東方魔卿録   作:子アオ

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第10話『集合』

 

バトルが終わり、両者が元の場所に戻ってくる。

 

デスピアズ「この通り我の勝ちだ。拘束は叶わんようだな。」

 

そう言って霊夢とエグゼシードに歩み寄ってくる。

それを見て霊夢は身構える──が、デスピアズはその横に落ちている新聞を手に取って読み始めた。

 

デスピアズ「【 妖怪の山に謎の竜と外来人 異変の前触れか 】……なるほどな。ヴァンディールめ、姿形も変わり果てておるわ。」

 

霊夢「……それはアンタも同じじゃないのかしら?」

 

デスピアズ「確かにそうだな。……さて。」

 

デスピアズは霊夢の方を振り返り

 

デスピアズ「霊夢と言ったか、そこの巫女。貴様はこれをどう取る?」

 

霊夢「……は?」

 

唐突な問いかけに思わず聞き返してしまう霊夢。

デスピアズの方はというと、ため息をついてもう一度言い直した。

 

デスピアズ「どう見るかと言っている。偶然か、何かの前兆か。ヴァンディールの自作自演という線もあるが……まああの子供にそんな芸当はできまい。」

 

霊夢「……どうも何も、判断するには情報が少なすぎるわよ。」

 

デスピアズ「それもそうか……エグゼシード、貴様はどうだ?」

 

エグゼシード「……ここに来てから1年も経っていないが、今までこんな事はなかった。なるべく早めに動いた方がいいだろう。」

 

霊夢「前々から思ってるけど、もう少しのんびりしない?」

 

エグゼシード「何かあってからでは遅いだろう。」

 

デスピアズ「喧嘩なら他所でやるが良い。」

 

霊夢「アンタがふった話題でしょうが。」

 

霊夢がデスピアズに突っ込む。ちなみにここまでのやりとりの間、エグゼシードは常に警戒を張ってデスピアズを牽制している。

 

デスピアズ「では最後に。貴様はどうだ?──そこに隠れている輩よ。」

 

デスピアズが新聞に目を向けながら誰かに問いかけると

 

 

「──流石は邪神の皇。気づかれていましたか。」

 

空間が裂け、そこから現れる1人の女性。

口元を扇子で覆い、表情を隠している。

 

霊夢「いつからいたのよ、紫。」

 

デスピアズ「大方先程のバトルが終わってからであろう。貴様がこの地の代表か?」

 

紫「いかにも。幻想郷の管理をしております。『八雲紫』と申しますわ。」

 

デスピアズ「……。」

 

デスピアズは無表情のまま紫を見据える。ナイトキャップを被って扇子を手に持った金髪の女性。

終始扇子で口元を隠し、姿勢も崩さずにデスピアズを見ている。

腹の底を隠すのは上手いな、とデスピアズは心の中で感心しながらも

 

デスピアズ「……話を戻すが、紫よ。これをどう見る?」

 

紫「……霊夢の言う通り、今はまだ情報が少なすぎます。かといって、放置していては深刻化した際に手遅れとなるかと。」

 

デスピアズ「ではどうする?」

 

紫「当事者に1度話を聞くのが最善と思われますわ。

……貴方のお仲間と一緒に。」

 

デスピアズ「ッ!?」

 

ここまで無表情を貫いていたデスピアズの表情が初めて崩れた。

デスピアズはそれをもう一度問う。

 

デスピアズ「…仲間?ヴァンディールの他にもこの地には四魔卿がいる、と?」

 

紫「えぇ。湖の近くにある紅魔館に2人、冥界に1人。私のこの目で確認していますわ。」

 

デスピアズ「……そうか。では貴様の提案通り、ヴァンディールに話を聞くとしよう。面倒故、ここに奴らを集める方が早かろう。」

 

エグゼシード「……お前、どういうつもりだ?」

 

今まで口を閉ざしていたエグゼシードがデスピアズに問う。

 

デスピアズ「どういう、とは何だ?」

 

エグゼシード「同胞以外には一切の容赦も配慮もしないお前が、何故ここの事件に首を突っ込むのかということだ。」

 

デスピアズ「……そうさな。」

 

デスピアズは空を見上げて目を閉じる。

発する言葉を選んでいるかのようにも見えた。

 

デスピアズ「……我は神皇共に負け、ここに来た。だが、最期の戦でどうにも腑に落ちない事が出来てしまってな。」

 

霊夢「……腑に落ちない?」

 

デスピアズ「あぁ。言っておくが負けたことではない……まぁ、何が腑に落ちないかは今は伏せるが。」

 

デスピアズ「その事について、何か分かるような気がしてな。いわゆる勘というやつだ。」

 

霊夢「……。」

 

デスピアズ「そういう訳だ。先程はああ言ったが、別段幻想郷に大した興味もない。貴様らに害をなすようなことはしないと約束しよう。」

 

エグゼシード「……根拠は?」

 

デスピアズ「随分と疑り深くなったな。そこまで疑うならば、監視だろうが何だろうがするがいい。」

 

そう言って神社の屋根に上がり、空を眺め始めた。

 

霊夢「監視……ねぇ。確かに見張っとけば変な事はできないでしょうけど、そんなの誰が……。」

 

そこまで言って、紫とエグゼシードの視線が自分に向いてることに気づく。霊夢はあからさまに嫌な予感を感じた。

 

紫「では、しばしの間この博麗神社に留まってもらうということで───

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

 

 

───いったぁ!?」

 

突然響く快音。紫の悲鳴。

エグゼシードは目を丸くし(カードの状態なので本当に丸くしているかは分からないが)

デスピアズも視線を咄嗟に下ろして霊夢と紫の方を見た。

どこからか取り出した大弊で霊夢が紫を引っぱたいていた。

 

霊夢「そんなこったろうと思ったわよ!何で私があんな面倒くさそうな奴の監視なんかしなきゃなのよ!」

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

 

紫「れ、霊夢。貴方は博麗の巫女なのよ。だからその役目を「煩いわね!アンタがやればいいでしょ!」痛い!ちょっと痛い!」

 

 

スパァンッ!!

