明治の向こう   作:畳廿畳

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以下、注意事項

・外印の新型機巧のお披露目は当分先
・捏造設定第二弾投下


では、どうぞ







50話 戦後処理 其の弐

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは静寂が支配する、ランタンの赤橙色に彩られた小さな部屋だった。

 

部屋の至るところに医療器具と思える物、或いは到底それとは思えない物騒な物が無造作に置かれていた。

それらは血塗れだったり、無理な力を加えられたのか変形していたり、もしくは何があったのか破砕していたり、とにかく使用済みであることは十二分に窺えた。

 

血はそれらの器具だけでなく床や壁にも着いているため、室内は血の臭いに満たされている。

 

そんな部屋の中央に、一畳半ほどの大きさの台が横たわっていた。

そこに、一人の青年が寝かされている。

 

白銀の長い髪を身と台の間に挟み、仰向けに寝ている。

上半身は裸で、右腕が無く、その断面は包帯が厚く巻かれている。

片目は眼帯が付けられているが、額から頬に掛けて大きな裂傷が覗けており、ともすればその目は二度と光を見ることが出来ないだろう事が推察できる。

 

他にも至るところに裂傷や銃創、火傷の跡があるが、そのほとんどが治療痕によって上書きされているのが目に止まる。

 

大ケガをしたことは容易に想像できるし、それらが全て処置済みであることも想像できる。

端から見て、生死の境を彷徨うほどの重傷だったことが分かる。

なるほどこの部屋の惨状を見るに、彼の治療のためにこの血臭満ちる空間が出来上がったのだろう。

 

青年の胸は規則的に上下していることから、そして手術を現状していないことから、無事に成功したことが推測できる。

 

あとは患者自身の体力の回復を待つばかりかーー

 

 

否。

 

 

その青年は寝かされてはいるが、もう眠ってはいなかった。

 

残存する唯一の瞳ははっきりと開かれていて、その視線を天井に固定していた。

それは見ているのではなく、ただ視線がそこに向けられているというだけであって、意識して見ているわけではないようだ。

 

ならばその目は色を示しておらず、望洋としたものか。

或いは疲れの色を示しているのか、それともあらゆる諦感から失意の色を示しているのか。

 

はたまた、自分が生きていることに喜びを噛み締めているか。

 

 

否、重ねて否である。

 

そのどれも正しくない。

 

 

 

 

 

その瞳の色は、激しい怒りに染まっていた。

 

 

 

 

 

左手は強く握り締められ、今にも手術台に叩き付けられそうだ。

 

 

怒りの矛先は、己自身。

 

 

自らの弱さに、激怒していたのだ。

 

 

 

 

 

 

===========

 

 

 

 

 

切っ掛けは二つ。

 

一つは、最後の最後にまた気を失ったから。

一度失いかけた気を確かにし、最後の攻勢に出られたまではよかった。

そこまでは、まあいい。

 

そんなの、()()()()なのだから。

 

己に喝を入れるため、聴覚を一時的に失った自分がなんとか聞こえる音声で、ありったけの思いを込めて叫んだ。

必殺の思いを轟かせ、全身に滾らせて、そして駆け出した。

 

ククリを大きく振りかぶりながら突進してきた刃衛は変わらない狂気の笑みを湛えていたが、振り下ろされたその剣閃は今まで以上に遅かった。

 

殺気や狂気、楽しみ、喜びなどの諸々の気持ちは変わらず溢れるほどだった。

しかし、決定的に遅かった。

もはや()()()()に遅かった。

 

だから、その太刀筋は簡単に読めてしまい、避けるに難くなかった。

だから、俺は躱した直後に一筋の刃を闇夜に煌めかせた。

 

肉を断ち、脈を裂いた。

 

互いの身が交差し、数歩ずつ余勢を駆って走り、やがて止まる。

 

血飛沫を舞き散らせながら、奴が笑いながら何かを呟いた。

蚊の鳴くような、誰も聞き取れない小さな言葉だった。

 

奴は振り返っていたかもしれないが、それは分からない。

もしかしたら最後に俺の顔を見たがっていたかもしれないが、そんなのは知らない。

 

奴の言葉が空気に溶け、直後に奴が崩れ落ちたのを、俺はずっと背で見届けていたから。

 

喜びよりも先に、安堵よりも先に、身を裂くほどの激しい屈辱の念に犯されていたのだ。

 

これが、二つ目。

 

手加減された。

本気で来なかった。

最後の最後に、手を抜かれた。

 

勝利を、譲られた!

