東方魔卿録   作:子アオ

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第6話『喧嘩』

──人里付近──

 

ザンド「まさか食材が粗方消えてるとはな……。」

 

咲夜「普段はこんなことないのだけれどね……不覚だったわ……。」

 

会話から食材の買出しに来ているのだろうと思われる2人。

普段咲夜は飛行で人里に行っているのだが……

 

 

 

咲夜「まさか飛行が出来ないとはね……。」

 

ザンド「うっせぇ。オレからしたらお前らみたいにひょいひょい飛べる方がおかしいわ。」

 

 

 

そう、ザンドは飛べないのだ。よって、2人で歩いて向かうハメになっている。

 

咲夜「今度パチュリー様にでも飛び方を教えてもらったらどうかしら?」

 

ザンド「向こうにいた時知り合いに教わってこのザマなんだよ………まあ、せっかくだ。たまには歩くのもいいだろ?」

 

1人はため息、片や苦笑い。しばらく歩いていると、ザンドがある場所に目を向けた。

 

ザンド「ん?なんだここ?」

 

2人の横にあるのは彼等の背の数倍高く伸びた竹林。ザンドにとっては珍しかったようで、そちらの方に寄っていく。

 

咲夜「そこは『迷いの竹林』と言ってね。霧が深い上に所々傾斜もあって、余程運が良くなければ出れない事からそう呼ばれてるの。」

 

ザンド「へぇ、出れないんなら燃やせば解決じゃねえの?」

 

咲夜「近隣の林にも飛び火するじゃない……で、ここを抜けるには近くに住んでるとある人の案内が必要なのだけど……居たわ。」

 

咲夜が少し遠くを指さす。

 

ザンドがそちらに目を向けると、白髪の少女と、青髪の青年が何やら話していた。両者ともに髪は長く、青年の方は眼鏡をかけている。

 

ザンド「……どっちが?」

 

咲夜「白い方よ。にしても、何か言い争っているみたいだけども……。」

 

そう言いながら、2人は言い争っている(?)2人の元に歩を進める。

 

咲夜「こんにちは、妹紅。」

 

咲夜が声をかけると、妹紅と呼ばれた白髪の少女は咲夜に気づき、挨拶を返した。

 

妹紅「咲夜じゃないか。丁度いいや、コイツをどうにかしてよ。」

 

咲夜「コイツ?」

 

咲夜が聞き返すと、妹紅は青髪の青年を指さした。

 

妹紅「この男が『1晩泊めてくれ』ってしつこいんだよ。私は今日夕方から慧音のとこに行くから出来ないって言ってるのに、しつこくてさ。」

 

青年「屋根裏でもいいから貸してほしいんじゃよ!このままじゃワシ夜の寒さで死ぬぞ!?ワシとお前さんの中じゃろ!?」

 

妹紅「まだ会って30分も経ってないっての!?」

 

手を合わせて頼み込む青年に突っ込む妹紅。青年の方は喋り方が多少、というよりかなり年寄り臭い。

 

ザンド「……おいテメェ。」

 

青年「ん?何じゃお前さん?」

 

ザンドが唐突に会話に割り込む。背は青年より高いので、上から見下ろす形で向かい合う。

 

ザンド「初対面の人間に対して少し図々しいんじゃねぇか?ったく、オレの知り合いにも似たようなのがいるわ。」

 

呆れたように吐き捨てる。本人が狙っているのか否かは分からないが、口調も少々煽り気味だ。

 

青年「ワシだって悪いとは思ってるんじゃよ!でも今日泊まるとこがないとホントに死にそうなんじゃ!」

 

若干涙目になっているが、演技か素か。

 

妹紅(……アイツ誰?咲夜のコレ?)

 

咲夜(そんなわけないでしょ……最近幻想郷に来たらしくてね。紅魔館で働いてるの。名前はザンド。)

 

妹紅(ふうん……。)

 

咲夜「……ところで眼鏡の貴方、人里には行ったの?」

 

青年「なんじゃそこ?」

 

咲夜「行ってないのね……なら人里まで私達が案内するから、そこで今夜分の宿を探しなさいな。丁度私達も人里に用があるし。」

 

妹紅「そうだね。アンタ、見たとこ外来人でしょ?それなら貸してくれるとこ1件位はあるはずだよ。」

 

ザンド「決まりだな。」

 

青年「そんな場所があるのか。それは知らなんだ…じゃあそうさせてもらうかのぅ……。」

 

苦笑いしながら提案を受け入れる青年。人里の存在は知らなかったらしい。

妹紅も安心したような表情で咲夜に礼を言う。

咲夜も『困った時はお互い様よ』と、笑って返す。

 

