10話と繋がっている短編です
朝、目が覚めると同時に頭に浮かんだ感想は、ベットがいつもよりも硬い、だった。
だが、それも体を起こして周りを見渡すと納得した。
「そういえば、温泉旅行にきてたんだっけな…」
やはり、朝起きた時にいつもと違う風景が目の前に広がっているのは落ち着かない。なんだか、いつもの日常が壊れてしまったかのような気分にさえなる。まぁ、そんなことは無いのだが…
改めて部屋の中を見渡す。すると──
すー、すー。
──俺の真横、もとい、腕の中から規則正しい寝息が聴こえる。
「えぇえぇええ!?な、なななんでここに京華が!?」
京華は俺の腰辺りに抱きつきながら幸せそうな寝顔を浮かべて寝ている。夜寝ている時に我慢出来なくなっちゃったのかな!?このブラコンめ!
とも思ったが、俺の腕の位置から考えるに俺も京華を抱きしめていたらしい……
俺らってばいつからそんな関係に!?
じゃなくて、周りに洋太の姿が見えないことを考えると俺が、京華の布団に、入り込んでしまったらしい。俺っばどんだけシスコンなんだよ!!
あ、そういえば、昨日の夜みんなが就寝したあとに俺だけ目が覚めてトイレに行ったんだ。その時に間違って京華の布団に入っちまったってことか。なるほど事故だな仕方がない。
そう結論づけ俺は再び布団に潜り込んだ。もちろん京華に抱きついて。
(って俺さん!?何やっちゃってるのかな!?)
と心の中で自分にツッコミを、いれる始末だ。
人間には理解しきれない事象が目の前で起きたのきに理解するのを放棄して気絶する機能があるらしい。まぁ別に今の状況にはなんの関係もないのだが。
俺はそれに習って意識を手放した。
京華を抱きしめたまま。
「お兄ぃー!おーきーてー」
俺は心地よいまどろみから目を覚ました。
わけではなかった。
だってそうだろ!?京華を抱き寄せたまんま寝られるわけねぇじゃねぇか!?(逆ギレ)
ぶっちゃけ言うと、あのあと少し冷静になってから俺……今何してんの……感が半端なかったが、その後京華の目が覚めてからの反応と動揺っぷりが可愛かったのでよしとしよう。
さっきの京華のセリフも一旦深呼吸して落ち着いてからのセリフだからね。
動揺を悟られまいと頑張ってる姿が可愛すぎました。はい。
「ん、お、おぉ。京華、おはよう」
俺はあたかも今起きましたよ。という体で話す。
「おはよう。じゃないよ、お兄ぃこれどういうこと?」
「え…?」
と言いながら周りを見回す俺。演技力高すぎぃ!
「なんで俺の布団に入ってきてるんだ?京華」
「違う違う。逆。お兄ぃが私の布団に入ってきてるの」
「あー、すまん。昨日の夜トイレの帰りに間違えって入っちまったらしい。」
この理由は少し信憑性ないか?いや、でも事実だしなぁ…
「あー、そうなんだ…」
何故か少し残念そうな京華。俺にはそう見える!いや、絶対に残念そうだ!これはきっと「そんな言い訳しなくても一緒に寝たいって言ってくれればいつでも寝れるよ?」っ言うことだろう!
少しシスコン…いや、気持ち悪すぎる発想だった。
「で…さ、いつまでこうしているつもり?」
俺と京華は今抱き合っている状態にある。そう、何故か京華も俺を抱きしめている状態なのだ。
「あ、あぁ。そうだな。でも、京華が離してくれなきゃ離れられないんですけど…」
「へ?あ、あぁ!そ、そうだよね」
ここで初めて動揺らしい動揺を見せる京華。
多分今まで自分が俺を抱きしめている状態だと気づいていなかったのだろう。
そうしてようやく離れる俺たち。うぅ…名残惜しいよぅ…
「で、お前ら。こんな朝っぱらからなにやってんの?」
というそれはとてもとても冷たい声が頭上から降ってきた。
「よう、洋太。おはよう。んで、いつからそこにいたんだ?」
その冷たい声の主は隣の部屋で寝ていた洋太だった。
「お兄ぃー!おーきーてー。のあたりからだが?」
「最初っからじゃねぇか!?」
いや、俺も目を開けた時に気づいてはいたんだけどね?でもさ、このやりとりって定番じゃん?