 

当初の目的を考えれば、如何なる形でも刃衛を殺せればそれで万事良しだった。

刃衛のように殺し合いを楽しむ気も無かったし、手加減されて殺せるなら寧ろ好都合なハズだった。

 

それでも刃衛は強いから、だからこそ死に物狂いで頑張ったのだ。

必死の思いと決死の覚悟で戦った。

必死に己を奮い立たせて、痛い思いに歯を喰い縛って戦った。

 

だというのに、最後の最後にあのザマだ!

死体同然の身を晒して、一太刀を譲りやがった!

 

全て無駄にさせられた気分だった。

これ以上ないほどの侮辱だった。

 

戦いの最中に臓腑の底から込み上げてきた怒りと同質量のそれが全身を犯し、身を燻った。

怒りと悲しみから、俺は狂ったように吠えた。

吼え続けた。

 

そして気を失い、目覚めた瞬間からも、その怒りの程は変わらない。

 

震える握り拳を掲げ、怒りのままに手術台に振り下ろす。

 

 

「…ッ!」

 

 

けど、電流のように全身に走った激痛が筋肉を弛緩させ、握り拳は何も叩くことなくほどかれた。

それでも、痛みは怒りを鎮めるに足るものではない。

 

本当に反吐が出る。

腸が煮え繰り返りすぎて、喉を爪で掻きむしりたいほどだ。

いっそ自害した方がどれほど気分の晴れることか、と考えてしまう。

 

どうして俺は、こんなにも弱い?

どうして俺は、少しも成長しない?

 

横浜での一連の戦いを思い出してみろ。

実質的に降した相手など、庭番の配下だけじゃねぇか。

 

何が祖国の未来を掴む、だ!

こんな弱い力で掴めるものなど、一つとして有るものか!

 

何が隊長だ!

こんな雑魚にも劣る稚魚ごときが夢を囀ずるか!

 

 

 

あぁ、クソ……ダメだ、泣くな。

泣いちゃダメだ。

 

 

「……っ、~~、ゥ、ぁ……!」

 

 

泣くなよ、阿呆。

薩摩っ子なら、泣こかい跳ぼかい、泣くよかひっ跳べ。だろうが。

 

一丁前に熱い涙なんて溢してんじゃねぇよ!

悔しがって……それで弱いという罪が償われるとでも思っているのかよ!

 

 

「……、~!ーーーー!」

 

 

ああ、ダメだ。

 

どんなに堪えようとしても、どんなに耐えようとしても、涙を止めることはどうしても出来ない。

喉は震え、肺の底から慟哭が溢れそうになるが、それだけは必死に耐えられた。

だけど涙だけは、どうしようもなかった。

 

 

泣いたところで、事態は何も変わらない。

強くなんてなれないし、()()()()()()という事実は覆らない。

 

自分が弱いということは嫌というほど知っている。

何度自分の弱さを呪い、恨み、悔やんだことか。

何度強くなろうと励み、克己し、抗ってきたことか。

 

斎藤との戦いで、初めての刃衛との戦いで、鎌足と蝙也との戦いで、雷十太との戦いで。

般若・式尉・癋見との戦いで、蒼紫との戦いで、二度目の鎌足との戦いで、そして二度目の刃衛との戦いで。

 

うちひしがれ、叩きのめされ、その度に己に喝を入れてきた。

もがき、苦しみ、足掻いて、がむしゃらに強くなろうとしてきた。

 

嘘じゃない。

本気で、本当に強くなりたいと思って、本当に強くなろうとしてきた。

 

だのにッ……変わらない!!

 

 

「ーーーーー!!!」

 

 

もう…嫌だ。

 

 

何一つとして変われていないんだ。

このまま歩んだところで、きっとこの先も変わらない。

強くなんてなれやしない。

 

 

 

 

もう……無理だ。

 

 

 

 

こんなに身体をボロボロにして、それでもこの手は勝利を掴めない。

こんな手じゃ望む未来なんて掴めやしない。

 

伸ばした手が掴むものなんて、所詮は空気だけなのだ。

 

 

 

 

 

 

もう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう……疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……んん、」

 

 

ふと、耳に誰かの掠れる吐息のような声が届いた気がした。

 

そういえばと思い出したのは、傍らに人の気配があることだった。

起きてからずっと天井を見続けていたから辺りを見渡しておらず、ずっと自分の内に没頭していたから失念していた。

 

