マグナ「…………。」
妖夢「…………。」
幽々子「…………。」
沈黙の中にいる3人。
なぜこうなっているのかというと。
マグナ「妖夢。」
妖夢「はい……幽々子様?」
笑顔で幽々子に問いかける妖夢。
笑顔と言っても黒い方だが。
幽々子「な、なにかしら~?」
妖夢「そうですね。では簡単に。
──────なに朝食の食材全部つまみ食いしてるんですか!?」
そういうことだ。朝妖夢が起きて朝食の準備を使用としたところ、食材があったはずの空間とその横にいる幽々子を発見。現在事情聴取中である。
妖夢「あのですね!?百歩譲って料理の摘み食いはともかく食材を摘み食いするのはやめて下さいと何度も何度も言ってますよね!?」
幽々子「ち、違うのよ。食材さん達の『ありのままの私を食べて』って声が聞こえて
妖夢「などと言っておりますが裁判長。」
マグナ「有罪だ。柱に縛り付けておくといい。」
妖夢「わかりました。」
幽々子「女の子を緊縛するのはいけないと思います!」
マグナ「とりあえず抜けられたり切られたりせんように術式でもかけておくか。」
妖夢「いいですね。では。」
幽々子「従者が2人とも話を聞いてくれない!!」
ものの1分ほどで幽々子を縛り付け、今日の予定をどうするか相談する2人。
妖夢「どうしますか?朝食プラス異変調査。」
幽々子「ねぇ~。」
マグナ「買って作るのも面倒だ。調査の前に外で済ませよう。」
妖夢「そうですね。では行きましょうか。」
幽々子「ねぇ~!」
マグナと妖夢は幽々子を完全に無視して、白玉楼を出ていった。
幽々子「……妖夢とマグナさんのば~か……。」
マグナ「頭が痛い。」
妖夢「同感です。」
ほぼ同時のため息。妖夢は慣れているとはいえ、主の奇行にはいつも悩まされるのである。
マグナ「適当に握り飯でもよかろう。さっさと食べて調査に移るぞ。」
妖夢「はいっ。」
ここで『せっかくだからたまにはいい物を』という選択肢が出ないあたり、この2人の真面目さが良くわかるというもの。
2人は人里にておむすびを食べた後、道を徒歩で移動する。
妖夢「と言っても、手がかりらしい物が見つかるとは思えませんが……。」
マグナ「それは俺や紫、他の邪神達も理解していよう。それでもただでさえ後手に回っているのだ。やれる事をやるに越したことはない。」
妖夢「……確かに、マグナさんの言う通りですね。根気強く行きましょう!」
「そうだね!根気強く行かなきゃ!」
妖夢・マグナ「「!」」
上から声がしたので空を見上げるといつの間に居たのやら。ヴァンと椛が降りてくる。
マグナ「お前達も調査か?」
ヴァン「うん。紫さんが上に言って僕達を動けるようにしてくれてね。」
椛「というわけで、今日は懲戒任務を休んで調査に、と。」
ヴァン「ごめんね椛さん。手伝ってもらっちゃって。」
椛「気にすることありませんよ。私の意志ですし。」
マグナ「それで、そちらは何か分かったか?」
ヴァン「ダメです。」
椛「先日の竜の件があった場所の付近を探してみたんですが、特に何も見つからず……。」
妖夢「やっぱりダメですか……。」
ヴァン「このままだと探しても何も見つからなさそう……。」
マグナ「……とりあえず虱潰しに行くしかあるまい。俺と妖夢はここから北を、ヴァン達は南を頼む。」
ヴァンと椛が頷き、両組は別々の方向に向かった。
マグナ「とりあえず森の中に行ってみるか。」
妖夢「森…ですか。」
マグナ「森は暗いからな。結界などを使えば周囲に溶け込みやすい上、川に近い場所を選べば色々と困らん。」
妖夢「なるほど……詳しいんですね。」
マグナ「向こうにいた時の経験則だな。」
妖夢「やっぱり、元の世界に……とか…考えたりします?」
妖夢が少し遠慮がちに聞く。マグナは難しい表情をしながら目を伏せる。
マグナ「……さぁ、どうなのだろうな。だが、元はといえば俺達はグラン・ロロでは死者だ。戻れたとしても戻ることは無いし、許されないだろう。」
そう言って少し苦笑いを浮かべた。
妖夢「……。」
マグナ「……さ。俺の事はこれくらいにしよう。なにかあるかもしれんし、もしかしたら襲われることも有り得る。気を引き締めろよ。」
妖夢「……はい。」
話を中断し、周囲に意識を向ける。
しばらく歩いていると、1人の男性が木にもたれかかっているのを見つけた。
マグナ「……そこの者。どうされた?」
マグナが声をかけると、驚きのあまり声が裏返った。
