東方魔卿録   作:子アオ

26 / 35
第24話『吐け。泣け。』

 

─────ん……?

 

 

「やっと起きたか。今はあまり動かぬ方がいい。」

 

………?

 

霊夢「ピア……ズ……?」

 

意識が段々覚醒してきて、私は自分の現状を把握する。

今、私は普段から使っている布団に寝ていた。

 

霊夢「あれ……なんで……。」

 

そこまで言って、先程起こった出来事がフラッシュバックする。

そうだ……アイツが、魔理沙が───

 

 

 

布団から思いきり体を起こすと、全身を痛みが襲う。

先程よりはいくらかマシだが、また布団に倒れ込んでしまった。

 

デスピアズ「思い出したか……。」

 

霊夢「あ……ピアズ……わた、し……。」

 

デスピアズ「………。」

 

霊夢「魔理沙、が、きて、それ、で……。」

 

声が震えているのが分かる。頭では分かってしまっているのに、なのに

 

 

霊夢「あ、アイツ、が……エグゼ「言うな……口にするだけでも苦痛だろう。」

 

デスピアズは目を伏せたまま何も言わずに座っていたが、私の言葉を遮って口を開いた。

 

デスピアズ「帰ってくれば貴様が倒れていて、何事かと思ったぞ……今の言葉から察するに、魔理沙と何かあったのだな?」

 

霊夢「……あいつに、突然バトルフィールドに、連れ込まれて、それ…で……。」

 

デスピアズ「……。」

 

霊夢「あいつが、変な奴に、乗っ取られて、エグゼ、シードが……。」

 

デスピアズ「……そういう事か。」

 

デスピアズ「……霊夢。」

 

霊夢「……?」

 

デスピアズ「泣け。」

 

霊夢「……え?」

 

泣け、と。いきなり何を言い出すのかと思えば──

 

霊夢「な、泣け……って…?」

 

デスピアズ「……そのようなことがあって、辛いなどという言葉では到底済むまい。今でもそれを認めたくないだろう。」

 

デスピアズ「だが、耐えるな。今耐えて苦痛を飲み込んだとしても、自らの心身に毒を盛るだけだ。」

 

霊夢「……え」

 

デスピアズ「耐えるな。飲み込むな。辛いなら吐け。泣け。」

 

霊夢「……う…。」

 

デスピアズ「今の我に何が出来るでもないが、貴様に壊れられるのは望むところではない。

………此度は特別に、受け止める程度のことはしよう。」

 

なによそれ。そう言いたかった。でも──

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「──うっ……ひぐっ……。」

 

口が言葉を発しない。視界がぼやけて何も見えなくなる

 

その随分と上から目線な物言いはなによ。邪神の皇だかなんだか知らないけど、それが居候の態度なの?

 

霊夢「うぐっ…ううっ……あぁぁ……!」

 

慰めるにしたってもっと言い方あるじゃない。

 

ばか。ばかばかばか。

 

ピアズの、ばか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスピアズ「……もういいのか?」

 

霊夢「……うん。」

 

デスピアズ「そうか。」

 

半刻程だろうか。それだけずっと泣き明かしてしまえば涙も枯れよう。

こいつに慰められたのは癪だけど。

 

霊夢「……どういう風の吹き回しよ。」

 

デスピアズ「む?」

 

霊夢「慰めるなんて、アンタのすることじゃないでしょ。」

 

目が真っ赤であろう事は分かるので、デスピアズのいる方と反対方向に顔を向けながら問いかけた。

 

デスピアズ「我に慰められるのは癪か?」

 

霊夢「……そうよ。」

 

全くだ。なんでこんなのに慰められなければならないのか。

 

デスピアズ「癪、と言われてもな。貴様、誰かの死を見るのは初めてだろう?」

 

霊夢「……だからなによ。」

 

またコイツは遠慮も何も知らんとばかりにストレートにものを聞いてくる。

それでもまだ落ち着いてられるのは、先ほど泣ききってしまったからだろうか。

 

デスピアズ「なら我がああ言わなければ、どうすればいいか分からなかっただろう?」

 

霊夢「……!」

 

