明治の向こう   作:畳廿畳

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さあ、どうぞ








48話 横浜激闘 其の終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機関起動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆動系回転数:最速

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱エネルギー:許容値超過

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体への負荷:尽く度外視

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がこん、と歯車が噛み合い、動き出す音が骨に響く。

 

その後にかしましく回転する音と振動の調律が、足先から頭頂にまで届く。

 

徐々に右腕に熱が宿りはじめ、その色も次第に光彩を放つ赤色へと変わっていく。

 

それはつまり、内臓を焼き、血液を沸騰させ、神経を膨張させるほどの熱量がこの身を犯すということ。

身体から熱気が立ちこめ、視界が揺らぐ。

 

体内に籠る熱を吐き出すための吐息は、外気よりなお熱い。

 

 

この間、コンマ数秒。

 

人体の(きわ)を高熱で押し広げ、無理やり底上げした身体能力でもって、急接近する。

 

 

眼前に迫るは、狂喜に染まる刃衛の顔。

 

 

 

互いに空気の壁をぶち破って超速で接近し、そして刃をぶつけ合う。

 

 

甲高い金属音が残響するなか、地を穿つように駆け、空間を断裂させるように刀を振り合う。

 

 

 

 

駆け、駆け、駆け、駆け、駆け続ける。

 

 

 

振るい、振るい、振るい、振るい続ける。

 

 

 

 

「があああぁぁぁあああ!」

 

 

「うふわはあははははは!」

 

 

 

刃がぶつかり合う音が鼓膜に響き、地を穿つ音が赤く染まる闇に響き、全身で空気をぶち破る衝撃音が総身に響く。

 

しかし、それら全ての音が耳に届かない。

 

荒ぶる呼吸も、激動する心臓の音も。

刃衛の哄笑も、俺の咆哮さえも。

 

全てが右腕の歯車の音に掻き消されていく。

骨を伝って脳髄に響く機巧の旋律が、俺の聞こえる全てだった。

 

 

明らかにおかしい。

この底上げされた身体能力は、今まで経験したことのない程のものだ。

心の一方で強化された刃衛の速度と力に、充分に対抗できている。

 

否、否だ。

 

もっと速くなれる、もっと強くなれる。

 

 

しかも、この身を蝕む高熱と激痛が、今は露ほども感じられない。

身体からあらゆる水分を蒸発させ得る程の熱量も、臓腑の底から全身を燻す激痛も、全てが感じられない。

 

もっと、もっとだ。

 

もっともっと、機関を回せる!

 

 

 

「うふわはあははは!良い、良いぞ狩生!やはり貴様の戦い様は俺を斯くも刺激する!斯くも興奮させる!うふわはあはははは!!」

 

 

砲弾も斯くやと思うほどの吶喊。

 

直後に互いの刀がぶつかり、極大の火花と衝撃波が生まれる。

 

間髪入れずに、拳打のフルスイング。

顔面を陥没させる勢いで振るった拳は、狙い過たずに互いの顔面に抉り込まれた。

 

きっとえげつない音が響いたことだろう。

だが今の俺には、歯車の調律が若干乱れた感覚に襲われただけ。

奴の満面の笑顔に拳を叩き込めた爽快感すら覚えず、それよりも忌々しい気持ちが徐々に膨れ上がってきた。

 

が、そんな感覚を意識する余裕など無く。

 

全運動エネルギーを乗せた拳の威力は凄まじいものだった。

互いの身体が吹き飛び、それぞれ倉庫の壁に背中から激突したのだ。

 

 

「がッ…!!」

 

「ぐう…!!」

 

 

強制的に肺から空気が絞り出て、むせ返るほどに息苦しくなる。

更には朧気に揺らいでいた視界に霞が生じ始めた。

 

だが、それでも。

 

そんな些事などお構いなしに、背や頭に崩れ落ちる瓦礫片をそのままに、一瞬の停滞の後に直ぐ様飛び起きて再度互いに向かって吶喊する。

 

 

 

 

再び激しい剣戟を繰り広げた。

 

 

 

 

 

ああ……忌々しい。

 

あの笑顔が憎々しくて腹立たしい。

 

奴を殺したい。

殺して殺して殺して殺して、殺し尽くしてなお殺したい。

 

臓物(ハラワタ)をぶちまけて、その狂笑に染まる顔を苦痛と後悔に歪めてやりたい!

 

 

 

ああ…ああ、あああ!

 

 

 

ああああああああああ!!

