明治の向こう   作:畳廿畳

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とりあえず西南戦争が終わるまで一気に投稿しようかと
ただオリ主が終戦時までいるとは限りませんが

では、どうぞ




5話 西南戦争 其の伍

 

 

 

 

「マヂかよ……」

 

 

 

鵜堂刃衛

 

全身黒タイツの上に白装束、黒い編み傘。

白黒逆転した嫌悪感を駆り立てる瞳。

 

緋村剣心が平和な世の中を作るために人斬りになった、所謂手段として人斬りの道を選んだのに対して、コイツは己の快楽の為に人斬りを進んで行う、所謂目的が人斬りである正真正銘の異常者。

 

肉を斬る感触、浴びる血の味を求めてただただ人を殺す殺人鬼。

その残忍な手口が目に剰り、新撰組から除籍されたほどだった。

 

 

つーか何でコイツも九州にいんの?!

 

斎藤一だけでお腹一杯だっつうの!

 

 

「お前……なし此処におる。警察じゃなかろ。ましてや徴集された兵士でんなかろ」

 

「うふ、うふふ。薩摩隼人は剣豪揃いと聞くじゃないか。是非味わいたかったんだよ、感触を」

 

 

え、ウソ。

 

ってことはつまり……

 

 

「一個人として来た、ち?己の欲求の為だけに、この戦場に?」

 

 

コイツは思ってた以上にアカン奴や。

 

要人暗殺の為でもなく、兵士として来たのでもなく。

ただ殺しがしたいから来た。

 

あまりにも常軌を逸してやがる。

 

 

(おい、十徳。コイツは……)

 

 

隣で立ち上がった学友がボソリと声を掛けてきた。

俺と同じく刀を抜いて構えるが、その声は微かに震えていた。

 

俺も小声で返す。

 

 

(鵜堂刃衛。政府軍側でんなければ薩摩軍(俺たち)側でんない、ただ人ば殺す楽しさを求めて来よったスーパーサイコ野郎ぞ)

 

(す、ぱ? は?)

 

(要するに敵ちことだ。嘗ての新撰組に属していたからな、実力は推して知るべしぞ)

 

 

俺が苦笑いすると、横から息を飲む音が聞こえた。

 

さて、どーする?

もちろんコイツを野放しにするべきでないのは確かだ。

 

だが、今の俺で、片手の状態の俺で太刀打ち出来るか?

たぶん無理だな。

 

流浪人の状態の緋村剣心でさえ苦戦したんだ。

ハンデのある俺じゃあ歯牙にも掛けられんだろう。

 

なら……

 

 

(どうする?怖いなら逃げてん構わんぞ?)

 

(誰がッ。ちっくとビックリしただけじゃ!俺だって戦える)

 

(……ほうか。なら俺が少し時間ば稼ぐ。その間に気持ちば落ち着かせて、隙を突いちくれ)

 

 

奴を見て恐怖に駆られるのはスゴく判る。

あの瞳が生理的に嫌悪を抱かせ、一挙手一投足が不気味に映るのだ。

 

けど、それはマズい。

奴の『二階堂平法』は、そういった心の隙を突いてくるのだ。

 

だから、心を落ち着かせる時間を作ろう。

出来たら、の話だが。

 

俺は学友から離れ、刃衛を中心にゆっくりと円を描くように歩を進める。

 

 

「今は一時休戦中なんじゃ。悪いが、そいが明けてからにしてくれもはんか?」

 

「うふふ、それはお前らの都合だろ。そんなもの俺には関係無い。俺は殺しが出来ればそれでいいんだ」

 

「殺しち……そんなこと(そがいこつ)別に此所に来んでん、東京なり京都なりでん出来るじゃろ。なし態々」

 

「なに、此所だからこそ楽しめる事もあるんでね」

 

「此所だからこそ?」

 

「あぁ。ふふふ、面白い、本当に面白い。考えただけでもこんなに面白い」

 

 

肩を震わせて不気味に笑う刃衛に対して、俺は違和感を覚えた。

 

なんか、おかしい。

 

コイツが楽しむのは人殺しであって、殺し合いじゃないハズだ。

剣心との決闘こそがイレギュラーであり、本来は弱者をいたぶる事を楽しむ輩だ。

 

何を考えてやがる?

