き込んだ生存競争が始まる。少なくもサトルはキーノを失いたくない。最善を期するなら対等までの位置は確保したい。

 インベリアという国にこだわる必要は無いし、今からでも遅くはない。

 

「……キーノ」

「なーに?」

「この国は好きか?」

 

 水気のなくなった地面に顔を向けたまま尋ねてきたサトルに対し、キーノも同じ場所を見つめて返事をした。

 サトルが難しいことを考えた末に尋ねた言葉。その雰囲気を素早く察した。

 彼が真面目な物言いをする時は重要な局面だと判断した時だ。長く付き合いのあるキーノだからこそ理解できる。

 

「サトルが作ってくれた国を嫌いだなんて……」

「……元は君の故郷だ」

「……そうだね」

 

 キーノ一人では復興など夢のまた夢の出来事だ。数十年費やしても農村規模が精々といったところ。それにこの辺りには屈強なモンスターがたくさん現れる。人を呼ぶことがそもそも難しい。

 それが今は小さい規模とはいえ都市を形成できるまで発展した。

 昔の栄華とは言わない。そもそも、その辺りの記憶は曖昧だ。だが――それでも新生インベリアの現状は非常に好ましいと言える。

 

「……何を決めたのか知らないけれど……、私はサトルの味方だよ」

 

 仲間内ではぞんざいな態度をとるキーノ。けれどもサトルの前では歳若い娘として振舞う。それだけ彼を尊敬している。

 イビルアイとしてのキーノしか知らない者からすれば驚愕ものの変化だ。しかし、これがキーノであり、嘘偽りのない姿でもある。

 

(……俺一人で全部考える必要はもう……無いんだよな……。またうっかり長考に入ってしまったか……)

 

 サトルはキーノに顔を向ける。

 皮膚も肉も無いアンデッドの顔だから表情の変化は付けられない。けれども雰囲気は醸し出せる。

 長年連れ添ってきた戦友であるキーノに余計な気遣いは無用であった。ただ一言、とは言わないが――

 

「生き残るために本気を出そうと思う。具体的には今以上の位階魔法を伝えたい」

「……それは……随分と思い切った覚悟のようだね」

 

 世間に知られている位階魔法を超える事は様々な分野で目立つことを意味する。

 今まで目立たないようにしてきたサトルにしては意外である。

 魔導国という脅威に対し、サトルは立ち向かうことを選んだのかもしれない。さすがに正面切って戦う訳ではない筈だ。そもそも戦力が足りない。

 いや、戦力で言えばまだ漆黒聖典が居た事を思い出す。

 

「あくまでも自衛だ。魔導国と正面切って戦うのはどう考えても無謀だ。相手方に手堅い敵の存在を知らしめる事で侵攻を遅らせる。それだけでも世界にとっては対抗手段として効果的だと思う」

「……う、うん」

 

 急に戦略家になったサトルにキーノは反論の余地を失った。彼の意見は実に効果的で納得してしまったからだ。

 無理に対抗しなくても生き残るすべがあるではないか、と。その為には自分達側の増強はどうしても必須。だからこそサトルは今まで以上の位階魔法を教えると言ったのだ、と。

 魔導国に対抗することはとても恐ろしい。けれども逃亡し続けるのは健康的とは言えない。

 

(だけど、どうやって増強を図る気? ただ教えただけで強くはなれないよ)

 

 インベリア周辺のモンスターは手強(てごわ)い事には違いないけれど、それでも増強としては微々たる変化の筈だ。

 サトルの理論によれば高い位階魔法を取得するには途方もない努力と期間を必要とする。現にキーノは今の強さを得るために人間の寿命を遥かに超える時間を浪費してきた。それでもサトルにはまだまだ及ばないのだから。

 いや、今まであえて増強を遅らせてきた、というのであればいくつか納得できる。そして、だからこそイビルアイとして何の支障もなく過ごせた。

 今度はその(かせ)ともいうべきものを取り払おうとしている。

 

(……まさか、ツアー達の協力を得るのか!?)

 

 確かサトルは以前からアーグランド評議国と話し合いの場を設けていた。何のことかは理解できなかったけれど、それと関係するのか、と。

 キーノの疑念は――事実であり真理である。

 サトルは増強の当てに心当たりがあった。だからこそ――自信があると言い切れる。

 

「俺()の静かな戦争を始める時だ」

「……うん」

「……キーノに心配されると不安だな。俺の味方って言わなかった?」

(急に事態が動けば心配するのも仕方ないか。でも、俺は頑張るよ。……明日から本気を出すってやつで)

 

 言葉の通りではいつまでも本気を出さないことになってしまうけれど、今度の決意は本物である。そうしなければならない事情になった。

 サトルとて動くことはある。だからこそ、かの竜王(ドラゴンロード)を退けたのだから。その後にもいくつかの戦闘があったが――

 今度の相手(魔導国)は戦わないなりの戦い方で攻める。自分がされたら嫌なことは自分だからこそ分かるもの。問題はどちらが行動を起こすか、だ。

 その決意表明としてキーノに派手な魔法を見せる事にした。

 