誰かいたのか。

泣き顔を知らず知らず見られていたのか。

 

……はッ、最高じゃねぇか。

弱虫で泣き虫の俺にはちょうどいい道化っぷりだぜ。

 

 

どこの誰かは分からないが、きっと痛快な笑い顔をしているのだろう。

良い、いっそ嘲笑してくれた方がマシだ。

気の済むまでこの弱者を嗤ってほしい。

 

そう思って、かち割れそうな程の頭の痛みを無視して人の気配のする方に頭を転がすと、そこには本当に見たことのない人が簡易椅子に座って寝こけていた。

 

 

「…………?」

 

 

女性だった。

 

珍しい青い髪は澄んでいて、その色から紺碧を連想させるほどだ。

かなり大雑把というか雑というか、見るからに自分で片手間に切り揃えた感じのするぎざぎざの短い髪。

 

そして大きな縁の無い眼鏡を掛けていて、閉じられた目元には大きなくまができている。

 

服は和洋折衷。

パンツはラフな黒のスラックスのような物、上は和装の外印がよく着ている紫色の羽織を着けている。

 

そんな女性が腕と足を組み、背中を壁に預けて寝息を立てていた。

 

 

……誰だ、この人?

 

 

原作では見たことのない人だ。

青い髪なんて珍しい……人のこと言えないけど。

整った顔立ちだが、ひどくやつれている。

 

この部屋に居ることを鑑みるに、医者だろうか。

 

でも、例え医者だとしても、術後にまでこんな血臭が充満する部屋に留まるだろうか。

それに、あの羽織りはよく外印が着ていたやつだが……?

 

その顔をよく見ようと身体を動かしたときだった。

ぴくりと女性の指が動いた。

 

視線を女性の顔からその指に動かすと、微かにランタンの灯りを反射する極細の糸が見えた。

その糸は直接指に結びついていて、目を凝らして糸を辿ると俺の身体中に括られているのが分かった。

 

試しに腕を動かすと、それに連動して女性の指が再び動いた。

身体を動かすとその振動が指に伝わるのか……蜘蛛かよ。

 

 

つうか、この糸って……まさか

 

 

 

「……ん、んん」

 

 

そんな内心のツッコミと混乱を余所に、女性は瞼をゆっくりと持ち上げた。

指の刺激で目が覚めたようだ。

 

初めは胡乱げに視線が彷徨っていたが、次第に意識が覚醒してきたのか、唐突にバッと俺を見た。

その目は未だ眠たげで……否、違う。

腐った魚の目というのはこの事かと思い至るほどの、無機質さと冷徹さを醸しているんだ。

 

でも、心なしか驚いているように見える。

目は曇ったままだが、そんな気がする。

 

そんな視線に絡め取られ、所在無さげにしていると女性が口を開いた。

 

 

「よかった……生死は五分五分と見ていたのだが、やはり師の前では死そのものも形無しだな。見上げたものだ、改めて感服するよ」

 

「……げ、いん?」

 

「ん?なにかな、改まって……あぁ、そうか。素顔を見るのは初めてか」

 

 

では、改めて。

 

 

 

そう言って女性は糸を回収しながら、自己紹介をした。

 

 

 

 

 

 

機巧芸術家(からくりあるていすと)の外印だ。これから()()()宜しく頼むよ、我が師よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

 

 

「“外印”とは、読んで字の如く“外された印”。本家から外れた、所謂分家としての烙印のようなものだ。もっとも、私たちはこの名に忌避感も何も無いから好き勝手使っているのだがな。個人名をいちいち持つ必要がないのは合理的だろう?」

 

「ほん、け……?」

 

 

うん、と頷き先を続ける外印。

訥々と話される内容を、俺は横たわったまま聞き続けた。

 

 

「私の本家は山田家、山田浅右衛門家だ。知っているかな?江戸時代より代々伝わる死刑執行人の一族だ」

 

「……」

 

「刀剣類の試し斬り、という名目で幕府が用意する罪人を御様御用(おためしごよう)の役職の下、斬り殺す仕事をしていたのだ」

 

 

 

山田浅右衛門家。

 

幕府御用達の、死刑執行人を排出する一族。

 

 

 

江戸時代まで、日本には刀の試し斬りは人肉を用いるのがベストという考えがあった。

その考えを一身に代行する存在が、山田浅右衛門家。

 

そして当主の浅右衛門。

(浅右衛門とは襲名性らしいが、実際に名乗るかは自由だったらしい)

