東方魔卿録   作:子アオ

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彼らは失った居場所を求め、世界を敵に回した。
たとえそれがきっかけで命を散らす事になろうとも、それを後悔することはないだろう。

だが、しかし──




プロローグ

 

 

───ここはスピリット達の住まう世界、グラン・ロロ。

 

現在は十二神皇によって世界の均衡が保たれ、多種多様な種族のスピリットが協力して今を過ごしている──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───普段ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──刹那、陸を紫の閃光が斬撃のように走った。それを受けて紫の竜達が散っていった。

 

 

──今度は蒼い炎を纏う何かが駆け抜けた。それによって鈍く光った鱗を持つ、鳥のような竜達が消し飛んだ。

 

 

 

 

ここはグラン・ロロに存在しているとある島国。

 

その陸が炎や氷で覆われ、雷や風で切り裂かれていく。

 

 

 

長年の眠りから覚めた【邪神皇】と呼ばれるアルティメットが率いる邪神軍。

かたやグラン・ロロを守護する使命を承った12体の英雄、【十二神皇】を擁するグラン・ロロ連合軍。

 

 

 

 

 

破壊の後の変革か、今までと同様の安寧か。

 

 

 

 

 

 

 

──数刻程前、天下分け目の一大決戦の火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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???「──失せろ!!」

 

ケンタウロスのような鎧を全身に纏った騎士が神皇軍の一角、死竜の軍勢を一掃した。

 

この騎士は邪神軍の統括者の1人、獄土を統べる四魔卿、『マグナマイザー』。

 

マグナ「ヴァン、そちらはどうだ?」

 

マグナが声を投げかけるが、近くには誰もいない。

しかし、その声に応える別の声があった。

 

ヴァン『こっちはどっちかと言えば優勢、ってところかな──ッ!向こうから酉と卯が来た!!一旦切るよ!!』

 

マグナ『了解した。負けるなよ。』

 

ヴァン『お互いにね。』

 

通信(?)を切ると、もう一度斬撃を放ち、周囲を一掃する……が、向こうから水晶のような竜と、翼を持つ蛇が降りてくる。

 

竜「ヒドイヤラレヨウダナ。」

 

蛇「我らが同志がここまでにされるとは、その力には惜しみない賛辞を送ろう。土の卿よ。」

マグナ「アメジストにティアマドー…貴様らか。」

 

アメジスト「ワルイガ、キサマハココマデダ。」

 

マドー「あぁ、我らがここで貴様を討つ!」

 

マグナ「フッ……やってみろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「──ここか!」

 

蒼を纏った馬が一頭、燃える大地を発見した。

彼の名は『エグゼシード・フォーミュラー』。

先程午の神皇の力を預かり、戦場に全速力で駆けてきた。

そこには高笑いする赤い竜を中心に同志の骸が転がっていた。

 

赤竜「こんなもんかァ!?スピリットっつーのはこんなに脆いのかァ!?」

 

F「!!……ブラムザンド、アイツか!!」

 

音速にも劣らない速さで赤い竜─獄炎の四魔卿『ブラム・ザンド』に突撃するフォーミュラー。

ブラムザンドも当然気づき、飛んで回避する。

 

ザンド「そのナリ……新しい午の十二神皇か?」

 

F「いかにも。俺は超・十二神皇エグゼシード・フォーミュラー。お前を焼く炎の名だ!!」

 

感じ取れるのは同志を殺された怒り。

ブラムザンドもそれを感じ取ったのだろう、両手に持った大剣を構えた。

 

ザンド「オレを焼く、ねぇ……はたしてその蒼い炎、俺の獄炎を払うのに足りるかな?」

 

F「その言葉、そのまま返そう。先代の神皇より受け継いだ力、存分に味わうといい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「………。」

 

「ウオォォッ!!」

 

一体の機獣が青い異形に飛びかかる。

異形が持った杖で大地を小突くと、その機獣は瞬く間に氷山の中に閉じ込められた。

 

???「うじゃうじゃ面倒じゃのう……機械の扱いには………慣れておらんでな。」

 

杖を振り上げると今度は氷の波が周辺の機獣達を閉じ込める。

この異形の名は『イル・イマージョ』。獄海を統べる四魔卿である。

 

イル「さて次は……ん?」

 

突如氷を破って侵入してきた二体の機獣。

 

一方は重砲を携えた羊、もう一方は要塞のような牛だ。

 

イル「グロリアスシープ……アバランシュバイソン……機械の奴らとはとかく面倒なのが多いのう。」

 

シープ「……。」

 

バイソン「……。」

 

イル「ほう、だんまりか……まあいい。さっさと狩らせてもらうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???×2「「──タァーッっ!!」」

 

???「──はぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

緑の不死鳥と兎の連携を鎌と風を使って捌いてく虫というには大きすぎる何者か。

この甲虫──獄風の四魔卿『ヴァンディール』は兎の神皇『ミストラル・ビット』ともう一体の超・十二神皇『ゲイルフェニックス・ゼファー』を相手取っていた。

 

ビット「くっ……巧いですね……。」

 

ヴァン「2対1じゃ力も気合いも劣っちゃうからね……なら巧さで勝負するしかないでしょ?」

 

Z「ならば──今よりも疾く、強く、そう攻めるだけだ!!」

 

ヴァン「ならこっちも少しペース上げようか!!行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──先程各地で起こった両者の邂逅から半刻程か。

 

