分かっていた事とはいえ、流石にゴリゴリ減っていった評価とお気に入り数には堪えましたぁ
まぁ気にせずにどんどん投稿していきますんで宜しくお願いします
では、どうぞ
耳を塞ぎたくなるほどの悲鳴、否、絶叫。
喉を引き裂かんばかりの、魂の底から溢れ出る慟哭。
無理もない、己が腕を爆散させたのだから。
痛いなどの次元ではないだろう。
筆舌に尽くしがたい激痛は、ともすればそれだけで死に至ることだってある。
人は、あまりの痛みで死ぬこともあるのだ。
痛みを誤魔化すために腕を押さえることすらできず、ましてやのたうち回ることもせず、ただただ屹立して泣き叫ぶ。
火の海と化したこの横浜の一角に響く彼の悲鳴は、空気を震わす。
繰り返し、繰り返し、彼は必死に泣き喚く。
そう、正しく
普通なら、死ぬ。
弱い人間ならば、疾うに死んでいる。
肉体的な痛みでももちろん死ぬ可能性は高いが、何よりも精神的に死ぬハズだ。
心が正気を保っていられるハズがない。
己が腕を己が意思で爆散させるとは、それほどまでに非人間的で、おぞましい凶行なのだ。
それなのに。
そうだというのに。
絶叫し、叫喚し、慟哭し、号泣し、天をも貫けとばかりに声を響かせる彼は、決して動こうとはしなかった。
残った腕で散らした腕元を掻き抱くこともせず、痛みを誤魔化すために地をのたうち回ることもせず、ただただ屹立して吼えていた。
ただただ吼え、ただただ泣く。
痛みを堪えるためでもあるのだろう。
だがそれだけではない気が外印にはした。
漠然とだが、どこか気味の悪さを感じたのだ。
ふつう、腕を失った痛みを一寸たりとも微動だにせずに耐えられるか?
否だ、断じて否である。
堪えられる限度を遥かに越えているハズだ。
泣き叫んでいるから当然痛みは感じているのだろう、だが、
血が湯水の如く滴り落ちる腕をそのままにして、泣き叫ぶ事ができるのか?
おかしい、常軌を逸している。
いや、もとよりおぞましい凶行に及んでいるのだから既に常軌は逸しているのは明らかだった。
だが、この姿を見ては更に輪を掛けておかしいと断言できる!
身体からの痛みという訴えを、心だけで処理しているようだ。
苦痛を和らげようと痛がる素振りさえ見せない。
それはまるで……まるで
なんなのだ、コイツは?!
本当に人間なのか?!
夷腕坊改め外印が内心で愕然としていると、ふと十徳の慟哭が鳴りを潜めた。
気を失ったのかと思って外印が見遣るが、そうではないと直ぐに気付いた。
涙と鼻水で顔がぐじゃぐじゃになり、嗚咽を溢しているが、その目は確と開いていて強い光が宿っていた。
痛みを克服した?
馬鹿な、痛みは一過性ではないのだ。
堪えられるようになる、などという事はありえない。
ならば、いったい何を……?
そう思って十徳を見続けていた外印は今度こそ、その度肝を抜かれた。
思考が霧散し、息をすることさえ忘れて呆然と見入ってしまった。
唐突に屈んだ十徳は
失った腕から地に落ちた高熱の鎖に
腕の欠損部を押し当てたのだ。
「ーーーー!!!!!!」
再び耳に届く十徳の大狂声。
狂っているとか、逸しているとか、そんな次元ではない。
血を止めるために己の肉を、しかも爆散した断裂部を焼くだと?
誰がそんなことを考える!?
いや、仮に考えたとしても、誰が実践しうるというのか!!
今なお死に至るほどの激痛をもたらす部位をさらに焼くなど、その痛みとはいかばかりか!!
だが……否、だからこそ。
そんな異常行動を見せる十徳に、外印はまさに魅入っていた。
稲妻が脊髄を駆け抜け、まるで生まれ変わったのではと思うほどに思考が晴れ渡っていた。
中世より代々続く人形師の末裔が、人間の死体から精巧な人形を作る外法の技術者が、十徳に魅入り、そして思った。
こいつを……こいつの人間離れした行動、有り様をものにできれば、私の人形作りは更なる高みに登れる!
そうだ、美を追い求めて完璧に仕上げた人形はどうしても不気味に見えてしまっていた。
この男の得体の知れないナニカを取り入れれば、不気味の谷を越えられるハズ!
