「───。」
魔法の森の中にある建物。言うまでもなく魔理沙の家である。
魔理沙は居間の椅子に座り、ただただ呆然としていた。
魔理沙(………私……が……。)
魔理沙(私が……アイツを……。)
魔理沙(いや、違う……殺したのは私じゃない……でも…。)
魔理沙(原因を作ったのは私……なんだ?私が悪かったのか?スフィンクロスが悪かったのか?)
家に戻った後スフィンから身体の支配権を戻された魔理沙は、ここ2時間ほどずっとこのように自問を繰り返している。
魔理沙「私は───」
『───7813秒。いつまで自問自答をしているつもりだ?いや、答えがない以上ただの自問か。』
突然自分の脳内に声が響く。先程まで自分の身体を乗っ取っていたスフィンクロスの声だ。
スフィン『答えの見えない問題をいくら考えたところで無駄というものよ。あるのは【余が】、【貴様を乗っ取り】、【エグゼシードを殺した】。その事実のみだ。』
魔理沙「………ッ。」
魔理沙の歯が軋む。歯にヒビが入るのではないかと思うほど、思いきり歯を食いしばっていた。
スフィン『なに、案ずる事は無い。事が済めば貴様もあの巫女も、幻想郷の住民全て。此度の一連の事も、神皇共の事も、グラン・ロロの事も忘れて元の日常に戻るだろうさ。』
魔理沙「ッッ!!」
魔理沙の限界が来た。突然椅子から立ち上がって叫んだ。
魔理沙「何が元の日常だよ!!!忘れたって何したってアイツが死んだ事は変わらないじゃないか!!」
スフィン『覚えていなければ元から無かったも同然であろう?』
魔理沙「そういう問題じゃねぇ!!お前がッ…!!お前のせいで……!!!」
スフィン『責任を余に求めるか。確かに貴様は余の器になっているというだけ。さらにフェンが貴様の選択肢を無理矢理1つに絞った。貴様に責任が求められる道理ではなかろう。』
スフィン『だが、どの道今は貴様の身体はいつでも我が乗っ取ることができる。黙って従うしか貴様には選択肢が無いのだよ。』
魔理沙「………ッ。」
魔理沙は再び椅子に崩れるように座ると、頭を抱えた。
魔理沙「……なんなんだよ………お前もあのフェンって奴も……。」
魔理沙「なんで私なんだよ……なんでエグゼシード達を狙ったんだよ……お前らも……あっちの住民だろ……なんで、なんでアイツを……。」
スフィン『フン────あのような世界など、ただの三文芝居よ。あそこに住む者共も、神皇などというお飾りの名を冠し、守護者を気取る奴らも、全て茶番だ。』
スフィン『グラン・ロロに意味など無い。幾多の危機を経ても何も学ばず、正義というエゴを互いにぶつけ合う世界よ。』
魔理沙「………。」
スフィン『無価値。それがあの世界の名だ。見える標を蹴飛ばし、必要の無い争いに明け暮れる。
あの世界に意味は無い。これは旧世界からグラン・ロロを見てきた我ら虚神の総意だ。』
魔理沙「……勝手が過ぎるだろ。」
スフィン「言いたければ言うがよい。幾星霜もの時と試行を経て導いた結論、貴様等にはどの道分かるまい。」
魔理沙「………そうかよ。」
「話してるとこ悪いねぇ。お迎えに上がりましたよ、ってね。」
魔理沙が玄関の方を見ると、そこには銀髪の男──フェンが居た。
フェン「その様子だと成功したっぽいな。俺っち的には失敗しても面白かったけど?」
魔理沙「……。」
フェン「あと、しばらく魔理沙ちゃんはしばらくスフィン様に身体渡しとくのをオススメするぜ。どうせ逆らえないんだから抵抗しても痛いし苦しいモン見るだけ………ってあれ?聞こえてる?」
魔理沙「……。」
フェンが呼ぶが、魔理沙は答えない。顔を覗き込んでみるが、意識が無いわけではなさそうだった。
魔理沙「……ぃだ。」
フェン「なに?ちょっと声ちっちゃくて聞こえn「お前のせいだッ!!!お前が!お前がァ!!」っと…。」
魔理沙はフェンの胸ぐらを両手で掴んで、声を上げる。
目からは涙が流れていた。
フェン「───。」
魔理沙「私が何したってんだよ!なんで……なんでこんな事私が「あー…うるさい。」何だと!?」
フェン「うるさいねぇ───しばらく沈んどいてくんない?」
魔理沙「え……?」
次の瞬間、魔理沙の視界が歪んだ。
魔理沙「ぁ……なに……を。」
フェン「さっさと出てきてくれよスフィン様。めんどいったらありゃしねぇ。」
魔理沙「な……お……ま……
魔理沙はそのまま意識を手放した。
フェン「はぁ……自棄になった女の子は見てて心が痛むぜ。やれやれ。」
スフィン「心にも無いことを言いおる。他者の失敗を嗤う事でしか欲求を満たせぬ奴が。」
フェン「はいはいさーせんね。じゃ、ボスんとこ戻りましょうや。」
スフィン「ウロヴォリアスはどうするのだ?恐らくエグゼシードが死んだ報はもう出回っているぞ?」
フェン「蛇噬が担当してる。まず間違いなく無事に終わると思うぜ。」
スフィン「なら問題はないか……では行くとしよう。」
2人は突然出来た空間の穴に消えていった。
フェン「ボスー。スフィン様とエグゼシード討伐完了の報告連れて……ありゃ。寝てら。」
暗い森の中、フェンが黒髪の少年に声をかけようとしたが、少年はぐっすりと眠っていた。
スフィン「予想はしていたがな。」
フェン「最近は睡眠時間減ってきてはいるんだけどなぁ。ま、もうすぐ万全になると思うぜ。」
スフィン「グラン・ロロ側の抵抗が強かったのは予想外だったからな。お陰でこちらを先に片付ける羽目になるとは。」
フェン「ま、問題ないでしょ。」
スフィン「……それはそうと、ウロヴォリアスの方、本当に大丈夫なのだろうな?」
フェン「大丈夫だって。ダイノと蛇噬がフォローに回ってるしな。……しかし、蛇噬も中々面白いことするもんだ。」
スフィン「面白い?」
フェン「あぁ、なにせ───
────破壊の吸血鬼に創造の虚神を乗っ取らせて、その上で抹殺の仕事をさせるんだもんなぁ。