 

 

「まぁ今はその為にも、此所でお前らを殺す必要があるんだが……んふふふ、いい目をしている」

 

 

刃衛が刀を構え、此方に向ける。

 

やっぱり、おかしい。

殺人が目的じゃなく、何かの手段としている。

 

なんだ?

コイツ本当に俺の知っている鵜堂刃衛か?

 

 

いや、今は余計な事を考えるな。

 

 

俺はちらと学友を見る。

目が合うと、その目が頷いたように見えた。

どうやら落ち着いたらしい。

 

ちょうど今、俺と学友と刃衛がそれぞれ5mほど離れて、上から見ると三角形の頂点に陣取るような形となっている。

 

よし、やってやる。

原作二人目の相手がコイツだなんて笑えない冗談だぜ。

けど、やらなきゃ殺られる。

俺もそうだし、学友が、あるいは他の仲間が殺られる可能性もある。

 

それは絶対阻止だ。

 

刀を構えて、奴に対峙する。

学友も刀を抜き、奴に向けた。

 

 

「何が目的かは知らんが、殺るち言うなら応えてやっど。()いや」

 

「うふふ、うふふふふ、うふわははは!」

 

 

奴が哄笑する。

笑って、嗤って、ピタリと止んで

 

 

笑顔のままに、襲い掛かってきた。

地を震わす踏み込みの直後、狂気を一身に湛えた狂人が迫ってきた。

 

それを俺は腰をドッシリと落として迎え撃った。

 

一撃目でよろめき、二撃目で片膝を着き、三撃目で吹き飛ばされた。

 

 

「ぐッ……!」

 

 

地を削るようにして着地し、片膝を突いて奴を睨み付ける。

 

大丈夫!

見えるし、防げる。

圧倒的な実力差があるわけじゃない。

十分に対処可能なハズだ。

 

だがやはり片腕だと儘ならない。

このコンディションじゃ却って刀は弱点となるか。

 

俺は刀を捨てて、ホルスターから拳銃を引き抜くと奴に照準を合わせた。

 

そして、発砲。

 

 

俺の手元から生じる発砲音の直後に、刃衛の所から金属音が響く。

 

原因なんざ、容易に想像出来らぁ。

 

続く二発、三発……全弾撃ち尽くし、そしてすべての発砲音の後の金属音。

 

 

「はは……ホントこの世界の剣客ってのは化け物染みてやがる」

 

 

乾いた笑いが溢れてしまうが、仕方ないよな。

 

全弾、斬り落とされたのだから。

 

いや、でも驚きはあれど、納得の気持ちもあるから。

やはり原作キャラってのは只者じゃねェんだな。

 

気持ちを引き締めた俺は拳銃を捨て、ホルスターと背負っていた小銃も外した。

銃は奴には何の役にも立たないようだしな。

 

予備の弾も全て捨てた俺はダガーを後ろ腰から引き抜き、構えて--

 

 

「疾ッ!」

 

 

一気呵成に駆け出した。

 

間合いは刀より遥かに短い。

足を止めての斬り結びなんて冗談じゃない。

 

先の斎藤戦以上に足を使っての高速機動戦を仕掛ける!

 

 

「うふふふ、うふわははは!」

 

 

奴が笑い、横一線に刀を振るう。

 

それをスライディングして躱した。

リンボーダンスのようにして、鼻先を凶刃が掠めてゆく。

違うとしたら、潜るのは死の刃。

滑る速度は全速力なみ。

 

土煙を巻き上げながら奴の足元を滑り、足を斬り付けて奴の背後に一旦離脱。

その直後、上空を黒い影が横切った。

 

 

「はあァァァ!」

 

 

学友が俺を飛び越えて刃衛の頭上から斬りかかったのだ。

その一刀は防がれたが、俺への追撃が無くなったのは大きい。

 

学友はそのまま刃衛の頭上を飛び越して向こう側に着地した。

 

 

「お(まん)の相手は--」

 

「俺じゃろうがッ!」

 

 

刃衛が向こうを向いた瞬間、ダガーを口にくわえて足首から銃剣を抜き取り、奴の腰に体当たり気味に突き刺した。

 

確かな手応え。

 

イケる!

