東方魔卿録   作:子アオ

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第18話『進む行く末』

デスピアズ「特に収穫なし……か。」

 

霊夢「上手く運ばないものねぇ…。」

 

博麗神社に戻ってきた霊夢とデスピアズ。

会話からするに結果は良くなかった模様。

 

デスピアズ「敵の居場所さえ分かればなんということもないのだがな。」

 

霊夢「それが分からないから苦労してんでしょ……ん?」

 

霊夢が空を見上げると、2つの影が降りてくる。

 

デスピアズ「何の用だ?マグナ。」

 

マグナ「お前に用があるわけではない。霊夢、エグゼシードは起きているか?」

 

霊夢「…は?」

 

妖夢「マグナさん、説明飛ばし過ぎですよ……。」

 

マグナのあまりにも唐突な切り出しに苦笑いする妖夢。

妖夢はマグナに変わって説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「なるほどねぇ…。」

 

デスピアズ「これは……我も見たことがないな。」

 

マグナ「ダメか……。」

 

写真を見る霊夢とデスピアズ、そして2人の言葉を聞いてため息をつくマグナ。

マグナはデスピアズならもしや、と考えていたらしい。

 

妖夢「となると、後はエグゼシードさんだけでしょうね…。」

 

霊夢「そうね……おーい。起きてるかー?」

 

霊夢がエグゼシードのカードを取り出し、呼びかける。

2、3度声をかけると、カードが赤く光った。

 

エグゼシード「……なんだ霊夢。人が、いや馬が寝てる時に。」

 

霊夢「異変に関することでアンタに聞きたいことがあんのよ。」

 

エグゼシード「……なんだ?」

 

声色が変わる。妖夢はそれを聞いて驚いたのか変な声をあげ、デスピアズとマグナは相変わらずだな、と笑をもらす。

 

霊夢「えっと……この写真の奴なんだけど、見たことあるかしら?」

 

霊夢に見せられた写真をまじまじと見つめること十数秒

 

 

エグゼシード「……ないな。」

 

マグナ「ダメか…「でも。」ん?」

 

エグゼシード「全くと言っていいほど見覚えがない。」

 

デスピアズ「ふざけたジョークをほざくなら叩き割るぞ?」

 

妖夢「それはあんまりでは……。」

 

エグゼシード「話を最後まで聞けよ……見覚えがないってのはな。見覚えが『無さすぎる』ってことだ。」

 

霊夢「ごめん、アンタの言ってることが全然意味わかんない。」

 

エグゼシード「まあ、だろうな……まずコイツは恐らく機獣だ。」

 

デスピアズ・マグナ「「だろうな。」」

 

妖夢「思いっきり機械ですもんね…。」

 

エグゼシード「でも、こんなタイプの奴は知らない。」

 

霊夢「タイプ?」

 

マグナ「……なるほどな。」

 

霊夢が首を傾げる一方、マグナは納得したようにつぶやく。

 

エグゼシード「機獣ってのは白の世界のスピリットだ。白の世界に居る奴らは大体が機獣や武装、機人なんだが…。」

 

マグナ「これの同型機を見たことがない。」

 

エグゼシード「そういうことだ。」

 

妖夢「……どういう事ですか?」

 

デスピアズ「命とはいえ白のスピリットは機械だ。1つの機械が生まれるためには、その前の旧型、もしくは派生型というのが無ければならん。」

 

エグゼシード「で、今まで見た奴らはもちろん、本で見た奴らのどこにも、コイツのような形状や装甲をしたスピリットを見たことがない。」

 

霊夢「……完全に新しい奴か、よっぽど昔の奴か。」

 

マグナ「だな……。」

 

エグゼシード「幻想郷のシステム上全くの新型が来る可能性は少ない。そしてお前等邪神も知らないとなると……旧時代直後のスピリットだろうな。」

 

妖夢「マグナさん達と時代の直後……ですか?」

 

エグゼシード「その辺りの時代は明確な記述も痕跡もない。何せロロ様が『作り替えてしまった』からな。」

 

1度グラン・ロロが崩壊間際にまで行った際、ロロの英断によって新しい世界に塗り替えられた。

本当に『塗り替えられて』しまったため、今その直前の事を知ることはほとんど不可能に近いのだ。

 