 

彼らは御様御用としての大きな仕事の他に、多くの武家から試し斬りの依頼を受けていたらしい。

人を斬るに適した刀か、否かを判断してもらいたかったようだ。

 

無論、死刑囚の数とその依頼の数、どちらが多いかと聞かれたら当然後者だ。

依頼の数に、死刑囚の数が足りていないのが実情だった。

 

故に一族は、何時からか死体を幕府から貰い、利用する手段を取るようになった。

殺すのに使い、殺しても使う。

 

何度も何度も何度も斬って斬って斬って斬って。

 

斬り傷が幾つも有っては効果の判別が着かないから、傷を縫い合わせたり臓器を入れ換えたりと、色々と工夫を凝らして再利用していた。

部位ごとに、斬り方ごとに、条件を様々に変えて。

 

果ては使()()()()()()()部位や臓器を加工(薬などに)して売却もしていたようだ。

死体そのものも販売していたというから驚きだ。

 

価値観が現代とは違うから一概に酷いとは言わないが、聞いていて気分の良い話ではない。

だが名誉のためと言うと語弊があるが一応弁明すると、一族はそうして得られた莫大な利益を、当の死者の供養に惜しげなく使っていたそうだ。

 

話はまだ続く。

 

いつしか一族の中でも試し斬りを主として行う者たちと、死体に関する仕事を行う者たちとで別れるようになっていったという。

必然、公衆の面前に出てくる機会の多い御様御用を筆頭とした試し斬りを行う人たちの方が、力を有することになる。

 

結果として裏方業務の人たちは本家から外され、分家として下請け業務をする形になったという。

 

 

「だが、お陰で“外印”たちは人体の構造を熟知するぷろふぇっしょなるになれた。血管の一本一本、神経の一本一本を把握するなど造作もない。故に我々外された一族は本家に対してなんら不満を抱いていない。ただ粛々と、ただ淡々と代々続く知識と技術をより昇華させる。それが“外印”の宿命なのだから」

 

 

外印の語るあまりに重い話に、俺は言葉を失っていた。

 

心底驚いた。

外印にこんなバックボーンが有ったとは露ほども考えていなかったのだから。

 

けど、納得もした。

脈々と受け継がれる技術と知識があるからこそ、あらゆる機巧を作れるということか。

 

じゃあ、そうなると芸術家ってのは?

と、そんな疑問が顔に出たのか、外印は頷いて続けた。

 

 

「維新が成り、明治となると本家も分家も仕事が激減した。今や日々の糧を得るのにも苦労しているぐらいだよ。もはや国内に生きる道は無い。多くの外印が国から飛び出し、世界へと生きる道を求めて旅立った。自らの技術と知識を生かせる新天地を求めてね。だが私は特殊だった。試し斬り用に作っていた死体製の人形に愛着が湧いて、いつしか美すら感じるようになった」

 

「……」

 

「人形作りに没頭するようになったのはまだ幼い時だった気がするが、まあ些細なことだな。私は延々死体と向き合って人形を作ってきた。異国技術を取り入れたいという欲求もあるが、今はひたすらに人形を作りあげたい。美の極致に至りたい。故に芸術家を名乗ってこの国に留まっているのだが、この選択は本当に正解だったと確信している。何故なら師よ、貴方に出会えたからだ」

 

 

糸の回収をするため俺の身体をまさぐっていた外印は、作業を終えても離れる様子を見せず、それどころか寝ている俺の下半身に跨がるようにして乗っ掛かってきた。

 

 

「おい……?」

 

 

なにしてんの、コイツ?

自分の膝で立っているから重くはないが、真意が読めん。

 

未だ喋るのが辛いため詰問の声がか細い。

途切れ途切れの言葉を発するだけで精一杯なのだ。

 

当の外印は変わらない腐った瞳を望洋とさせていて、人形師だからか人を人ではなくあくまで材料としてしか見なさない、そんな無機質さを感じるほどに冷たい。

そんな視線が俺の目に注がれている。

 

 

「二点、礼を言わせてほしい。まず、貴方に出会えたこと。そして、無事に生き還ってくれたこと。貴方にはまだまだ生きていてほしい。まだまだ鮮烈に輝いていてほしい。貴方の心の在り方を、もっと見せてほしいのだ」

 

 

だから、ありがとう。

 

そう言って外印は頭を下げた。

 

 

まさかそんな事を言われるなんて予想だにしていなかったから、俺は言葉を失ってしまった。

 