あぁ、なんということだ……!
志々雄真実の一派に属したのは間違いだった。
戦いの中で我が人形の芸術性を磨くことは間違っていない。
その一環として、この場に立ち会うことができたのだから!
だが、私にとって道標となる存在は志々雄真実ではなかったのだ。
この男こそが、この泥臭い餓鬼こそが、私を導いてくれる存在なのではないか!
気付けば外印は夷腕坊から這い出て、踞って泣き叫ぶ十徳のもとに歩み寄ると、深い礼をしていた。
それはまるで、臣下が王に接するよう。
それはまるで、生徒が恩師に感謝するかのよう。
その思いはまるで、求道者が登り詰めた山の頂から陽光を拝めたときのようだった。
燃え盛る町の一画の中心で、止まない泣き声が続くなか、外印も一筋の涙を流しながらただただ礼を続けていた。
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俺は死ぬのだろうか。
こんな訳も分からない場所でくたばるのか。
十徳との約束を果たせずに、ここで潰えるというのか……
ふざけるな!
死にたくない。
死んでたまるか。
俺は生きなきゃならないんだ。
やらなきゃならないことがあるんだ。
こんなところで……こんなとこでッ
「師よ、そんな思い詰めた顔をしないことだ。なに、腕の一本や二本、生身のそれより便利な物に付け替えられるから」
弟子をとった覚えはありません!
てゆうか外印、テメェなにやってんの?!
師ってなに?俺が師?
なんでやねん?!(何故か関西弁)
「色々と聞きたいことはあるんだが、取り合えず一つ。此処はどこ?」
「横浜の私の隠れ家だ。ここで幾つもの人形を作っているのだけど……どうかな?」
どうかな?じゃねぇよ。
何言ってんのコイツ、ねぇコイツ何言ってんの?(迫真)
周りを見遣ると、確かに幾つもの人形が目に入った。
若い男女数組の人形が座っており、まるで眠っているかのように目を閉じている。
それだけを見れば感嘆する場面なのだろうが、如何せんその周りには見たくもないグロいものが散乱しているから、正直吐き気しか催さない。
そういやコイツの人形って人の死体を使って出来ているんだったな、オエッ。
「で、俺はなんで台に拘束されてるんだよ。これから拷問でもされんの?」
「なんと、それは魅力的だね。師の異常たる心の叫びと有り様をより間近に観察できるのはいい……やはり、常人とは一線を画すな、師は。その頭を覗いてみたいものだ」
「オメェは師に対する考えが一線以上を画してるな!怖ぇよマヂで……つぅか師ってなんだよ。そんなんとった覚えはねぇんだけど」
「無論、私が勝手にそう思っているだけさ。そして勝手に学ばせて頂くから、師はいつも通りにしていればいい」
……なに言ってんだろ。
もう分かろうとも思えない。
芸術家はやっぱりよく分からん奴が多いなぁ(偏見)。
髑髏の絵が描かれた目出し帽のような頭巾を被り、顔を隠している男。
確か原作では五十を過ぎたオッサンだったはずなのだが、なんか声からして絶対それより若いぞ?
自分を弄ったのか?
なんて、現実逃避はもういいだろう。
あの時、自分の腕を吹き飛ばして、そして熱した鎖にその腕の断裂部を押し付けて、あまりの痛さに気を失って。
気が付いたらここにいた。
外印と色々と話してたような記憶は漠然とだがある。
が、何を話してたかは覚えていない。
余計なことを話してなければいいんだが。
チラと右腕を見ると、直視するには堪える様相と成っていた。
断裂部はまんべんなく焼け焦げていて、残った上腕部も鎖の火傷の跡が刺青のごとく出来上がっていた。
そんな右腕を、俺は見続けた。
正直に言うと、抱いた感想は「気持ち悪い」とか「エグい」とかではなく「申し訳ない」の一言に尽きた。
元を質せば、この身体は十徳のものだから。
それをこんな傷物にして、本当に申し訳ない気持ちになった。
けど……俯いてちゃダメなんだ。
それは、面と向かって言われたことだから。
悄気たツラしてたらダメだから。
亡くした腕は、もうどうしようもない。
この禍々しい鎖の火傷の跡も、治らないだろう。
けど。
あの時、生きるために思い付いた唯一の考えを実行したまでで、結果として生き残れたんだから、四の五の言うことこそ一番しちゃいけないことなんだ。
「さて、これからその断裂部を弄るのだけど。師よ、義腕は如何様にするかい?知り合いに亡くした腕の代わりに大砲を着けた経験があるが、そうする?」
「なんだよ、そのビックリ人間。腕亡くしちゃったから大砲着けちゃった~とか、その発想がもうスゴいよ」
えっと……たしか鯨波だったか?
