妹が浮いている!? 夏休み編   作:Damy

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第3話になります。



兄妹の困惑

病院の1室、ベットの傍らで俺は椅子に座り俯いていた。

ベットには義理の妹の京華が寝ている。

外は完全に日が落ちていて暗くなっている。俺の気持ちは外以上に暗くなっている。

 

──今日の昼、ラーメン屋を出て俺と別れた京華はその直後、本屋の外壁を脚立に乗り赤いペンキで塗っていた作業員が、手を滑らせペンキがたっぷり入ったバケツを落とし京華の頭にクリーンヒットさせた、バケツはそのまま重力に引かれ地面に落下、その衝撃で中身を辺り一帯にぶちまけた。

 

その時俺にも大量にペンキはかかりはしたが、そんなことを気にしている暇は俺にはなかった。

 

京華がバケツに頭を打たれそのまま受け身も取らずに地面に倒れ込もうとしている京華を見たからだ。俺は決死の思いでダイブし京華と地面にサンドイッチされる形で、なんとか京華が地面に倒れ込むのを防いだ。

 

「京華っ!京華っ!!」

京華に呼びかけるがピクリとも動かない。気絶しているのだろうか…

 

とりあえず、救急車を呼ばなくては。とポケットに入っている携帯を取り出そうとするがペンキが手についているせいで滑ってうまく取り出せない。

ちっくしょぉ!!ふっざけんな!

 

そう心の中で悪態をついていると、頭上から知らないおじさんの声がした。

「はい、そうです。女の子がバケツに頭をぶつけて、はい。気絶しています。場所は───です。」

バケツを落とした作業員のおじさんが不自然なほど落ち着いた調子と声音で、おそらく救急車に電話をしていた。

 

「おいおっさん、なんでそんな落ち着いてるんだよ」

怒気を孕ませた声で─実際激怒していた─確かな敵意を持っておじさんに問うた、テメェがやったんだぞ、と。

だが返ってきた答えは─

「こういう時は落ち着かないといけない。焦っても何一ついいことはないからね」

─という何とも腹立たしい返答だった。

 

「そんなことより、彼女の呼吸と脈を調べてくれないか?」

ぶん殴ろうかと思った。ここまで人をぶん殴りたいと思ったことは無いだろう。

だがおじさんの言っていることは正しい、今は俺の感情なんかどうでもいい。

最優先事項は京華の状態確認、救急車が来るまでの適切な対処。

 

その後にこのおじさんに情報を提供してもらう。損害賠償とか───もしも、本当にもしも京華に何かがあった時に責任を取ってもらわねばならない。

 

そう考えながらも俺は耳を京華の口元に近づけ、京華の手首から脈の確認をしていた。

─正常──問題なし、本当にただ気絶しているようだ。これなら救急車が到着するまでに

俺ができることは特にないだろう。

 

じゃあ次の問題だ。

そう考えおじさんの方を見る。おじさんは俺が京華の呼吸と脈の確認をしているうちに脚立から降りてきていてメモ用紙に何やら記入していた。

「これが私の名前、電話番号、仕事先だ。彼女に何かあったらここに連絡をくれ」

そう言ってメモ帳の一番上のページを破りこちらに差し出してきた。

 

この行動に俺は少し─いや、かなり驚いた。

条件反射的にそのメモ帳を受け取る、そして先程から不自然に思っていたことを聞く。

「おっさん、なんでそんなに落ち着いているんだ?」

 

この人はバケツを落とした時もその後も1度も驚きや狼狽、そういった姿勢を一度も見せていない。

常に冷静に、次にとるべき行動を先読みしているように思える。

───不自然だ。

 

その理由を正そうとした時──救急車のサイレンの音が近くまで来ているのを感じる。

まずは最優先事項──京華の様態が大切だ。と頭を切り替える。

 

大丈夫だ、おじさんの連絡先はもらった。会社名と作業着に記載されている会社名が同じところを見ると嘘の可能性は低いだろう。じゃなきゃ昼間っから堂々と落書きしていたことになってしまうからな。