マグナ「……大丈夫か?」
男性「あ……け…獣…。」
マグナ「獣?」
男性「あ、あぁ……ゴツゴツした細い獣に襲われそうに……なって……なんとか……隠れてたんだ…。」
妖夢「その獣はどの方角に?」
男性「え……多分……み、南に……。」
マグナ「……分かった。感謝する。お前は人里の人間だな?1人で歩いて帰れるか?」
男性「あ、あぁ……もう大丈夫だ……あんちゃん達も気ぃつけな……。」
男性はそう言うと、思い足取りでその場を去っていった。
妖夢「……マグナさん。」
マグナ「あぁ……恐らくその獣と会う可能性も高い。ヴァン達を追うぞ。」
一方ヴァンと椛。2人は予定通り南に向かって森を歩いていた。マグナ達とあった時とは違い、会話はない。
ヴァン「……。」
椛「……。」
ヴァンは常に辺りを見回しており、一言も話さない。椛はそれを不思議に思った。
椛(いつもは彼からよく話しかけてくるのに……すごい集中してる……。)
ヴァンを見習って椛も周囲に意識を向け直そうとする。その直後、ヴァンが急に立ち止まった。
ヴァン「……南東に人っぽい何かがいる。その少し近くにもう1つ何か。こっちはよくわかんないな……。距離は50ってとこか…。」
椛「え、分かるんですか?」
ヴァン「なんとなくだけどね。伊達に向こうで指揮とってなかったし……そんなことより、急ぐよ!」
そう言うとヴァンは走り出した。初速から相当なスピードだ。椛も慌てて追いかける。
ヴァン(人の方にもう一方の奴が近づいてく!)
そういうとさらにスピードを上げる。
椛「ちょっ!?」
椛はついていけず、どんどんと離されていく。
進んでいくヴァンの目に映ったのは、帽子をかぶった1人の少女と全身が装甲で覆われた獣。スピリットだというのはひと目見てわかった。
獣が少女に飛びかかる。そして、その爪が少女を切り裂く───
───ことはなく、獣が地面に落ちる頃には真っ二つになっていた。
ヴァン「危なかった!大丈夫です「あら、ヴァンさんじゃないありませんか。こんなところで会うとは。」あれ?」
少女が帽子を取ると、ヴァンの見知った顔が。
ヴァン「文さん?」
文「はい。清く正しい射命丸文です。
ところでヴァンさん、私相手にカッコつけるよりも椛にカッコつけた方がいいと思いますよ?あれくらいどうにでもできますし。」
ヴァン「お、大きなお世話だよ……ところで、なんでこんな所に?」
文「えぇ、それが……」
文が自分がここにいる訳を話そうとした瞬間、もうひとつの声が聞こえてくる。
椛「ちょっ…はっ…はっ……はぁ……も~、速すぎですよぉ……文さんじゃないんですから……。」
椛だ。ヴァンは置き去りにしたのをすっかり忘れていたのか、慌てて謝る。
ヴァン「ご、ごめん…」
椛「ホントにもう……あ、文さん。」
文が居るのにようやく気づいたようで、文にも声をかける。
文「私はついでかなにかでしょうか?」
椛「そ、そういうわけでは……。」
ヴァン「ハハ……それで、文さんはなんでここに?」
文「あぁ、そうでしたね。まあ簡単に言えば新聞のネタ探しです。」
ヴァン「そういうことなら納得だね……それにしても……。」
ヴァンは先程自分が斬った獣の死骸、いや残骸を見る。
椛「…スピリット、ですか?」
ヴァン「うん。でもこんな奴見たこと「なんだ。もう狩ってしまっていたか。」!」
ヴァンが振り向くと、そこにはマグナと妖夢が。
マグナ「目撃情報を聞いてこちらに来たが……ふむ、コイツもスピリットのようだな。」
ヴァン「でも、僕達が見たことないのって相当最近のか僕達より昔に生きていた奴になるけど……。」
マグナ「……神皇共に聞いてみるか。写真にできればいいのだが……。」
文「私がやりましょう。」
ヴァン「さっすが!」
文が写真を取っている間、4人での話が始まる。
妖夢「やっとそれらしいものが見つかりましたね……。」
ヴァン「だね……あの残骸は紫さんに渡して、僕達は紅魔館と博麗神社にそれぞれ向かおうか。」
マグナ「なら博麗神社の方は俺達が行こう。」
椛「では私達は紅魔館に、ですね。」
文「写真、撮れましたよ。」
ヴァン「ありがとー!じゃ、行こうか。文さんはどうする?」
文「そうですね…ヴァンさん達にご同行させて頂きましょうか。」
妖夢「決まりですね。」
マグナ「なら、さっさと見せに行くとしよう。」
そう言って、5人はそれぞれの方向に飛んでいった。