マグナ「だがそれが分かっても大した収穫には…「充分だ。」?」

 

デスピアズがマグナの言葉を否定した。

全員がその方向を向くと、目を閉じて何かを思案するように言葉を紡ぐ。

 

デスピアズ「最悪のケースを想定する必要が出てきた。霊夢、我は明日から少々ここを留守にする。」

 

霊夢「…いきなりね?まあいいけど…。」

 

デスピアズ「マグナ、そして妖夢よ。ご苦労だった。今日はもう帰るといいだろう。日も落ちてきたしな。」

 

そう言ってデスピアズは神社の中に入っていく。

霊夢がどうしたのかと聞けば、『寝る』とだけ言ってそのまま戻って言った。

 

エグゼシード「どうしたんだ?アイツは。」

 

マグナ「さぁな。だがあいつがあのようになった場合はやりたいようにさせておけ。下手に手を出しても邪魔になるだけだ。」

 

霊夢「へぇ…随分と信頼してるのね?」

 

霊夢がマグナに言うと、マグナはまたため息をつきながら

 

マグナ「傲慢で自尊心が高く、周りをよく振り回すような奴だが……最後まで付き合ってやれば大抵はいい結果を持ってくる。

暴君の皮を被った名君だ。」

 

エグゼシード「そのおかげでこっちは飛んだ迷惑だったがな。」

 

マグナ「ハハハハ!敵対してしまった以上は仕方あるまい。……さて、俺たちも白玉楼に戻るとするか。」

 

妖夢「そうしましょうか。では霊夢さん。何かありましたらまた。」

 

霊夢「えぇ。またね。」

 

挨拶を交わして、妖夢とマグナは神社から飛び去った。

 

霊夢「……さて。」

 

2人が見えなくなったのを確認して、霊夢も神社の中に入る。

 

霊夢(今回の件は紫に報告ね。1歩にも満たないかもしれないけど、しっかりと前身てる。解決も時間の問題……になればいいけど。)

 

明かりの消えた部屋を除くと、デスピアズが既に寝ていた。

 

霊夢「…はやいわねぇ。相変わらず。」

 

霊夢はすぐに戸を閉めて台所に向かう。

そして食事の準備を始めた。

 

霊夢「……ねぇ、エグゼシード。」

 

唐突にエグゼシードに声をかけると、返事が返ってくる。

 

エグゼシード「どうした?霊夢。」

 

霊夢「今回の件だけど……アンタにはどう見える?」

 

エグゼシード「……どう、ってのは?」

 

霊夢「直感的に何か感じるか…ってとこかしら?」

 

エグゼシード「例えが分かりにくいが……そうだな。

……面倒にはなりそうな気はするな。」

 

霊夢「面倒……ね。」

 

エグゼシード「嫌な予感という程ではないんだけどな。ただ、何かあるような気はする。」

 

霊夢「ふぅん……誰かが死ぬ、とか?」

 

エグゼシード「縁起でもないことを言うな霊夢。

第一───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

魔理沙「──っと。着いたついた。あの二人に付き合ってたら思いの外遅くなっちまったぜ。」

 

霊夢とデスピアズと分かれて家に戻ればもう夕方。

久しぶりに外に出て、さらに何時間も移動しっぱなしだったからな。流石に疲れた。

 

速攻風呂に入って今日はさっさと寝るか、なんて思いながら玄関の戸を開け、中に入る。

 

物が沢山置いてある部屋に愛用の箒を置いて、風呂を沸かしに行こうと戻る。

 

「風呂なら沸かしてあるよ。パパっと入っちまいな。」

 

魔理沙「お、助かるぜ。」

 

手間が省けた。さっきの男の言う通りパパっと入って────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「───ッ!?誰だ!?」

 

「気づくの遅くね?」

 

 

あまりにも自然すぎて気づかなかった。

いつの間にか椅子に座って紅茶を飲んでいる、銀髪に白い服を纏った男はケラケラと笑って

 

「おかえり魔理沙ちゃん。なんなら飯も作っとこうか?」

 

魔理沙「女の子の家に無断で上がるなんてデリカシーの無い奴だぜ。」

 

