「……ふぅ。こんなところかしら。」
神社の境内で落ち葉を掃いている巫女服の少女。
名は『博麗霊夢』。この神社、『博麗神社』の巫女であり、幻想郷を囲う結界の管理人でもある。
霊夢「さて、お茶でも飲みましょうか。」
「終わったのか。お疲れさん。」
霊夢「?」
霊夢が横を見ると、1枚のカードが霊夢と並んで浮かんでいる。
霊夢「あら『エグゼシード』、起きてたのね。」
『エグゼシード』、そう呼ばれたカードは苦笑いをしながらいつも寝てるみたいに言うなよ、と零す。
彼はグラン・ロロの十二神皇だったスピリットの一体、つまりウロヴォリアスと同じ立場のスピリットである。
霊夢「で?どうしたの?」
エグゼシード「掃除が済んだなら適当に話し相手にでもなろうか、と。」
霊夢「アンタも暇ねぇ。」
エグゼシード「お互いにな。」
霊夢「話すのはいいけど、その前にお茶を……ん?」
霊夢が上を見上げると、途端に1人の少女が降りてくる。射命丸文だ。
文「あやや、エグゼシードさんも一緒ですか。こんにちは。」
エグゼシード「あぁ、こんにちは。」
霊夢「それで?どうしたの?」
文「決まってるじゃないですか。新聞ですよ。」
霊夢「こないだ貰ったじゃない。」
文「特別号って奴ですよ。少し物珍しいネタが入ったので。読んでくださいね。」
霊夢「ふーん……。」
文にそう言われて渡された新聞を受け取る。
一面の中央には緑髪の少年の写真が。
霊夢「なにこれ?大妖精が男にでもなった?」
文「そうなったら今頃チルノさんがパニックで幻想郷中を駆け回ってますって。」
霊夢「ふふっ、それもそうね。」
文「……あ、それと霊夢さん。一つ尋ねたいのですが。」
霊夢「…何かしら?」
いきなり文が少し真剣な表情になったのに気づき、霊夢も、『霊夢』ではなく『博麗の巫女』の顔になって聞き返す。
文「……ここ最近、見たこともない生き物が出現したという話を聞いたりしていますか?」
霊夢「?……いいえ、全く。」
文「そうですか…。」
霊夢「何かあったらまた言って。最悪私も動くわ。」
文「わかりました。では私はこれで。」
霊夢「えぇ、気をつけて。」
挨拶を済ませて文は来た方向に飛んでいった。
姿が見えなくなってから、霊夢とエグゼシードは縁側で新聞を見始める。
【 妖怪の山に謎の竜と外来人 異変の前触れか 】
霊夢「文が言ってたのはこれかしらね……。」
エグゼシード「謎の竜、か……外来人の事も載っているのを見るに、彼女は何か関係があると見ているのかもな。」
霊夢「続きは……『謎の竜はほぼ同時刻に目撃された外来人が撃退。現在は天狗の里にて生活中。』ねぇ……。」
『なお、竜はバトルスピリッツによる勝負を挑んで来た模様。この竜、及びその他不審な生物を見かけた場合はくれぐれも注意されたし。』
エグゼシード「バトスピによる勝負……となると、その竜はグラン・ロロから来た可能性が高いな。調べ上げるか?」
霊夢「流石に情報無さすぎよ。それにまだ一件しか起こってないしね。文が何かしらの情報を持ってくるまで待ちましょうか。」
新聞の事件の考察をしていく1人と1体。
霊夢は博麗の巫女であるため当然、エグゼシードも
霊夢「…外来人の情報も載ってるわね。」
霊夢「『撃退した外来人はヴァンディールと名乗っており、本人は事件との関与は否定。』だって。」
エグゼシード「……なに?」
霊夢「だから事件との関係は「そこじゃない。今名前なんて言った?」名前?ヴァンディール、っていう名前らしいけど。」
エグゼシード「……ソイツ、名前以外には何かあがってるか?」
霊夢「いや自分で見ればいいじゃない……ここね。
『種族は邪神、グラン・ロロ出身との事』だそうよ?」
エグゼシード「……完全にあのヴァンディールだな……。」