 

 

 

 

「刃衛ええぇぇぇぇええええ!!」

 

 

 

 

不知火を一心に振るい、振るい、振るい続ける。

 

奴の応じる刃を打ち据え、叩き伏し、鍔迫り合いをしながら肉薄する。

鼻先すぐに奴の狂った顔が迫った。

 

 

 

ぐしゃり、と互いの渾身のヘッドバットが炸裂した。

 

 

 

一度ではない。

 

二度、三度と立て続けにお見舞いし、そして互いに額から血を撒き散らす。

 

骨が割れ、陥没してもおかしくないほどの衝撃。

なれど、痛くはない。

ただただ不愉快なだけ。

 

心の底から全身の神経を通して指先に至るまで、くまなく俺の身体から溢れ続ける()()が俺を突き動かす、駆り立てる、囃し立てる。

 

スペック以上に右腕をフル稼働しているのだ。

身にはもとより、精神への代償もまた大きいのは道理だろう。

 

だが、それでも……それでもだ!

 

躊躇するな、後先考えるな、四の五のご託を並べるな!

 

 

 

回転率を、更に上げろ!!

 

 

 

 

骨伝導する歯車の音は、既に大気へとけたたましく響く。

赤熱化する右腕は目映く発光し、周囲の温度を確実に上昇させる。

 

 

 

 

やがて均衡を保っていた天秤は、次第に傾き始めた。

 

僅かな、ほんの小さな差だが、俺たち当人からすれば、それは確実だった。

 

 

「があああああああ!!」

 

 

蒸気機関が、心の一方を確実に凌駕し始めたのだ!

 

渾身の斬擊が奴の身を削り始め、或いは刀を叩き折る。

刃衛は折れた刀を躊躇なく捨てて、墓標の刀を地から抜き取って即座に対応する。

 

 

それを叩き伏し、何度でもその身に裂傷を刻み付ける!

 

 

 

「ッ、うふ、うふふふ!うふわはあはあはあは!!」

 

 

 

致命傷には程遠い。

 

端肉や薄皮だけを斬らせる回避行動は、忌々しいが流石だった。

奴もまったく堪えている様子もなく、嬉々としてなお刀を取っ替え引っ替え振るっていた。

 

 

 

互いに一太刀でも凌げずに浴びれば、どこであれ容易く両断されよう。

そんな一閃を息つく暇もなく、互いに繰り出し続ける。

 

もはや怒濤の剣戟は、心の一方と蒸気機関で底上げされた身体能力でしか知覚できず、ついてこれるのは互いのみ。

 

 

あと十合前後打ち合えば、不知火が奴の骨を確実に断つ。

 

そう確信し、されど浮かれることなどなく、むしろ更なる憎悪と嫌悪と怒りと憤りが沸き上がってくるのを自覚しながら、もう何度目かになる不知火による全力の一閃。

 

 

防御の刀を押し込み、奴の肩肉を抉った瞬間。

 

 

 

 

「「ーーー!!」」

 

 

 

呆気なく、奴の刀と俺の不知火が響音とともに破砕した。

中折れした刀身が回転しながら互いの頬を切り裂き、彼方に飛んでいった。

 

一瞬の出来事、唐突な不測の事態。

 

瞬きの間にも満たない、ほんの僅かな動揺。

 

 

 

先に殺意を再充填し終えたのは、刃衛の方だった。

 

 

 

「うふわはあはははは!」

 

 

 

一瞬にも満たない僅かな虚を突かれ、奴の一本の指が俺の残った目に高速で迫ってきた。

 

 

 

「……っっ!!」

 

 

 

首を無理やり捻ってなんとか躱--した瞬間、その手が開いて首根っこを掴まれる。

 

そして、そこを軸に高速機動で俺の背後に回り込み、間髪入れずにヘッドロックが掛けてきた。

 

 

「ッぁ、か…!」

 

 

容赦も糞もない、全身全霊の首絞めだ。

首の骨が軋みを上げ、呼吸が完全に止まった。

 

 

こんの……ッ!

 

毎度毎度絞め技を織り込んできやがって!

 

感触を直に楽しみてェのか知らねェけどよ!

 

 

毎度毎度、腹が立つんだよ!

 

 

 

 

「があああぁぁぁあああ!」

 

 

「ぬう?……がふッ?!」

 

 

 

気色悪い感触と、気味の悪い音が頭蓋に響いた。

 

ああ…気持ち悪い。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!

 

感触も感覚も気持ち悪いが、なにより痛みが無いのが一番気持ち悪い。

 

 

左腰から刀を引き抜き、()()()()()()()()()()のだから。

 

 

無論、刃衛の腹部もろともだ!