「いずれ君に到達してほしい位階魔法の一つだ。これでも魔導国には大したダメージにならないけれど……」

「どれだけ強大なんだ魔導国は……」

「想定以上……。俺から見ても強大だと言わしめるほどだ」

 

 サトルの言葉に思わず唸る。彼がそこまで言うならば竜王(ドラゴンロード)に匹敵するか、それ以上だ。

 そんな相手が自分達の敵として迫りつつあり、サトルは対抗しようと決意を固めた。であればキーノもついていくしかない。そう彼女も決意を固めた時、彼の魔法は完成する。

 

大海嘯(タイダル・ウェーブ)

 

 サトルの手の少し先から魔法陣が浮かび上がり――数分が経過したが何も起きなかった。

 身構えていたキーノも周りの景色に変化がないことを訝しむ。

 彼もどうして魔法が発動しないのか疑問に思い、何度か自分の手と周りの景色を見比べつつ視点を何度か往復させた。それから少し経って、重大な事実に気が付いた。

 

「この魔法……、海上でしか使えないんだった」

「……!?」

 

 魔法の中には特定の地形が条件に入っているものがある。

 経験点を消費したり、物質を要求する魔法があるくらいだ。何でもかんでも唱えればいいというものでもない。

 緊張した空間を突如として破ったのはキーノの笑い声だった。

 普段は真面目一辺倒を装っている彼女もさすがに今のは笑わずにいられる自信がなかったようだ。いや――腹の底から笑う事など今まであっただろうか、と彼女自身も驚いた。

 自信満々に行使しようとした当人は不満顔ではあったがキーノ笑顔の方が(まさ)ったので嫌な気はしなかった。(むし)ろ――彼女が笑ってくれたのであれば最高位階の魔法一つ安いものだ、と思えた。

 

(……久しぶりに聞いた気がする。キーノの笑い声……。何だか元気が出てきた気がするぞ)

 

 あまり高揚すると抑制されてしまうけれど、いつまでも聞いていたくなる。

 嘲笑は好まないが――今ならばキーノの笑い声は何物にも(まさ)る宝。それを守るためなら決意した甲斐があるというものだ。

 自分達の王国と大切な仲間を守るためにサトルは炎の大火球(第八位階相当の火球)を空に放つ。

 火蓋が切って落とされた、その言葉の通りに。

 

 




付録:作中に登場した魔法 vol.13

蜘蛛巣避難所(ウェブ・シェルター)

系統:召喚術(創造) 位階:魔力〈二〉、信仰〈二〉、その他(森祭司(ドルイド)吟遊詩人(バード))〈二〉
構成要素:音声、動作、信仰
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果範囲:直径約5mの網の球体、または約10mの半球 持続時間:1時間×術者レベル
備考:わずかに粘つく帯紐で避難所を作る。防水と絶縁に優れているが火に弱い。魔法の効果が切れると腐敗して消えていく。


間欠泉(ガイザー)

系統:力術(水) 位階:その他(森祭司(ドルイド)野伏(レンジャー))〈三〉
構成要素:音声、動作、物質
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果範囲:2m四方の範囲内 持続時間:10秒
備考:小さな間欠泉を一つ噴出させる。範囲内に居るクリーチャーは魔法による殴打ダメージを受ける。また、範囲内に火があった場合は消すことができる。


水創造(クリエイト・ウォーター)

系統:召喚術(創造)(水) 位階:信仰〈一〉、その他(森祭司(ドルイド)聖騎士(パラディン))〈一〉
構成要素:音声、動作
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果:約8リットル×術者レベルまでの水 持続時間:瞬間
備考:綺麗な雨水に似た有害なものを含まない飲料に適した水を創造する。クリーチャーの体内に直接的に想像することは出来ない。


落とし穴創造(クリエイト・ピット)

系統:召喚術(創造) 位階:魔力〈二〉
構成要素:音声、動作、焦点(銀貨一枚相当の価値があるシャベルのミニチュア)
距離:中距離(約30m+3m×術者レベル) 効果範囲:約2m四方、深さ2m×術者レベル×2 持続時間:10秒+10秒×術者レベル
備考:約2m四方で深さが2m(最大6mほど)の異次元の穴を作る。別の次元に通じているために様々な場所(船の甲板。森の地面。ダンジョンの床)に作ることが可能。穴の端は坂になっている。壁は石で囲まれており、〈登攀〉の判定を必要とする。魔法の効果が切れると底がせり上がり中に居たクリーチャーは地表に立つまで上昇するので閉じ込められることはない。


泉創造(クリエイト・ファウント)

系統:変成術(水) 位階:魔力〈二〉
構成要素:音声、動作、焦点
距離:接触 効果範囲:接触した地点からの湧き水 持続時間:永続
備考:接触した岩または地面から湧き水を発生させる。ただし、建造物、樹木、岩や地面に関するクリーチャーに対しては作用しない。また、半径100m以内にこの魔法が使われていた場合は失敗する。