 

 

紫「ちょ、だからやめてって!妖怪にはそれすっごく痛いんだか

 

 

スパァンッ!!

 

 

さっきの胡散臭さはどこへやら。何度も叩かれた紫はナイトキャップがズレて、涙目で両手を盾に身を屈めていた。

 

 

エグゼシード「れ、霊夢。その辺にしとけ。流石にやりすぎ「ア?」……。」

 

霊夢にガンを飛ばされてエグゼシードが黙る。

デスピアズにとっては意外すぎる光景だった。

 

紫「私だって他にやる事あるのよ!その新聞の事だって藍と調査を

 

 

 

スパァンッ!!

 

 

デスピアズは流石に見兼ねたのか、屋根から降りて霊夢を止めようと歩いてくる。

 

デスピアズ「身内とはいえやりすぎだ「元々アンタが来なけりゃこんな面倒な事なってないのよ!」

 

 

スパァンッ!!

 

 

頭をひっぱたかれてうずくまる。

想像の3倍ではきかないほど痛い。

 

 

結局この後霊夢が折れ、デスピアズを霊夢が監視する形となった。

エグゼシードは後に「初めてアイツに同情した」と語ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──紅魔館──

 

時刻は神社での一件から数刻ほど後のこと。

大図書館にてザンドは小悪魔の手伝いを、イルはパチュリーと話をしていると、レミリアが突然入ってきた。

 

ザンド「どうした?本でも探しに来たか?」

 

イル「この机にある本はワシらが今使ってるから駄目じゃぞ?」

 

レミリア「イルとザンドに用があるのよ。これ。」

 

ザンド「?」

 

ザンドがレミリアから紙を1枚受け取る。イルも席を立ってそれを見る。

 

ザンド「招集?」

 

レミリア「そうよ。さっき八雲紫が書斎に来てこれを渡していったわ。恐らくこの新聞のことでしょう。」

 

イルが新聞を受け取り、ほぉ、と息を漏らす。

霊夢が見ていたものと同じものだ。

 

ザンド「なるほどね。大方オレ達の監視とこの事件についての事、って感じか。」

 

イル「なるほどの。」

 

レミリア「私と咲夜、そして貴方達2人。明日の昼頃に博麗神社に向かうわ。準備をしておいてちょうだい。」

 

2人「「了解だ(じゃ)。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──白玉楼──

 

時を同じくして白玉楼の客間にて。ここには紫の式である『八雲藍』、そして幽々子、最後にマグナの3人がいた。

 

マグナ「なるほどな……妖怪の山の事件について、か。四魔卿にも招集をかけたのは何故だ?」

 

藍「それはお答えしかねます。紫様からその事については詳細をお聞きしていませんので。幽々子殿も、宜しいでしょうか?」

 

幽々子「紫が呼んだなら行かなきゃねぇ。分かったわ。明日彼を連れてそちらに行きます。」

 

藍「ありがとうございます。では私は別件がありますので、これにて。」

 

そう言うと藍は足早に席を外して、白玉楼を去っていった。

残った2人は招集の旨が書かれた紙を見る。

 

マグナ「ほかの連中まで来ていたとは意外だな。それにしても、赤い竜か。」

 

幽々子「今まで無かった事だから少し不安ねぇ。紫がこうするのも無理はないわ。」

 

マグナ「さて、明日の準備をするか。」

 

幽々子「あら、早いわね。」

 

マグナ「誰かのせいで食事を用意するのに大幅に時間を食ってしまうからな。」

 

そう言ってマグナは部屋を出た。

幽々子が戸の向こうで「何よその言い方~」と言ったのを有意義に無視して。

 

 

マグナ「どうやらここでも、何事も無く平穏にとはいかないらしいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──妖怪の山 椛宅──

 

ヴァン「……なるほど。それで、僕も来いってこと?」

 

椛「らしいですね。どうやらヴァンさんお1人でとの事らしいです。」

 

椛がそういうとヴァンはえぇー、と頬を膨らませる。

 

ヴァン「……めんどくさい。」

 

椛「行かなきゃ駄目ですよ。ここで行かないともっと面倒になりますし、第一あの竜と直接戦ったのはヴァンさんなんですから。貴方が居ないと進みません。」

 

ヴァン「……椛さんも一緒がいい「駄目です。招集されてるのはヴァンさんだけなんですから。」……はーい。」

 

机に項垂れてぶーぶーと文句を言うヴァン。

彼ホントに邪神なのかなぁ、などと椛は思いつつ。

 

椛「たっぷり蜂蜜用意しておき「ホント!?」…はい。しっかり行ってくれますね?」

 

椛の問いにものすごい勢いで首を縦に振るヴァン。

もう少しでヘッドバンキングレベルになるのではないか。

 

椛「神社までの案内はしますから、早めに準備を済ませておきましょう。」

 

ヴァン「はーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の太陽が登りきる時、かつてグラン・ロロに刃を向けた者達が一堂に会する。

 

 

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