妹が浮いている!? 夏休み編   作:Damy

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第10話です

11話と繋がっている短編になってます


兄妹の温泉旅行 前編

六車 和人──つまり俺は今絶望の表情を浮かべていた。隣では京華──俺の義理の妹も同じような表情を浮かべている。

 

俺に至っては今までの人生の中で1番の絶望を覚えていた。いや、違うわ。京華が気絶した時とか、京華が幽霊になった時とか、京華が突然いなくなった時とかの方がよっぽど絶望してたわ。俺ってばシスコン過ぎぃーー。

 

「お兄ぃ……これ……どうしよ……」

「諦めるな!こういう時こそ……気持ちを強く持たなくちゃ…だめだろ!」

「そう……だよね……でも、私、もう!」

 

──ピン、ポーン──

その時、インターホンがなった。

だ…れだ?俺は霞んできた意識をなんとか保ち玄関へと向かう。

「よう!カズ!」

ドアを閉めた──いや、閉めようと思ったが腕に力が入らず閉めることができなかった。

「なん…だよ。洋太。」

そこには俺の幼馴染、島崎 洋太が爽やかな笑顔をして立っていた。

 

「なんだよとはご無体だなー。せっかくいい話を持ってきてやったのに」

いい話?そりゃいいや、今俺と京華が置かれている絶望的な状況を打破できるならな。

洋太には今の状況をメールで伝えてあった。別に意味とか理由とかはない。世間話的な感じだ。

 

そう思っていた時、リビングから京華がでてきた。

「あ、洋太くんいらっしゃい」

なんか京華がいつもどうりになっていた為、俺も元に戻す。

「んで?なんだよいい話って」

「それより、中入れてくれよ。外あっついんだわ」

「いや、外も中も大して変わらんぞ?

だって”クーラー”ぶっ壊れてるんだから」

 

そう、俺と京華が絶望していた理由。それはクーラーが壊れて、家の中が馬鹿みたいに暑かったからだ。

しかも、修理は明日の昼。丸1日クーラーなしで過ごさなくちゃいけないってわけだ。

「でもま、座って話すか」

俺はそう提案し洋太を家に上げる。

 

俺と京華と洋太がそれぞれリビングに置いてある椅子に腰掛けると、洋太が話し始めた。

「今日、お前達兄妹に提案しようと思っているのはこれだ!」

「……温泉旅行?」

洋太が出したのは1枚のチケットだった。

そこには、チケット1枚につき4名様までご利用可能、1泊2日、有効期限は8月1日までと書かれていた。

8月1日ってことは明日までか。

 

「これ…どうしたの?」

当然の疑問を京華が投げかける。

「商店街のくじであたったんだよ」

「じゃあ、お前んとこの家族でいけよ」

「それがさー、父ちゃんが休み取れなくってよ。そしたら母ちゃんが、六車さんとこの2人と行ってきたら?ってさ」

 

なるほどな。

正直に言うとありがたい話だしすごく行きたいが、京華の魂がいつ体から離れるかわからないしあんまり家からの遠出はしたくない。

それに──

「これって何部屋あるの?」

「一部屋だよ?」

「じゃあダメだろ。女子1人に男子2人で一部屋に泊まるとか」

「うわ、お兄ぃ硬っ苦しい……」

いやいや、京華ちゃん。これが普通だからね?

 

最近の高校生たちはそこんところの感覚が麻痺してると思います。

「硬っ苦しくてもなんでも、ダメだ。

それに京華だって俺と洋太と同じ部屋で寝るなんて嫌だろ?」

「別に嫌じゃないよ、何年一緒にいると思ってるのさ」

え?そうなのか、じゃあ今度から一緒の部屋で寝よう?ってお願いしてみようかな。

じゃなくて……

「それは嬉しいけど、やっぱりダメなものはダメ」

「お願ぁい、お兄ちゃん♡」

 

 

 

─────────────────────────

その日の昼──

「おお、商店街のくじにしてはかなり豪華だな!」

「あぁ……そうだな……」

──俺達は旅館の前にいた。

 

「お兄ぃあんなにダメって言ってたのに普通に来ちゃってるね」

だってしょうがないだろぉ!京華にあんなに可愛くお願いされちゃったらさぁ!誰も断れねぇって!

しかも、お兄ちゃんだぞ!お兄ちゃん!お兄ぃじゃなくてお兄ちゃんだぞ!

