なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

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なんとびっくり、まだダンジョンに行かないんですよ。
時間軸としては、少し遡ります。


盗賊視点(3)

俺たちは今、森の中を疾走していた。

十数名による大移動だ。

こんなことになったのは、少し前に遡る。

 

 

町へ向かった俺たちは、ちょうど冒険者の集団と鉢合わせた。

どうやら行方不明となっている子供達の捜索と、その原因とみられる俺たち、盗賊を探しに来たらしい。

 

ただの行方不明じゃなくて盗賊による誘拐とまでわかってるとは…

見つから無いように、気取られないように行動していたのだが、どこから情報が漏れたのか…っと言っても十中八九前の狐獣人だろう。

 

人数でも実力でも、その差は一目瞭然だった。

急いで転移を行なったが、何名かは逃げ遅れたようだ。

おそらく拠点が見つかるのも時間の問題だろう。

 

すぐさま撤収準備をしていると、

 

「お頭!ガキがいません!」

「なんだって!?クソッ!」

 

どうやら、既に拠点がバレていたらしい。

子供達は既に解放された後か…

しかし、待ち伏せされてなかったのは何故だ?

それに残っていたメンバーは?

 

「へへっ…へへへ…へっへへへへへ!」

 

謎の笑い声の様な声が、物陰から聞こえて来た。

そこには、四肢をバラして肉片を適当にくっつけ、中央に人の顔を埋め込んだような、悍ましい肉の塊があった。

 

「へっ…へへっ…けひっ…け…けひゃひゃひゃひゃ」

 

とても生きているとは思えない、中央の男の顔は発狂したように笑い声を上げていた。

見ているだけで狂気に堕ちそうな、悍ましい姿だ。

 

よく見ると、それは元部下の姿だった。

はて?冒険者がやったのか?

たしかに、わざわざ痛めつけたりといった素行の悪い者はちょこちょこいるだろう。

しかし、俺の知る限りここまでの外道はいない。

 

互いに命を奪われる覚悟はあると思うし、それ自体を責めることはしない。

だが、ここまでやる奴ならば悪名が広まっていてもおかしくない。少なくとも、ここ最近でそのような噂を聞いたことはない。

 

「へへっ…お頭ぁ…ローラスさん…もう終わりでぇ…何処へ逃げてもおしまいだぁ!ひぇひぇひぇひぇひぇ」

「おい!どういう事だ⁉︎ここで何があった?」

 

一応意識は残っていたらしい部下の肉塊から状況を聞いた。

 

曰く、俺たちの他に探索に出ていたら一部の部下が後をつけられ拠点がバレ、そのまま制圧、子供の救出までされた。

そこに、盗賊団本部より、降神教の幹部を名乗る男が転移により現れ、圧倒的な力を持って敵味方関係なく襲い始めた。

 

冒険者は傷を負いながらも全員撤退、部下達はその幹部に捕まり、「コイツらでも少しはガキ達の魔力の代わりになるだろう」との事で連れ去られたという。

自分は何やら怪しい術をかけられ、メッセンジャーとしてここに残されたのだそうだ。

 

こんな風に人を肉塊に変えてしまう魔術など聞いた事がない。スキルによるものか、はたまた何か特殊な術でも使ったのか…

とにかく、状況はこれ以上になく最悪で、おそらくその幹部とやらはこれからも来るだろう。

 

そして、今度は全員の命はなく、幹部による町一つを潰すぐらいの大暴れをするだろう。

俺は助かるために子供を攫っていたのであって、別に嬲ったり殺したりするのが好きな異常者ではない。

 

俺たちが死ねばその幹部とやらがそういった事をしないとも限らない。

さて、どうにか今後の対策を考えなくては…

 

 

それから数日、狐娘を取り逃がして数週間。

あれから警備が強化され、なかなか子供を捕まえる事が出来なくなっていた。

ある日、

 

「だめだ…だめだぁ…もう時間がねぇ…」

「逃げましょう…もう無理ですよ」

 

そこには、絶望が漂っていた。

 

「今日行ってダメだったら、ギルドと町長に幹部について話して逃げる」

「え!ローラスさん、この町の人と面識あるんですか?」

「ほとんどない。が、昔来たことがある。長くを生きる亜人種ならば覚えてるかもしれない」

「で、でも…もし話がつかなく、捕まったら…」

「それでもやるしかない。元々俺たちは最近の盗賊団に嫌気がさしてここに来たんだ。俺がいた頃の、まさに義賊だったころの面影はもうない…ならば最後くらい、もう一度人のために動いたっていいと思うんだ」

 

俺は皆んなを説得して、脱出計画なども練っていった。

 

そして、町へ行く最後の日。

俺と少数名だけで町へ向かった。

 

まあ、馬鹿正直に盗賊だと名乗っても捕まるだけだろうから、手紙と町の住民の避難案を残して後にする。

亜人種の奴らとはうまく話ができ、避難を約束させた。

 