「え?う、うそ…全然気づかなかった」
その発想が、う、うそ…って感じだよ。京華さん…
「ほら、朝飯食いに行くぞ」
と、洋太。そういえば朝飯は食堂だったんだっけ?
晩飯は部屋で食べてたから忘れてたわ。
「はいはい、りょーかい」
そう言って俺は立ち上がり、そのあとを京華がついてきた。
俺の隣に京華、向かいに洋太が座る形で俺達は朝飯を食べていた。
「んで、今日の予定はどうするんだ?クーラーの修理の人何時ぐらいに来るの?」
「えぇーっと…確か…」
「2時だよ。お兄ぃ」
さすが京華、しつかりと把握していらっしゃる。
「ってことはだいぶ時間あるな…朝風呂でも入ろうかな」
「あ、じゃあ私も入る」
「じゃあ、俺も今回は混浴に…」
「それはダメだ」
そんな他愛もない話をしながら朝食を食べ終えた俺達は一旦部屋に戻り道具を持って浴場へ。
「あとでな、京華」
「うん、後でねーお兄ぃ」
俺と洋太は男用の脱衣場へ。京華は女用の脱衣場へと歩を進める。
俺と洋太は服を脱いでいきそれを脱衣かごへと入れていく。
昔から何度も同じ風呂に入っているため今となっては別に羞恥心とかはお互いにない。あえて言うなら中2の時六車家と島崎家の合同でいった温泉の時ぐらいだ。あの時はお互い少し恥ずかしい、と言うよりは遠慮みたいな空気はあったがそれだけだ。
「なぁ、カズー。俺も混浴行ってみたいんだけど」
「ダメだ」
「別にいいだろー?京華ちゃんだって湯着着てるんだしさぁ」
「だぁーめ」
いい加減しつこい洋太に飛びっきりの笑顔でそう言ってやった。そうすると洋太は渋々引き下がった。俺の笑顔の威力が高すぎる!
『シスコンやべぇ…』
洋太をどついた。だから聞こえてるっての。
京華との混浴でも特に問題のなかった俺は……特に問題のなかった俺は。
なんで二回言ったのかって?べ、別に何か問題があって欲しかったってわけじゃないんだからね!
「じゃ、そろそろ帰りますか」
洋太の意見に俺も京華も賛成する。
今から帰れば丁度修理の人も来る頃だろう。
「「「ありがとうございましたー」」」
「はい、またいらしてくださいね」
と、挨拶を交わしてから俺達は帰りなバスに乗る。
実際かなり良かったしまた来てもいいんじゃないかと思う。父さんと母さんが帰ってきたら提案してみるかな。
……その頃までには京華の幽霊のことも解決しておかなくちゃな……
帰りのバスの中は静かだった。そりゃまぁ、丸1日一緒にいれば話す内容だってなくなる。それに俺たちの場合は付き合いだって長い。尚更だ。
そうなると1番奥の席に並んで座っていた俺達が眠くなってくるのは自然の摂理であり常識である。いや、意味わからん。
そんなことを考えていると俺よりも先に京華と洋太が夢の世界に旅立ってしまったようだ。
2人共俺の肩に頭を預けて。
洋太の頭を俺とは逆方向に倒し、俺も寝てしまおうと思い京華の頭に俺の頭を乗せる。
こうしていると俺達って付き合ってるみたい!きゃー。
そんな思考をよそに俺は京華のせいで(俺のせい)寝れていなかった体を休めることにした。
「お兄ぃー着いたよー」
「ん…?おぉ…」
まだ半分ぐらい眠っている頭に鞭打って俺は座席から立ち上がる。今回は熟睡できていたようだ。
京華と洋太の次にバスから降り、洋太と別れてから自宅へと向かう。
「今度洋太くんの家にお礼言いに行かなくちゃねー」
と、律儀なことを言う京華。立派に育ってお兄ちゃん嬉しいわ!
「あぁ、そうだな」
「あそこの旅館今度は家族で行けたらいいね」
「あぁ、そうだな」
「料理美味しかったよねー」
「…あぁ、そうだな」
「お兄ぃちょっと間があった、ウケる」
「そんなことねぇよ、すげー即答だったろ」
「安心しなよ。お兄ぃの料理の方が美味しいって」
俺は顔が赤くなるのを感じた。いや、これは外が暑いせいだな。うん、きっとそーだ。
「そ、そうか。そりゃよかった」
そんな会話をしながら俺達は日常へと戻っていくのだった。