安全宿泊所(セキュア・シェルター)

系統:召喚術(創造) 位階:魔力〈四〉、その他(吟遊詩人(バード))〈四〉
構成要素:音声、動作、物質(石の破片、砂、水や木片)
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果:一辺10m四方の建造物 持続時間:2時間×術者レベル
備考:辺り一帯でありふれた材料で出来た頑丈な建物を創造する。扉と窓と暖炉が付いてくる。侵入者対策が出来ており、扉には魔法的な鍵がかけられる。建物と一緒にお世話係の従者も召喚される。基本的な家具が揃えられており、約10人ほどが生活できる。


大海嘯(タイダル・ウェーブ)

系統:力術(水) 位階:魔力〈十〉
構成要素:音声、動作、物質、経験(約5%)
距離:長距離(約120m+12m×術者レベル) 効果範囲:幅150m×高さ25mの大波 持続時間:1分×術者レベル
備考:大波を作り出して選択した方向に進ませる。ただし、この魔法は水上でしか機能せず、陸上にぶつかった分は消滅する。


乾燥(ディシケーション)

系統:死霊術 位階:魔力〈三〉、信仰〈三〉、その他(森祭司(ドルイド))〈三〉
構成要素:音声、動作、物質
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果範囲:生きているクリーチャー1体 持続時間:瞬間
備考:目標に乾燥ダメージを与え、脱水状態にする。植物、水の精霊種(エレメンタル)にはより多くのダメージ。地の精霊種(エレメンタル)にはダメージが半減する。

集団乾燥(マス・ディシケーション)

系統:死霊術 位階:魔力〈五〉、信仰〈五〉、その他(森祭司(ドルイド))〈五〉
構成要素:音声、動作、物質
距離:近距離(約10m+2m×術者レベル×2) 効果範囲:生きているクリーチャー1体×術者レベル。約10mの距離内 持続時間:瞬間
備考:効果内容は『乾燥(ディシケーション)』と同じである。


水破壊(ディストラクション・ウォーター)

系統:死霊術 位階:魔力〈一〉
構成要素:音声、動作
距離:接触 効果範囲:接触した生きているクリーチャー1体以上 持続時間:瞬間
備考:術者は『干上がりの接触』の能力を得る。効果内容は『乾燥(ディシケーション)』と同じである。元々の名称は『乾燥接触(パーチング・タッチ)』である。


脱水(デハイドレーション)

系統:死霊術 位階:魔力〈四〉
構成要素:音声、動作、物質
距離:中距離(約30m+3m×術者レベル) 効果範囲:生きているクリーチャー1体 持続時間:瞬間
備考:目標となったクリーチャーの身体から水分が吸収される。効果内容は『乾燥(ディシケーション)』と同じである。元々の名称は『枯渇(ウィザー)』である。


温度変化(テンパラチャー・チェンジ)

系統:変成術(火または冷気) 位階:魔力〈二〉、その他(森祭司(ドルイド))〈二〉
構成要素:音声、動作、物質/信仰
距離:効果範囲参照 効果範囲:体積が10m立方×術者レベル 持続時間:1時間×術者レベル
備考:効果範囲内の温度の程度を降下させたり上昇させる。


水和(ハイドレーション)

系統:召喚術(治癒)(正) 位階:信仰〈三〉、その他(森祭司(ドルイド)聖騎士(パラディン)野伏(レンジャー)吟遊詩人(バード))〈三〉
構成要素:音声、動作
距離:接触 効果範囲:接触した生きているクリーチャー1体 持続時間:瞬間
備考:目標の1体から乾燥ダメージ、脱水状態、熱気の環境からの非致傷ダメージの全てを治癒する。また、火の精霊種(エレメンタル)にダメージを与える。


水加熱(ヒート・ウォーター)

系統:変成術 位階:魔力〈一〉、信仰〈一〉、その他(森祭司(ドルイド)吟遊詩人(バード))〈一〉
構成要素:音声、動作
距離:2m 効果範囲:容器に入れられた液体1リットル 持続時間:精神集中(1分×術者レベル)
備考:液体の水温を上昇させる。1分後には沸騰させることもできる。任意で保温も可能。


温泉(ホット・スプリング)

系統:召喚術(創造)(火炎、水) 位階:魔力〈三〉、その他(森祭司(ドルイド))〈三〉
構成要素:音声、動作、物質/信仰(溶岩を一欠片)
距離:長距離(約120m+12m×術者レベル) 効果:2m四方、高さ5m×術者レベルの熱湯の噴出 持続時間:精神集中(10秒×術者レベル)
備考:平らな地面から熱湯の柱を起こし、高熱の雫を噴霧する。規模は術者の都合で縮小させる事ができる。元々の名称は『間欠泉(ガイザー)』である。
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