昨日原作アニメを調べてたら主人公の声優さんの名前がオリ主の本来の名と一緒だったことにビックリしました
本当にマヂで偶然なんです、特に伏線とかないです
ともあれ、では、どうぞ
「……今、なんと言った?」
「聞きそびれたか?なら今度はよく俺が奴に言われる言葉をくれてやる。『寝言は寝て言え、阿呆』」
一人の警官が座し、彼と対面する形で座っている一人の大男が、眉根をひそめた。
予想外の攻撃的な答えに虚を突かれたようだ。
ここは大衆酒場の一角。
明治期においては平成の頃より明るい内から思い思いに呑み始める人も多くいて、この店もその例に漏れず早い内から賑わいを見せていた。
しかし、当のこの二人、否、間に一人の少年を挟んでいるから、三人になるが、ともかくその三人の席にある物はお茶が三つだけで、酒精は一つも見受けられなかった。
「おッ……お前!先生に対してその口の聞き方はなんだ?!」
この酒場において場違いなような少年が警官に食って掛かる。
が、その警官は何処吹く風、まったく意に介す様子も無く、その態度がさらに少年の琴線に触れたようだ。
「ッ……!」
「止せ。断るわけを話せ」
大男が手で少年の激情を制し、静かに警官に問うた。
「ほう。粗野で短絡的と聞いていたが、なかなかどうして。話を解せる程度には知性を持っているようだな」
ニヤニヤと、意地の悪い笑みを浮かべる警官。
「なに、簡単なことだ。貴様の言う、西洋火器に負けることのない、最強の剣術『真古流』。それを身に付けた最強集団に加われ、だったな。確かに興味をそそられる。俺も剣客の端くれだ……ったからな。身に付けたいとも思うさ」
「ほう……では、なぜ?」
「決まってるだろ。興味は持てど、魅力は感じん。それに属して、その組織を立ち上げて
「……なんだと?」
「お前の思想は、まったくもって俺を惹き付けない。その剣術を身に付ければ、なるほど向かうとこ敵なしとなるかもしれないだろう。ただ、だからこそ、そうして何になると問うているのだ」
顔に張り付けたかのような下卑た笑みはいつしかナリを潜め、警官は鋭く目の前の大男を睨み付けた。
「
なんでだろうな。
そう呟く警官は、言葉とは裏腹に少しだけ誇らしげだった。
「遮二無二突っ込んで全身怪我だらけ。腕を亡くせど、されど瞳の色は変わらない。そのくせ奴は何も言わないんだ。忌々しくて、何度殺そうかとも思うこともあったが、それでも奴の背中を見続けた。俺たちの眼前には、常に奴の背中が佇んでいるんだ。しゃんと伸ばされた背筋が、忌々しくて、憎々しくて……着いて行きたくなるんだ」
「……」
「分かるか
それは、決して明かされることのない、彼の本音だった。
溢す言葉通り、自らの上司に嫌悪感を抱いているのだろう。
眉にはシワが寄り、目の敵にしている様子は嘘ではないようだ。
だが、それでも。
自覚が無いのだろうか、彼の口角は少しだけ上がっていた。
「言いたいことは、それだけか」
そう言って、大男は立ち上がる。
その顔には憤怒の形相が彩られている。
自らの誘いを断るのみならず、思想を馬鹿にされ、侮辱されたのだ。
相手が官憲であろうともはや関係はなかった。
傍らに置いてあった長い包み紙の中から取り出し取り出したるは、真剣。
眼前に屹立する姿は大岩のよう。
筋骨隆々の体躯は恵まれた素質もあるだろうが、それに加えてかなりの鍛練を己に課してきた証左でもあった。
「……ハッ、やはり知性はその程度か。あぁ、だが上等。貴様の思想は危険だ。ブタ箱にぶちこんでやるよ」
「抜かせエェェェ!!」
怒号が店内に響き、大男が刀を大上段に振り上げる。
警官も素早く立ち上がり、徒手空拳を構える。
自分はもう剣客警官隊ではないのだ。
自分の身を守れるのは、正しく自分の身一つだけ。
