なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

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ルビ振るの面倒くさい…
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前夜祭の明ける頃(7)

 

──ドゴォォォン──

 

周囲に爆音が響き渡る。

方角は、レオグリンドたちの家の方向だ。

 

「レオグリンド様!先ほどの数十倍以上の衝撃が結界に衝突!」

「ふむ、ちょうどいい。全員で行こうか」

 

レオグリンドは、周囲の人ごと転移を発動した。ギルドマスターはまだ仕事が残っているらしかったが、敢えて見なかったことにしたのか、全くの御構い無しだ。

 

 

そこには、大きくヒビの入った結界と、山刀を振りかぶる先ほどの男がいた。

レオグリンドが迷わず急接近し、蹴りを放つ。

 

「─ットォ」

 

蹴りはすんでのところで、男に回避されてしまう。

空を切った蹴りがそのまま周囲を穿ち、爆音と共に地が割れる。

 

「それはもう飽きたよ。爺さん、他のはねえの?」

 

(回避力やスピードなどのステータスが上昇している?何があった?そもそも何故…)

 

「はっはぁ!来ないならこっちから行くぜぇ?爺さんよぉ⁉︎」

 

男は爆音と共に地を蹴り、レオグリンドの眼前まで迫った。そしてそのままの勢いでレオグリンドの顔に山刀を叩きつけた。

レオグリンドは竜鱗の生えた腕をクロスさせて顔を守る。

 

「チイッ!なんで硬さだよ!」

 

強化された男の腕力で叩きつけた山刀も、レオグリンドにはビクともしない。

 

「ふん!」

 

鱗の生えた手で山刀を掴んで捻り、足を払う。その勢いで宙に浮いた男を、そのまま地面に叩きつける。

 

ベシャッ!と頭が潰れて鮮血を撒き散らす。

数秒後、頭が再生し男は立ち上がろうとするが、再びレオグリンドが頭を潰す。

しばらくそれが繰り返された後、

 

「ふう…なんとも面倒な」

「ヒヒヒ。無駄だ…俺は不死身だ」

 

(僅かにだが、潰す手応えが硬くなってきている。ステータスが上がっている?死ぬたびに強化して生き返るユニークか?)

 

「キヒヒヒ…俺の狂乱の大帝(イモータル・エンペラー)は無敵だ…何度殺そうと強化されるだけ。さらに凶王の絶対王政(ドミネイト・オブ・インサニティ)があれば相手の能力を奪える。何回死のうが、俺様がいずれ勝つ!いずれ頂点に君臨する!ハハハハハ──ゴベッ!」

「まったく騒がしい。しかし、困った者だな…まあ取り敢えず、名前でも聞いておこう」

「俺様はドルク!降神教七幹部が一人!『強欲』のドルクだ!ヒャハハハ」

 

(こやつ、ものすごいバカだな…それとも、正気が欠けてきている?)

 

「お前らはいったい何がしたいんだ?」

 

レオグリンドがさらに情報を引き出そうと試みる。

 

「ははは。俺はただ好きにしているだけさ!そんな事よりよぉ…遊ぼうぜぇ!」

 

しかしドルクは、レオグリンドが頭を潰そうと腕を上げた瞬間に脱出してしまった。

 

「ふう…何とか抜け出せたぜ。いやーじいさん、強いなぁ?」

「ふん。ちょっと抵抗出来るようになった程度で優劣は変わらん。不死身だろうと無効化する方法はある」

「脅しか?慢心か?まあ、いずれにせよ俺様が勝つがな!」

 

レオグリンドとドルクがぶつかり合う。

どちらも素手での取っ組み合いだった。

 

「チッ─!」

 

先に離したのはレオグリンド。体制を変え、ドルクを投げ飛ばした。

 

「おっと爺さん?今のが限界かい?」

「これは久々に力を使った方が良さそうだな…」

「へへへ…いくゼェ!」

 

ドルクは、いつの間に構えた山刀でレオグリンドに叩きつける。

 

「断界の結界!」

 

刃が届く直前、レオグリンドの貼った結界により、レオグリンドを中心として球状に結界が展開し、ドルクを含む周辺が吹き飛ばされて抉れる。

 

 

 

「断界の結界!」

 

結界はそのまま広がると、ある程度のところでドルクを飲み込み止まった。

そこからは男とレオグリンドによる、第2ラウンドが開始した

もはやバガスたちでは相手にならない。

脅威度は測定不能で、ヒトの理解の範疇を超えていた。

はじめにレオグリンドが結界を張ったことにより、周辺への被害は先ほどよりは少ないが時折、衝撃で結界が軋む事もあった。

 

 

無言で攻撃を捌く老齢の男と、挑発をしながら山刀のような武器を振り回す体格のいい大男。

片や無手であり、片や刃物である。

 

「おいおい。無理しすぎて死ぬんじゃねえぞ?もっと楽しませてみろよ?」

「…フン。挑発するのは攻めきれないからだと言っているようなものだぞ?」

 

事実、大男の方は無手の老人相手に攻めあぐねいていた。

 

「チッ、ならさっさとくたばっちまえよ!」

 

大男が武器を大きく振りかぶり、勢い良く叩きつける。

しかし、剣の横腹を叩かれて剣が砕かれてしまった。

 

「クソッ!」

 

男は思い通りにならない苛立ちを吐き捨てながら、バックステップで距離をとる。

そして、何かを握るような素振りをした後腕を振ると、そこには山刀が握られていた。

そして今度は剣を投げつけた。

投擲するたびに新しい剣が出現し、相手に向かって突撃する。

しかし、それでも無駄だと言うようにそのまま体で受ける老齢の男は、そのまま男に近づいていく。

そしておもむろに一本の剣を掴み、

 

「ふんぬっ!」

 

掛け声と共に男に投げつける。

剣は男の眉間をかち割り、そこに鮮血をまき散らした。




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