背中を針で刺されるような感覚が襲う。

そうだ。コイツに泣けって言われなかったら───どうしてたんだろ。

 

デスピアズ「そういうことだ。何事も1度目は何をすればいいか、自分は今どうなっているかわかる試しもなし。」

 

霊夢「……ふん。」

 

デスピアズ「……まぁ、噛み砕いて言えば、我とて同居人の身は少なからず案じるという事だ。」

 

霊夢「……アンタ。」

 

デスピアズ「……さて、話を変えよう。とりあえず今後はしばらく貴様は神社を出られない。無論我もな。最低限怪我がマシになるまでは、だ。どうしても外に行かねばならん時は我に言え。ついていく。」

 

霊夢「いきなり勝手に………傲慢なんだか、お節介なんだが。」

 

デスピアズ「なんとでも言うがいい。何にせよ、我が良しと判断するまでは1人での行動は許さんぞ。」

 

霊夢「……わかったわよ。」

 

上からの物言いなのは相変わらずだが、私の事を考慮してくれてるのはわかった。

 

デスピアズ「1ついいか?」

 

霊夢「…なによ。」

 

デスピアズ「魔理沙を乗っ取ったという輩だが、名は名乗っていたか?」

 

霊夢「名前……?」

 

名前……あれ、なんだっけ……確か──

 

霊夢「──スフィン・クロス……確か、そんな名前だった気がするわ。」

 

デスピアズ「……やはりか。」

 

霊夢「やはり?」

 

デスピアズ「今朝、我が留守にしていたのは?」

 

霊夢「……知ってるわよ。にしてもなんであんな早くから?」

 

デスピアズ「脅迫状のようなものが届いてな。それで妖怪の山に向かった。そこで、敵の主犯格と見れる輩達に出くわしたのだ。」

 

霊夢「……続けて。」

 

デスピアズ「その者と交戦した時、『インフィニット・ヴォルス』という名の白のスピリットを使ってきた。」

 

霊夢「……スフィンクロスは黄色のスピリットだったわ。2体の属性は違うわよ?」

 

デスピアズ「虚神。それが奴らの共通点だ。」

 

霊夢「……虚神?」

 

デスピアズ「我ら邪神と同様古くからある神の一種。世界を崩壊させる程の力を持つ、我から見ても規格外としか言いようのない存在だ。」

 

霊夢「そんな奴が幻想郷を……!?」

 

いきなりスケールの大きい話を切り出されては戸惑ってしまう。

デスピアズは続ける。

 

デスピアズ「我らが見たクロスとヴォルスは虚神の親の分体に過ぎん。奴は各属性の分体を1つずつ体に収めている。」

 

霊夢「……。」

 

デスピアズ「今朝の件と、魔理沙の件、このふたつで確信が持てたな。」

 

霊夢「……でも、アンタからでもバケモノに見えるような奴、どうしろってのよ……?」

 

神皇12体と渡り合った邪神軍の力は想像できる。

その大将であるコイツがバケモノと評する神。

 

落ち着いた今だからこそ、そんなものが幻想郷の力でどうにか出来るのか不安になってきた。

 

デスピアズ「そうさな……手立てはないが……やれるだけのことはできよう。」

 

霊夢「?」

 

デスピアズ「霊夢。1つ頼みがある──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────八雲紫を呼んでくれ。」

 

 

 

……紫?なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「……事情はわかったわ。ごめんなさい、霊夢……私がしっかりしていれば……。」

 

霊夢「……仕方ないでしょう。」

 

紫「でも……。」

 

霊夢「……私はもう大丈夫だから。どこかの邪神様がお節介を焼いてくれ「して、八雲紫よ。霊夢に貴様を呼ばせたのは折り入って頼みがあるからだが。」」

 

露骨に遮ってきたわね……。

別にからかおうってわけじゃないってのに。

 

紫「頼み……?」

 

デスピアズ「そうだ。その出来次第では奴らに一泡吹かせる事が出来るやもしれん。」

 

紫「内容にもよるけども……その頼みっていうのは?」

 

デスピアズ「何、貴様ならそこまで骨でもなかろう───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────。それだけだ。」

 

 

紫・霊夢「「…………はぁ?」」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。