少し短編感覚で書いています
京華の魂が体に戻ってから3日がたった。
「お兄ぃー」
自室のベットの上で寝ていると、たぶん1階から読んでいるのだろう、京華が結構な大声で俺を呼んでいた。
ふむ。これはあれだな、このまま起きないでベットで狸寝入りしていればお腹を好かせた京華が俺を起こしに来てくれるという……
「お兄ぃーー」
「ZZZ…」
さっきより大きな声を出したようだけどお兄ちゃんは起きないぞ!妹よ!さぁ!直接起こしに来るのだ!
………………
待てど暮らせど京華が起こしに来てくれない……
あんれぇ?おっかしぃなぁ…
諦めて階段を降りリビングへと向かう。
「あ、お兄ぃ遅い。何回も読んだのになんで起きてくれないの」
そこでは京華が立っていた。どこにだって?キッチンにだよ。もう一度言う、キッチンにだよ!
しかも少しご立腹のようだ、不出来な兄ですみません。
「京華、おはよう」
「ん、おはよう」
「どうしたんだ?キッチンになんか立って」
素朴な疑問だった。京華は基本的に料理をしない子なのだ。
女の子なんだし料理したら?というと決まって
「私は料理できるからしなくていいの」という謎理論をぶちかましてくる。
まぁ、実際に京華は料理ができる。どっかの料理出来ないくせに料理出来ると洞を吹くようなヤツらとは違うのだ。
「お兄ぃが起きるの遅いから自分で作ってるの」
……マジで!?
やったー、狸寝入りしたかいがあったー。
起こしにこそ来てくれなかったが京華の手料理が食べられるのならプラマイゼロ、いや、プラス100だな!
「へぇ…京華の手料理か、久しぶりだなぁ」
と、ここは努めて冷静に返す。
ここですごく喜んではしゃいでしまうと、京華がやる気をなくす可能性がある。
女の子は難しい生き物なのです。
「じゃあ、俺。顔洗ってくるな」
「はいはーい」
洗面所で顔を洗ってきた俺はテーブルの上を片す。
いつでも食べられるようにな。にしてもいい匂いするな〜。ジュルリ
少しすると京華が朝食の乗った皿をもって来た。
ただし1人分………
「ね、ねぇねぇ京華ちゃん。」
「どしたの?お兄ぃ」
棒読みだった。つまり──
「京華ぁ……あんまりお兄ちゃんを驚かせないでくれよぉ……心臓に悪い……」
「そんなんで心臓に影響出るとか、お兄ぃシスコン過ぎ」
そう言って京華はキッチンにちゃんと用意してあった俺の分の朝食も持ってきてくれた。
その道中、「あれぇ?なんでわかったんだろ。もしかして見えてたかな…?」と小声で言っていたが、まぁあんな棒読みされたら誰だってわかるだろう。
「「いただきまーす」」
京華が用意してくれた朝ごはんは白米、豆腐とワカメの入った味噌汁、キャベツの千切りにベーコンエッグとオーソドックスなものだった。が、妹が作ったってだけでその美味しさは何倍にでも跳ね上がる!!
それに実際うまかった。味噌汁は今朝作ったものだというのにしっかりとだしが取れているし、キャベツの千切りも手馴れてる感が半端なかった。それに、ベーコンエッグの焼き加減が絶妙すぎる──!!(個人の感想です。)
「すごい美味いわ」
「ありがと」
「ここまでできるなら、京華が飯作ってくれてもいいのに…」
「そんなことないよ、お兄ぃの料理の方が美味しいし、それに私が食べたいのはお兄ちゃんの料理だから」
キィィィィィィタァァァァ!!!
「私が食べたいのは”お兄ちゃん”の料理」頂きました!!
普段お兄ぃとしか呼んでくれない京華が何故かこの時だけは”お兄ちゃん”と呼んでくれる!!
理由はわからんがそんなことどうでもいい!!
かわいいは正義なのだ!!!
と、お馴染みの(まだ2回目だが)ことを考えてると。
「でもそうだね。たまには作るのもいいかも」
おぉ!これはまた前向きな意見。
「じゃあ、気が向いたら一緒に作ろうぜ」
と、俺にしてはなかなかいい案を出す。グッチョブオレ!
「あ、それいいね」
と、他愛もない話をしながら俺達は朝を過ごした。
フフッ、フフフッ、やっぱり日常コメディ系のラノベは笑える。教室で読んでると周りから怪訝な目を向けられるぐらいに笑える。これってよくあるよね!俺だけじゃないよね!
「お兄ぃ、笑い方キモいよ。」
と、京華に注意されてしまった。自覚があるぶん「キモい」と言われても…全然…気づつかないんだからね!
だが、京華も人のことを言えない。
「お前もだいぶ口角上がっててすごい顔になってるけどな」
まぁ、それでも可愛いんですけどね?これは言わない。
今俺と京華はリビングで読書にふけっている。
京華の事情もあるし極力外出を避けるようにしているのだが、暇すぎてここ数日は読書ばかりしている。
「でも、可愛いでしょ?」
そいうこと普通自分で言っちゃう?
