なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる 作:オケラさん
一応、残酷っぽい描写があります。
人によっては胸糞かもしれませんのでお気を付けください。
全身を包む浮遊感。まどろむ意識。
ここは…夢の中だ。
夢を自覚して、だんだんと思考がクリアになる。だが、夢が覚める様子はない。
漂う白んだ世界が、だんだんと色を持つ。
ここは…昔の、そう。まだ家族みんなで暮らしていた家。
──世界が暗転し、場面が切り替わる。
ここは?どうやら今度は暗い部屋のようだ。だがここにも、覚えがある。家族で住んでいた家、その一室だ。
途端に、むせかえるような臭気が当たりを包む。錆びた鉄にも似た、気持ちの悪い匂い。
血の匂いが当たりに充満しており、慣れぬ匂いに吐き気をもよおす。いや、匂いと言うよりは、正確にはその記憶、光景にだ。
トラウマがフラッシュバックする。
いきなりテレビに砂嵐が流れる。
やがで無音になったと思ったら再びつく。
それを何度か繰り返し、ある場面が映った。
同じく薄暗い部屋に佇む、一人の男。
黒いローブのようなものを羽織っており、痩せ型。
頭にはなにかを巻いており髪型は不明だが、頬は痩せこけ目がニヤついた不気味な顔。
その男がニタニタと笑いながらカメラを見ているようだ。
男が唐突に屈み、何かを持ち上げる。
子供?どうやら、縛られてぐったりしている男の子を持ち上げているようだ。年にして、幼稚園〜小学校低学年くらいだろうか?
男の子は、微かに息があるようだが、身じろぎひとつ、呻き声さえ出さない。
少しして、チャイムのような音がする。
続いて聞こえてくるのは女性の人の悲鳴。
カメラが動き、画面に若い女の人が口を押さえてへたり込んでいるのが映る。
男は子供の首にナイフを当てて、女性を脅しているようだ。
少しの逡巡の後、女性は項垂れ素直に従った。
それからどの位たっだろうか?
男の子とその母親は縛られて床に転がっている。それ以外は何もないようだ。
一度、女性が男に組みかかったが、返り討ちにあって再び取り押さえられて足を刺された。
それから、中学生くらいの少女が入ってきて同じように捕まった。
悲鳴は外まで聞こえるくらいの大きさの筈だが、助けが来る様子はない。
最後に、彼女らの父親らしき人物が帰ってきて、男と揉めあいになったが、子供を盾に脅され、呆気なく捕まってしまった。
その後、母親同様に足を刺され、血が流れる。
ここまで来たら流石にわかる。
いや、最初から分かっていた。
強盗だ。強盗が、なんらかの意図でその家の家族を捕まえ、ビデオ撮影をしているのだ。
つくづく馬鹿な家族だと思う。人質は、相手に手出しできなくする事に意味がある。逆に、相手を止めることが出来なければ、ただの荷物でしかない。
人質を取られて躊躇ってしまうなど、全く馬鹿だとしか思えない。
自分が仲間の邪魔だと思ったなら、包丁でももって、犯人共々自滅すればよかったのだ。
例え犯人が生き残ろうとも、人質がいなければ他の人が逃げられたかもしれないのに。
もっとも、俺は出来たかと言われると、無理だっただろう。
家族が人質で躊躇したのも、まあ分かる。
平和な国で、突如起きた事だ。混乱するのも無理はないだろう。
そもそも、通報もされず、悲鳴をあげても誰も助けに来ず、家族全員が捕まっている事自体が異常なのだから。
それから男は、カメラに家族全員が映るように位置を変え、奇行を取り出した。いや、凶行であるか。
まず、最年少の男の子を前に出し、家族全員の前で拷問を始めた。
爪を剥ぎ、指を折り、男の子の悲鳴が痛いほど響く。そこに、家族の絶叫と哀願が混ざり、男の顔には笑みが浮かぶ。
勿論、それら全てが映るように位置どりを変えている。
思わず目を背けたくなる光景に、しかし、顔を動かす事はおろか、目を閉じることすらも出来ない。
男の子の悲鳴が勢いを無くしていき、父親と母親の嘆きと、残る家族を守るべく、代わりに犠牲になるという叫びがより大きくなる。
痙攣だけを残し、一応原型は留めている子供を脇に退け、次に男が手にかけたのは父親。
父親はなんの捻りも拷問もなく、ただただ殴り殺された。
しかし、急所を外し同じところを殴り続けたのか、父親が死ぬのには子供の倍ほどの時間がかかったように思える。
続いては母親で、最後に残った娘は助けるように、必死の叫びがすでに床が血溜まりのみとなった部屋こだまする。
