先日京華の魂が体に戻ってから4日がたった。
「お兄ぃ?何時に本屋さんの前に行けばいいの?」
京華が作業着のおっさんが俺に渡してきたメモ用紙と睨めっこしながら俺に問いかけてくる。
というのもそのメモ用紙には時間指定となるものが“1ヶ月後“しか書いていないのだ。つまり何時に行けばいいのか、朝なのか昼なのか夜なのかもわからないのだ。
当然俺もこの疑問は持った。そして解決している。
「京華それはな、時間指定が書いてないだろ?つまり俺たちの方で勝手に決めていいってことなんだよ」
どうよ、この理論。完璧じゃね。
「んー?なんかそんな気もするけど違うような気もする……」
京華にはご納得いただけなかったようだ。残念。
「でもまぁ、夜でいいだろ。一通りも少ないだろうし」
この現象の話は昼間とか朝とか、人が大勢いるところで話すようなものじゃない。
消去法的に夜だと思う。たぶん。
「まぁそうだねー、ところでお兄ぃ。お昼ご飯まだ?」
「はいはーい。できましたよっと」
今日はランチっぽくホットケーキを作ってみましたー。シンプルイズベスト!
それから俺と京華はテレビを見たりラノベの話をしたりして時間を過ごした。
もしかしたら、この時間はもっと他の大切なことに使うべきだ。とも言われたかもしれないが生憎と俺と京華にとってはこうした他愛もない時間が何よりも大切なんだ。これは俺が常々から思っている事だしたぶん京華だってそうだ。
だから今日の夜を境に京華の魂が体に戻れなくなってしまったとしても、この時間をあれに使っておけば……!!って言うことにはならない。むしろ最後の日常だったんだ、ゆっくり過ごせてよかったよ。ぐらいに思える。
そうやって過ごしていると突然俺の携帯が鳴り出した。
おっさんからのメールか!?とも思ったが全然違った。洋太からの電話だった。ハァ……
「はい、もしもーし」
『あ、カズ!今日どうするんだ!?1ヶ月たっただろ』
「あぁそれねー、今大切な作戦会議してるからーなんも心配すんなーじゃーなー」
とだけ伝えて電話を切る。まぁ作戦会議なんて嘘だけどね。ただ単にダラダラと兄妹水入らずの時間を過ごしているだけなんだけどね。
「洋太くんも心配してくれてありがたいねー」
電話の内容が漏れ聞こえていたのか京華がそう言ってきた。
京華もここに洋太を呼ぶのには賛成ではないらしい。やっぱりお兄ちゃんと二人っきりがいいよね!やっぱり京華ちゃんてばブラコンなんだからー。
と、そんな過剰妄想を繰り広げていると。
───ピン──ポーン────
玄関のインターホンがなった。
俺は渋々立ち上がりドアに空いた穴から外をのぞき込む。案の定そこにいたのは洋太だった。
「あぁー京華。居留守使う。外から見えないところに隠れろ」
と、言った時には京華の姿はどこにも見当たらなかった。さすが我が妹。感心してしまう。
俺もさっさと隠れて洋太が諦めて帰えるのを待つ。
───待つこと10分
携帯の電源もしっかりと切っておいたおかげで洋太は俺たち兄妹が家にいないと思ったようだ。家へと帰って行った。
「ふぅ……」
一難乗り越えて俺は一息つく。
今のこと状況はできれば壊したくない。この気持ちが洋太にも伝わればいいんだが……まぁ無理だろうな。あいつは一人っ子だ、これは兄妹にしか分からない。
え?普通の兄妹でも分からないって?ハハハッ!俺と京華は互いにシスコンにブラコンだからな!ちょっとヤバい兄妹にしかわからないのさ!
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そうこうしているうちに日はしっかり沈んでしまい、あたりは暗くなった。
「お兄ぃーそろそろ行く?」
「そうだなー行くかー」
となんとも気の抜ける会話をして俺と京華は家を出た。
「なんかあれだよね、今から結構大切なことしに行くはずなのに全然緊張しないね」
「だな、むしろリラックスできていて最高のコンディションかもしれん」
「私はちょっと眠いかなー……」
「もう少し頑張ってね?途中で寝たりしないでね?」
「だーいじょうぶだってー。たぶん…」
「そうかぁ……たぶんかぁ…」
ん?いや待てよ。京華が寝たとしたら俺がおんぶして帰らなきゃいけないんだろ?しかも今は夜。一通りはかなり少なくなっている……
思わすま生唾を飲む………いや!べ、別にい、いやらしいことなんて考えてないんだからね!