 

 

「ぐ、あ、あああああ!」

 

 

骨を伝わり臓腑に響くほどの咆哮を上げ、更に刀を押し込む。

 

感覚で、奴の背まで貫通したのが分かった。

 

けど、止まらない。

もっともっと押し込む!

 

 

「ぬぉおおお!」

 

 

俺の頭の直ぐ後ろから、奴の咆哮が耳を貫いた。

 

直後、首を絞める力が緩むと同時に、刀に伝わる奴の感触が断たれた。

抵抗が無くなったのだ。

 

コイツ……刀をへし折りやがった?!

 

直ぐ様奴の腕から脱し、振り向き様に血を撒き散らしながら折られた刀を引き抜く。

見ると、奴も折れた刃を引き抜いていた。

 

まだまだ致命打には程遠いか!

 

上等だよ、クソッタレが!!

 

 

 

折れた無銘の刀を振りかぶり、渾身の力で奴に投擲する。

と、それに被さるように奴も折った刃を投擲してきた。

 

 

空中でそれらが衝突し、大きな火花が生じた。

 

 

無論、そんなものに目をくれることなどするハズもなく。

俺たちは投げた勢いのままに接近して……

 

 

 

激突。

 

 

 

大気を震わすほどの衝撃が生まれ、俺たちを中心に風が四方八方に巻き起こった。

あまりのインパクトに脳が揺れ、覚束ない視界が更に不明瞭になる。

 

 

「ぐ、ふ…ッ、うふ、ふふ!楽しいなぁ、気持ち…いいなあ!狩生、お前もそう思うだろう?」

 

 

 

俺の腕からは鮮血が、奴の腕からは鮮血と蒸気が迸る。

互いに心臓に来るハズだった刃を、左腕を犠牲にして阻んだのだ。

 

肉を裂き、骨を貫いて、僅かながら胸に折れた刃が突き刺さる。

 

 

「お前との殺し合い、否、喰らい合いは、人の本質を捨てて獣へと昇華させてくれる。そのことの気持ちよさといったら……うふ、うふふ!」

 

 

ああ、気持ち悪い。

超絶に気持ちが悪い。

 

自分の身体がまるで人形のよう。

己の意思で動かしているハズの四肢は、まるでリモコン操作で動くロボットのよう。

 

本当に、吐きそうになる。

背筋を得体の知れない怖気(おぞけ)が這いずり廻り、臓腑の底から震えが押し寄せてくる。

 

 

「この快と悦をお前が教えてくれた。今もまた味わわせてくれる!本当にお前は、お前は……!」

 

 

歯がかちかちと音を立て、痛くはないのに寒気だけは感じている気がしてならない。

腕からは絶えず膨大な熱量が送られてきているってのに、もう本当に俺の身体はどうなっていやがるんだ。

 

けど、()()()()()すらどうでもいい。

 

なによりも気持ち悪いのは、俺の眼前にある醜悪な嗤い顔。

そして、下卑た騒音と悪辣な眼光。

 

コイツがなにより気持ち悪くて、なによりも腹立たしい。

 

 

だから俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズを溢すその口内に、赤熱化した義手を突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「……ッッ!!!」

 

 

 

声にならない苦悶を溢す刃衛を無視し、なお口内を拳で蹂躙する!

 

そのお喋りな口を!二度と使えねェようにしてやんよ!!

 

 

ぐしゃり、と数本の歯を握りへし折った。

そして、奴の折れた刃を持つ手が緩んだ瞬間、手を振り払って後ろ腰の拳銃を取り出す。

 

奴の心臓を撃ち抜くため直ぐ様銃口をーー

 

 

 

ぐ、あ、あああぁぁぁああああああ!

 

 

 

 

「あああぁぁぁあああ!!」

 

 

 

 

()()

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

手が!手が、噛み砕かれた?!

 

 

ああああああああああ!

 

 

全身の神経が熱に犯される、貪られる!

 

熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 

 

「があああぁあああ!!」

 

 

「な゛ッ……!!」

 

 

無我夢中で刃衛に足技を掛けてバランスを崩させ、噛み砕かれた手の残滓でもって奴を背から地に叩きつけた。

 

爆音と地響が空気を伝い、奴の背を中心にクモの巣状に地に亀裂が走る。

 

けど、そんなことこそ今はどうでもいい!

 

これはマズい、ヤバい、最悪だ。

ここにきて痛覚が戻りやがった!