そのワードは禁止でしょう……京華に弱みをひとつ握られた気分だ…

 

「お待ちしておりました。島崎様でよろしいですか?」

「あ、はいそうです」

俺達が旅館の前でたっていると中から中居さんがでてきて洋太に色々と説明をしているようだ。

 

「ホントすごいなここの旅館」

「そうだね、しかもタダで来れちゃってるし。洋太くんさまさまだね」

俺と京華が感想を言い合っていると洋太が手招きしてきた。

「部屋まで案内してくれるってさ」

「「はいはーい」」

俺と京華はそろって返事をし、洋太と中居さんのあとについて行った。

 

俺達が泊まる部屋はかなり広く襖によって部屋を分けることが出来るようになっていた。

商店街のくじってこんな豪華なもんなの?お金の使い所間違ってるような気がするんですけど?

 

「とりあえず、俺と洋太がこっち使って、京華がそっち側を使うってことでいいよな?」

分かりきっていることではあるが一応確認は取っておく。じゃないと、俺と京華が同じところに寝ることになってしまう可能性もある。あれ?それって素敵じゃないですか!?

「はいはーい」

「りょうかーい」

 

俺達は各自荷物を置いてある程度自分の場所を決める。が、夕飯まで微妙に時間が余る。

汗もかいてるし風呂に入ってきたいわけなのだが…

「なぁ京華、風呂のことなんだけどさぁ、もしも入浴中に魂が体から離れちゃうと俺、助けに行けないからさ……」

 

ここまで言えば俺の言わんとしていることが京華なら伝わると思う、けれども──

「──ということで、俺も風呂には入らないから」

「え?いや、お兄ぃは普通に入っておいでよ。私1人でも大丈夫だから」

「そういうわけにもいかんだろ」

「いやいや、温泉旅行に来て温泉入らないとか謎だし」

 

俺と京華がどっちつかずの口論をしていると

「ああ、それなら問題ないぞ。2人ともちゃんと入れる、それも安全にな」

と、洋太が含みのある笑顔でそう言ってきた。

 

 

 

 

 

「えぇーっと…マジで?京華いいのか?」

「もちろんだよ。お兄ぃだったら…いいよ…?」

「そ、そうか」

ここら辺に動揺してしまうあたりやはり童貞だな。と思う。いや!思う。!じゃねぇよ!

誰だってこんな状況だったらそうなるわ、こんちくしょう!!

 

「にしてもお兄ぃと一緒にお風呂に入るのなんていつぶりだろうねぇ」

「あぁ、そうだな」

「お兄ぃ?顔赤いけど、もうのぼせた?」

「いや、大丈夫だ」

今、俺と京華は混浴温泉に入っている。しかも他に誰もいないため2人で貸切状態だ。しかも隣に座り合う形で入っている。俺の心臓の音京華に聞こえてないかしら!心配だわ!

ちなみに、洋太は男湯に入っている。「俺も混浴入る!」と言っていたが俺が断固お断りしておいた。

 

もしもの時のために京華を支えられる人がいればいいわけで、つまり俺が1人いればいい訳でつまり他意はないということだ。

それに京華だってレンタルの湯着を着用して入浴している。俺に他意はない。本当のホントーに他意はない。ここまで否定すると、むしろあるだろって言われちゃうよね。

 

「ここの温泉すごいね。お肌すべすべになる」

「へぇ?そうなのか?」

「うんうん、これは洋太くんに感謝しなくちゃね」

「だな」

「晩ご飯はなんだろうねぇ。廊下を通った時にいい匂いしたから期待しちゃうなー」

「匂いは魚っぽかったよな」

「そうだねぇー、何魚だろ、楽しみだなぁ」

 

よっぽど気分がいいのか京華はかなり饒舌になっていた。そして俺は緊張のせいで口数が極端に減っていた。

そうやって過ごしていると、俺はおもむろに口を開いた。

「そろそろ晩飯の時間じゃないか?」

「あ、そうかもね。」

そう言ってどちらともなく脱衣所に向かっていく。

「じゃ、あとでな」

「うん、お兄ぃもね」

 

俺は男湯を経由して脱衣所へ向かう。その途中で

「あ、カズ。俺ちょっとのぼせた……助けて…」

「はぁ…そういやお前、ちっちゃい頃からのぼせやすかったよな」

洋太に手を貸してやり俺達は脱衣場に行く。

「ほれ。牛乳」

「おお、サンキュ」

俺は温泉によく置いてある、瓶に入った牛乳を洋太に買って渡した。

「あ、金…」

「ここに連れてきてもらったお礼ってことで」

 