明治維新のただ中、たしか新政府軍と旧幕府軍との会戦時に、前者に属していた主人公が後者に属していた鯨波の片腕を斬り落としたのだ。
その鯨波は敗北を悟り、武士として散らせてくれと懇願したが、もう人殺しをしなくなった主人公に拒否された。
片腕を斬り落として武人として生きる道を断たれ、武人として生きられた時代を終わらせ、そして武人としての死に場所さえ与えてくれない抜刀斎に対して憎悪を募らせ、復讐の鬼と化すんだよな……たしか。
てゆうかお前が着けたのかよ。
弟子の所業に師匠ビックリしちゃったよ。
「大砲は勘弁。普通の義手で……あぁ、でも頑丈にしてくれると嬉しいかな」
「了解。外見は生身とそっくりにするかい?」
「拘らない。流石に奇天烈なのは御免だが、サラシを巻いて誤魔化せる程度までならなんでもいい」
「委細承知した」
義手なんてこの時代にあるのか?いや、ないだろ。
明らかに時代を超越している。
まぁ世界が世界だからな、それにコイツなら不思議でもない気がする。
機巧芸術家……人間と区別のつかない人形や、主人公と戦える戦闘用人形を作り出す輩だからな。
任せても、まぁいいだろう。
そう思って石造りの天井を見ていると、かちゃりと手のひら大の銀皿が寝そべる俺の横に置かれた。
ちらと見ると、そこには鋏やメスみたいなもの、ピンセット、ルーペ、金槌(!)、巾、細糸などが乗っていた。
「義手がなんであれ、まずは断裂部を整え、調べなければならない故……一旦傷を開くよ?」
まずは神経や血管の位置、そして骨の太さや密度等を把握し、筋繊維の断裂具合をチェックするとのこと。
その為にはまず焼け焦げた部位を切除し、新しく綺麗な切断面を作らなければならないと。
で、それらを一通り調べたら一旦閉じ、機巧で接合部を作り、完成したら再度切断面を開き、そしてやっと繋げて終わりとなるようだ。
当然、外印は医師ではない。
故に麻酔なんて物は所持しておらず、痛みはすべて堪えるしかない……のだが、驚くべきことに、なんとコイツ輸血をしてやがるのだ。
俺の左腕に刺された図太い針から血が脈々と送られてきている。
マヂか、やっぱコイツの知識と技術は侮れないわ。
後世に逸失させてはならないやつだろ、これ。
なんで麻酔は無いのに輸血は知ってるのさ、と聞いたら人形の製作に不可欠だからとのこと。
なっとく。
でも血液型とかは大丈夫ではないらしい。
試しに聞いたら、なにそれと返ってきた。
まぁ俺も十徳の血液型を知らんから、これはもう博打だな。
確率は……いや、怖いから聞いてないけど、この輸血分が既に混合されてたら終わりだ。
もう輸血されちゃってるし、あとは天命を待とう。
「しゃーないだろ。泣き喚くだろうけど、気にせずやってくれ」
「師は本当に……いや、なんでもない。耳栓をするから大丈夫だけど、逆に言えば師の言葉は何も入らなくなる。つまり、途中で止めることはできないから」
「四肢どころかまんべんなく各部位を固定されてるから、身体で意思を伝えることもできないな。まぁいい、止めずにやれば早く終わるだろ?ならさっさと頼むわ」
「……分かった」
そう言うと外印はメスのような刃物を取って構えた。
大丈夫、大丈夫、大丈夫……
いつの時代で、どこの人だったかは覚えていないが。
我が子を産むために、無麻酔で帝王切開をやり遂げた母親が居たと聞いたことがある。
女性の方が痛みに耐性があるなんて話もあるが、そうだとしても俺の場合は所詮片腕のみ。
耐えられない道理はないハズだ。
流石に感染症が怖いから熱湯に何度も道具を浸けるよう忠告してから
そして
地獄の辛苦が再び始まった。
化け物級の剣客らと渡り合える武力を得ます
これがやりたかったんです
補足
不気味の谷は、当然この時代には明確化されていません
最近らしいですよ
気になる人は調べてみてください