外印の俺への執着は知っていたし、それが常識的なものとは一線を画すものだということも知っていた。

だから、こう言ってはなんだが、まさかその外印が人間味のあるお礼の言葉を述べるなんて微塵も思えなかったのだ。

 

 

「そして、一つお願いがある。私を師の近くに侍らせてはもらえないだろうか」

 

「……ん?!」

 

「師の手術をしているとき、ふと思ったんだ。もし、このまま師が目を覚まさなかったら私はどうなるのだろうか、と。想像して、師の居ない世界を空想してみたら、胸に穴が空いた感覚に襲われたよ。あの感覚は今でも夢想すれば簡単に甦る。初めて感じたものだから、あれがなんなのかはよく分からないが、恐らく信号みたいなものなのだろう……師の居ない世界はきっと私にとって良くない場所なのだ、というね」

 

「……」

 

「故に師を失わないよう、これからは師の死の危機を出来るだけ払うため、近くに居させてほしい。知っての通り、私なら大抵の傷ぐらいは()()()し、戦いの心得も少しはある。足手まといにはならないと思うが?」

 

「いや……でも」

 

「師はこれからも自身を顧みず、危ない橋を渡っていくのだろう。なればこそ、微力ながら手助けさせてほしい。なに、師の心の観察は並行してやっていく。心配はいらないさ」

 

 

……これは有り難い話、なのか?

 

確かにコイツがバックアップしてくれるという事実は、今まで大きな助けになっていた。

義手という肉体的な面はもとより、精神的にも支えられていた気がする。

 

それが今後、横浜という遠方の地からではなく、近くで支えてくれるというのなら、これ程心強い話もないだろう。

医師、もとい人形師としての腕は確かで、実際に身体を何度も直してくれたのだから、俺の中で外印に対する信頼は大きいのだから。

 

 

 

けど、それは俺がこれからも同じ道を歩めばの話だ。

 

 

 

俺はもう…………

 

 

 

 

「まあ、師も目が覚めたばかりだからな。また日を改めてじっくりと考えてくれ。それまではゆっくりするといい……ああ、いや。もう一つお願いがあったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもの時を考えての予防策についてだ。師よ、私を孕ませてはくれぬか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし師の身に何かあったら、それは私にとって大きな損失だ。考えたくもない世界の話だ。だが、だからといって考えないわけにもいくまい。最悪の事態を想定しなければ、技術は発展しないのだから」

 

「?」

 

「きっとこの先、師のような心の持ち主はお目にかかれない。だが、もしかしたら師の血を引く者なら、可能性はある。良き道標になってくれる可能性がある」

 

「??」

 

「他の女が孕んでも良いのだが、せっかくだから自分の身をもって作……もとい育てたい。そうすれば、また何か別の発見があるかもしれないからな」

 

「???」

 

「なに、師は天井を眺めていればいい。数分で終えよう。確実を期すために何日か繰り返させてもらうし、その気になってくれて、ありのままの欲求をぶつけてくれても構わない。男は冷めない戦闘の興奮を異性にぶつけるというらしいではないか。さっそくだが始めてしまおう」

 

 

 

 

 

………………………………………………はッ?!

 

 

なんだコイツ、なんなんだコイツ?!

さっきから淡々と凄い話をぶっこんで来やがるぞ!

 

子作り?外印を孕ませる?

嫌だよそんなの!絶対に嫌!

 

いや外印が嫌なんじゃなくて、子供を作るとか親になるとか考えたことないから無理無理無理、っておいコラ!

そこをまさぐるな!触るな!

 

 

……ッ??!!

 

流した涙を舐めるなーー!!

 

 

「ふむ、やはり師とて涙の成分は他者と同じなのだな。師のことだから血涙が流れてもおかしくはないと思ったのだが、安心したような残念なような。しかし、こんな所業で頬が緩むとは、これもまた人の未知なる心の揺れなのかもな」

 

「ーーー!!」

 

 

血の涙を流すほど人を辞めてない!

つうか本当に頬を緩めるな!

 

 

誰か、誰か助けてーー!

 

 

「生まれてこのかた人を材料としてしか見てこなかった私だ。師にも不満はあるだろうが、自分のあそこは弄っていないから安心してくれ。きっと気持ち良くなれるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

いーーーやーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 













外印はお爺さんになったりイケメンになったりと不安定な人ですから
女性になっててもおかしくはないですよね←?



山田浅右衛門は史実です






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