何か嫌なことでも思い出したようにため息をつくエグゼシード。これには霊夢も不審に思う。
霊夢「あの、ってどのよ。」
エグゼシード「邪神の話は覚えてるか?」
霊夢「えぇ。アンタ達と戦ってた連中でしょ?」
エグゼシード「あぁ、その最高戦力は『四魔卿』と呼ばれているんだが……その内の1体だ。」
霊夢「なるほどね……で、それがどうしたの?」
エグゼシード「邪神は厄介な連中だ。もし何か企んでいるとしたら、事を起こされる前に倒すか拘束するかした方がいい。」
霊夢は新聞に載ったヴァンディールの写真を見る写真だけ見れば無邪気な笑顔をしているただの子供だが。
霊夢「この見た目で、ねぇ……まあ見かけに惑わされるなとはよく言うけど……。」
エグゼシード「そういう事だ。とにかくヴァンディールの様子を見に行くだけでも──
「ヴァンディールの事について話しているのか。我にもそれを見せてはくれまいか?」
ふと、霊夢でもエグゼシードでもない者の声が響く。
霊夢とエグゼシードが声の方に振り向くと、長い黒髪に金目の男が立っていた。
霊夢「……アンタ、誰よ?」
「人に名乗らせるならまずは自分から、と言うだろう?」
霊夢「……博麗の巫女、博麗霊夢。」
エグゼシード「俺は「貴様の事など知っている。午の十二神皇エグゼシード、であろう?」!!」
霊夢「……これで私達は名乗ったわ。今度はアンタの番じゃない?」
「あぁ、その通りだ。では我も名乗るとしよう。
我が名は───」
どことも知らぬ森で目覚めた。
戦に敗れ死したあの姿の影すら残さぬ風貌で。
『負けた』
それはいい。戦が起これば勝者と敗者が生まれる。
生き残った者と死んだ者が生まれる。
此度の我は後者だったというだけのこと。
だが我を打ち負かしたあの2体に力を貸したあの『何か』だけが我の感情を納得させない。
初めて見たはずの存在に感じる既視感。
あれは。
そこまで思い返して、思考を1度切り替える。
「……今は現状の把握が優先だな。」
見知らぬ土地故に、どこかで情報を集めねばならぬ。
上を見上げると五体を持つ存在が空を飛んで行くのが見えた。
「………行ってみる価値はあるな。」
体を浮かべ、空を切る。幸い飛び方は変わらぬようだ。
しばらく飛ぶと長い階段が見えた。
歩いて登るのは面倒だ。飛んで上の鳥居の下に着く。
「……社、か。声が二人分……向こうだな。」
縁側の方に向かうと、1人の巫女と思われる女と1枚のカードが話している。我には気づいていないようだな。
「邪神は厄介な連中だ。もし何か企んでいるとしたら、事を起こされる前に倒すか拘束するかした方がいい。」
この声…エグゼシードか。面白い偶然だ。
巫女「この見た目で、ねぇ……まあ見かけに惑わされるなとはよく言うけど……。」
エグゼシード「そういう事だ。とにかくヴァンディールの様子を見に行くだけでも──
「ヴァンディールの事について話しているようだな。我にもそれを見せてはくれまいか?」
同胞の名前が出てきた為、思わず声をかけてしまった。内心では反省しつつ、顔には出さない。
巫女「……アンタ、誰よ?」
巫女が警戒した様子で尋ねてくる。我との初対面ならば当然の反応か。
人を警戒させる性質を持っているのは自覚している。
「人に名乗らせるならまずは自分から、と言うだろう?」
巫女「……博麗の巫女、博麗霊夢。」
霊夢、か。カードの方は声で分かった。聞く必要も無い。
エグゼシード「俺は「貴様の事など知っている。午の十二神皇エグゼシード、であろう?」!!」
霊夢「……これで私達は名乗ったわ。今度はアンタの番じゃない?」
「あぁ、その通りだ。
では我も名乗るとしよう───
──我が名はデスピアズ。邪神の皇だ。」