なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる 作:オケラさん
場所は、村から少し離れた平地。
そこでは、二人の人物による激しい戦闘が行われていた。
一人は淡々と、もう一人は下卑た笑いを浮かべて。
「なんだあ?じいさん。中々やるじゃないか」
「……。」
「なんだよ、無視すんなよ。どうせこれから死ぬんだし、楽しくやろうぜぃ」
「……。」
事態は、少し前に起こった。
◇
玖苑の警告を受け、その場にいるレオグリンド以外のものは何かは分からないが二人の向く方に警戒を強めた。
少しすると、猛烈な土煙と共に巨大な影が見え始めた。
「な…」
やがて全容が見える距離まで近づくと、その異様さがわかった。
混合獣〈キマイラ〉だった。
頭は獅子で猪のような牙が生えており、それが合計三つ。
体も獅子のようだが、時折触手のようなものが這っているのがわかる。
尾は蛇であるがこれも三本ほどあり、体と同じくらいの大きさであった。
建物の2階と同じくらいの大きさで、全長は蛇まで合わせるとゆうに10メートルは超えるだろう。
瞳には意識などは無さそうで、ただ狂った異形の獣がこちらに向かって猛スピードで迫ってきているのだった。
「このままじゃ町が危ない!」
「だが、どうする?あんな化け物に俺ら一人じゃ勝てっこないぞ!」
「クソ!作戦を立てる時間もねえ!」
誰かの叫びを皮切りに、あたりに動揺と恐怖が伝染する。
その巨体から、遠方でも確認できただけであり距離はまだあった。
しかし、その大きさからは考えられない程の速さで迫って来るため、もう幾らも数えないうちに、その化け物は到達するだろう。
「ふむ、ちょうどいい。ワシが相手をしよう。その間に作戦でもなんでも考えるが良い」
「し、しかし、レオグリンド様が…」
「フン。心配することは無い。後で頼みたいこともあるし、あの程度に遅れをとる事などありえん」
「流石でございます。レオグリンド様」
「お前もあの程度であれば倒せるであろう?それに町へ迫ってきてるんだ。別に、作戦を立てる前に倒したとて問題あるまいな?」
◆
レオグリンドがキマイラへ向かっていった後、
「さて、残りはどうするつもりです?」
「は?玖苑様、残りとは?」
「あと二体、同じのが来てますよ?」
「あ、あと二体⁉︎」
「ええ。それもすぐに来ます」
「くっ…」
「マズイぞ!どうするんだ!」
「そ、そうだ。く、玖苑さんと言ったか?あんたもあの爺さんと一緒に来たってとこは、それなりに出来るんだよな?た、助けてくれ!」
そう言ってお願いした、レオグリンドと玖苑のことを知らないらしい男は、どうやら外から来た冒険者らしい。
というか、ここにいる半数はこの町の冒険者では無いようだ。
まだ前夜祭と言っても、ある程度は外からの冒険者が来ていたのだろう。
「あの爺さん?それはレオグリンド様の事ですか?」
「そ、そうだ!あんたもそのレオグリンドとかいう爺さんと一緒に来たんだろ⁉︎助けてくれ!」
「それが、人にものを頼む態度ですか?」
玖苑は、普段からは思えないほどにイラついたオーラをだしていた。
お願いをする冒険者の目には、囮程度に役に立てばいいか、といったような見下した感情が見え隠れしていた。
普段こそ玖苑は温和でレオグリンドに対してもある程度気安く接しているように見えるが、自分の恩人であり主人であるレオグリンドが侮辱もしくは下に見られナメられることを看過するはずなどない。
故に、不快感を隠そうともせず睨むその目は視線だけで生き物を殺せそうな程であった。
「ひっ、ひい!お、お前だってこのままでは死ぬんだぞ!」
「フム。問題ありません。レオグリンド様が直々に出ていかれた以上、たかだかキマイラ三体などなんの問題もありません。残りのキマイラに気づいていないはずもなく、加えて私がここにいるのです。町には通させません」
「な、何を言ってるんだ!あんな爺さ…」
「口を慎みなさい。これ以上喋るなら命の保証はありませんよ」
「ひぃっ…」
◆
玖苑がこのような態度をとっているのには理由がある。
もちろん感情的な面もあるが、何よりの理由はテストであった。
いくら初心者向けのダンジョンがあると言っても、貴族たち、それに可愛い三人の妹達がいる町。
彼ら冒険者が、祭りでいざこざや問題を起こしたりしないか、特に貴族との問題など面倒だ。
それによって妹達に危害が及ぶようなことがあれば、とうてい看過できない。
また、なんらかの問題が起きた時の対処法や態度などの観察。問題を起こさないように釘刺しなどの意味もあった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
千文字程度で週二投稿と、二千文字前後での週一投稿、どちらがいいでしょうか?
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