なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

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みなさん今日は。
今回は、ルビが面倒で降ってませぇん。
いや…降っても降らなくても同じかとおもいまして。
申し訳ありません


前夜祭が明ける頃(3)

 

「氷晶槍〈アイシクルランス〉!電撃流〈ライトニング〉!火焔〈フレイム〉!礫弾幕〈ロックバレット〉!」

 

玖苑が複数の魔法の同時使用により、男を周囲の戦闘から引き離す。

男はニヤニヤしながら全てを山刀で弾き返す。

 

(ふむ。刃こぼれすら無しですか…全く面倒な)

 

魔法使いと近接戦闘職の戦いでは、魔法使いは距離を詰められないように立ち回りながら、遠距離から一方的に叩くのが基本である。

 

しかしこの場合、魔法は全て防がれてしまい効果はない。おそらく魔法武器の類なのだろうが、武器が劣化する様子も無ければ、男への影響も皆無のようだ。

まさに打つ手無しである。

 

まあ、一般的な攻撃魔法使いの場合に関しては、であるが。

男が距離を詰めて来た時、

 

「暗闇〈ブラインド〉!」

 

辺りを闇が包む暗闇〈ブラインド〉は、一定範囲内の全てに影響を及ぼすため、防御不能であり、一切の灯りが見えないために大きく行動を阻害できる。

ただ、味方も巻き込んでしまうため、冒険者の初心者パーティにはあまり見られない。

 

ただ、対策は幾らでもある。

まずは、暗視といった技能だ。暗闇であろうと辺りを見渡せる技能であり、洞窟や夜の探索において重宝する。

続いては、目印を用意して物理的に繋いでおく方法。

目印を辿って範囲外に出たり、仲間たちと縄で繋がっていたりなどである。

なんとも原始的な方法だが、魔法無効などでは防ぐことができず、効果内での灯りは意味をなさないため、意外と有効な手段だったりする。

 

玖苑は、種族的なもので暗視に近い能力を持つため、暗闇などどうって事はない。

そのまま無詠唱の魔法の連撃を叩き込む。

魔法が放つはずの光は全て闇に呑まれ、視認不可能の致死の嵐が吹き荒れる。

 

「閃光弾〈フラッシュバン〉!」

 

辺りの闇が、フッと晴れて続いて放たれたのはこれまた一定範囲内に影響を及ぼす、閃光弾〈フラッシュバン〉である。

暗闇〈ブラインド〉とは対照に、辺りを眩い光と甲高い音で包む魔法である。

効果時間は一瞬であるが、相手の視覚と聴覚を一時的に奪う魔法である。

夜目が効いたり、暗視を持っているほど効果が上がり、暗闇〈ブラインド〉との組み合わせは抜群であった。

 

玖苑は、自分の魔法の影響を受けた様子もなく、男のいた場所をジッと警戒する。

 

「うぐ…が、があぁぁぁ…くっ!」

 

そこには、目をおさえて苦しむ男がいた。

しかし、魔法の連撃でできたはずの傷などはない。

だが、玖苑は驚いた様子もなく、次の技を展開する。

まあ、当然だろう。玖苑には全て見えていたのだから。

 

男に放った指向性を持つ魔法は、全て男の剣に吸い込まれていった。

なので、闇の中で放った連続魔法は全て効かなかったわけだ。

 

ただ、範囲魔法は通じるようで、暗黒〈ブラインド〉と閃光弾〈フラッシュバン〉が無効化される事はなかった。

玖苑は、通じる攻撃を探る過程で偶然分かった訳だが、それを男は知らなかったのか、防御する素振りも見せずにもろに受けた。

 

「重力潰〈グラビティプレス〉!」

 

玖苑は、相手の周囲を押しつぶすかたちで魔法を展開させた。

超重力が相手を飲み込む。

どうやら、吸収できる魔法の大きさには制限があるのか、はたまた効果時間などによるものか、男はそれをもろに受け地に伏せっている。

 

「さて、氷晶飛礫〈アイスバレット〉」

 

拳ほどの大きさの無数の氷塊が、男に向かって飛来する。

しかしそれらは全て、途中で不自然に進路を変えて、男の持つ山刀に引き寄せられ、消えてしまった。

だが、氷塊に紛れて火の玉が男に直撃する。

 

(ふむ。ある程度の魔法は引き寄せて無効化もしくは吸収されるが、スキルは問題なく当たるようですね)

 

玖苑が放ったのは、狐獣人の種族スキルである、狐火である。

スキルは魔法と違い、術者の思念や魂の波長と言ったものが大きく影響して現象を起こす。

 

結局、攻撃手段を確立した玖苑のワンサイドゲームで勝負はついた。

 

「皆さん、大丈夫ですか?こっちは片付きました」

「おお、遅いぞ玖苑よ。まだまだだな」

「よし、もう脅威はねえ!殲滅するぞ!」

 

玖苑が男を縛って引きずりながら戻ると、倒したキマイラ二体にもたれて寛ぐレオグリンドと、危なげなく盗賊を片付ける冒険者たちの姿があった。

 

「なんだ?玖苑、その男生きてるではないか?」

「はい、レオグリンドさま。こいつは狂ってなかったようなので、情報を引き出せるかもと生かしております」

「では、あっちが片付き次第尋問を開始しよう」

 

 

 

「はぁ〜疲れた」

「終わりましたー」

 

少しして、冒険者達と狂人達の戦いも終わった。

いくら意識が希薄と言えども、その身体性能や、底上げされた能力は冒険者達も苦戦を強いられた。

その間、玖苑たちは冒険者達を見ていた。

これは冒険者達の狂人への対処を見ていただけであり、別に面倒だったわけではない。

 