目の前に真剣を振りかざす大男がいるという窮地にありながら、そんな状況に、警官は自分の上司と似たような事をしているのではないだろうかと思って、ほんの少しだけ親近感を抱いていた。
賑やかだった店内に悲鳴と轟音が響き渡る。
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「で、で、で!ずばり聞いてしまいますが、狩生さんと冴子はどんな関係なのですかぁ?!」
「どんなと言われても。職場でお世話になってる人の御息女が彼女なだけであって、それ以上でも以下でもないよ?」
「うえぇ?で、でも。今日は平日ですよ?わざわざ
「違うって。今日は諸事情あって休みを戴いてね。これといって予定も無く暇をもて余していたところ話を聞いて、気分転換がてらに荷届けのお願いを受けたんだ」
「えぇぇ~~」
そう言って、目の前で肩を落とすのは晴子ちゃん。
元気で活発、遠慮の無さが無遠慮というより欲求に素直な感じで全然嫌になれない子だ。
「そういえば狩生さんの髪と肌のお色って珍しいですよね。はーふ、なるものですか?」
「うん、まぁ……母が薩摩で、父が異邦人でね。そういった異人種間での子は、大概が半々の遺伝子を引き継ぐんだ。俺みたいに、変わった色として髪や肌に表れるのも珍しくない」
「いで……んし?そういえば、異国の人は肌が白だったり黒だったりと聞き及んでます。それらと日本人が結ばれ、子が成せるというのは本当なのですね」
「肌も髪も瞳の色も、たとえどれ程違っていたところで結局は同じ人だからね。文化や言語、習慣が違えど成せるものは成せるさ」
「へぇぇ~~」
利発そうな瞳と穏やかな物腰で、それでいて疑問に思ったことはどんどん聞いてくる子が乙葉ちゃん。
この二人に冴子嬢が加わった三人は、いつも仲良くつるんでいるらしい。
三者三様な性格だから一見本当に仲良くやっているのかと思ったが、これがなかなかどうして冴子嬢も困っている様ではあるが苦に感じているようには見受けられなかった。
俺に対してえらく攻撃的だし、たしか原作でも主人公勢に対して穏やかならぬ感情を抱いていたようだから、もしかして基本他の人にも同じなのかと不安に思ってたんだけど、そうではないと分かってかなりホッとした。
「あ~~、美味しいぃ」
「うえぇ?これのどこが美味しいんですか。苦いし、舌にこびりつくし」
「私も同感です。茶屋ならお茶を出してほしいですよ」
「気にしなくていいわよ。この人の味覚がおかしいだけですもの」
やっぱり俺に対してだけのようだね、ホッとしたよ!
そう思いながら俺はホットコーヒーをまた一口啜った。
ここは学校から少し、否、かなり歩いた場所にある有名観光地、浅草。
江戸時代から大衆に親しまれ、明治になっても人々の憩いの場となっている浅草寺。
学校が終わった彼女たちと合流し、その境内に遊びに来ていたのだ。
明治10年、つまり今年に開業した油絵茶屋を見たかったから、とのこと。
博物館や美術館なんてものは未だ日本に無く、それどころか「芸術」というものが一般大衆の感覚には分からなかったこの時代(知的水準が低いということではない。むしろ今も昔も日本人のそれは世界トップクラスだ)、お茶を楽しみながら油絵を鑑賞するという芸術文化の先駆け的店舗に来ていた。
ここは、閉塞かつ自己完結が主だった日本の「芸術」を、広く一般人にも見てもらおうとしてできた美術館なのだ。
しかも、ここのお茶とは珈琲のことだから嬉しい限りだ。
三人の女学生たちはぺっぺっ、と舌を出して苦味に抗っている。
「んく、んく……ぷはッ。よし、飲みきった。というわけで休憩終了!早速油絵観に行きましょう!」
「はいはい、私も終わったけど……冴子ちゃんと狩生さんがまだよ?」
「ごめん、もうすぐで終わるから先に行ってて。後で追い付くから」