一対一ならともかく、二対一なら優位に進められる!

 

このまま前後から挟撃して交互に斬りつければ、勝てる。

 

 

直ぐ様離脱してダガーを構え直す。

 

そして奴が振り返り、俺を視界に捉え、俺を見て、見て

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

と、大きな心音が頭蓋に響いた。

 

 

 

「あ……かッ、が……、」

 

 

 

 

息が……呼吸が、出来ない。

 

身体が動かない。

力が入らない。

 

 

『心の一方』……?!

 

 

まずいマズイ不味いマズい!

身動き一つ取れない、指一本動かせない!

 

 

「十徳!どないしたッ、大丈夫か?!」

 

「うふふ。ちょこまかと五月蝿いから、心の一方を強めに掛けただけだ」

 

「心の……一方?」

 

「要は金縛りみたいなものさ。呼吸は止まり、舌も回らず指一本動かせない。涎と涙と糞尿を垂れ流しながら窒息死する程度の、だがな。うふふ、醜い死体となるのは何分後だろうなぁ?」

 

「貴様ァ!!」

 

「うふわははは!解呪したくば俺を殺すんだな!」

 

 

クソ、クソ、クソ!

油断したわけじゃないが、まさかこうも簡単に掛かるとは!

 

向こうで激しい斬り合いを始めた二人の事なぞ全く意識出来ず、俺はパニックに陥った。

 

どうする?!

どうにか出来るのか?!

いや、どうにかしなきゃ死ぬんだ。

どうにかしなきゃ!

 

えと、えっと……確か原作ヒロインの神谷薫も同じ技を掛けられて、でも彼女は自力で解いたんだよな。

 

なら俺にも出来るハズだ。

 

どうすればいいんだ?

えと、えと……そう、叫べばいいんだっけか?!

(注:間違い)

 

叫ぶ、よし叫ぼう。

腹に力を入れて、息吸って~……

 

って無理ムリむり!

呼吸がそもそも出来ないんだって!

苦しい苦しい!

 

チクショウ。

どうする、どうすればいい?!

なにか、なにか出来ないか。

どこか動かせないか……あ、指が一本、人差し指が辛うじて動くぞ。

 

人差し指、人差し指、人差し指……

 

 

あ、あれなら無理矢理声を絞り出せるのか?

 

けど、けどッ……

 

 

と、パニックに陥っていた俺の視界には、刀を弾き飛ばされた学友の姿が映った。

そして尻餅を着き、見上げる先には刃衛の振り上げた刀。

 

あまりにも無防備な状態。

もはや絶体絶命。

数秒後にはあの刀によって命が刈り取られるだろう。

 

 

もう、四の五の考えるのは止めていた。

 

親指の爪を引っ掻けていた人差し指に力を入れ、思いっきり動かし、

 

 

()()()

 

 

「ぃ……ッだあああぁぁぁ!!」

 

 

パリンと何かが割れる音が響いたが、そんなものを無視。

直ぐ様落としていたダガーを拾い、刃衛に突貫した。

 

 

まさか解かれるとは思っていなかったのだろう、驚いた顔をして振り向く刃衛。

 

刀を振り上げたままで初動を取れず、その隙に肉薄してダガーを首筋に一閃。

 

だが、頸動脈をぎりぎり捉える事が出来ず、薄皮一枚で躱された。

 

 

「チッ!」

 

「うふ」

 

 

斬りつけた勢いを殺さず、その場でコマのように回転。

そして腰を思いっきり落として、奴の足の甲にダガーを突き刺し、地面に縫い付ける。

 