「お兄ぃ」
「は、はいぃぃ!!?」
少し裏返った声が出た気もしなくはないが大丈夫、でてないでてない。至って冷静。
「え、なんでそんなに慌ててるの……」
「い、いや!?何でもないよ!!?」
京華は不審な目で俺のことを見ていたがどうでも良くなったのか視線を前にそらした。
「これってさ間違えたらもう一生幽霊のままなのかな…」
「かもしれないな。でも安心しろ、そんなことにはならねぇから」
そう言って俺は京華の頭に自分の手を置く。いつか、京華が俺にしてくれたように。
俺は京華に頭を撫でてもらうとすごく安心した、気の許した相手に頭を撫でられるって言うのはきっととっても穏やかな気持ちになれるんだと思う。
京華も俺に撫でられることでそうなってくれると嬉しいな……そう思いながら京華に目を向ける。
「………………」
なんか京華は前を向きながらうつむいていた。
あれれぇ?俺に撫でられるの嫌なのかな……
ちょっと、いや、かなりショック……
「………お兄ぃ……手、避けてくれない……?」
しかもめっちゃちっちゃい声で拒否された!?
俺は自分の心が折れる音を聞いた気がした。へぇ〜人の心って折れるとこんな音するんだァ……
俺が渋々手を避けると京華は競歩かよ!ってぐらいのスピードで前を歩いていく。
「お兄ちゃん泣いてもいい……?」
ポツリと呟いた声は誰にも聞こえず夜の街へと消えていった。
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本屋の前へと辿り着いた俺と京華。
ここで俺達は驚くことになる。まぁ、普通の人はこのことでは驚けない。なにしろ元から“見えないのだから“。
「ペンキがなくなってる──?」
「そう、みたいだな……」
今まで赤いペンキがぶちまけられていたところには何も無くただのコンクリートと化していた。
「あれ?紙が落ちてる……」
そこで俺は1箇所だけ白くなっていた部分を見つけた。今日は無風とは言わないが風がそれなりに吹いている日だ。紙がその場から全く動かないのは不自然だ。その事に嫌な予感がしつつも俺はその紙──もといメモ用紙に手を伸ばす。
今回の課題はクリアだ。
次回の課題にも期待してくれていたまえ。
の2行だけが書いてあった。不思議に思い裏面にも目を通すが何も記入されていない。
っていうか期待ってなんだよ期待って……出来るわけねぇだろんなもん!
「なぁ…京華…」
「なぁに…お兄ぃ」
「拍子抜けにも程があるよな……」
「そうだね…」
まぁ本当に感想は“拍子抜け“その一つだけだ。
いや、マジで。俺達が今までどんな思いをしてこの現象の事について考えてきたと思ってんの?しかも答え合わせ、とか言ってたくせに作業着のおっさんの姿も見当たらねぇし、なんなのマジで……
「帰るか…」
「そうだねぇ…ふあぁぁあ…」
京華が可愛らしく欠伸をした。今日ここに来た意味あったかもしれない!
本屋の前から家までほぼ何も喋らずに歩き続けた俺と京華。
京華が何を考えていたかは俺にはわからない。今の今までこの現象について頭をフル回転させていたせいもあり、あのメモ用紙を見てからはほぼ機能停止状態の俺の頭ではそれを考えるのは無理だった。
「「ただいまー」」
俺と京華は声を揃えて家の中へと入っていき顔を洗って歯を磨いて寝た。それ以外のことは何もしていない……京華は何も考えられる気がしなかったし何より京華が話しかけてこなかったためやる気も出ない………故に寝る。
おやすみ!
今回で夏休み編(今考えた)が終わりました。
次回からは二学期編(一学期はどこに……?)を書こうと思っています。
それと同時に新シリーズ“俺の日常に妹が追加されるようです“を書き始めようかなぁ…と思っています。