 

そうして、やっと来た救急車に京華を乗せ、付き添い人として俺も乗車。

搬送先の病院はすぐに見つかった。病院につき俺の同意の元できる検査を全て行い、その結果を医師から聞きそれをアメリカの母さんの電話に連絡をし、事情を話した。

 

父さんも母さんもすぐに日本へと帰る!と言って聞かなかったが京華はたんこぶが一つできただけだし脳に異常はない。と医師が言っていたことを伝え、何かあったらすぐ連絡するから、と説得しなんとか納得してもらった。

 

「じゃあ帰るかな。また明日来るからな、京華。」

スースーと寝息をたてる京華にそう告げ。俺は病室をあとにした。

 

 

[newpage] 家へと続く道を歩きながら俺はあのおじさんのことを考えたいた。べ、別に恋なんかじゃないんだからね!

 

じゃなくて、あのおじさん─えーっと、名前なんだっけ?

そう思いポケットからメモ用紙を取り出して見る。

 

「──は?なんだこれ。」

ポケットから取り出したメモ用紙には文字化けのようなものが書かれていた──

「こんなの入れてたっけ?」

再度ポケットの中を探るが何も入っていない。

 

不吉な予感がしながらも他のポケットやカバンの中を探すもやはりメモ用紙は入っていなかった。

もしかしてこの文字化け?のメモ用紙があのおじさんから渡されたメモ用紙なのか──?

「それはないか。我ながらなに言ってんだか。」

 

きっとどっかに落としてきちゃったんだろう。幸いにも会社名だけは覚えているし、連絡は取ろうと思えば取れるしな。

でもおじさんには悪いことしちまったな

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

家に帰りたしいて食欲もなかった俺は食パンを一枚だけ食べて、リビングのソファーに深く腰掛けた。

「はぁぁ……つっかれたぁ…」

その一言を最後に俺は意識を手放した──

 

 

 

 

「──ぃ、──にぃ、──にぃってば─」

聞きなれた、けれども決して聞き飽きることはないであろう声が聞こえて俺は目を覚ます。

 

「ん、おぉ、京華。どうしたんだ」

朧気に目を開けるとそこでは俺の体に乗っかり両手で俺を揺さぶって起こそうとしているのが見えた。

 

なんだ?この夢のようなシチュエーションは。最高かよ。

じゃ、ないな、実際にこれは夢だな。京華は今入院していて病院にいるわけだし。ちくしょう夢かよ!

 

寝起きにしてはなかなかの推理力を魅せた俺は、普段やりたくても絶対にやれない、と言うかやってはいけないことをやる。夢なんだし何してもいいよね!!

 

「───!!///ちょ!ちょっとお兄ぃ!?」

そうして無言の俺になんの断りもなく抱き着かれた京華はすごく慌てていた。

「夢の中でも京華は可愛いなぁ…さすがは俺の妹」

 

普段は思っていても言わないことまで俺は口にする。

にしてもこの夢すげーリアルだな、京華の温度とか匂いとか現実と区別つかないレベルだ。さすが俺。

「お、お兄ぃ!これ夢じゃないから!リアル!リアルだから!」

 

………え?

そう言いながら京華は頬をつねってくる。痛い。

痛いと思うと同時に京華から手を離す。

 

開放された京華は物凄いスピードでリビングの隅へと逃げ真っ赤になっている顔を壁に向けて唸っている。

が、俺はそんな貴重な、レアな京華を見ることをせずに固まっていた。

 

……え?……え?……え?

さっきからえ?しか言ってないぞ、俺よ。

冷静になれ、俺は今どこで何をしでかしてどうなっている?