直ぐ様飛び退き、学友の横に着地した。

 

 

「だ、大丈夫か十徳?!」

 

「あぁ。お前こそ大事ないようじゃな」

 

「いや、正直ヤバい。今んなしてか身体が急に重おなって上手く動かないんじゃ」

 

 

ってことはコイツも心の一方を掛けられたのか。

話せるところを見るに、俺ほど重度なやつじゃないようだが、なんでやねん。

なんで俺にはえげつない方を掛けるんじゃ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

辺りが騒がしくなってきた。

そろそろ剣戟と銃声を聞き付けて仲間が来る頃だろう。

 

そうなれば数にものを言わせて圧殺出来る。

何人か殺られる可能性もあるが、今は犠牲に目を瞑って奴を刈る事を優先すべきだ。

 

奴を生かしていたら、絶対に後々厄介になる。

 

 

「ってなわけだから、仲間が来るまで待っちょれ。えいが?」

 

「……判った。気ィば付けろよ」

 

「おう」

 

 

不満げに言う学友を背に隠し、残り一本の銃剣を足から抜き取り構える。

 

一方の刃衛は足の甲からダガーを、腰から銃剣をズルリと抜き、捨てた。

痛みを感じていないのか、笑いながらだ。

 

 

「んふふふ、なかなか厄介だ。貴様、名前はなんだ?」

 

「狩生十徳だ。はじめまして、鵜堂刃衛」

 

「ほう、俺を知っているのか」

 

「ついさっき元新撰組の奴と殺り合ったんでな、思い出したんだよ。妖術みたいなものを扱う人斬りの元新撰組隊士」

 

 

嘘だけど。

 

 

「なるほど、だから心の一方を解かれたのか……いや、そんな馬鹿げた方法で解かれるとはな。貴様は面白いな」

 

「そりゃどーも。それでどーする?そろそろ銃声と剣戟を聞き付けて仲間が来る頃だぜ。それも全員相手にすんのか」

 

 

っと、噂をすればなんとやら、だぜ。

 

 

「なんだ、何があった?!」

 

「政府軍の攻勢か?大丈夫かお前ら?!」

 

 

刃衛を取り囲むように六人の仲間が現れた。

皆一様に刃衛を警戒して刀を抜いていた。

 

 

「政府軍じゃなか。血ば求めて戦場に流れてきた人斬りじゃ!油断召されるな!」

 

「なん、だと……」

 

「人斬り…?奇妙な出で立ちぞ」

 

「余程腕に自信があるのか」

 

 

取り囲む薩摩の侍どもが口々に言葉を溢すなか、当の刃衛は薄気味悪い笑顔を更に深くして言った。

 

 

「うふふふ!これはマズいな。薩摩隼人にこんなに囲まれたら命が一つじゃ足りないか」

 

「じゃあどーする?大人しく首を置いていくか?」

 

「いやいや、此処はもう用済みさ。お前程の輩が居たのは想定外だったが、これでも十分さ」

 

「何を言って--」

 

 

言いかけて、止めた。

 

全くの予備動作無しからの、刀の投擲。

 

真っ直ぐに飛来したそれに俺はなんら反応出来ず、それは深々と脇腹に突き刺さった。

 

 

「がぁ……ッ!!」

 

「「十徳!」」

 

「うふわははは!直接感じは出来なんだが、いい感触を思わせる刺さりっぷりだ!」

 

 

そう笑い声を残し、刃衛は踵を返して走り去っていった。

 

 

「ま、待ちやがれッ……!」

 

「おいダメだ、動くな十徳!」

 

 

周りの仲間が俺に駆け寄り、心配してくる。

いや、それは有り難いんだが今は奴を追うのを優先すべきだろうが。

 

 

「だい、丈夫だ……ちょうど肋骨に刺さって止まってる、死にゃせんじゃろ」

 

「そか、良がった。じゃっどん、もう戦えなかろ。後ろに下がって手当てば」

 

「それよりも、奴をッ」

 

