なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる 作:オケラさん
盗賊たちの問題が、バルドの町にも降りかかる。
「いよいよ明日ですね。ダンジョン祭」
「あぁ。今年も楽しみだな」
子供たちが眠った後、古竜レオグリンドとその従者である玖苑は、夜風に当たりながら晩酌をしていた。
こうして見ると、どちらも大人の雰囲気がある。
「いやー。焦った焦った。ダンジョン祭、毎年見ていたが、ダンジョン探索には参加した事無かったからな。まさかCランク以上の冒険者しか入れないとは」
「まあでも、うまくいったじゃないですか。あんな無理言って聞いて貰えたのは凄いと思いますよ」
「まあ、町の危機を救ったわけだしなあ」
この会話の内容を知るには、少し遡る必要がある。
◆
ダンジョン祭に参加するためにはCランク以上の冒険者であるとリンから聞き、確実にアリスとキコ、特にキコが参加したがる事が容易に想像できた。
キコは、今までこそレオグリンド達と見て回る側だったが、今回は自分と近い者が参加するのだ。
これを黙って見ていられるほど、大人ではなかった。
「さて、どうしたものか…」
「もうギルドに直接頼むしか無いのでは?」
「しかし、聞いてもらえるかのう?我が守護竜だという事は隠してきた。知っておるのは一部の者のみだろう」
「そうですか…あっ!その古竜だという事を知っている町の人に協力して貰うのはどうでしょう?レオグリンド様からの頼みを断れるものがそこら辺にいるとは思えません」
「それは良いアイデアであるな。そうとなれば善は急げ。早速手続きに行こうぞ」
◆
「む?何やら騒がしいな」
「臨戦態勢でしょうか?武装した人達が多いですね。近くに魔物でもでたのでしょうか?」
近寄って見ると、内容がわかった。
どうやら、町中に『明日、化け物がくる』といった内容の怪文書がばらまかれていたらしい。
しかも、必ず家の中にあり警備の厳しい所にも、当たり前のように置かれていたとのことだ。
「みんな。信じて逃げる準備をしてくれ!頼む。」
「ヤバイぞ。これは相当な手練れだ。」
「この内容は本当なのか⁉︎」
「だから本当だって!その手紙の主と話したんだよ」
「お前がこのイタズラをやったのか?」
「違うってば!イタズラじゃないって!それだけの実力があったらとっくに上位冒険者になってるよ!」
「どう思います?レオグリンド様」
「ふむ。おそらく本当の内容だろう。取り敢えず話を聞いてみるのが先か」
玖苑とレオグリンドは、騒ぎの中に入っていき、黙って考え込んでいた竜人の男に話しかけた。
「バガス。これは何の騒ぎだ?」
「レオグリンド様!実はですね…」
バガスから聞けた話は、概ねそこら中から聞こえてくる内容と同じだった。
少し補足するなら、手紙の主はギル・ローラスという盗賊で、かつてサバト盗賊団という、大規模な義賊集団に所属していた冒険者崩れらしい。
まあまあ腕は立つようで、現在のランクで表すと軽くBは超えてるだろうとのこと。少なくともA+くらいはありそうだと…
そして最近、盗賊団がおかしくなっており、その幹部がこちらに来るのだという。
降神教という宗教に頭と息子ががハマり、もはや義賊ではなく、ただの狂人の集団と化しているのだそうだ。
そしてその幹部が明日、こちらにやって来るというのだ。
「レオグリンド様。社に何か届いておりました」
「おお。ありがとう」
竜人の山の社は、玖苑の力で管理しており、そこに届いたものは手元に出現させる事が出来るのだ。
届いたものは手紙で、そこには今回の騒ぎの原因と思われる、盗賊団と町への被害予想、避難用経路までもが記されていた。
「何やら物騒な奴が来るそうだな」
「ええ。あぁ…あと山の方を駆けている集団とそれを追って暴れているもの達がおります」
「ふむ。恐らく追われている集団が手紙の差出人なのだろう。町に逃げれば住民に標的を移せるかも知れないのに、それをしていない所を見ると、其奴らは義賊のままなのかもしれんな」
「っ!レオグリンド様!何かが森から抜けてこちらに来ます!」
玖苑が焦ったように忠告を放つ。
「わかっておる。さて、お主らはちと下がってるがよい。後で頼みたいこともあるしのぅ」
次回は日曜日更新予定!
(ちょつとストックが切れそうなので次回より更新ペースを落とさせてもらいます。ご了承ください)
次回予告
夜の町に現れた盗賊集団と化け物。
それを率いる謎の大男には魔法が通用しない!
子供達の寝静まる夜に奮闘する大人たちをどうぞ