アメジスト「ハァッ!!」

 

マドー「フッッ!!」

 

 

 

マグナ「はっ!!」

 

 

 

 

 

渾身の一合。

恐らくこれで決着が着くと思われる攻撃。

 

──倒れたのは、鎧の騎士だった。

 

 

マグナ「くっ………。」

 

マドー「ハァ……ハァ……貴様の……負けだ……。」

 

マグナ「どうやら……そのようだな……フフッ。」

 

アメジスト「ナニガ、オカシイ?」

 

マグナ「いや、何も…………ここから北に……邪神皇がいる……まだ果てていないなら、挑むがいい……。」

 

アメジスト「……フン。」

 

マドー「……さらばだ。」

 

 

2頭が飛び去る。それとほぼ同時に、獄土の四魔卿は光と共に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ほぼ同刻、炎で覆われた戦場にて。

 

ザンド「………ククッ。」

 

F「………。」

 

嗤うブラムザンド、無言でそれを見据えるフォーミュラー。しかし、ブラムザンドの体には風穴が空いていた。

 

ザンド「オイオイ……こんなんで死ぬたァ……オレも衰えてんなァ……。」

 

F「…いいや、俺とお前でぶつかり、俺に運が向いただけの事。お前は強い。」

 

ザンド「言ってくれんなァ……あとは恐らく邪神皇だけだ。せいぜい足掻きな……。」

 

そう言うと、ブラムザンドは炎に包まれて消えてしまった。

 

F「……………行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル「せいやっ!!」

 

バイソン「むんっ!!」

 

イルイマージョの攻撃をバイソンが受け止め、その後ろからシープが射撃で攻める。

バイソンの耐久力も相まって完璧な戦い方であるといえよう。

 

バイソン「………ッ。」

 

イル「……そっちの要塞は、限界っぽいのう!!」

 

イルイマージョもそのバイソンを削るだけの苛烈な攻撃を放っている。

 

バイソンとてあと十撃受け止められるか否か、程度だろう。

 

イル「お前さんが倒れればこっちの──なっ!?」

 

突如バイソンが飛びかかる。

 

イルイマージョにとっては咄嗟のことだったが、渾身の一撃を打つことでバイソンを吹き飛ばした。

 

イル「捨て身か……ッ!!もう片方は!?」

 

そう言ったときには既にシープがゼロ距離で待機していた。シープの攻撃まで数瞬───

 

 

 

 

 

イル「───ハァッ!!」

 

 

 

 

その数瞬が反撃を許すことになり、イルイマージョが魔法を飛ばす。ゼロ距離だったのが逆に災いし、至近距離で直撃する。

 

シープ「──まだッ!!」

 

 

が、シープの重砲から発射されたビームは確実にイルイマージョを捉え、貫く。

 

イル「グゥッ!!……ガハッ……。」

 

シープは当たったのを目で捉えてすぐ、機能を停止──死亡した。

 

イル「ったく……火事場の……馬鹿力とは………怖いのう………。」

 

水のように消えていったイルイマージョ。

 

異形の魔術師と鉄壁のコンビの戦いは、相討ちとなった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Z「───ッ!!」

 

ヴァン「──ッ!!」

 

声一つ聞こえない戦い。

ゼファーとヴァンディール、共に空中で満身創痍で打ち合いをしている。

 

その下には動かなくなったミストラルビットの姿があった。

 

ゼファーが一度距離を取り、最高の速度で突進してくる。ヴァンディールはそれに合わせ鎌を振りかぶり──

 

 

 

 

 

 

───互いの一閃が空に光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァン「───あぁ───負け、か──。」

 

制したのはゼファー。

ヴァンディールは空から落ちていく。

 

それを一瞥したゼファーは、振り返らずに、前を見て、

さらにその先に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F「───見つけた。」

 

Z「───ここか。」

 

いち早く邪神皇のもとに辿り付いたのは超・十二神皇の二体。

 

F「待たせたな───邪神皇デスピアズ!」

 

ピアズ「……貴様らがここに来たということは、四魔卿達はやられた、か……。」

 

Z「……それは、お互い様だ。今まで散っていった仲間達の無念、貴様の敗北をもって手向けにする!!」

 

ピアズ「そうか………。

 

 

 

 

 

─────ならば、これからの戦は互いに弔い戦となろう。貴様らが、四魔卿へ手向ける最初の血だ。」

 

 

 

 

 

互いの目的のため、互いの信念のため、

最後の戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神皇と超・十二神皇、彼らの戦い。

状況など誰が見ても分かる。

 

万全の状態で控えていた邪神皇、それに対し満身創痍の二体。

 

どちらが優勢など言うまでもない。

もっとも、たとえ彼らが万全だとして、邪神皇にその刃が届くかも怪しいが。

 

邪神皇の攻撃が二体を襲う。流石に二体とも限界なのか、避けようとも身体が動かないようだ。

 

 

 

 

 

 

だが、その攻撃は二体に届くことはなく────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────二体の前には、光を纏った、

希望という字を体現したような、

一体の魔神の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 




そう。この戦いを望んだのは彼らだ。
間違っても、いわゆる『逆恨み』などという事はしないだろう。
彼らは本気の、そして正々堂々の戦を望み、神皇達もそれに応え、真っ向から迎え撃った。
戦の形としては素晴らしいものだろう。

だが───






















───もしその戦に水を差す者が居たとして、それを彼らが知れば、どうなるだろうか?
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