 

あまりのクソ熱量が脳をも犯したか?!

 

いや、原因なんか何だっていい!

このままじゃあ本当に死ぬ!!

 

 

早く…早くこの腕を()()()()()()()()

 

 

背からククリを引き抜くと、踞って義手の接合部に押し当てる。

 

 

そしてーー

 

 

 

「■■■■■■■!!」

 

 

 

もはや、声にならない叫び声。

 

血と共に高熱の蒸気が噴出し、どさと義手が地に落ちた。

 

そして、急速に熱が引いていくのが分かる。

身体中を這いずり廻っていた怖気が無くなっていき、それと入れ換わるように身体中を激痛が駆け巡っていく。

 

肉が、骨が、内臓が。

脚が、胴体が、顔面が。

残った三肢が、失った一肢が。

 

痛くて、痛くて、痛すぎる。

 

 

忘れていた痛みが、急に押し寄せてきた。

 

 

絶叫が轟き、慟哭が木霊する。

 

 

 

喉は嗄れ、咽び叫ぶ声はしわがれて、溢す涙はとてつもなく熱い。

 

 

痛みに身悶え、嗚咽し、叫喚する。

 

 

 

吠えて、吼えて、咆えて。

 

 

 

 

「刃衛ええぇぇえええ!」

 

 

「狩生ううううううう!」

 

 

 

 

狂態を顕に襲い来る刃衛を、腰をどんと落として迎え撃つ。

 

泣いて止まっている時間は無い。

叫んで痛がっている余裕は無い。

 

 

片腕はまだ動く、脚だってまだ動かせるんだ。

まだまだ戦える、まだまだ奴を殺せる!

 

 

刃衛は、己の腕に突き刺さった高熱の不知火を素手で掴み、引き抜いて手に持っている。

手からは肉の焼ける音と蒸気が噴出しているが、奴は至って変わらない狂った忌々しい笑顔をしている。

 

だが、当の腕は刺突と高熱で使い物にならなくなったようだ。

 

俺は不知火を持つ腕目掛け、横にククリを振りかぶり、そして振るう。

 

 

しかし。

 

 

「しまッ――ぐふッ…!」

 

 

激痛と焦燥、困惑で初歩的なフェイントに引っ掛かっちまった!

流れた姿勢を刃衛の前に晒すことになり、腹部を盛大に蹴り上げられ。

 

そして……

 

 

「ぐ、あぁ、ああああぁぁあア亜唖堊婀亞襾阿!!」

 

 

失った右腕の肩部に、不知火が突き刺された。

 

じゅくじゅくと、じゅうじゅうと血肉が熱せられ、骨すら燃やされていくかのよう。

全神経が悲鳴をあげ、それを代弁するかのように叫び声を轟かせる。

 

痛い痛い痛い痛い痛い。

 

あまりの痛さと熱さにククリが手から抜け落ち、再び刃衛の狂喜に染まった顔が眼前に現れた。

 

 

コイツは、この期に及んでも至極の笑みを溢すのか!

 

嬉しそうに、愉しそうに。

本当に痛みと苦しみを快、或いは悦として感じ取っているようだ。

 

そんな態度が、本当に忌々しいんだよ!!!

 

 

「ああああぁぁあ!!」

 

 

全身全霊の喝を己に叩き込み、刃が抜かれないよう右肩に力を込めてそれを固縛。

 

ククリを落とした左腕に同様の力を込め、振りかぶる。

 

 

そして腕を貫く折れた刃を、そのまま刃衛の首筋に叩き込んだ。

 

 

 

無論、これで終わらせない。

 

 

 

刺し込んだ腕を強引に引っ張り、狂喜と苦悶が入り乱れた顔を口許に引き寄せ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳を噛みちぎった。

 

 

 

 

「…ぐ、ぁぁあああああ!!」

 

 

盛大に噴き散る鮮血。

初めての、薩摩での戦いを含めても初めての、奴の明瞭なる悲鳴。

 

 

だが、生憎とそれを聞き悦に浸る趣味は持ち合わせていないし、満足する余裕もない。

直ぐ様奴の首に刺さった刃を腕ごと抜き、ペッ、と嫌な感触のする奴の耳を吐き出しながら落ちたククリを拾う。

 

そして、睨み上げる俺の視線と、呻きながらも見下ろす奴の視線が交わったその瞬間、下からの大きな一閃を振るう。

 

 

 

空気を叩き割る勢いで放った一太刀は

 

 

 

 

 

「はッ!ザマァ見やがれクソが!!」

 

 

 

奴の使用不能の手を、上空へと斬り飛ばした。

 

 

 

血と一緒に舞うは、奴の手首。

 

 

確実に奴の戦闘能力と生命力を削ってやった!

