メインはあくまでオリ大名の方なので、あんまりこっちは更新できないと思います。
第零話 運命の出会い
眼が覚めると、そこには見知らぬ天井が見えた。
吾輩は赤子である。名前はまだない。
木の香り漂う部屋で産まれ、着物を着た女人に抱き抱えられている。
と、吾輩は猫である風に状況説明をしてみる。だが、吾輩はというか俺はただの赤子ではない。
このような明確な自我を既に得ているし、前世の知識も幾ばくかは持っている。つまりはラノベとかでよく見るようないわゆる転生者というやつである。
このことに気づいた時は「何事も起こり得るのだな」と恐懼しながら感嘆した。
意識を外に向けると俺を抱いている人と誰かが喋っている。その人物の髪型はいわゆるちょんまげで可笑しさを感じた。
「御前様、この子の名前はどうしますか?」
「そうだな……熊之丞、尼子熊之丞はどうだ?」
「それは良い名ですね。わかりました。今日からあなたは尼子熊之丞よ」
熊之丞。大分古臭い名前だ。平成になってこんな名前ではかえってキラキラネーム待った無しで、学校でいじめられそうだ。
だが、抗議をしようにも俺の身体は未発達でそもそも喋ることができず、結果的に俺の二度目の生は
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熊之丞としての俺は父の周りの人間から理を越えた神童としてちやほやされていた。
これは俺が二歳の時に父の書斎にあった孫子の兵法書を試し読みしたことがバレたことがきっかけだった。
俺は転生からそれまでの二年間で、この世界は平成などではなく、うんと昔、鎌倉や室町、江戸などの武家の時代であることを薄々ではあるが気づいていた。
さらに言えば、二度目の父の名は
このことから俺は転生先が戦国時代の出雲国だったのだと絞り込むことができた。
だが、この世界はいささか既知のものと異なり、天皇が姫巫女様に、さらに既存の戦国武将たちが姫武将・姫大名に変わっているなど女性の社会進出が現代並みに進んでいた。
おそらくこの世界は俺の知る世界とは別の世界……パラレルワールドなのだろう。
まあ、差異はあるにしろ俺は元々戦国時代が好きだった。自分が戦国時代に転生したらどうするかとか色々と妄想を働かせたこともある。
しかし、妄想は妄想でしかなく、現実の前では容易く打ち砕かれる。
それを知らしめた出来事は俺がちょうど五歳になった頃に起きた。
なんと、父・尼子清久が主家に反旗を翻そうとしたところをこの時の尼子家当主・晴久によって粛清されてしまったのだ。
これにより俺の家は一気に衰退。俺はまだおさなかったため助命されたが、尼子姓は剥奪され代わりに祖父が使っていた塩冶姓を名乗ることになる。
だが、この事件はむしろ終わってからが大変だった。
父が過去一度赦されて尼子に複姓した上で反旗を翻し、さらに祖父である塩冶興久もまた経久様に対して出雲を二つに割る大反乱である塩冶興久の乱を起こしていたため、俺の家は「裏切り者の家」と呼ばれ白眼視されるようになってしまったのだ。
こうなってしまってはいくら俺がまともに献策などをしても聞き入れてくれないだろう。転生先はまさかのハードモードであった。
しかし、決して悲惨なことばかりではなかった。
このことがきっかけで俺はとある人物と出会うことになるのだから……。
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このことが何歳の頃だったか、今でははっきりとは覚えていない。ただ、その時の情景は鮮明に覚えている。
俺は数人の尼子家臣の子供に囲まれて暴行を受けていた。
「あはは、前もって謀反の芽を摘み取るのだ。我々は尼子のためを思ってやってるんだ!」
いじめっ子がそのようなことをのたまって、俺に暴行を加える。
こういう具合に暴行を受けるのは父の死後は日常茶飯事だった。そのためやられ慣れて鍛え上げられたのか俺の武勇は子供たちの間では抜きん出ていたが、衆寡敵せず複数人集められてしまうとこのようにやられてしまうこともあった。
「これでいいだろ。では、介錯つかまつるーー!」
しかし、こと今回に限ってはリアルに命の危機を感じた。
餓鬼どもがなぜか脇差を手に持っているのだ。
殺意はあまり感じない。子供故の無知というやつか、おそらく餓鬼どもは俺に刃を突き立てることを、鹿や牛を捌くのと同等に考えているのだろう。
餓鬼どもが俺の手足を持ち動きを封じ、餓鬼どものリーダー格のクソ餓鬼が俺の腹に脇差を突き立てる。
ずぷりと鈍い音がした。
腹から血が滴り落ちる。叫び出しそうなほど痛い。
餓鬼どもが悲鳴をあげている。ようやく自分たちがどれだけのことをしでかしたのか分かったようだ。
……しかしやばいな。意識が徐々に遠くなっていく。
このまま俺は転生したくせに何も出来ずに死んでいくのか。
そう絶望した時、その人物は俺の前に現れた。
「よってたかって一人を虐めるとは……! お前たちはそれでも尼子の武士か!」
その人物はひどく美しかった。
艶やかな黒い髪や顔立ちもそうだが、何より心根が美しかった。
タチの悪い餓鬼どもに女の子一人で立ち向かう。それも嫌われ者の俺のためにだ。
この時、俺は痛みをも忘れて彼女が餓鬼どもを追い払う姿を呆然と見ていた。
少しして餓鬼どもを彼女があらかた追い払った後、俺は彼女の叔父の家に運び込まれて治療を受けた。彼女の叔父もまた俺を蔑みの目で見ることはなかった。
俺が
読んでくださりありがとうございます。
こっちでは、あんまり長い付き合いになるとは思いませんが、よろしくお願いします。