すると男は、母親の拘束を解き、目の前に武器を並べていく。それは、包丁といった刃物から、父親を撲殺するのに使ったバットなどの鈍器、息子にかけていた、肉を溶かす薬品といったものだ。
これらのうち、どれかを選ばせて自分を殺しても良いという風に言っている。
母親は、素早く包丁を手に取り、男の腹に深く突き刺した。否、男は先程の場所には無く、代わりに娘がいた。
困惑と、絶望とが二人を支配する。
娘は、か細く母親を呼び生き絶えた。
それを見て、男は元々娘が縛られていた場所に座り笑っている。母親が突進して、寝転がり笑っている男に包丁を男に突き刺す。
何度も、何度も、何度も何度も何度も。
気がついた時には、そこら中に血が飛び散り、部屋中を赤く染めていた。目を落とすと、そこには間違いなく男の遺体がある。
しかし次の瞬間、そこには父親の遺体があった。その遺体は無残にも滅多刺しにされ、内臓が溢れていた。
母親は絶望し崩れ落ち、男の気持ち悪い笑い声だけが部屋に響いていた。
やがて母親は、包丁で自分の首を切り裂き死んだ。
男はひとしきり笑った後、満足したのか、再びカメラの正面に戻ってくる。
そしてカメラに手をかけて、画面が切れた。
再び世界が暗転し、続いて現れた場面はアパートのような一室。
そこでソファーに座りテレビを見ている少年。余程夢中なのか、身じろぎひとつすらしない。いや、出来ない。
いつのまにかテレビの前に置かれてあった水晶。それに触ろうとした時、テレビがつき、まるで吸い寄せられるようにソファーに座ってしまったのだ。
すぐに正気に戻ったが、体は動かずテレビを消すこともできない。内容は先程のビデオと同じようで、目は何故かを閉じることが出来ず、少年は叫びながらテレビを見続けるしかなかった。
…苦痛だろう。自分の家族が、惨殺されるビデオを無理やり見せられ続けるのは。
それは想像に難くない。否、知っている事なのだ。
少年はビデオが終わる頃には、涙を流しながら放心していた。
あぁ…これは、紛れもない私の、俺の過去の話だ。
◇
「痛たたた…って痛くないや」
どうやら魔力体であるリンには痛みは無いらしく、その事に感謝しながら、状況を確認する。
自分はどうやら、地面に寝転がっていたらしく、左右には通路がある。しかし、亀裂に落ちたはずだが、穴らしきものは見当たらない。
転移か転送のトラップでもあったのかもしれない。
状況確認が済んだところで、先ほどのことが思い出される。
…酷い夢を見た。
遠い昔、と言うほどでもなく、5年ほど昔の少年時代の話。
家族の死の真相を知った時の気持ちは、今思い出しても吐きそうになる。
俺は犯人を呪った。あらゆる呪いを調べ、試した。顔だけは分かる。記憶に残っている。忘れるわけがない。
犯人と繋がるものは水晶ひとつ。だが、この水晶がまともなはずがなかった。それらを元に、ありったけの恨みを込めて日々、犯人を呪い続けた。
効果があったのかは分からないが、結果として犯人は死んだ。事故死だった。どうやら、誰かに突き落とされた様でもあったらしい。
今思えば、呪いというのも、所謂魔法だったのかもしれない。
…だからこそ、この世界に来た当初から、「呪怨」のスキルを持っていたのかもしれない。まあ、これは発動させようにも反応がなく、現状で放置しているスキルだが。
そういえば、犯人が行なっていた不可思議な事は、魔法だったのでは無いだろうか?ここの世界に来て、魔法に触れて学んだ今、色々と説明がつく。そもそもあの水晶はなんだ?明らかにおかしい。
人を道楽もどきで殺すための呪い?呪いとは、本来なら恨みごとを持って、相手を殺すためのものだ。私欲のために悲鳴を消す呪い?あるわけがない。あれは魔法だったのだろう。呪いを調べつくし、魔法にも触れた俺が断言する。間違いないと。
となると、どういう事だ?あちらの世界に魔法に関する文献や話は、それらを仄めかす程度のものはあれども、詳しい事は分からずじまいだ。大きく伝わるのは結果ばかりである。さらに、あの世界の魔力は微量であり、魔法の使用は不可能である。それこそ、あの様な魔法が使いたければ街一つから時間をかけて集めるか、人を二人ほど贄としなくてはいけない。ならば、この世界誰かが、犯人に魔法と魔法を使えるようにするために魔水晶を渡した、という事だろう。
…つまり、この世界にはあっちの世界の事を知っており、あの犯人のような人間を仕立て上げた奴がいるという事だろう。