「俺も同じ。お先にどうぞ」
「おやおや、狩生さん?もしかして本当は珈琲苦手なんじゃないの?西洋ぶって無理してたのかな?にしし」
本当によく笑う快活な子だなぁ。
からかわれているのに嫌な気分にならないから不思議だよ。
俺は苦笑して答えた。
「バレてたか。本当は苦くて飲みづらいんだよね、珈琲って」
「くすくす。じゃあゆっくり飲んでから来てくださいね。ほら、行きましょう晴子」
乙葉ちゃんが意味ありげに笑いながら晴子ちゃんの手を引き、奥の展示屋敷に入って行った。
あのリアクション、どうやら察したようだ。
乙葉ちゃんは見た目通り、かなり聡明な子だ。
でも、気付いても敢えて言わないあたり、本当に優しくて友達思いなんだな。
「……みっともない。直ぐにバレる西洋かぶれなんかして、恥ずかしいわ」
「いやはや、ごもっともです」
俺はそう言って、チビチビと美味い珈琲を堪能する。
苦味に悪戦苦闘してる冴子嬢を横目で窺いながら。
「はぁ、ホントなんでこんなことに」
重々しい溜め息を吐く冴子嬢に、俺は言った。
「すみません。予想外の事態に呆然としてしまいました。有無を言わさずに去っていればよかったですよね」
「……まぁ、そうされてたらむしろ余計話がこんがらがってしまってたでしょう。あの
「それでも、御三方の輪に俺が加わるのは甚だ不本意でしょう。ご心労をお掛けするつもりは無かったんですが……申し訳ありません」
「もういいです。二人の好奇心もいずれ満たされるでしょうし、帰っていただくのはそれからでいいです」
「えぇ、わかりました」
「あとーー」
はい?
と、俺が聞くより先に冴子嬢は強い口調で言い放った。
「あの二人には今日以降決して関わらないでください……いえ、私の私生活の一切に関わらないでください。家に居るのはお父さんとお母さんが決めたことだから仕方無いとしても、私の生活には立ち入らないでくださいね。
私は貴方のことが、とても嫌いなんですから」
「……えぇ、わかってますよ」
俺の返事を受けて、冴子嬢は一気に珈琲を飲み干して立ち上がると、奥の展示屋敷へと歩き出した。
それを確認してから俺も最後の一口を飲んで、彼女の後に続く。
若干、嫌そうな空気を感じたがここは我慢してもらいたい。
だって冴子嬢、お金持ってないでしょ(晴子ちゃんと乙葉ちゃんにはあらかじめ渡しておいた)。
入り口で冴子嬢と俺の分の札を買い、先に入って行った二人の後を追った。
いいんだ。
これでいい、間違っていない。
父を殺そうとした元敵軍兵士、そして自分の好きな学舎を廃校に追い込んだ下手人が、同じ屋根の下に居て悪感情を抱かないわけがない。
彼女の思いは至極真っ当で、新しくできた友達を守るため、嫌いな相手に更に攻撃的になるのは、むしろ凄いとさえ思う。
怖がるより先に、彼女は徹底して俺を嫌ってくるのだから。
それはきっと、とても強いことなんだと思う。
俺の堪忍袋の緒が切れて、逆上する可能性もあると彼女は思い至っているハズ。
それでもなお「嫌う」という感情を、言葉にしてぶつけてくるのは、とても勇気がいることだ。
きっと、内心では怖がっているだろう。
それでも、その感情を圧し殺して俺に向かってくる意気込みは、敬意を表しこそすれ、俺が怒る理由なんてない。
彼女の思いは、甘んじて受けよう。
そう思って冴子嬢の後に続いて屋敷に入り、壁に飾られている油絵を順繰りに見遣りながら奥へと進んでいく。
途中、先に入った晴子ちゃんと乙葉ちゃんと合流し、最後は四人で出口をくぐった。
「面白かった~。あんな絵を描ける人たちってスゴいよねぇ。私じゃ逆立ちしても無理だよ。まぁ逆立ちも無理なんだけどね」
「知ってるわよ。それに、誰も期待してないから安心してちょうだい」
「そっか、なら安心だね!」