 

 

だが、当然そんなものを悠長に見送ることなどせず。

 

勢いそのまま、振り上げたククリで奴の頭をカチ割ろうと脳天に振るった一閃は、しかし。

 

 

 

「あああぁぁぁあああ!」

 

 

その切断した腕で防がれた。

 

刃衛はあろうことか、切断面で斬擊を受け、肘まで抉り込ませることで凌ぎやがった!

 

 

 

「?! なッ…!」

 

 

 

あまりの狂態、あまりの暴挙。

 

本当にコイツはッ…苛立たしいほどに狂ってやがる!

 

 

内心で奴の凶行を罵倒した直後、すぐに再攻勢に打って出ようとしたが、やはりと言うべきか流石と言うべきか。

 

俺の追撃より、奴の行動の方が早かった。

 

 

 

「……ッぐぅ!」

 

 

 

刃衛は直ぐに俺を蹴り飛ばし、距離を作ったのだ。

 

視界が二転三転し、身体の至るところが地にぶつかっていることから自分が無様に転げ回っていることが分かる。

 

やがてその転がる勢いも無くなると、どこか懐かしさを感じる真ん丸の月が視界に入った。

そう言えば、ここ横浜で戦いの火蓋を落とした時も月を見上げていたなと、ふと余計な思考が頭を過るも直ぐ様それを捨てて立ち上がる。

 

 

あと少し、ほんのあと少しなんだ!

 

もう一押しで奴に勝てる!奴を殺せる!

 

 

だというのに!!

 

 

「……ぐ、ッッ、ぅぅ!」

 

 

どうして力が入らない?!

どうして手も足も震え始めやがる、どうして足取りがこんなにも覚束ない?!

 

視界も、右腕を切り落としたというのに霞みが取れず、刃衛の姿を正確に視認できない!

 

 

「ぉぉぉぉお、おおおおおお!」

 

 

それでも必死に足に喝を入れ、雄叫びを上げ、己が二本足で立ち上がる。

 

立て、立つんだ!

アイツはあんな程度じゃ絶対にくたばらない。

直ぐに立たなきゃ()()()()殺られんぞ!

 

 

そして、歯を噛み締めて直立した途端、血が頭からストンと落ちて、視界が暗転した。

ふわりと浮遊感に襲われ、吐き気が込み上げてくる。

背筋を寒気が貫き、自分の意思とは無関係に身体の先が震え始めた。

 

ああ……この感覚。

この感覚を俺は覚えている。

血が全くもって足りず、意識を失いかける寸前の状態だ。

 

同じだ。

 

薩摩の時と、状況がほとんど同じだ。

必死になって戦っても、どんなに頑張っても、結局は奴を殺せない。

 

 

最後の最後で、俺は俺に負けて、気を失う。

 

 

半年前と、本当に変わらない。

修練を重ね、実戦を通して心身を磨き、戦い続けてきた。

腕を失い、片目を失い、全身に銃創裂傷火傷打撲痕等々多種多様な傷を負って、なお変わらない。

 

 

弱さはまったく変わらない。

 

 

 

俺は、まったく成長していない。

 

 

 

 

 

 

そのことがスゴく悔しくて、何よりも腹立たしくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふッ、ざけんじゃ、ねぇッッ…!!」

 

 

 

 

意味なんて無い。

 

けれど、気休めでもいいから、なんとか血を全身に巡らせたいがため、左胸を思いっきり叩き続け、心臓を圧迫する。

 

 

 

おんなじ状況だってんなら、なおのこと!

 

ここで!

 

今ここで潰れるわけにはいかねェだろうが!

 

歯ぁ喰い縛れよ!

残った目ん玉引ん剥いて、暗闇でも確と前を見ろよ!

背筋伸ばして、しゃんと立てよ!

 

今!今、嘗ての自分を越えないでいつ越えるんだよ!

 

 

 

いつ刃衛に勝てるんだよ!!