ここには実質タダで来ているわけだし、これぐらいのお礼が丁度いいだろう。

そうして俺と洋太は脱衣場をでて京華と合流し部屋に戻った。

 

 

 

 

 

「いやー、食った食ったー」

「美味かったなぁ〜、帰ったら真似てみるか…」

「あ、お兄ぃ。それいいね」

晩飯を食べ終わった俺達は休憩していた。

家事をやらなくていいって最高!!

「お兄ぃ〜〜」

「ん?どうした?」

「暇ぁ〜〜」

そして京華の堕落っぷりが半端じゃなかった。いつもの3倍はだらけている。

 

「そうだなぁ……どうするか」

なんかここでラノベを読むのは少しもったいない気がする。

「だったら、星見に行こうぜ。さっき中居さんがここら辺は星が良く見えるって言ってたしよ」

と洋太が提案した。

星、星かぁ…そういや、ここ最近全然見れてないな。小さい時は星とか空とか見るのすごい好きだったんだけどなぁ、いつごろから見なくなってしまったんだろうか。

 

「いいな、星。見に行くか」

チラッと京華の方を見ると既に支度を始めていた。

やっぱり乙女としてはこういうロマンチックなものに敏感なのかしらん。

 

 

 

 

 

外に出ると空には星のベールがかかっていた。

とかいう意味不明な感想が出てくるほど星で埋め尽くされていた。

ここまで多くの星が空に瞬いているのを俺は初めて見たかもしれない。

 

「ほわぁ……」

と、感嘆の声を京華があげていた。京華もだいたい俺と同んなじ感じなんだろう。

「おぉ…!…すげぇな」

洋太はこの星空の凄さをなんとか言葉にしようとしたができなかった、って感じかな。

 

だが、それは俺もわかる。あそこに見える光の一つ一つが地球と同じ、又はそれ以上の大きさをしているとか考えると壮大過ぎて言葉が出てこなくなる。

俺は星とか星座とかには詳しくはない、だかそういうのに詳しい人達って言うのは案外こういった光景をきっかけに調べたり学んだりしているのかもしれない。それぐらいの力がこの空にはあるように俺は感じだ。

 

「ほんとに凄いな…中居さんがオススメするのもわかるわ」

「そうだねぇ…あ、お兄ぃ!流れ星!」

京華が指さした先には確かに流れ星があった。まぁ俺が見た瞬間に消えてしまったがな。

「お願いごと三回言えたか?」

俺は少し冗談めかしていう。

「1回しか言えなかったや」

京華は少し照れ笑いをしながらこっちを見た。何この天使!!可愛すぎ!!

 

「へぇ、なんてお願いごとしたんだ?」

「秘密だよ♪」

「そうか」

声を合わせて笑いあった。

こういう時間を幸せって言うのかもな……

「ラブコメやってるところ申し訳ないけど、俺のこと忘れないでくれる?」

という、不躾な声を聞くまでは、そう考えてる時期が僕にもありました。

 

「洋太くん……雰囲気とか考えようよ……」

京華も俺と同意見のようだ。珍しく洋太に冷たい視線を投げている。そんな視線を向けられては洋太も黙り込むしかなかったようだ。

少し隅っこの方に行ってモジモジやっている。おいおい、男のそういうのは需要ねぇぞ。

 

俺が洋太に哀れみの視線を向けていると、京華が俺にほほ笑みかけてきた。さっきの今でこの表情……こやつやりおる!

「お兄ぃは流れ星見つけたらなんて願い事するの?」

「そうだな──」

京華が幸せでありますようにーとか、京華と一緒に居られますようにーとか、平穏な日々が続きますようにーとか?

やべーぱっと思いついたものの3分の2が妹のこととか俺ってばシスコン!いや、3つ目もほぼ京華のことか。俺ってばシスコン過ぎ!

 

「──みんなが健康でありますように。とかかな」

「セリフがもうおじいちゃんだね」

ははは、と笑い合う。その後で、というか隅っこの方から

『すぐそうやって2人の世界に入ってく』

と聞こえた気がしたが無視しておく。

今は少しでもこの時間を噛み締めていたかったから。

 

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