では、どうぞ
夏休み初日の朝、俺と京華はラーメン屋横の本屋へと続く道を歩いていた。
今日の予定は午前中いっぱい本屋で買い物をしそのまま横のラーメン屋で昼飯を食べ、その後京華は友達と遊ぶ予定があるのでそこで解散、俺は帰宅、という流れだ。
別に俺は二日連続で本屋とラーメン屋に行くのには何の問題もない。むしろ歓迎だ。
けど、ラーメン食べた後にそのまま友達と遊びに行くのはどうかと思うぞ?お兄ちゃんは。
京華だって年頃の女の子なんだし相手だってそなんだろ?ラーメン臭いまんま遊びに行くのは考え直した方がいいんじゃないか?
と、この予定が決まった時に言ったのだが
「別にそーゆーの気にしない友達だし、それにお兄ぃに関係ないし。そんなこと気にするとかシスコンきもいし。」
と早口に切り捨てられた。
でもまぁこういった指摘をされるのは嫌というわけではなさそうだ。
その証拠に字面こそ結構酷い事を言っているがそれに反して声音は柔らかい。これが冷たい声で言われていたら俺は軽く死んでいる自信がある。
ほんと素直じゃないやつだ。「心配してくれてありがとう、お兄ちゃん!」と可愛らしく言ってくれればいいのに。いや、今のままでも充分可愛いけどね?
でもまぁ、そんな風に言われてしまえば俺には反論する言葉も無ければする気も無い、もしもの時用に息リフレッシュ!できるものを明日使う予定のカバンに入れておくだけだった。
「お兄ぃ、本屋どれぐらいいる?」
「あー、そーだな。2時間とかでいいか?」
「ん、わかった。今日の晩ご飯は?」
「野菜炒めかな。材料も家に残ってるものがあるしな」
たぶん昨日冷蔵庫覗いた時にあったもので足りるはずだ。あと、材料切れちゃいそうだったから買い物も行かなきゃな。
「もう完全に主夫だね」
「最近は料理男子がモテるらしいぞ。つまり俺に初めてのモテ期が到来ってことだな」
「なにそれ」
ははは、と笑い合う俺達。
そんな中身のないどうでもいい話──でもどこか心温まる会話をしていると本屋に到着。
昨日は外壁が黄色く明るかった─いや、眩しかった本屋は赤色に塗り替えられかけていて、右半分が赤色、左半分が黄色と異様な外壁になっていた。
「やっぱりこれ、苦情出たんだな。」
「そりゃそーでしょ。左だけでも充分眩しいし、てゆーかペンキ臭い。お兄ぃ、早く中入ろ」
「はいはーい」
「ごちそうさまでした!」
「ご馳走様でした。おい京華そんな慌てると転ぶぞ!」
あの後、本屋に3時間も滞在してしまった俺達は急いでラーメン屋に移動、今までに類を見ないほどのスピードでラーメンを食べきった京華はすぐに外へと出ていった。
サラッと男に会計を任せるできた女の子だった。
まぁ最初から俺が払うつもりだったしいいんですけどね?
でもさ、少しはお金を払う素振りとかしなきゃダメよ?
俺と2人の時はそんなのいらないけど、友達とかと一緒のときはちゃんとやりなさいよ?「つい癖で」とか言ってやってしまいそうで怖い。後でしっかり言っておかねば!
俺がラーメン屋から出ると京華が待っていた。
「お兄ぃ遅い!行ってきます!」
そう言って駆け出そうとする京華。
もしかしてそれいうためだけに待ってたのか?可愛いな。
「行ってらっしゃい。あ、待てこれ。」
それを呼び止めて昨日カバンに入れておいた息リフレッシュ!できるお菓子を京華に手渡す。
こいつラーメンにニンニク結構入れてたしな、やっぱり持ってきて正解だったな。
「え?あ、あぁ。ありがと」
「どういたしまして。じゃあ今度こそ、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!」
笑顔でそう言い、今度こそ駆け出す京華。
そして俺も京華に背を向けて家へと続く道に1歩踏み出した──
ドンッ─カラァーン─
背後で鈍い音─その後にコンクリートに金属が落ちた音がなった。
それと同時に俺の背中に勢いよくかかる液体、そして目の前のコンクリートが俺の影を残して赤く染まった───