「さて、ではコヤツの話を聞こうか」

「…全部、やられた…あと、二と半分…」

「うん?何を言っておる?」

「ヒヒッ…ヒヒヒッ…」

「こいつ、急に笑いだしたぞ?」

「自分に狂化でも掛けたか?」

「わからん。でも、魔法の鎖で縛ってあるし、脱出はほぼ不可能!」

「ヒャハハハ!アーハッハッハッ」

 

突如男は、鎖で縛られたまま狂ったように笑い声を上げた。

 

「…あと二。狂化〈バーサーク〉上位狂化〈ハイ・バーサーク〉」

 

男は、急に笑うのをやめたかと思うと何かを呟き、狂化魔法を使った。

男の様子から、自分にかけた様でもなく、かといって他の盗賊やキマイラは倒したため、動き出す影もない。

 

─ポンッ─

 

突如、盗賊の一人の死体が膨らんで弾け、辺りに肉片をまき散らした。

 

─ポンッ ポン ポポン ポンッ─

 

続いて二つ、三つと弾けていき、破裂音が止む頃には、盗賊の死体は一つもなく、辺りは血と肉片で埋め尽くされていた。

その光景は、肉体が弾けたという原因と合わさり、見るものの正気を抉り取る様だった。

叫び出す人間こそいなかったが、これがもし生きたまま弾ける様な事があったら、少なくはない人数、それも死と隣り合わせの仕事をするもの達が正気を失っていたかもしれない。

それ程の衝撃があった。

 

レオグリンドと玖苑は障壁を貼ってやり過ごし、状況を整理していた。

 

「ふむ。死体が爆散か…」

「そんな魔法は聞いたことありませんが…オリジナルの魔法でしょうか?」

「まあ、犯人はわかっておるがな」

 

そう言ってレオグリンドは、縛られている男を睨んだ。

 

「それと玖苑よ。おそらく魔法ではなく、ユニークスキルの類だな。先の狂化魔法の対象は倒した盗賊へのものだろう。理由はおそらく…」

 

そうレオグリンドが続けようとした時、「バキンッ」という音とともに鎖が砕けた。

男を縛っていた魔法の鎖といっても、所詮は初心者も入るダンジョンに来るようなレベルの冒険者が使うものだ。

ある程度の力を持った相手には砕かれてしまう。といっても、最低でもBランク冒険者ぐらいまでは縛れるだけのものだったのだが…

 

「はーはっはっはっ!馬鹿どもめ!死ねぇ!」

 

哄笑をあげ立ち上がった男は、先程より格段に増したスピードで玖苑に殴りかかる。

 

「─ッ」

 

咄嗟に魔法の障壁を貼ったが、直感に従いさらに身を捻ることで回避を試みる。

 

「─チッ!」

 

男は、いつのまにか手に握られていた山刀を引き戻す。

 

「その武器は持ち主の元に帰る能力まで持ち合わせているのですね。それにこの感じは…魔力の強奪ですか」

「ご名答♪さて…」

 

玖苑は避けきれずに山刀が掠ったときに、僅かに魔力を奪われるのを感じた。

玖苑だからたいしたことないが、通常の冒険者の魔力の十分の一程の吸収量だったと予想できる。

そして、男は答えるやいなや、姿が掻き消えた。

 

「そおれっ…グォ!」

 

いきなり玖苑の背後に出現した男は、玖苑に斬りかかろうとした体勢で吹き飛ばされた。

玖苑が背後を振り返ると、そこには蹴りから体勢を戻すレオグリンドがいた。

 

「申し訳ありません。油断しました」

「我は謝るより先にお礼が欲しかったぞ」

「ありがとうございます!レオグリンド様」

「うむうむ。さて玖苑よ。おそらく奴は自分の支配下にあったものの能力を奪う事が出来るのだろう。そしてその際、死体が弾け飛ぶというわけだ」

「成る程。相手をを狂化して理性を奪い支配し、用が済めば底上げされた能力は奪う、という事ですか」

「チッ…」

 

男は顔を苦々しく歪めた。

大男のユニークスキル、『凶王の絶対王政〈

ドミネイト・オブ・インサニティ〉』は支配能力の向上及び被支配者の統率力、あらゆる情報を読み解ける。また、被支配者が死亡した場合、その能力が全て自分へと収束する。

これは、当人の知識や技能のみならず、ユニークスキルまで取り込めるという恐ろしい点がある。

 

ユニークスキルとは、生まれ持った特殊な技能であったり、強い願望や欲望などと言ったものから生まれるものである。

ものによっては人から与えられることもあるが、それは極一部でしかない。

 

そしてそれ故に強力なものが多く、そんな能力を強奪できるとなると、どれ程壊れ性能であるか理解出来るだろう。

 

 

 

「さて、これはマズイですね。私では不利です」

「まあ、あれだけ身体能力を上げられると、魔法職であるお前だと厳しいかもな」

「ええ。魔法の狙いは定まらず、身体能力を向上させる魔法を使おうと追いつけません」

「そうなのか。仕方ない、ワシが」

「待ってください!レオグリンド様!」

 

玖苑とレオグリンドが話を終え動き出そうとしたのを止めたのは、バガスである。

 

「なんじゃ?どうした?」

「今からアレの相手をされるご様子。でしたら是非に、私にやらせてください」

「ふーむ…」

「ご安心を!レオグリンド様のお手を煩わせる事はございません」

「うーむ…そこまで言うのなら任せようじゃないか」

「ありがとうございます!」

 




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