ここは夢の世界じゃなく、現実で?京華を無言で抱き寄せ可愛いとか何とかほざき。結果京華がすごく俺と距離を置いている。

それはまぁいいか。いや良くないけど、それよりも──

 

「京華さん?今病院に入院中のはずでしたよね?なんでここにいるです?」

と、少し──いや、かなり気まずかったので少し歪な敬語で訪ねてしまったです。

「そんなことより、さっきの…なに…?」

 

言葉こそ足りていなかったが俺には充分だった。何が充分だったって?俺が死ぬのにはだよ!そのせいで、「そんなことじゃないからね!?」とつっこむことをわすれるほどだ。

京華が聞いている「さっきの」とは抱きしめてきたこととその時の俺の言動のことだろう……恥ずい…

 

「いや、あれな?ちょっと寝ぼけてたんだよ。

だからその、俺の意思じゃないと言いますかなんと言いますか…」

ちょっと苦しいか、と思ったが

「ふーん、あっそう。あ、私がここにいる理由はね幽霊だからだよ。」

 

あー、よかった。なんとか理解してもらえたようだ。少し投げやりだったがこの際気にしないでおこう───……

「はぁぁああ!?ゆ、幽霊!?どう言うことだよ!?」

 

「え?いや、ほら。」

そう言って京華は自分の足元を指さす。

俺も京華の指先をたどっていき京華の足元を見る。

浮いている?のか?

 

にわかに信じられずを俺は京華に近づき京華の足と地面のあいだに手を入れる。が、すんなりと通り抜けた。透明な椅子とかに座っているわけではないようだ。

 

「あれ?でもさ、京華俺に触れてたよな?俺もお前に触れてたぞ?」

俺は京華の発言を否定するかのように早口でそう言う。

「それはー…なんでだろうね?」

 

京華はこの状況を分かりきっているという訳では無いようだ。

それよりも、この落ち着きっぷりのおかげで俺もだいぶ落ち着いた。うちの妹意外と肝っ玉でかいのか知らん?

 

少し落ち着いたところで俺は1番大切で重要なことを考える。さっき京華が言っていた「ここにいる理由は幽霊だから」ってどういう意味だ?

それに“幽霊“という単語から考えられる──考えてしまう最悪の事態──

 

「なぁ京華、お前の体って…その…今どうなってるんだ?」

なるべくオブラートに包み、だがその言葉の意味が伝わるやうに話す。

「さぁ?私起きた時、本屋の前にいたから知らないよ?」

本屋の前──京華が気絶した場所だ。ならば──

 

「そこから家に来るまでに誰かに見られたりとか、声かけられたりされたか?」

俺以外にも京華のことが見えるのなら京華が幽霊じゃない可能性も出てくる。

「声ならかけられたよ、まぁ1人だけだけどね。あとの人は見えてもないと思うよ。」

「その人はどんな人だ?なんて言ってたんだ?」

食い気味に、急かすように聞く。

 

「えっと、知らないおじさんだった。んで、“君のお兄さんに助言をしてある。家にいるはずだからはやく帰りなさい“って言ってどっかいっちゃったけど」

知らないおじさん───すごい心当たりがある。

 

それを確信にするために、先程まで文字化けのようなものが書かれていたメモ用紙をポケットから取り出す。

疑惑が確証に変わる。先程まで文字化けしていた文字がちゃんと読めるようになっている。

 

君の妹さんはちゃんと生きているよ。それと君たちにはまずこの現象を理解して貰う。その為に今回は協力者を一人増やすことを許す。ヒントは本屋の前だ。

 

と、書かれていた。

このメモ用紙の内容を真に受けるかどうかは後々考えるとして、これで1つわかったことがある。

 

今日の昼のおじさんの不自然なまでの冷静さ。あれは恐らくこの状況になることが分かっていたから──いや、作為的にこの状況を作るためか?

それを踏まえると少なくとも京華が無事ということは信じていいだろう。まぁこれが無事なのかどうかはさておき。

 

「お兄ぃ、裏にもなんか書いてあるよ」

そう言われメモ用紙を裏返す。

──────!!

そこに書いてあったものを読み驚愕で思わず息を詰まらせた。

 

タイムリミットは1ヶ月だ。本屋の前で答え合わせをしよう。

今回、間に合わない場合は京華さんの魂が体に戻れなくなる。

 

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