「そいも大事じゃが、今はお前を後ろに運ぶことが優先じゃ。そいから奴の存在の報告と周知が優先だ」

 

 

うぐ……

 

まぁそうか。

少ない人数で行っても返り討ちに会うだけか。

なら全軍に報せて警戒を高めるのが最適解だ。

 

俺は救援に来た仲間に肩を借りて本陣に向けて下がった。

刀は抜くと出血するので刺したまま。クソいてぇ

 

 

「十徳!大丈夫か?!」

 

 

学友が俺のもとに走ってきた。

どうやら心の一方は解けたようだな。

とはいえコイツも大分ボロボロだ。

一時は奴と一対一で戦ったんだ、なかなかの強運の持ち主だぜ。

 

 

「まぁ死にゃあせん。お前は良くなったようじゃな」

 

「あぁ、アイツが逃げてから急に身体が元ん戻ったんじゃ。不思議なこつよ。あ、俺も一緒に本陣に戻っど」

 

「技の効果発動には距離が関係してんのか。遠くに離れれば自動で解呪出来るのか……」

 

「ますます妖術幻術の類いみたいぞ。そいにしてん、奴がこのまま逃げるとは思えないんじゃが」

 

「俺もそう思う。奴が逃げたんは政府軍が居る方向じゃ。何処かに身ば隠すには不向きな場所なんじゃが……」

 

 

休戦中とはいえ互いに監視の目が緩むわけではない。

お互いが監視し合っている場所に逃げるなど、何を考えてるんだ?

 

 

「そうよのぉ。やっぱり、政府軍の手先なんじゃなかか?そいで自陣に戻ったのかも」

 

「いや、それは有り得ない」

 

 

幕末の折に新撰組を追われたんだ。

またお上の組織に入って兵隊なり抜刀隊なりに所属するとは思えん。

 

暗殺の依頼があって戦場に来たとしても、乱入のタイミングがおかしい。

混戦の只中ならまだしも、休戦が発効した直後だ。

 

そんな瞬間に騒ぎを起こす暗殺なんて……

 

 

 

『まぁ今はその為にも、此所でお前らを殺す必要があるんだが』

 

 

『此処はもう用済みさ。お前程の輩が居たのは想定外だったが、これでも十分さ』

 

 

『 やっぱり、政府軍の手先なんじゃなかか?そいで自陣に戻ったのかも 』

 

 

 

殺人をなにより愉しむあのサイコキラーが、必要だからと俺たちを殺しにきた?

 

もし、此処で俺たちが殺されてたら、どうなってた?

騒ぎを聞き付けて仲間が来たら、きっと政府軍の奴等が休戦約束を破って暗殺しに来たと勘違いする。

そしてもし、俺が奴の正体を知らなければ、殺されずに済んでも政府軍の手の者と思い込む可能性が十分にあった。

つまり、結果は一緒になっていたハズだ。

 

約束を反故にした不届き者の政府軍らに逆撃を与える、と。

 

だが結局は殺せず、俺は原作知識から奴の正体も把握していた。

そういった事態にはならずに済んだんだ。

おそらく最善の形で対処できたわけだ。

 

しかし此処での騒ぎは十分と奴は宣い、政府軍の陣地の方へと行方をくらませた。

 

政府軍の、陣地の方へ……

 

同じように、自分の正体を知られずに殺人に至ったなら……

いや、殺人に至らなくても襲撃に成功してしまえば…

 

 

 

 

「それはヤバいって!!」

 

 

確実に休戦約束が破棄され、政府軍が再度此処に攻め込んでくる。

 

まだ負傷者全員を後方に護送しきれていない此処を、だ。

ましてや、約束を先に破ったのは薩摩軍だと政府軍は誤解する。

それはつまり、真実は別としても薩摩軍が後世に拭いようのない汚名を残すことになってしまう。

 

 

 

 

 

「あんの野郎ォォォオオ!!」

 

 

 

 

 

 

俺は制止の声を振り切り、敵陣へと全速力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 






日本史上最大にして最後の反乱の行方や如何に?!



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