さてと…最後に竜神の山に行く。

ここには竜族と竜人の祖である竜神様が住んでいるとされ、守り神として祀られていた。

 

住民達が訪れる竜神の祠では、度々不思議な事が起こるという。

お参りと作戦の手紙、作戦の成功を祈ってその場を後にした。

 

 

拠点へ戻っている途中、向こうから駆けてくる部下の姿を捉えた。

部下達は急いで駆け寄ってくると、

 

「ローラスさん!逃げてください!来ました!」

「なんだって⁉︎幹部がくるのは明日のはず…」

「それが…」

 

話を聞いたところ、俺たちが出た後、部下の肉塊を使って幹部がメッセージを送って来たのだという。

 

「お前らの話は筒抜けだ。準備が整い次第そっちに行く。俺様に恭順の意を示す奴は残っていろ。裏切り者と町の命を根こそぎ刈り取る」

 

これによりパニックになり、メッセージに怯えた一部の部下が、周りを説得しようと騒いだり、説得に応じない奴らを捕らえようとしたりしたのだと言う。

 

その後もメッセージが送られて来て、その度に部下達は凶暴性を増していったのだとか。

そしてその筆頭が正確の歪んで来ていた者たちだったのだ。

 

俺としては、声か何かに洗脳魔法のようなものを乗せて飛ばし、部下を侵食したのでは無いかと思う。

そしてそうこうしているうちに幹部がやってきて、

 

「わはははは。俺様の為に命も捧げるやつは跪け」

 

やはり、凶暴化していたやつらは跪き、ウロウロしていたやつらはその動きを止めた。

 

「まあまあってとこだな。でぇ?お前らはどうすんの?死か?隷属か?」

「ひいっ…」

「れ…隷属で…」

「煙幕〈スモーク〉」

「閃光麻痺〈スタン」

「施錠〈ロック〉」

「逃げるぞ!」

 

と、言うように部下達でも使える簡単な魔法により、もともと逃げる派だった者たちは脱出。

それ以外は恭順の意を示したそうだ。

 

そして、逃亡した部下は半数に分かれ、半分は俺への報告。もう半分は離れたところで元拠点を監視していたらしい。

 

そして少しした後、中から虚ろな顔をした部下達がでてきた。

その中でも比較的まともな顔をした数名が隠れていた場所に近づいて、

 

「逃げろ。今すぐに逃げるんだ」

 

予め役割分担をしていたらしく、そいつらは動きを探らせる為に潜入していたのだと言う。

 

「中で何があった?」

「全員に狂化魔法をかけやがった」

 

狂化魔法とは、対象の理性を代償として身体能力を底上げする魔法だ。

本来は自我を持たない使役系の魔物やゴーレムなどに使う魔法だ。

 

「魂の防護を施していてもギリだった」

 

魂の防護とはその名の通り魂を保護して洗脳など精神に対する攻撃への耐性を上げる魔法だ。

こういうことも想定して、予め施しておいたらしい。

 

「なんとか意識を保てたが、他の奴らはもう奴の言いなりだ。はやくローラスさんと合流して逃げるぞ」

 

そして、今に至るというわけだ。

そして、五感も最大限に、いや、人としての限界などとうに超え、異形の身となった元部下達がこちらに向かってきたているらしい。

 

不味いな。思ったよりも早い。

想定よりも事が早く動いている。

 

もう殆ど日は落ちていて、辺りは闇が濃くなり始めた。

 

「よし!なんとか引き付けながら、町とは違う方向に逃げよう」

「町の反対っていうと、竜神の山しかありませんぜ」

「なら一晩ぐらい鬼ごっこして、出来れば海とかに落として数を減らそう」

「ははっ。竜神様にとっては良い迷惑でしょうね」

「悪いがその力に縋るしか無いのさ。本当にいるのなら助けてくれたりしてな!」

「だといいですね。幸い、あの辺りには空間認知能力を狂わせる結界が所々にある。それを利用すれば、理性のない奴らから一晩逃げるなんて楽勝ですよ」

 

こうして、恐怖と狂気の真夜中鬼ごっこが開幕した。

 

 

失敗した。

俺は逃げながら後悔した。

 

奴らは、理性では考えずにそのまま木々をなぎ倒しながら突っ込んでくる。

しかも、方向感覚を狂わせたりすることも意味なく、匂いや音を追ってくるのだ。

 

しかし、こちらだって元盗賊であり、俺たちの拠点は森の中だ。

盗賊をやっていただけあり、森の中での移動には馴れていた。

 

「ちくしょう!まだ追ってきやがる!」

「お頭!こんな所に洞穴が!」

「でもこれってダンジョンじゃ…」

「なんでもいい!早く入るぞ!中の魔物どもが足止めになってくれるかも知れない!」

 

俺達はひとまず、この町の名物ダンジョンと思しき洞穴に飛び込んだ。




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