とりあえず丸く収まったと思われ

 

咲夜「じゃあ早速行きましょうか。貴方、名前は?」

 

 

───たのだが。

咲夜のこの言葉でまた思いもよらぬ事が起きるとは。

 

名前を聞かれた青年は笑顔で、答えるために口を開く。

 

青年「ワシか?ワシの名はイル・イマ───

 

 

次の瞬間、人が吹っ飛ぶ音と竹が何本もバキバキと折れる音がした。

 

何が起こったかというと、ザンドが青年を殴り飛ばし、吹っ飛んだ青年が竹に激突して竹が折れたのだ。

 

突然の出来事に妹紅と咲夜は『は?』といった顔。

 

ザンド「はぁ……妹紅っつったっけか?アンタ。」

 

妹紅「あ、あぁ。えっと…ザンド、だっけ?」

 

ザンド「あぁ。とりあえずあの眼鏡が迷惑かけたな。今殺してくるから2人はちょいと待って「いやいやいや待つのはアンタでしょ!!」あ?」

 

妹紅「どう考えたってやりすぎだよ!名前言いかけた途端にいきなり殴り飛ばして!どうしたのさ!?」

 

咲夜もただ頷いて肯定する。そりゃこんなのあいきなり過ぎて訳が分からないよ。

 

咲夜「……まさか、知り合い?」

 

ザンド「…あぁ。」

 

肯定するザンド。全面的に『めんどくせぇ』と言ったような態度だ。

 

ザンド「アイツは『イル・イマージョ』。グラン・ロロの時のオレの同僚だ。そんで同僚の中で1番図々しい奴。」

 

『いくら何でも同僚を突然殴り飛ばすか?』と思った2人だが、口には出さなかった。

 

すると、吹き飛ばされた方向から青年──イル・イマージョが出てきた。

眼鏡ににヒビが入っていて、頭から少し血が流れている。

 

イル「誰かに似てると思ったらお前さんか!!いきなり殴り飛ばすとはどういう了見じゃ!?」

 

ザンド「身内が人様に迷惑かけてるのがイラついただけだ。」

 

イル「はぁ!?ワシだって悪いとは思ってるってさっき言ったじゃろうが!!せめてデコピンにせい!!」

 

ザンド「いい加減にその図々しいのを直せっつってんだよ!!ったく、そこら辺で野宿でもしてろ。行こうぜ咲夜。」

 

咲夜がザンドに声をかけるが、咲夜も妹紅も固まっていて返事をしない。

ザンドが「おーい」と声をかけていると、首根っこを掴まれた。

 

イル「─そりゃあっ!」

 

そのまま投げる。ザンドが竹林に突っ込んでいく。

 

イル「お返しじゃこの乱暴者!!」

 

ザンド「……テ…メェ……死にたいらしいな……!!」

 

ザンドが剣を取り出すと、イルも杖を取り出した。完全に戦る気である。

 

妹紅「ちょっと!ストップ!ストーップ!!」

 

妹紅が仲裁に入る。

 

イル「なんじゃ!邪魔するな妹紅さんや!」

 

妹紅「いやいや言ったん落ち着きなよ!!」

 

咲夜「そうよ。ザンド、貴方も。」

 

2人の説得で、とりあえず得物は収めてくれた。

だが、2人のムードは険悪そのものである。

 

ザンド「………。」

 

イル「………。」

 

両者無言の睨み合い。いたたまれなくなった咲夜が口を開く。

 

咲夜「そんなに白黒つけたいなら、バトスピで決着付ければいいんじゃない?ザンドがバトスピを知ってたんだから、イルも知っているでしょう?」

 

ザンド「……だとよ。」

 

イル「おう上等じゃ。ワシが勝ったらザンドの居るとこに上げてもらおうかの。」

 

咲夜「え?ちょっと─」

 

ザンド「ならオレが勝ったらこのままテメェは放ったらかしだ。自分でどうにかしな。」

 

咲夜「2人とも──」

 

 

 

ザンド・イル「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

 

咲夜の制止も聞かずにバトルフィールドが展開される。

妹紅は咲夜がため息をついたのを見て心配して声をかけた。

 

妹紅「咲夜、大丈夫……?」

 

咲夜「え?…あぁ、大丈夫よ。彼、普段はもう少し丸いのだけれどね……。」

 

妹紅「…なんか、苦労してるんだね。」

 

咲夜「そうでもないわよ。」

 

 

咲夜(もし負けたら、お嬢様には貴方から説明しなさいよ……ザンド……。)

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