紅魔館の一室。
私物はほとんど無く、家具もタンスと簡素なベッド、そして鏡のみ。
そしてそのベッドには寝ている1人の男が。
ザンド「……ンァ?もう朝かよ……。」
ザンドだ。ベッドから体を起こし、二、三度首を振ったあと、タンスから雑に執事服を引っ張り出して、着替える。
ザンド「ん、おっけ。」
ふと、鏡を見る。そこには当然だが、執事服を来たザンド自身の姿が。
ザンド「この服にも随分と慣れたもんだなァ。……さて、今日も仕事だ。」
ザンド「適当でいいか。」
咲夜「ダメに決まってるでしょう。手を抜くのは許さないわよ。」
ザンド「へいへい。」
咲夜にお叱りを受けながら朝食の準備を始める。30分程で全員の分が完成した。
咲夜「じゃあ私はこれを運んでお嬢様を起こしてくるわ。妹様の方をお願いね。」
ザンド「あいよ。」
最低限の会話のみを交わした後、それぞれ厨房を出る。
紅魔館の日常が始まる。
咲夜「おはようございます、お嬢様。朝ですよ。」
レミリア「……んぅ~。」
咲夜が声をかけると、レミリアが目を覚ました。
咲夜「既に朝食の準備が済んでいます。パチュリー様やイル、小悪魔ももうダイニングルームでお待ちしておりますので。」
レミリア「……分かった。先に行っていてちょうだい。」
咲夜「よろしいのですか?」
レミリア「ええ。」
咲夜「承知しました。では、失礼します。」
レミリア「ありがとう。」
レミリアが咲夜を先に向かわせた事に特に意味は無い。
なんとなく、そういう気分だったのだ。
レミリア「さて……。」
レミリアはタンスの中から着替えを取り出し始める。
着替えを見つける頃には、中が乱雑になってしまっていた。
ザンド「……さて。」
一方ザンドは地下室に繋がる階段を降りている。
距離としてはかなり長いが、走っていくとその音でフランが起きてしまう事があるのだ。
ちなみにその際、フランに怒られているので、こうして歩いて向かっている。
階段を降りきり、廊下を進む。
ザンド(今いきなり元の姿に戻ったりしたらどうなるんかねぇ……まぁ、壁と天井全部ぶっ壊すだろうが。)
などと考えながら、廊下を歩く。
しばらく歩いていくと、扉が見えてくる。言わずとも分かる、フランの部屋である。
ザンド「毎回思うがもうちょっと距離考えた設計にして欲しいよなぁ……ったく。」
ノックも無しにドアノブに手をかけ、ドアを開ける。
ザンド「おーい、フランドール。朝飯出来たから起こしに来たぞ。」
レミリア「おはよう、皆。」
パチュリー「えぇ、おはよう。」
小悪魔「おはようございます。」
美鈴「おはようございます!!」
レミリア「朝イチから大声出さないでよ……。」
美鈴「あはは、すみせません……。」
レミリア「全く……イル、貴方どうしたの?」
レミリアがイルを見ると、イルはテーブルの上に突っ伏してダウンしていた。
レミリア「……また徹夜したのかしら?」
美鈴「睡眠時間の削りすぎは体に毒ですよ。」
小悪魔「普段から寝ている人が言うと説得力ありますね。」
レミリア「へぇ?」
美鈴「ちょ!?小悪魔さん!?あぁ、ええとですねお嬢様、これは「面白いことを聞いたわね。」咲夜さああああああん!?」
イル「おぬしらうるさいのぅ……朝ぐらいもう少し静かにせぃ……。」
レミリア「……で、何があったの?」
パチュリー「寝すぎよ。昨日は普段の倍くらい寝たせいで、逆に体が動かなくなってるのよ。」
イル「そゆことじゃぁ……。」
レミリア「はぁ……情けない。」
イル「うるへぇ……。」
小悪魔「そういえば妹様とザンドさんは?」
レミリア「……そういえば来てないな。何故だ?」