 

 

 

 

「がああああああ!」

 

 

 

 

震える左手を上げて、肩に刺さったままの折れた不知火を掴む。

じゅう、と手のひらが焼かれる音が聞こえたが、努めて無視して思いっきり引き抜く。

 

血は、出なかった。

肉が完全に焼かれ、固形化されてしまったようだった。

 

次いで、唯一の腕に刺さっている折れた刀を咥える。

そして、一思いに引き抜く。

 

肉を切り裂き、骨から這い出る音が頭蓋に響いて酷く不快だった。

おまけにクソ痛いし、此方は血が遠慮なく噴出している。

 

ずるり、と全てを引き抜くと、からんと地に刀が落ちた音が響いた。

 

 

 

あぁ……気持ち悪い。

寒くて気持ち悪くて、頭が割れそうに痛い。

胃から内容物が込み上げてきて、必死に嚥下するだけで相当の体力を消耗する。

 

それに、冗談抜きで全身の傷が痛い。

いっそのこと気を失った方が楽になるんじゃないか、という誘惑にすら駆られてしまう程。

 

みっともない程に泣き喚きたい。

 

 

「      」

 

 

耳鳴りが酷い。

鼓膜が痛いし、脈動と一緒に脳髄ががんがんと刺激されて頭痛を併発させる。

 

五月蠅いな。

蝉の音か、それともスコールの音か。

じいじいざわざわと耳元でがなり立てるな、何も聞こえねぇじゃねぇか。

 

 

 

「        !」

 

 

 

奥歯ががちがちとぶつかり合い、その振動が骨身を通じて全身に震えをもたらす。

切り落とした右腕の先端から冷気が入り込んできている気がする。

必死に無い腕を掻き抱くが、一向に寒さは変わらない。

身体中が凍えるほどに寒い。

 

 

 

「        !!」

 

 

 

身体が鉛のように重くて、動くことが酷く億劫に感じる。

だというのに寒さから身体は無意識に震え、荒れる呼吸で肩は乱高下を繰り返す。

その肩なんてちぎれるほどに痛い。

 

瞼もまた重く、暗い視界がさらに狭くなるという最悪なコンディションだ。

 

 

 

 

「        !!!」

 

 

 

なにか、さっきから雨の音に混じって人の声が微かに聞こえている気がする。

そういえば周りには人が何人か居たんだっけか、よく覚えていない。

まあでも、もうよく分からないし、ぶっちゃけどうだっていい。

 

 

とにかく刃衛だ。

 

いったい奴は今どこ……ああ、いた。

 

見つけた。

 

 

間違えようハズも、忘れようハズもない。

 

禍々しい殺気に加え、醜悪極まりないあの狂気。

見えないし、聞こえないが、それでも嫌というほどに分かる。

 

目の前から、ゆっくりと近付いてくるのが分かる。

 

 

 

有り難い。

向こうから出てきてくれるたァ好都合だ。

 

もう満足に身体を動かすことすらままならないんだ。

探し出す労力を節することができたのは素直に有り難い。

 

 

 

 

なればこそ、最後の力を振り絞って殺してやる。

 

残る力を全て注ぎ込んで、テメェを殺してやる。

 

 

全身全霊、全力全開でぶっ殺してやる。

 

 

 

 

 

震える腕を右腰に回し、懐刀を引き抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

残る唯一の武器を構えて、俺は暗い世界を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

 

「……本当にこれが、人の戦いなのか」

 

 

剣心は、十徳と刃衛の血みどろの、血で血を洗う骨肉の争いを見て、呻いていた。

 

自らの傷、否、死すらも顧みず、相手を殺すことのみを唯一の目的として、殺し合う。

刀に生きる剣客の戦い方ではない。

刀を消耗品として乱暴に扱い、しかしそれによる攻撃に専心するわけでもなく、拳や足、はたまた額ですら武器にする徹底精神。

 

無惨にして残酷。悲惨にして過酷。

なれど、二人の争いは高次元にありすぎて、視認することすら儘ならなかった。

 

人とは、斯くも“人”を捨ててまで戦いを繰り広げられるのか、と声を大にして問い質したいほど。

 

もはや彼らの争いは人のものに非ず。

剣心は既に、そう思っていた。

 

それは、正しく異常だったが故。

異質で、異常で、あまりにも常軌を逸している。

狂っている。

だが、それでも鵜堂刃衛ならばと、奴の気質を理解していればその異常さは、あながち不思議ではない。

 

特筆すべき不思議、否、異常さは、相対する青年の方。

白銀の青年だ。

実力も、狂暴性も、恐らくはその思考も、全てが刃衛に拮抗するほど!