いや、これはたぶん俺の顔にさっきの感想が出てたんだろうな。
証拠に京華はさっきのニヤニヤした感じの笑い方ではなく、俺をからかう時のニヤニヤした笑い方になっている。つまり、ニヤニヤしいているのに変わりはなった。
「あーうんうん、かわいい。世界で一番かわいいよー」
素直に認めるのも尺だったので適当に返事する。
そんな俺の態度が気に障ったのか、京華は少しムッとした表情になる。その際に少し頬が膨れる。
なにこの子!俺を萌え死にさせるつもりなの!
他人からすれば俺はちょっとした病気だった。いや、かなりの病気だった。
その時──
──ピン、ポーンとインターホンがなった。
宅配便の方かな?と思いドアを開ける。
「よう、カズ!遊びに来たぜ!」
ドアを閉める。そして鍵をかける。来た道を戻ってリビングに戻った。
ドアの方からドンドン聞こえるが気にしない。
「お兄ぃ?誰だったの?」
聞かなくてもわかっているだろう京華は俺にわざわざ聞いてくる。
「洋太だったよ…」
なんで何の連絡もなしに遊びに来るかなー、いくら幼馴染だからといっても、親しき中にも礼儀ありって言うだろ?ああいうのはよくないと思います!
そう思いながら俺は携帯を確認する。そこには俺が起きる少し前に洋太から、メールが届いていたことが表示されていた。
「………はぁ」
つまり悪かったのは俺というわけですか。
でもなー、一回閉めてしまった手前もう一回開けにいくのもなぁ…
そう思っていると庭に面した窓の方から聞きなれた声が聞こえた。
「おぉーい!カズ!開けろぉー!」
「あいつどんだけ俺のこと好きなの?流石にキモイんだけど……」
「洋太くん、お兄ぃのこと大好きだよねー」
おっと、つい心の声が漏れてしまったようだ。
それにしても京華の合いの手が適当すぎると思いました。
俺はソファから立ち上がり玄関の方を指さす。
そしてそのまま俺も玄関に向かって歩を進める。
「カズ酷くない?いきなり閉めることないと思うんだけど。親しき中にも礼儀ありって知らないの?」
ドアを開けて放たれた一言目がこれだった。
奇しくも先程の俺と同じことを言っていた、幼馴染だなぁって思いました。
「すまん、メール見てなかったんだわ」
ここは正直に謝っておく。やだ!俺ってば大人!
「洋太くんいらっしゃーい」
「あ、京華ちゃん。調子はどう?」
「お陰様でバッチリです」
「そっか、そりゃよかった」
「あ、今お茶用意しますね」
「いや、いいよ。そんな気使わなくて」
「親しき中にも礼儀あり、なんでしょう?」
「んー、じゃあ。お言葉に甘えようかな」
俺は完全に蚊帳の外だった。
京華と洋太の仲もそれなりに長いのだが、お互いくんちゃん付けだし、京華は敬語だ。まぁ、2人の間に壁があるとかそういう訳ではなく、先輩後輩だからという理由だ。先輩呼びは硬っ苦しいし、タメ口はなんか良くない気がする、ということで今の感じに定着した。
「あ、京華。俺にもお茶ちょーだい」
「はいはーい」
と言って京華はキッチンに向かった。
「洋太、リビングでいいだろ?」
「ああ、いいぞ」
「てか、何しに来たの?」
「お前まだメール見てなかったのかよ…宿題だよ、宿題」
そう言って洋太は背負っているカバンをこちらに向けてくる。
「あぁ、じゃあ道具とってくるわ。ちょっと待っててくれ」
俺は階段を上がって自室を目指す。
部屋についてから、通学用のカバンに入れたまんまの宿題達と筆記用具を持ってリビングに戻った。
そこでは既にテーブルに自分の宿題を出した洋太がいた。あと、お茶とお菓子もでている。
「京華ちゃんも一緒にやる?少しぐらいなら教えてあげられるけど」
「あ、じゃあお願いします」
そう言った京華が俺の脇を通って階段を上がって行った。
「なに人の妹口説いてんだよ」
「流石にシスコンこじらせすぎじゃないか?」
「普通だ、普通」
こじらせてる自覚はあるが認めるつもりは無い。
それが俺だ。意味わからん。
俺もテーブルの近くに腰掛ける。
「京華ちゃんもよくお前に呆れないよなぁ…」
「??何の話ですか?」
タイミングよく京華が戻ってきた。
「よく京華ちゃんがカズのシスコンに呆れないでいてくれてるよなって話」
言われたがらも京華はさも当然と言った感じで俺の横に腰掛ける。
「洋太。それはこいつがブ───いってッ!!」
ブラコンって言おうとした瞬間に足をつねられた。
横に目をやるとそこでは京華がすっごいいい笑顔で俺のことを見ていた。いや、睨んでた。
笑いながら睨むなんて器用なことするなぁ……
「なんだって?カズ」
「あ、いや、なんでもない」
そう言うと足が開放された。い、痛かったよォ…
「じゃあ、勉強を始めましょうか」
京華がめっちゃいい笑顔でいう。
さっきと全く表情が変わっていない。ふえぇ怖いよぉ…
そうしてまた、俺達のどこにでもありそうな、平穏な午前が終わった。