反射的に軽口を叩く。この時は自分の癖に少々感謝した。

男は一瞬面食らったような顔をした後、紅茶を飲み干し、椅子から立ち上がってこちらに歩いてくる。

 

またもや反射的に右足が1歩下がると──

 

「あ、地雷乙。」

 

魔理沙「は?なに言って──ッ!?」

 

足元から何かが収束するような音が聞こえ、下を向くと右足が鎖のような物に縛り付けられていた。しかも右足どころか首以外が動かない。

 

「いやー、やっぱかけた罠に人がひっかかるって楽しいね。地雷と罠っていい文明。失敗もするけど、その失敗もむしろ楽しい。」

 

魔理沙「……何モンだ?」

 

「おっと、これは失礼。美少女に名乗りもしないで近づくなんて無礼千万さね ───俺っちは『フェン』って呼ばれてる。出身はグラン・ロロで……今回の騒動の黒幕の仲間さ。」

 

フェンと名乗った男は軽薄な話し方で自己紹介を終えると、至近距離まで近づいてきた。

 

フェン「動け……ないよね。」

 

魔理沙「何しに来た……!!」

 

フェン「可愛い子がそんな顔しちゃ台無しだぜ?順を追って説明するからちょいと待ちな。」

 

フェン「んー……まずは目的からだな。簡単に言うと、俺っち等はここに神皇の奴らを殺しに来たんだ。」

 

魔理沙「エグゼシードとウロヴォリアスを…!?」

 

フェン「そ。でも2体とも幻想郷では名のある人にお世話んなってるから下手に手が出せない。周りの奴らまで敵にしちゃうし。幻想郷ごと焼くのもアリだけど、平和主義な俺っち達はそんな事したくないしね。」

 

こんな事しといて平和主義か。どの口が言うんだか。

 

フェン「で、そんな風に悩んでる時に発見したのが魔理沙ちゃん、君だ。」

 

魔理沙「……まさか…?」

 

フェン「さっすが。察しいいね───

 

 

 

 

──そう。君にエグゼシードを殺してほしいんだよ。」

 

魔理沙「……!!」

 

エグゼシードを殺す。

霊夢の相棒であるアイツを。

 

…そんなのできるわけない。

 

魔理沙「断る。出直してきな。」

 

フェン「ハハ、知ってた。──でもまあ、そうすると困るよね。お互いに。」

 

魔理沙「困る…?」

 

フェン「うん。さっきも言ったけど幻想郷には手出したくないわけ。でも幻想郷側はあの2体を売るなんてしないでしょ?」

 

その通りだ。レミリアも霊夢も、そんな薄情な奴じゃない。

 

フェン「でもそうするとうちのボスが最終手段に出ちゃうわけよ。──幻想郷ごと、って奴ね。そうすると……まあ、みーんな死ぬよね?」

 

魔理沙「……!!」

 

コイツ……!!

 

フェンはわざとらしい表情で私を見遣ると、いきなり銃を出現させ、私の額に当てがった。

 

フェン「ちなみにボスはグラン・ロロぐらいなら寝起きに半壊できる程にはヤバくてね。こないだも十二神皇達とやり合った時に圧勝しちゃったし。」

 

魔理沙「な…!?」

 

グラン・ロロの守護者たる十二神皇に圧勝。

エグゼシードから神皇の強さは聞いているので、それがどれだけヤバい事かは私にも分かった。

発言の真偽は分からないが、言い方と声色からして嘘をついてると断ずるには難しい。

 

フェン「まとめると、ここで君が動いてくれないと幻想郷壊滅しちゃうわけですよ。

そういうのも踏まえてもっかい聞くから、しっかり選んでね───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ここで意地張って皆と一緒に死ぬ?

 

 

──それともほんの一時だけ悪者になって皆を守る?

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……………私……は………。」

 

今私はどんな顔をしてるだろうか。

怯えているだろうか。

絶望しているだろうか。

 

ふと、夕焼けの光が差し込んでくる。

それがフェンの持つ表情の無い銃に反射し、朱と白の光が目に入ってきた。

 

与えられた選択肢。そのそれぞれの未来を示すように。

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