「えぇ?それでいいの、晴子ちゃん?」
「それにしても一枚一枚が、なんていうのかしら……熱意?本気度?かな。そういったものが垣間見えた気がするわね。時間が時間だっから仕方無いけど、出来ればもっとじっくり見ていたかったわ」
「そうだねぇ。絵をあんな間近で見れる機会なんて滅多にないから……あ、雨」
三人がわいのわいのと感想を言い合いながら外に出ると、晴子ちゃんの言う通り雨が降っていた。
風はなく、雨足も強くないが、此処から家まではかなりの距離がある。
もう引き上げるのがベストだろう。
「あちゃ~、遂に降ってきたかぁ」
「今までよく持ちこたえた方よ。残念だけど、もうお開きにしましょう?」
各々が色とりどりの傘を開き、輪になるようにして言葉を交わす。
もちろんその輪に俺が加わることなどせず、少し離れたところから眺めて、もう会えない平成での友達やかつての薩摩での学友らを連想して
惨めにも傘を片手で開くのに一人悪戦苦闘してます。
この時代の傘はボタン一つで開くような作りではなく、所謂折り畳み傘みたいに両手でやらなきゃ開かない作りをしているからだ。
「ふっ……ほ、おりゃ……」
「あの、狩生さん……何してるんですか?傘で切腹ですか?」
「なにそれ怖い。見ての通り、傘を開けようとしているんだけど」
「いえ、どう見ても奇人変人の類いにしか見えないですよ。なんで両腕使わないんですか」
「ちょっと右腕怪我してて。片腕で開くにはこれしかないかなって」
「はぁ」
ほらそこ、溜め息吐かない!
先端を地につけて、持ち手を腹で抑えて傘を下に向けて押し広げようとしている体勢は、なるほど腹に傘を刺そうとしている姿に見えなくもないか。
……んお?
「……はい」
「あ、りがとうございます」
まさかの冴子嬢からの二度目の助け船。
傘を奪われたかと思ったら、わざわざ開いて渡してくれた。
「……なんですか?」
「あ、いえ……ちょっと、意外でして」
「ふん」
嫌っている人でも困ってたら手助けはするのね。
御人好しの血筋かな?
そっぽを向いてる冴子嬢からお礼を言いながら傘を受け取ると、なにやら生暖かい視線を感じた。
誰からかは、確認するまでもない。
「おやおや~?冴子、それ渡しちゃうの~?一緒に入ればいいのにぃ」
「だからそういう関係じゃないって言ってるでしょ。何を言ってるのよ」
「なッ、そんな真顔で返されるとは……くッ、からかい辛い……ッ!」
「なんでそんな苦渋そうな顔なのよ」
そんな掛け合いをしながら歩き始める三人の後ろに着いていくと、ふと話の輪から抜け出した乙葉ちゃんが俺の隣に並んできて、小さな声で聞いてきた。
目の前で話し合う冴子嬢と晴子ちゃんを考慮しているのだろう。
「ずっと気になってたんですが、冴子ちゃんの狩生さんに対する当たりが異様に強いですよね。お二人の間に何かあったのですか?」
「いんや、冴子嬢と特別なにかがあったわけでもないよ。普段からこんなもんだし」
「え……?そ、それは狩生さんが知らない間に冴子ちゃんの逆鱗に触れちゃったのでは?心当たりはないんですか?」
「えっと……何か勘違いしているようだけど、別に喧嘩をしているわけじゃないから。ただ冴子嬢が俺を嫌っているだけ。更に言えばその理由を俺は知ってて、もうこの関係は仕方無いなぁ、とすら思ってて……あ、理由については冴子嬢に直接聞いて。俺からは―-ッ!!」
瞬間
通りの脇にある店の扉から、何かが戸口を破って吹き飛んできたのが見えた。
話している最中にも、周りに意識を配っていたのが幸いした。
俺の言葉になにやら愕然としている乙葉ちゃんの横を咄嗟に駆け抜け
「がッ、……ッ!!」
俺はそれの勢いに巻き込まれ、通りを挟んだ商店に冴子嬢もろとも突っ込んでいった。
できれば今日中にもう一話投稿したいです