 

さっきまでは普通の好青年だった。

それが、急激に変貌したのだ。

叫ぶ声には狂気も孕まれ、振るう剣閃は鋭く、そして禍々しい。

 

人の域を越えた機動と怨嗟の咆哮。

自分を刺し貫いても敵に傷を負わさんとする執念。

何をトチ狂ったか己の右腕を斬り落とし、そして敵の耳を噛みちぎるという暴挙。

 

 

「彼は、いったい……」

 

 

何者なのだ。

 

 

そう呟こうとしたとき、その争いは一時の静寂を迎えた。

刃衛が青年を蹴り飛ばし、距離が離れると二人がのろのろと立ち上がったのだ。

 

二人の様子は最初の頃と大きく違い、もう満身創痍も甚だしかった。

刃衛も青年も、ともに酷すぎた。

 

見ている此方が痛くなるほどに、出血が多すぎる。

ともに片腕を亡くし、一方は片目を、一方は片耳を失っている。

見ていただけでも腹部と腕部は刀が貫通し、他にも大小様々な裂傷がところ構わず付けられていて、顔面もおびただしい血糊が付着している。

 

 

 

(……ッ、いけない!このままでは彼が死んでしまう!もう十分だ、後は拙者たちで――!)

 

 

 

ふと、彼らの戦いを見ることに没頭していた意識が覚醒し、我に帰った。

 

もう十分だ。

あれほどに刃衛を追い込んだのだ。

それだけで大金星だ。

これ以上戦えば死んでしまう。

 

それは絶対にダメだ!!

 

どうしてそこまでして戦う。

何がお主をそこまで突き動かす。

もうそれ以上戦えば死んでしまうというのに、何を考えているというのか!

 

彼は絶対に死なせてはいけない、絶対に助けなければいけない。

自分の不殺の誓いもさることながら、もっと別の理由でそう叫ぶ。

 

理屈もへったくれもないし、具体的に何がまずくなるのか自分でもよく分かっていない。

だが、それでも。

その考えに一抹の疑問も抱くことなく、むしろ確信しているがため、剣心は十徳を庇うため、駆け出した。

 

が、その足はすぐに止まった。

 

 

 

『狩生、十徳……そういえば一つ、言い忘れていたことがある』

 

 

 

小さな、しかし確かに響いた微かな声。

気付けば刃衛の身体は筋骨隆々なものではなく、嘗ての幽鬼を思わせる姿に戻っていた。

 

狂暴な雰囲気、立ち居振舞いはもはや見る影もなく、瞳に宿る不気味な狂気も、今ではどこか弱々しい。

それ故、紡がれた言葉はどこか大人しげ。

 

 

 

 

『このつまらない明治の世において、お前という得難い好敵手を得られた。お前という果たし難い目標を得られた……お前との戦いは、本当に楽しかった!』

 

 

 

 

端的に言うと、あまりに普通な声音だった。

普通な、本当に感謝の念を込めた声音だったのだ。

 

嫌悪感を駆り立てる禍々しい声音でしか話さなかった狂人が、普通の人のように言葉をこぼした。

そのあまりの急激な変化に、戸惑いから足が止まってしまったのだ。

 

 

 

『お前との戦いに最大の敬意を、お前との邂逅に至上の祝福を!俺は、お前と出会えて良かった!!』

 

 

 

 

 

本当に嬉しそうに、刃衛は言った。

心の底からの純真なる喜びを、言葉に乗せていた。

 

理解できない。

最初は刃衛をそう断じた。

そのおぞましさから嫌悪感が心を支配した。

その狂気に呑まれないよう、必死に自分を震い立たせて戦った。

 

けど、刃衛の豹変した朗らかな笑みを見て、少しだけ分かった気がした。

上手く言語化できず、こう言うとかなりの語弊があるだろうが、敢えて誤解を恐れずに言うならば。

 

 

きっと、刃衛もまた、彼に救われたのかもしれない。

 

 

 

 

 

『元新撰組隊士、鵜堂刃衛!さればこそ、その首を我が冥土の土産とさせてもらう!!!』

 

 

 

 

 

楽しそうに叫ぶ声。

今までナリを(ひそ)めていた嘗ての狂気が、辺り一面に発散された。

びりびりと空気を伝う殺意と狂気は、この場にいる全ての者の肌を刺激したことだろう。

 

なら、それを直に差し向けられた青年は--

 

見ると、やはりと言うべきか、或いはまさかと思うべきか。

 

小さな懐刀を引き抜き、臨戦態勢に入ったのだ。

 

 

 

(なにを……!もう止めるんだ!もう、これ以上はッ…)

 

 

 

ずきん、と胸に走る痛みを堪え、愕然として剣心は青年を見た。

 

 

