「うおっ──!!」
洋太はコンクリートを触った瞬間に驚いたような声を上げて尻餅をついた。
「な、なんだこれ──!?」
洋太は傍目から見ていてもだいぶ混乱していた。
その証拠に通行人の方々から心配するような目や痛いものを見る目が向けられていた。
よし、知らない人のふりしよう!この状態の洋太と同類視されたくないしね!
「お、おい!カズ!なんだよこれ!」
うぉい!こっち見ながら俺の名前呼ぶなよ!
うわぁぁ…洋太に向けられてた視線が一気にこっちにぃ……
そう思っていたが洋太の目を見た瞬間にそんな考えは吹き飛んだ。
「お、おい、どうしたんだよ。そんな怖いものを見たような目をして。」
「いや、こ、ここにペンキが──うわぁ!きょ、京華ちゃん!?」
───!?
おかしい──さっきまで洋太は京華を見るどころか感知することすら出来ていなかったはずなのに──
今洋太が視線を向けている方向には確かに京華がいる、それに今こいつは京華の名前を呼んでいた。
どういうことだ?ペンキになにか関係が──
そこまで思考を巡らせていた時不意に京華から声をかけられた。
「お兄ぃ、すごい注目されてる。1回どっか逃げた方がいいかも。」
「お、おぉ、そうだな。おい、洋太──」
「わかった!」
俺の指示を聞く前に洋太は走り去っていく。
ちょっと待てぇ!!俺をこの空間に1人置いていくんじゃねぇーー!!
俺は全注目を浴びながら洋太の背中を追って全速力で逃げる。
その後ろを京華はふわふわとかなり余裕そうについてくる。
いいなぁ!俺も空飛びたいなぁ!
この時ほどその願いを強くを持ったことはないだろう。まる。
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ビルとビルの間の裏路地だがもう昼近いこともあり日陰にはなっていない。
暑い死ぬやばい死ぬ溶けて死ぬ。
こういう時京華はかなり楽そうだ。今の京華って物に触れないってこと以外、有能過ぎない?
そこで俺と洋太、そして京華の3人で先程起きた本屋の前での出来事について話し合っていた──いや、話し合おうとしていた。
「はぁっ、はぁっ」
「お兄ぃ体力なさすぎ。洋太くんをちょっと見習ったら?」
「そうだぞカズ。こんなんで息切れしてるようじゃ男子高校生としてお終いだぞ。」
「うるせっ!男子高校生の平均ぐらいだ、俺は!」
つか、なんでお前は息切れ1つもしてないんだよ。普通全力疾走でこれだけの距離走ったら疲れるだろ。
「それより、なんでお前普通に京華と話してんだよ。」
「お前……俺の妹と会話すんじゃねぇ、とかシスコンこじらせすぎ……」
「そうじゃなくてだなぁ……」
「なんか知らんけど、京華ちゃんが見えるし、聞こえるし──」
そう言いながら洋太は京華に右手を出す。
京華は瞬時にそれを理解し握り返した。
「──触れる。」
最後のは明らかに今わかったよな…
そんな自信満々に言ってるとむしろかっこ悪いぞ…
「なるほどな」
そう言いながら俺は京華と洋太の握手を手刀で分断する。
「うわぁ……お兄ぃシスコン過ぎ。キモいよ?」
とか言いながら声は全く嫌がってないのはなんでですかねぇ?
「京華、洋太。あのペンキについてなんだが──」
茶番も終わりにしてそろそろ本題に入るか。
まず俺から話した方がいいかな?考えもだいたいまとまったし。
やだ!俺ってば優秀すぎぃ!
「──洋太はあれに触った瞬間にペンキと京華が見えるようになった。で間違いないよな?」
「お、おう、そうだぞ」
『ちょっと京華ちゃん。これ誰?ホントにカズ?』
『今日の朝からなんか落ち着いてるっていうか冷静なんですよね…』
「おい、こら、聞こえてるぞ。」
「なぁカズ、なんで急にそんな落ち着きを持った感じになっちゃってるんだ?」
「いやー、それは──」
チラッと京華に視線を向けるが、睨まれた。
ふえぇ…怖いよぉ…
たぶん「京華が落ち着いてくれているから」って言ったら怒る、ってことだろうなぁ…
「──意味不明なことが立て続けに起こりすぎてるせいだな。だから驚くとか動揺するとかいう神経が麻痺しちまったんだろ。」
苦し紛れの言い訳、だけどあながち、間違ってないしいいか。
「ふーん、そっか。それより話戻そうぜ、脱線しすぎだわ。」
元はと言えばお前のせい……と言いたかったがここは我慢しよう。話が進まん。
「そうだな。洋太がペンキに触ると、ペンキが見えるようになり触れるようにもなった。
でも、他にもあのペンキの上を歩いてる人達は無反応だったところを見ると見えるようにはなっていない。」
「たぶん、あのおじさんの仕業でしょ?協力者を1人だけ増やせるってやつ」
京華が俺の考えていたことを先に言ってくれた。
「多分そうだろうな。んで、ここから俺達が俺達の置かれたこの状況を理解しなくちゃいけないわけだ。1ヶ月以内にな」
でないと、京華の魂が体に戻れなくなってしまうから。
「とりあえず、あのペンキのことをもう少し調べたいな。1日経っても乾かないで液体のままだったし、それに京華が触れるのかどうかとかも一応確認しておきたいな。
あと、京華の体も見に行かないとな。なにか異変とかあったら大変だ。」
まぁもっとも異変があれば病院から俺の携帯に電話が来るはずだけどな。
でも、その異変が普通の人に見えないもの、とか感じられないものの可能性も今は充分にある。
「ちょっと待ってくれー、カズ。俺話に全然ついて開けてないんだけどー。」
そう言って洋太が俺の脇腹をつついてくる。こちょばうざい。
「そうか、ドンマイ」
俺は飛びっきりの笑顔でそれを振り切り京華の方に振り返る。
「あれ──京華──?」
さっきまでそこにいたはずの京華が忽然と消えていた。
太陽は相変わらず俺たちを頭上から照らし続けている──