なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる 作:オケラさん
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──ドゴォォォン──
周囲に爆音が響き渡る。
方角は、レオグリンドたちの家の方向だ。
「レオグリンド様!先ほどの数十倍以上の衝撃が結界に衝突!」
「ふむ、ちょうどいい。全員で行こうか」
レオグリンドは、周囲の人ごと転移を発動した。ギルドマスターはまだ仕事が残っているらしかったが、敢えて見なかったことにしたのか、全くの御構い無しだ。
◇
そこには、大きくヒビの入った結界と、山刀を振りかぶる先ほどの男がいた。
レオグリンドが迷わず急接近し、蹴りを放つ。
「─ットォ」
蹴りはすんでのところで、男に回避されてしまう。
空を切った蹴りがそのまま周囲を穿ち、爆音と共に地が割れる。
「それはもう飽きたよ。爺さん、他のはねえの?」
(回避力やスピードなどのステータスが上昇している?何があった?そもそも何故…)
「はっはぁ!来ないならこっちから行くぜぇ?爺さんよぉ⁉︎」
男は爆音と共に地を蹴り、レオグリンドの眼前まで迫った。そしてそのままの勢いでレオグリンドの顔に山刀を叩きつけた。
レオグリンドは竜鱗の生えた腕をクロスさせて顔を守る。
「チイッ!なんで硬さだよ!」
強化された男の腕力で叩きつけた山刀も、レオグリンドにはビクともしない。
「ふん!」
鱗の生えた手で山刀を掴んで捻り、足を払う。その勢いで宙に浮いた男を、そのまま地面に叩きつける。
ベシャッ!と頭が潰れて鮮血を撒き散らす。
数秒後、頭が再生し男は立ち上がろうとするが、再びレオグリンドが頭を潰す。
しばらくそれが繰り返された後、
「ふう…なんとも面倒な」
「ヒヒヒ。無駄だ…俺は不死身だ」
(僅かにだが、潰す手応えが硬くなってきている。ステータスが上がっている?死ぬたびに強化して生き返るユニークか?)
「キヒヒヒ…俺の
「まったく騒がしい。しかし、困った者だな…まあ取り敢えず、名前でも聞いておこう」
「俺様はドルク!降神教七幹部が一人!『強欲』のドルクだ!ヒャハハハ」
(こやつ、ものすごいバカだな…それとも、正気が欠けてきている?)
「お前らはいったい何がしたいんだ?」
レオグリンドがさらに情報を引き出そうと試みる。
「ははは。俺はただ好きにしているだけさ!そんな事よりよぉ…遊ぼうぜぇ!」
しかしドルクは、レオグリンドが頭を潰そうと腕を上げた瞬間に脱出してしまった。
「ふう…何とか抜け出せたぜ。いやーじいさん、強いなぁ?」
「ふん。ちょっと抵抗出来るようになった程度で優劣は変わらん。不死身だろうと無効化する方法はある」
「脅しか?慢心か?まあ、いずれにせよ俺様が勝つがな!」
レオグリンドとドルクがぶつかり合う。
どちらも素手での取っ組み合いだった。
「チッ─!」
先に離したのはレオグリンド。体制を変え、ドルクを投げ飛ばした。
「おっと爺さん?今のが限界かい?」
「これは久々に力を使った方が良さそうだな…」
「へへへ…いくゼェ!」
ドルクは、いつの間に構えた山刀でレオグリンドに叩きつける。
「断界の結界!」
刃が届く直前、レオグリンドの貼った結界により、レオグリンドを中心として球状に結界が展開し、ドルクを含む周辺が吹き飛ばされて抉れる。
◆
「断界の結界!」
結界はそのまま広がると、ある程度のところでドルクを飲み込み止まった。
そこからは男とレオグリンドによる、第2ラウンドが開始した
もはやバガスたちでは相手にならない。
脅威度は測定不能で、ヒトの理解の範疇を超えていた。
はじめにレオグリンドが結界を張ったことにより、周辺への被害は先ほどよりは少ないが時折、衝撃で結界が軋む事もあった。
◇
無言で攻撃を捌く老齢の男と、挑発をしながら山刀のような武器を振り回す体格のいい大男。
片や無手であり、片や刃物である。
「おいおい。無理しすぎて死ぬんじゃねえぞ?もっと楽しませてみろよ?」
「…フン。挑発するのは攻めきれないからだと言っているようなものだぞ?」
事実、大男の方は無手の老人相手に攻めあぐねいていた。
「チッ、ならさっさとくたばっちまえよ!」
大男が武器を大きく振りかぶり、勢い良く叩きつける。
しかし、剣の横腹を叩かれて剣が砕かれてしまった。
「クソッ!」
男は思い通りにならない苛立ちを吐き捨てながら、バックステップで距離をとる。
そして、何かを握るような素振りをした後腕を振ると、そこには山刀が握られていた。
そして今度は剣を投げつけた。
投擲するたびに新しい剣が出現し、相手に向かって突撃する。
しかし、それでも無駄だと言うようにそのまま体で受ける老齢の男は、そのまま男に近づいていく。
そしておもむろに一本の剣を掴み、
「ふんぬっ!」
掛け声と共に男に投げつける。
剣は男の眉間をかち割り、そこに鮮血をまき散らした。
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