もはや半死半生とも言えるレベル。

おびただしい量の血を流し、見える姿は痛ましい。

事実、本人も痛みに堪えているようだ。

無い腕を掻き抱いていた姿は、非常に痛ましかった。

 

視線は呆としていて、刃衛を正確に捉えているか甚だ疑問だ。

いや、きっと見えていないし、恐らく聞こえてもいないだろう。

何故なら、彼が懐刀を抜いたのは、殺気と狂気をぶつけられてからだ。

 

それまでは刃衛の言葉など耳に入らず、その上で見えていない瞳で刃衛を探していたように見えたからだ。

 

 

 

もう立っていることすら辛いハズだ。

なのに、その上なお戦おうとするなど、正気の沙汰ではない。

死んでもおかしくないのに、まだ殺そうと立ち続ける。挑もうとする。

 

 

その姿が、あまりに胸を抉ってくる。

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

そんなボロボロの青年が懐刀を構えて、何かを言った。

 

頼り無げなその姿は、押せば転びそうなほど。

そんなことは、きっと自分でも分かっているハズだ。

それでも青年は少しの逡巡もすることなく、戦う姿勢を見せた。

 

 

 

そして、吼えた。

 

 

 

 

『……、から、もう二度と、負ける訳にはいかねぇんだよ!お前にも、俺にも!』

 

 

 

悲痛な叫びは、己を鼓舞するためか、或いは克己のためか。

どちらであっても、その声音はあまりに悲哀に満ちていて、痛切を帯びていた。

 

二度と、と彼は言った。

つまり少なくとも以前に一回は、青年は刃衛と戦っているということか。

 

その事に、改めて剣心は胸中で愕然した。

 

 

 

 

『弱いままじゃ…何もできない、何も叶えられないッ。ここでお前を殺して、嘗ての俺を越えて、初めて祖国の未来を掴めるんだ!』

 

 

 

 

 

喚く姿は、まるで駄々を捏ねる子供のよう。

 

青年のような年の者がすればみっともなく見えるハズなのに、それでも何故か、その姿は雄々しかった。

ぼろぼろで、吹けば今にも飛びそうな容態なくせして、それでもなお勝利を希求している。

 

 

 

己が身を省みず敵を打倒しようとするその姿の、なんと勇ましいことか!

 

 

 

 

 

『東京警視本署、特別捜査部隊隊長!狩生十徳だ!その首、現世に置いてってもらうぞ!!』

 

 

 

 

刃衛の殺気と狂気に勝るとも劣らない、裂帛の気合いは風に乗ってどこまでも大きく響いた。

 

彼の咆哮がこの場にいる全員の総身を貫いた時には、既に青年は駆け出していた。

最後の力を振り絞っているのが痛いほど分かる、全身全霊の吶喊だった。

 

その速度は、お世辞にも速いとは言えない。

嘗ての異常なまでの戦速に比ぶれば、見る影もない。

 

刃衛も、自らの腕に抉り込まれている曲刀を引き抜くと、応えるように吶喊した。

彼の速度もまた速くなく、死に体であることがよく分かる。

 

 

今ならば、二人の間に割って入れる。

 

恐らく二人は決着をつける気概でいる。

すなわち、殺すつもりだ。

 

 

それは、不殺の信念を掲げる自分にとって、看過しえない事態だ。

割り入り、止めるべきだ。

でなくば、何が逆刃刀だ、何が流浪人だ。

 

彼らにも背負うものがあるのと同様に、自分にも曲げてはならないものがあるのだ。

 

 

行かねば、行かねばッ……ならないというのに、どうして足が動かない!

 

どうして!

 

どうしてッ、あの二人に見惚れている!?

 

 

 

(なぜ、二人の結末を見たいと望む!止めてはならないという意思が働く?!)

 

 

 

分からない。

 

 

分からないが、それでも己の状態はよく把握していた。

 

歯を削れるほど強く喰い縛り、拳を鬱血するほどに握り締め、肩を激情で震わしている。

 

 

そして、足は頑として動かない。

 

 

 

 

 

 

やがて強く見開かれたその瞳に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が交差した瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂人の首から噴水の如く舞い上がった鮮血を、確と焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











今話および本作に対する感想、疑問、質問等を活動報告にて多数受け付けております


一度お目を通していただけると幸いです




また、ここにいと尊き御方にあらせられる鮎川様より頂いたイラストを掲載します

何度も書き直しを繰りせた根気の源は、ひとえにこれのおかげと言っても過言ではありません
(もちろん、評価・感想を授けてくださっている多くの読者の方々が居てくださってこそです)





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