パチュリー「朝から2人で遊んでるのかしら?」
美鈴「いやー、流石のお2人でもそれは……。」
咲夜「……仕方ないわね。お嬢様、私が様子を見てき──
咲夜がそう言おうとした瞬間──
───爆発音が響いた。
レミリア「ッ!?」
パチュリー「……敵襲かしら。こんな朝早くから。」
イル「……地下室に行く階段のとこじゃな。お前さんら!行くぞい!」
イルの言葉に全員が頷き、部屋を飛び出した。
ダイニングに居た面々が地下室への階段にたどり着くと、扉が壊れており、そこは煙が舞っていた。
レミリア「……?」
が収まり始めると、煙の中にはザンドが立っていた。
ただし、両手に剣を持ち、階段の方をじっと見たままだが。
レミリアがザンドは駆け寄って
レミリア「ザンド!何してるの!?それにフランは──」
ザンド「───見てみろ。」
レミリア「え?」
レミリアは階段の方を見遣る。すると、暗闇の中からフランが歩いて出てきた。
───炎剣では無く、ガラスのようなもので出来た剣を携え、普段とは一転した青い双眼を光らせながら。
レミリア「………え?」
フラン?「あぁ、人が集まってきてしまったか。ブラムザンドを早めに殺しておいて、スムーズに事を済ませたかったのだけれどね。」
フランの声ではない声が聞こえる。
ザンドとイル以外は、その状況に戸惑い、硬直してしまっていた。
咲夜「妹様…?」
フラン?「この子の事だね。しばらく体を借りているよ。何、事が終われば五体満足で返すさ。」
イル「……何モンじゃ?お前さん。」
ザンド「スピリットなのは見てわかるが……感じるモンが他の奴らと全然違ぇな。神か何かか?」
フラン?「ご明察。僕は『フェニックス・ゴレム』という者だ。虚神、と言えば大方のことは分かるかな?」
パチュリー「虚神……?確か、グラン・ロロに昔からいる神、だったかしら。」
美鈴「知ってるんですか?」
パチュリー「グラン・ロロの伝承が書いてある本に乗っていただけよ……曰く、『万物を滅ぼす六柱』と。」
フェニックス「そこまで知られているのか。僕達も無駄に有名になってしまったね。さて、僕が彼女の体を借りている理由だが。」
フェニックス「……ターゲット。」
フェニックスゴレムがレミリアを指差す。
すると、レミリアのポケットが光を放った。
フェニックス「辰の十二神皇……その首、貰うとしよう。」
ザンド「てめぇ……最初にオレに喧嘩ふっかけてきてターゲットはレミリアだァ?」
フェニックス「君に気づかれるのは予想外だったのでね。荒い気性から鈍いのかと予測していたよ。」
ザンド「……へぇ。言うねぇ。今すぐここでぶっ殺「ザンド、待て!」
イル「そいつが使ってるのはフランの体じゃぞ!そいつを剥がせない今手は出せん!!」
ザンド「ッ……ちっ!」
フェニックス「そういうことだ。ちなみに、バトルフィールドなら、僕を剥せるよ?」
レミリア「………いいでしょう。受けて立つわ。起きなさい、ウロヴォリアス。」
ウロヴォリアス「……今回は珍しく深刻なようだな。いいだろう。」
フェニックス「では始めようか。」
レミリア「……先程の言葉、嘘はないな?」
フェニックス「あぁ、勿論だ。先程の言葉も……辰の十二神皇の首を貰うという言葉もね。」
レミリア「それは有り得ないな。お前はここで捕まえる!!」
2人「「ゲートオープン!!界放!!」」
2人の間の空間が光、2人を呑んでいった。
ザンド「レミリアの奴、大丈夫だろうな……?」
咲夜「……信じるしかないわ。今出来ることはそれしか……。」
ザンド「……チッ。」
────紅魔館の異変が始まる。