─────ん……?
「やっと起きたか。今はあまり動かぬ方がいい。」
………?
霊夢「ピア……ズ……?」
意識が段々覚醒してきて、私は自分の現状を把握する。
今、私は普段から使っている布団に寝ていた。
霊夢「あれ……なんで……。」
そこまで言って、先程起こった出来事がフラッシュバックする。
そうだ……アイツが、魔理沙が───
布団から思いきり体を起こすと、全身を痛みが襲う。
先程よりはいくらかマシだが、また布団に倒れ込んでしまった。
デスピアズ「思い出したか……。」
霊夢「あ……ピアズ……わた、し……。」
デスピアズ「………。」
霊夢「魔理沙、が、きて、それ、で……。」
声が震えているのが分かる。頭では分かってしまっているのに、なのに
霊夢「あ、アイツ、が……エグゼ「言うな……口にするだけでも苦痛だろう。」
デスピアズは目を伏せたまま何も言わずに座っていたが、私の言葉を遮って口を開いた。
デスピアズ「帰ってくれば貴様が倒れていて、何事かと思ったぞ……今の言葉から察するに、魔理沙と何かあったのだな?」
霊夢「……あいつに、突然バトルフィールドに、連れ込まれて、それ…で……。」
デスピアズ「……。」
霊夢「あいつが、変な奴に、乗っ取られて、エグゼ、シードが……。」
デスピアズ「……そういう事か。」
デスピアズ「……霊夢。」
霊夢「……?」
デスピアズ「泣け。」
霊夢「……え?」
泣け、と。いきなり何を言い出すのかと思えば──
霊夢「な、泣け……って…?」
デスピアズ「……そのようなことがあって、辛いなどという言葉では到底済むまい。今でもそれを認めたくないだろう。」
デスピアズ「だが、耐えるな。今耐えて苦痛を飲み込んだとしても、自らの心身に毒を盛るだけだ。」
霊夢「……え」
デスピアズ「耐えるな。飲み込むな。辛いなら吐け。泣け。」
霊夢「……う…。」
デスピアズ「今の我に何が出来るでもないが、貴様に壊れられるのは望むところではない。
………此度は特別に、受け止める程度のことはしよう。」
なによそれ。そう言いたかった。でも──
霊夢「──うっ……ひぐっ……。」
口が言葉を発しない。視界がぼやけて何も見えなくなる
その随分と上から目線な物言いはなによ。邪神の皇だかなんだか知らないけど、それが居候の態度なの?
霊夢「うぐっ…ううっ……あぁぁ……!」
慰めるにしたってもっと言い方あるじゃない。
ばか。ばかばかばか。
ピアズの、ばか。
デスピアズ「……もういいのか?」
霊夢「……うん。」
デスピアズ「そうか。」
半刻程だろうか。それだけずっと泣き明かしてしまえば涙も枯れよう。
こいつに慰められたのは癪だけど。
霊夢「……どういう風の吹き回しよ。」
デスピアズ「む?」
霊夢「慰めるなんて、アンタのすることじゃないでしょ。」
目が真っ赤であろう事は分かるので、デスピアズのいる方と反対方向に顔を向けながら問いかけた。
デスピアズ「我に慰められるのは癪か?」
霊夢「……そうよ。」
全くだ。なんでこんなのに慰められなければならないのか。
デスピアズ「癪、と言われてもな。貴様、誰かの死を見るのは初めてだろう?」
霊夢「……だからなによ。」
またコイツは遠慮も何も知らんとばかりにストレートにものを聞いてくる。
それでもまだ落ち着いてられるのは、先ほど泣ききってしまったからだろうか。
デスピアズ「なら我がああ言わなければ、どうすればいいか分からなかっただろう?」
霊夢「……!」
背中を針で刺されるような感覚が襲う。
そうだ。コイツに泣けって言われなかったら───どうしてたんだろ。
デスピアズ「そういうことだ。何事も1度目は何をすればいいか、自分は今どうなっているかわかる試しもなし。」
霊夢「……ふん。」
デスピアズ「……まぁ、噛み砕いて言えば、我とて同居人の身は少なからず案じるという事だ。」
霊夢「……アンタ。」
デスピアズ「……さて、話を変えよう。とりあえず今後はしばらく貴様は神社を出られない。無論我もな。最低限怪我がマシになるまでは、だ。どうしても外に行かねばならん時は我に言え。ついていく。」
霊夢「いきなり勝手に………傲慢なんだか、お節介なんだが。」
デスピアズ「なんとでも言うがいい。何にせよ、我が良しと判断するまでは1人での行動は許さんぞ。」
霊夢「……わかったわよ。」
上からの物言いなのは相変わらずだが、私の事を考慮してくれてるのはわかった。
デスピアズ「1ついいか?」
霊夢「…なによ。」
デスピアズ「魔理沙を乗っ取ったという輩だが、名は名乗っていたか?」
霊夢「名前……?」
名前……あれ、なんだっけ……確か──
霊夢「──スフィン・クロス……確か、そんな名前だった気がするわ。」
デスピアズ「……やはりか。」
霊夢「やはり?」
デスピアズ「今朝、我が留守にしていたのは?」
霊夢「……知ってるわよ。にしてもなんであんな早くから?」
デスピアズ「脅迫状のようなものが届いてな。それで妖怪の山に向かった。そこで、敵の主犯格と見れる輩達に出くわしたのだ。」
霊夢「……続けて。」
デスピアズ「その者と交戦した時、『インフィニット・ヴォルス』という名の白のスピリットを使ってきた。」
霊夢「……スフィンクロスは黄色のスピリットだったわ。2体の属性は違うわよ?」
デスピアズ「虚神。それが奴らの共通点だ。」
霊夢「……虚神?」
デスピアズ「我ら邪神と同様古くからある神の一種。世界を崩壊させる程の力を持つ、我から見ても規格外としか言いようのない存在だ。」
霊夢「そんな奴が幻想郷を……!?」
いきなりスケールの大きい話を切り出されては戸惑ってしまう。
デスピアズは続ける。
デスピアズ「我らが見たクロスとヴォルスは虚神の親の分体に過ぎん。奴は各属性の分体を1つずつ体に収めている。」
霊夢「……。」
デスピアズ「今朝の件と、魔理沙の件、このふたつで確信が持てたな。」
霊夢「……でも、アンタからでもバケモノに見えるような奴、どうしろってのよ……?」
神皇12体と渡り合った邪神軍の力は想像できる。
その大将であるコイツがバケモノと評する神。
落ち着いた今だからこそ、そんなものが幻想郷の力でどうにか出来るのか不安になってきた。
デスピアズ「そうさな……手立てはないが……やれるだけのことはできよう。」
霊夢「?」
デスピアズ「霊夢。1つ頼みがある──
────八雲紫を呼んでくれ。」
……紫?なんで?
紫「……事情はわかったわ。ごめんなさい、霊夢……私がしっかりしていれば……。」
霊夢「……仕方ないでしょう。」
紫「でも……。」
霊夢「……私はもう大丈夫だから。どこかの邪神様がお節介を焼いてくれ「して、八雲紫よ。霊夢に貴様を呼ばせたのは折り入って頼みがあるからだが。」」
露骨に遮ってきたわね……。
別にからかおうってわけじゃないってのに。
紫「頼み……?」
デスピアズ「そうだ。その出来次第では奴らに一泡吹かせる事が出来るやもしれん。」
紫「内容にもよるけども……その頼みっていうのは?」
デスピアズ「何、貴様ならそこまで骨でもなかろう───
──────────。それだけだ。」
紫・霊夢「「…………はぁ?」」