よし、この世界での目標がまたひとつ増えたな。冒険やファンタジーを体験したり、同郷を見つけるのと比べてちょっとアレだが、結構重要な目標と言えると思う。見つけたら、もちろん殺してやる。ただでは楽にしてやらないし、同じ苦痛を味あわせた後に精神を壊してやる。
それに、俺と同じような被害者がこれ以上増えないように…
──感情が一定値に到達。〈スキル〉『抑制』および、『呪怨』が発動しました──
◇
不思議と気分がスッキリし、昏い思考から脱却した俺は、今後の計画を立てることにした。
まずは合流しないといけないが、これは目処が立っていないので、目印を置いたり、マッピングをしながら進んでいこうと思う。
眷属間の通話もどうやら使えないらしく、完全に孤立してしまっている。
魔力があれば生きていけるので、別に死ぬことはないと思うが、長時間ここで待ち続けるのも苦痛だ。俺がいたという目印を残して、そこらへんを探索するとしよう。
魂魔掌握を集中して発動する。
ゆっくりと、周囲の状況を把握できる範囲が広がっていく。
…周囲に反応なし。どうやら、周囲に生物はいないようだ。
続いてこれを維持しつつ行動する練習だ。
動くと意識がブレるため、範囲にムラがでる。だが、これが出来れば間違いなく有用であるだろう。
他のスキルも並行して練習してみる。
まだ試してない種族スキルは、魔法強奪、物理念動、憑依だ。
呪怨は先程、自動で発動したきり反応がないし、効果もよく分からない。
感情がどうたらって聞こえたから、そういった条件があるのかもしれないな。
ユニークスキルの抑制も同じようなスキルなのだろうか?
スキルの実験を開始する。幸いに人の目はないので、様々な事を試すことができる。
物理念動は割と分かりやすい効果だ。
自分の魔力で影響を与えた認識範囲内の物体を自由に動かせる。所謂、サイコキネシス能力だ。
ただ、自分との間に障害物があったり、自分の魔力の影響を与えてない、そこらへんの石とかは操作できない。
自前の魔水晶や、石に自分の魔力を混ぜたりしたものだけ操作できる。
魔法強奪は、よく分からない。名前的に、魔法を妨害したりするものだと思うが、なにぶん、此処には俺以外いないのだ。
魂魔掌握の探知内に来た生物もいないし、実験のしようがないので今はパス。
続いて憑依。対象がいないから無理かと思ったが、これはできた。
自分の魔力を使って、魔力を含む物体に憑依して操作できる。
試しに、魂魔掌握で人型の魔水晶製の人形を作って憑依してみたら、自分の体の様に動かすことができた。
いや、形が変わっただけで、構成しているのはやはり魔力100%なので、体が置き換わっただけで自分の体なのだろう。
元の体はどうなっているのかと言うと、俺の体は純魔力体なので何も残らない。
服はどうかと思ったが、なんと一緒に消えてしまった。一体どうなっているのか…
見た目はのっぺらぼうに関節むき出しの木偶人形だ。ただ、その口が大きく縦に裂けたり、顔が360度回転しながら歩いてるもんだから、不気味ったらありゃしない。
見た目の色は元の体と同じ白で、木というより、陶器の人形みたいである。もしくは、木偶人形に似せて作ったフランス人形かな?
…しかし、こうなるとあれだな。
体に木目を出したり、材質までそれっぽくしてしまいたいな。だがここは洞窟であり、今まで木材を取り込んだことなどない。取り込んでいても、すぐ魔力へと分解していたので、どっちにしろ木製の木偶人形を作ることなど出来なかったが…
…いや、いや待てよ?
魔法とは思念を魔力に送り、イメージを具象化する。そしてこの体は純魔力製。
ならば?この体にもイメージを送れるのではないか?そして、体を変化させられるのではないか?
思い立ったが吉日。リンは早速体の変化をイメージする。しかし、魔法や魔術とは仕組みが少し違う。あちらは魔法陣などの補助があるのに対し、これは補助なく自分のイメージで作らねばならないのだが…
「お、思ったより簡単だったな」
思わずリンから声が漏れる。そして、一人だったことを思い出してバツの悪そうな顔をした。
まあ、もともと中二病気味だったのだ。想像力は人一倍ある。それに、剣と魔法とファンタジーと、そして未知に憧れてこの世界に来たのだ。中二病でもなければ、こん
登校日間違えるマンに名前変えた方がいいのでは?
面倒になってメモからコピーして投稿後に見直すと改シーンやルビ間違えていたりするグダりもちょこちょこ...
感想やアドバイス、疑似脱字報告、お待ちしております。